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友罪
2018年06月12日

T0022277p.jpg嫌な事件ばっかりだ。
東京目黒で起きた幼児虐待死のニュースを見たばかりの今これを書いているが、ドス黒い気持ちが抑えられない。

テレビに映ってるあの鬼畜の夫婦の顔を見てるだけでメシがまずい。
自然と握り拳に力が入り、「この人でなしどもめ」と声が漏れる。
彼らがこの先、刑務所に入るかどうかは定かでないが、仮にブチ込まれたとして、我が子に満足に食事を与えなかった彼らは、ムショの中で三食を食うのだろう。 我々の税金でだ。

そんなバカなことがあるか。
同じ目に遭わせてやればいいのだ。
おまえらに「ゆるしてください」と言う人権などない。

・・・という、その場の感情をワッと吐き出して、やがて事件を忘れてしまうこちらは所詮部外者だから仕方がないのかもしれないが、誰かが罪を犯したことの因縁で繋がった人たちの、その先のことまで思考は進まない。

例えばこの事件にしても、あの夫婦にも両親などの親族はもちろんいるだろうし、仲のいい友人もいるだろう。
亡くなった子は女の連れ子だが、それとは別に両容疑者の実子である1歳の男の子もいる。
罪の周囲にいる、これらの人々にはもちろん何の罪もない。
何年かして、法律的に罪を償った夫婦にも我々がとやかく言うことは何もないはずだが、世間の感情はそうはいかない。

彼らが手にかけたのは身内だが、よその人様に及んだ犯罪ならば、その傷の輪はさらに広がり、それだけ世間の心は寛容ではなくなる。 それだけ法律が甘いということだろうか。
罪を犯して罰せられるのは犯罪者だけで済まないのが、人間の処罰感情の厄介なところだ。
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江戸川乱歩賞作家である薬丸岳は犯罪被害の遺族や加害者の家族、または少年犯罪などをテーマに、人の罪をあらゆる角度から見つめた小説が多い。

2013年に発表した「友罪」は、主人公が偶然友人になった青年が、かつて世間を震撼させた凄惨な事件の被告である元少年Aであることを知って葛藤する物語である。
事件の真相を追究するのが本題ではない、著者初めてのノン・ミステリという問題作が映画化。 薬丸作品としては初の映画となる。
監督は「64 - ロクヨン -」の瀬々敬久。

もし友人の過去が"その人"だと知ったら。 家族の一人が突然、国中を敵に回す罪人になったら。
人はどこまで心を開き理解し合えるのだろうか。 罪を背負う、罪を償うことの重みにどれだけ向き合えるのだろうか。

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【益田】

益田純一(生田斗真)はジャーナリストの夢破れた男。
人の命よりもカネになる記事が大事だという上司を殴って職を捨てることになった。
部屋を借りる金も使い果たしてネットカフェ暮らしに堕ちた。

とにかく寮のある職場なら何でもいいと、町工場「カワケン製作所」の見習いの仕事を見つけて働き出す。
奇しくも「鈴木」という男も益田と同じ日に働きにやってきたが、自分のことを一切語ろうとしない寡黙な男であった。
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鈴木(瑛太)は多少マイペースだが、工場の経験もあるのか、仕事は真面目にそつなくこなした。
寮に同居する先輩の清水や内海に前職のことを聞かれた益田が元ジャーナリストだったと話した時、いつも周囲に関わらない鈴木はそこだけ微妙な反応を見せた。
「他人を詮索するのに疲れたの?」
奇妙な男だったが、益田はむしろ鈴木にいい印象を持った。

人との交流を拒む鈴木を清水たちは余計に面白がり、鈴木が留守中の頃を見計らって、彼の部屋の物を物色してプライバシーを探ろうとする。
益田も有無を言わさずに誘われて、押し入れの中から一冊のスケッチブックを見つける。
そこには色々な鉛筆画が描かれていたが、最後の方には女性の裸の上半身の画が描かれていた。
清水たちは「変態の証拠見っけ~」と笑っているが、益田は砂を噛むような思いだった。

鈴木のほんの人間的な部分を垣間見ただけで、ジャーナリスト時代の嫌な思いが蘇ってくる。
誰にだって触れられたくない過去はある。 自分にも・・・・・

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益田には中学生時代に自殺した同級生の友人がいた。
あまり人と打ち解けれなかった益田にできたたった一人の友人である桜井学は、周囲から激しいイジメに遭っており間もなく自ら命を絶ってしまう。
以来、益田の家を定期的に訪ねている。

の母・さちこ(坂井真紀)は亡き息子のたった一人の友だちだった益田を歓迎し、思い出話に花を咲かせていたが、そんな彼女も末期の病に冒されて余命幾ばくもなく、自宅療養で静かにその時を迎えるのを待つ身となっている。

「いつまでも強く正しい益田君でいてね」の母は優しく彼に微笑む。
その笑顔と言葉が益田の胸をえぐる。
本当は違うのだ。 自分は強くも正しくもない、卑怯な弱い男だったのだ。
を死に追いやった張本人は・・・
本当のことを伝えなければならない。 いや・・・。息子には素晴らしい友だちがいて良かったと信じたまま死にゆく母親にはとても本当のことを話せない。

自分がにした仕打ち。 彼の母親に嘘をついていること。
益田も人に言えない罪を背負っていた。


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【美代子】

藤沢美代子(夏帆)はコールセンターのオペレーターをいているが、彼女には正直苦手な仕事だった。
時には名指しで恫喝するようなクレームをまくし立てる客もいる。
「あんたの名前覚えたからな」  背筋が凍る。
夜道を一人で歩いている時でも、後ろから人が来ただけですくみ上がってしまう美代子は一人の男の影に怯えていた。

田舎から上京してきた時は、何も大それた夢を持っていた訳ではない。
ただ、何を浮かれていたのか、変な男に引っ掛かったと気づいた時には後の祭りだった。
唐木達也(忍成修吾)という男と付き合い始め、やがて彼にそそのかされてAVに嫌々出演させられた。
別れたつもりでも達也はしつこく美代子を追いまわし、引っ越しても居場所を突き止めては美代子に激しい暴力を振るう。

ある時、追いかけてきた達也から逃げる途中で、一人の男がかばってくれた。
男は達也にただ無防備に殴られ蹴られるままになっていた。
男は「鈴木」と名乗った。
部屋で鈴木の怪我の手当てをした美代子は、それ以来、何度か彼と会うようになった。

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鈴木はほとんど自分のことを語りたがらなかった。
自分に対してというより、世間そのものを遠ざけているようだった。

隠したい過去があるのだろう。 それは自分も同じこと。
だが、鈴木の隠したいこととはなんだろうかと美代子は思う。
彼が美代子の思ってるような優しい男ではないかもしれない裏の顔への危惧が無いわけでもない。

だが、路上に置かれた箱の中に入っていた捨て猫を見つめていた顔や、体を張って自分をかばってくれた鈴木の傷だらけの顔を見ていると、美代子には少なくとも達也のような悪人にはとても思えなかった。

鈴木の勤める会社の人たちの飲み会に同席した際、カラオケで鈴木が無邪気に「ドラゴンボール」の歌を唄うそばで過ごしたほんのひと時は、美代子がこれまで他人と共にしたどんな時間よりも幸せだった。

それに鈴木には「マスダ」という仲のいい友人がいるようだ。 友人か・・・ うらやましい・・・ 自分も鈴木のいい友人になれるだろうかと美代子は唄う彼を見つめる。


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【青柳】

鈴木の顔つきはによく似ていると益田は思っていた。
中学時代に自殺した同級生に似ていると鈴木に言うと、「俺が自殺したら悲しいって思える?」と聞かれた益田は動揺した。
まるでが直接自分に訴えてるかのような錯覚を覚えたのだ。
「悲しいに決まってるだろ」
じゃあ、なぜ? 14年前、なぜ学にあんなことを言ってしまったのだ?

益田は慣れない肉体労働に疲れていて、めまいを起こし、機械で指を切断してしまう事故に見舞われる。
その時、鈴木の冷静で的確な判断により、指はつながった。

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退院祝いで清水たちと共にカラオケパブに行き、楽しそうに歌を唄う鈴木の姿が益田には嬉しかった。
鈴木はどこで知り合ったのか、きれいなカノジョも連れてきていた。
指のことで益田が改めて礼を言うと鈴木「友だちだから」と嬉しそうに言う。
やっと本当の友人になれた気がした。

だが、益田は雑誌記者の元恋人・清美(山本美月)から埼玉で起きた児童殺害事件について意見を求められていた。
17年前の連続児童殺害事件の犯人・青柳健太郎の再犯ではないかと疑っているらしい。
少年院出所後の青柳の足取りが掴めていないらしいが、正直それを調べるのは乗り気ではない。

仕方なくパソコンで検索した益田は、当時14歳だった青柳健太郎の顔写真を発見する。
一瞬、かと思った。 いや、このに似た少年は・・・・
更に検索した益田は医療少年院で青柳を担当していた教官・白石弥生の顔を見て驚く。
鈴木の部屋で見つけたスケッチブックに裸の姿が描かれていたあの女性の顔だった。

カラオケで唄うスマホの動画を見つめる益田
鈴木は「青柳健太郎」なのか・・・?


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【弥生】

白石弥生(富田靖子)は少年院の法務教官兼技官をしている。
彼女は17年前に起きた連続児童殺害事件の犯人・青柳健太郎の担当であった。
だが青柳は少年院を出所した後、連絡が取れなくなっており、先日埼玉で起きた、幼い男の子が殺されていた事件は青柳の再犯ではないかと所内で声が上がっていた。

17年前に青柳の起こした事件は日本中を震撼させた。
2人の子供を残虐な手口で殺して遺体を放置したその犯人が当時中学生だったのもショッキングなことであり、犯人の少年Aについて連日マスコミは彼の過去や人間性について興味本位の報道を垂れ流し続けた。

少年Aこと青柳の医療更生を担当した弥生は、絶対彼を立ち直らせるのだと誓った。
生まれついての怪物などいない。 人を信じて真摯に寄り添えば必ずや人間の心は息を吹き返すのだと弥生は信じて疑わなかった。
来る日も来る日も彼女は青柳に寄り添い、心を砕いた。
そのため、自分の家族のことを全くかえりみることなく、やがて彼女の家族は離散することになった。

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弥生には高校生の娘・(蒔田彩珠)がいる。
ある日、娘の方から連絡があり、久しぶりに会ったものの、娘が突き出したのは「人工妊娠中絶同意書」だった。
しばらく疎遠だった娘の素行うんぬんよりも、たとえ3ヶ月だろうと1ヶ月だろうと命は命。 それを簡単に殺してしまうという考えが弥生には親として残念でならなかった。

彼女は院内で問題を抱えた少年にいつも言う。
「想像して!」 人が死ぬということを。 この世から消えるということを。 もうその人に会えないということを想像して、と弥生は命を奪う罪の苦しみを問いかける。
それに考えが及ばない子に育ってしまったのは、もちろん自分の責任なのだが。
「今さら母親ヅラ?」
戸惑うしかない母親に業を煮やした娘は「もういい」と去っていった。

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青柳弥生にだけは連絡をくれた。
ただ、今どこにいるのかまでは口を開いてくれないが。

仕事もしているらしく、その職場で友人ができたのだと言う。
友人のことを語る嬉しそうな青柳の顔は、17年前に少年院に入所してきた頃の彼の顔とは比較にならないほど、憑き物が取れたかのように穏やかだった。

彼がまた同じようなことをするはずがないと弥生は確信したが、青柳がこれからはしっかりと生きていこうというような意思の強さがあまり感じられなかった。
ただ、何か些細なことがあれば今にも折れそうな危うさと、一つの決意を持っているような気がした。


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【山内】

タクシー運転手の山内修司(佐藤浩市)の息子・正人(石田法嗣)は、3人の子供をいっぺんに死なせてしまう交通事故を起こした。
もうそれから10年になる。
山内は定期的に事故の遺族を訪ねては謝罪し、賠償金の振り込みをずっと続けている。

だが、そういった行為も却って遺族の感情を逆撫でするのか、「もう来ないでくれ」と門前払いを食らうことも多くなった。
幼い子を失った篠塚(光石研)は「あんたのそういうところが独りよがりなのだ」と憤慨する。
「通帳にあんたの名前でお金が振り込まれてるのを見ると、あんたのお金で生かされてるようで悔しいんだよ」
それでも自分にはこうするしか他にやり方が分からない山内「申し訳ありませんでした!」と土下座する。
「あんたはなんにも分かっちゃいないよ!」

確かに毎度毎度決められたルーティーンのように顔を見せて、いつもの決まった言葉を口にして、機械的にヘコヘコ頭を下げて、お金さえキチンと払っていれば、その時だけは自分の気が済んだかのようになっている。
加害者の苦しみを言う訳ではないが、どうしたら許してもらえるのかが分からないという苦悩のどん底から少しでも気が楽になりたいという甘えが潜んでいるのを山内も否定できない。
謝罪という形式の中で「自分を許している」卑怯な男だと山内は自分をさらに責めさいなむのだった。

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息子が事故を起こした時、その罪を償うために、山内は家族を解散した。
人様の家族を壊したのだから、自分たちの家族だって壊してしまえばいいんだと、家族の形を解散して10年になる。

義父の葬式で妻と久々に再会した時、息子の正人が婚約したのだと聞かされて山内は愕然とする。
人の幸せを奪った犯罪者が、遺族の苦しみをよそに自分だけ幸せになるなどと、山内自身のポリシーとしては有り得ないことだった。

さらに婚約者は妊娠していると聞かされて、山内は居てもたってもいられず息子を訪ねる。
「おまえの為に家族を解散したってのに、おまえが家族を作ってどうするんだ」
その時、婚約者の千尋(北浦愛)が「罪を犯した人は幸せになれないんですか」と抗議する。

ああ、そうだよ。 幸せになっちゃあいけない。 一生背負って行かなくちゃいけないんだよ。 そういうことでしか犯した罪は償えないんだ。 だって被害者の身にもなってみろよ。 そんなもん納得する訳ないだろ。 許してもらえるまで謝って謝って謝り続けるのが俺たちの義務なんじゃないのか。・・・・・・そんな思いの中で、罪を犯した息子を愛してくれた女性や、新たに生まれてこようとする命には何の罪もなく、それらの幸せを奪って、日蔭を行く生き方まで押しつけていいものかと山内は葛藤するのだった。


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全編に渡って作品を支配する重苦しさは最後まで軽くなることはない。
犯した罪といかにして向き合うかが、原作とは違う群像劇スタイルで描かれ、これという一区切りをつけぬまま、答えのない問いだけを残して映画は締めくくられる。

それぞれが何らかの業を秘め、それに囚われながら方向の見えぬ生き方を探し続けている。
そこに決して人の過去や罪に寛容ではない俗世の悪意が彼らを揺さぶる。

鈴木と名乗っていたかつての少年A青柳は、益田が撮った動画が元でマスコミに身元がばれ、美代子はAVをばらまかれる。
人の過ちに対して、世間の好奇心というものは実に残酷なリアクションをするものだ。
また、少年院の教官・白石や交通事故加害者の父親・山内などは、命の芽生えということをきっかけにして、それまで身内にまで累を及ぼしてきた己の生き方を見つめ直すことを強いられる。

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益田のすべては中学時代の体験にある。
弱い者いじめを間近に見てきた彼がジャーナリストを目指したのは、すべての社会悪に立ち向かいたかった表れだったのだろうが、現実のジャーナリズムは失敗を犯した者の弱みをネチネチとつつくだけのシロモノだった。
ジャーナリズムとは名ばかりの、ある意味「イジメ」にすぎない便所の落書き稼業など益田が見切りをつけるのも頷ける。

いじめに遭っていた中学の親友だった桜井学益田は保身のために見捨ててしまう。
葬式ごっこに加担し、寄せ書きに「じゃあね」と書いてしまった。
「僕は死んだ方がいいのかな? 益田君はどう思う?」と尋ねてきたの電話に、彼は答えた。
・・・・・「勝手にすれば」

殺したも同然の罪を背負い苦しみ、流れ着いた町工場で、益田は自分と同じく何かを背負っているような「鈴木」と出会う。
何かに苦しんでいるのなら助けてあげようと思ったのだ。 そして益田鈴木は友だちになった。
だが、それも束の間、またしても自分の行為によって益田は友人を失ってしまう。

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幼い子供2人をこれという理由もなく残虐に殺した鈴木こと青柳の罪の呵責など、一番知りたい感情は最後まで語られない。
彼は少年院出所からこれまでのあいだ、被害者の何を思って生きてきたのだろうか。

中学生で事件を起こすまで一人として友人がいなかったのであろうことは想像がつく。
女性教官には恋愛に近いほど心を許し、小さな箱の中で鳴いている子猫に気を留める姿が彼の孤独の深さを物語る。

本名を伏せてまで人生をやり直したい。 いや、本名では生きられない。
自分を隠してまで友情など求めるのは甘い。
だが、彼は益田との出会いで友情の甘美を知った。 美代子との出会いで、人を思いやることの歓びを知った。
しかし過去は彼が未来を見ようとするのを許さない。 もはや呪縛なのだ。

ならば自分で罰するより誰かが罰してくれた方が楽だとばかりに、青柳は清水にあるいは達也に無防備に殴られ続けては「ワハハワハハ」と笑う。 死にたいのだ。 ああこれで死ねると思うと笑いがこみ上げる。
だがこの痛みが同時に彼の心に光を与える。
「それでも・・・生きたいんだよね」

彼は心の中で益田に問う。
「僕はどうすればいいんだろうか?」
益田がブログに綴った、「生きててほしい。友だちだから」というメッセージは果たして彼に届いただろうか。

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「罪を犯した人は幸せになれないんですか」というセリフがあるように、法的に償っても被害者や遺族がいる以上は前を向いて生きていくことはおいそれと叶わない。
いつまでも過去と向き合わねばならないのが罪人の運命である。

だが、息子が犯した罪の謝罪に明け暮れる山内は、もはや謝罪が様式化してしまい、そんな生き方を家族にも押しつける。
自分の気が済むからだ。 遺族の為ではない。 
だが実際にもそうやって生き続けている前科者、あるいはその家族の人はいるのだろう。
死んだ人が戻ってこない以上は、どんな償いも割に合うものはない。

だからといって山内のように自分たちも同じようにしますと、家族を解散したってそれは自己満足に過ぎない。
ではどうすればいいかという答えは永遠に見つからない。

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凶悪な犯罪を犯した者をニュースなどで見ると「こんな奴、死刑にしてしまえ」と自分も含めて多くの人は思う。
誰もが悪を憎み、被害者と悲しみを共有する。
犯罪者の心の方を向くことは最初から拒絶し、人として認めず、命も軽んじる。 それが普通の感情なのだろう。
だが、それも結局は自分にとっての現実ではないからだ。
他人様の話である。

それが自分の家族や友人だったらどうだろうか。
自分の身内から犯罪者が出たら、山内のように家族を解散するだろうか。
友人が前科持ちだと知ったら、過去は過去と割り切って今までと変わらぬ気持ちで友人でいられるだろうか。
おそらく分からないだろう。

連日のようにニュースで、一生かかっても消えないような罪を犯す者たちを私たちは見て知って「罪を償え」と怒る。
だが、私たち自身もこれが正解だという罪の償い方を知らない。

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芸能人の些細な失敗を待ってましたとばかりに袋叩きにすることが面白半分に広まる今の時代。
世の中全体の器が小さくなっている。
責められる者の気持ちなど、自業自得なんだから知ったことかと、「道徳=不寛容」の精神が暴走する。 そんな時代だからこそ、この映画を観て考える価値はある。

死刑反対とは言わない。 むしろ死刑はあっていいし、被害者の痛みをないがしろにしてはいけない。
だが、裁かれる者、その家族や友人の心に少しでも耳目を傾けることも意味はある。
そこに贖罪と赦しの意義を見出すヒントの光が射すのではないか。

子供をなぶり殺した夫婦も、新幹線で凶刃を振り回した若造も、これからは法律以外に世の中によって裁かれる。 そこで彼らがどう世の中と向き合うか。 彼らなりの償いを見届けねばならない。 「勝手にすれば」ではなく。
現実、いずれ彼らは社会に戻ってくる。 その時、彼らは何を語り、どう生きていくだろうか。
その時、私たちの耳目は何を受け止めてどう感じるだろうか。


それにしても、こうやってあれこれ書いていても、思慮浅く人命を奪う者への憎悪はいかんともし難い。
本当に世の中は嫌な事件だらけだ。
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「賢人のお言葉」
 
「人間は自分の現在と未来によってしか、自分の過去を償うことが出来ない」
 ヘンリック・イプセン
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