トップ  >  感想  >  他にもこれ観ました ~2月編(上) 

他にもこれ観ました ~2月編(上) 
2018年02月20日

 362632_004.jpg
「ロング、ロングバケーション」

50年以上も連れ添っている夫婦の夫ジョン(ドナルド・サザーランド)と妻のエラ(ヘレン・ミレン)は、ある日突然、年季の入ったキャンピングカーでボストンの自宅を飛び出した。
目指すは2600キロ先のフロリダのキーウェスト。
文学教師だったジョンが愛してやまないヘミングウェイの生家があるのだ。

しかし、エラは末期ガンで、医者からは「生きてるのが不思議なくらい」というところまで進行している。
片やジョンはアルツハイマー病のために日に日に記憶が失われていく。
本来はエラは入院し、ジョンは施設に入る予定だったのに、車を運転して旅に出たと知った息子のウィル(クリスチャン・マッケイ)はただただ呆れるしかない。

道中さまざまな出来事がありながらもキーウェストに到着した二人の旅はいよいよクライマックスを迎えようとしていた・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
予告編を観れば、大抵の人はコメディ映画かと思うでしょうが、予想外に重い話です。
コミカルなエピソードもあるロードムービーですが、やっぱり末期ガンの奥さんと認知症のご主人の話ですから、どうしても目の前にある人生の終末のことを避けて語れません。
監督は「人間の値打ち」のイタリア人監督パオロ・ヴィルズィというのも異色ですし、ヘレン・ミレンとドナルド・サザーランドという名優の共演ともなれば、お気楽なお笑いでお茶を濁しはしませんわな。

エラがキャンピングカーの運転席の下に隠してあるものは何なのか?
毎晩、日記のようなものを書いてるのは何なのか?
夫に何かを知られないようにしている妻の真意とは?
これらの謎に満ちた伏線が問題の衝撃のクライマックスにつながります。
これは賛否分かれるでしょうね。
気持ちは分からなくもないけど、もう少し何か方法がなかったのかと思いますが。
これで良かったのかな?という思いと、やりきれない思いとが混じって複雑なモヤモヤ感を抱いたまま、映画館をあとにした人は多いでしょう。
「終活」というものを考えさせられますねえ。 人生はその人のものですからね。
        

361110_004.jpg 
「祈りの幕が下りる時」

私事ですが、昨秋、病気で入院したその機会に、東野圭吾の加賀恭一郎シリーズ初期作の文庫本5冊を読んでヒマをつぶしました。
加賀恭一郎シリーズは短編集の『嘘をもうひとつだけ』以降から読んではいたんですが、それ以前のは「いつかは読まねば」と思いながらも未読のまま。
『卒業』『眠りの森』『悪意』『どちらかが彼女を殺した』『私が彼を殺した』
読んでみたら、なぜもっと早く読まなかったのかと後悔するほどの傑作ぞろいですね。
特に『どちらかが彼女を殺した』は面白かったですねえ。

総合的に加賀シリーズは『赤い指』が個人的には最も好きですね。 『新参者』もいいですが。
さて、『麒麟の翼』以来6年ぶりとなる加賀恭一郎の映画は原作10作目の『祈りの幕が下りる時』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
東京葛飾で滋賀県在住の女性の絞殺死体が発見される。
同居していたと思われる男性・越川が行方不明となり、やがて新小岩の河川敷で焼死したホームレスとDNAが一致。
絞殺された滋賀の女性・押谷道子(中島ひろ子)が東京まで出てきて会いに来ていたという同級生の演出家・浅居博美(松嶋菜々子)が捜査線上に浮上するが完璧なアリバイがあった。
押谷道子のアパートのカレンダーには日本橋川にかかる12の橋の名前の書き込みがされていたのだが、そのことを甥の捜査一課・松宮(溝端淳平)から聞かされた日本橋署刑事・加賀恭一郎(阿部寛)は驚愕する。
実は加賀の幼い頃に、家を出て仙台で亡くなった母の遺品のメモに書かれていたのも12の橋の名前だったのだ。
加賀恭一郎の過去とリンクするという意外な展開を見せる事件の真相とは・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
監督が「半沢直樹」、「下町ロケット」を演出した福澤克雄ですね。
事件の概要や捜査状況を字幕で説明するという潔さにはホォと唸りました。
決して少なくない登場人物のまとめ方や、盛り上げどころを心得た語り口の組み立てはさすがです。
原作としては特に好きな作品ではなかったんですが、映画になって観てみて「えっ?こんな感動する話でしたっけ?」と驚き。
小日向文世がまた泣かせますねえ。 子役の桜田ひよりも良かったですよ。

それに引き換え、主任役の春風亭昇太の喋り方、なんとかなりませんかな。 あれはワザと?

加賀が鯛焼きの行列に並んで毎回買えないというお約束や、エンドロールではTVシリーズの香川照之と杏のカメオもあります。
原作では「日本橋署に配属された“新参者”の加賀」としては終わったんでしょうけど、警視庁捜査一課に戻ることになった加賀恭一郎の活躍はもっと読みたいですねえ。 東野さん、書かないのかなあ?
        

362024_001.jpg 
「はじめてのおもてなし」

ドイツのミュンヘン、閑静な住宅街に暮らすハートマン一家。
教職を引退してヒマを持て余し、生活に張り合いのない妻アンゲリカ。
年齢による老いを受け入れず、いつまでも現役にこだわり続ける夫のリヒャルト。
弁護士をしている息子のフィリップは、妻から逃げられるほどの仕事中毒。
娘のソフィは31歳というのに未だ自分探しを続ける大学生。
フィリップの12歳の息子バスティは、ヒップホップとゲームに夢中で、ついつい禁ワードが口を突く。

ある日、アンゲリカは家族の前で宣言する。 「難民を一人受け入れる」
リヒャルトの猛反対をアンゲリカが押し切って、家族は一人のナイジェリア難民・ディアブロを我が家に迎え入れた。
ディアブロは少しづつ慣れていくが、テロに怯える近隣の住民がデモを起こしたり、ソフィにつきまとうストーカーとディアブロが喧嘩沙汰になったりとハートマン家の日常は波乱続き。

ただでさえバラバラな家族は一人の難民青年を救うはずが、思いもよらぬ騒動の中で自分たちの問題に向き合いはじめていく。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今の御時世のせいか、難民を題材にしたヨーロッパ映画が多いですねえ。
しかし、この映画は難民の苦労を語るのではなく、難民問題に直面して右往左往しているドイツをはじめヨーロッパ全体に向けたメッセージにもなっています。
イスラム原理主義者によって自分の家族を失ったディアブロの、「家族」というものに対する純粋な概念が、問題だらけのハートマン一家に救いをもたらすところが面白く、家族再生のストーリーに難民の視点を介入させたアイデアが秀逸です。
難民を救うはずが救われる。 どこの家庭にもありそうな問題が、「なんだ、そんな些細なことで」と、光が射すように払拭されていくと同時に、難民に対する向き合い方にもちょっぴり考えさせてくれます。
「この危機的状況を乗り越えたらこの国の目指す方向が見えてくる」・・・・
ハートフルで深い、ドイツらしい社会派コメディです。
        

362436_002.jpg
「THE PROMISE/君への誓い」

「ホテル・ルワンダ」のテリー・ジョージ監督が第一次世界大戦下にオスマン帝国で起きたアルメニア人への大量虐殺事件を描いたヒューマンドラマ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
トルコ南東部のアルメニア人の村に生まれ育った青年ミカエル(オスカー・アイザック)は本格的な医学を学ぶために、村の裕福な家の娘マラルと婚約し、その持参金で首都コンスタンチノープルの医科大学に入学する。
伯父の家に下宿しながら華やかな都会暮らしを味わい、家庭教師のアナ(シャルロット・ルボン)の魅力にも惹かれていくミカエル。
故郷に残してきた婚約者に本当の愛があるとは胸を張れないミカエルは、アナにアメリカ人ジャーナリストのクリス(クリスチャン・ベイル)という恋人がいるにも関わらず、彼女への思いが募る。
そんな中、第一次世界大戦が始まり、トルコも参戦。
アルメニア人への弾圧も激しくなり、ミカエルは強制労働へと送られる。
からくも脱走したミカエルは故郷へと逃げ込むがトルコ軍が村で恐ろしい虐殺を始めた。
身重の婚約者がいながら、アナとも思わぬ再会を果たしたミカエルにさらなる悲劇が待ち受けていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
歴史ドラマは史実を伝えることに加えて、映画ならではのフィクションの味付けとして恋愛ドラマなどを盛り込んだりしますが、本作もどちらかというとドラマ部分にウエートがかかっています。
トルコによるアルメニア人の大量虐殺という悲惨な歴史は、この映画を観る前に得た少々の予備知識や、あとでパンフレットにも目を通すことである程度は把握します。
しかしこの映画では、観客が備えてきた予備知識に見合うか、あるいはそれを超えるほどの史実の描写があったかどうかは疑問です。
恋愛ドラマを中心に持ってきているので、我々がもっと知りたい歴史も、主要人物の行動の範囲内での出来事に限定されていて十分ではありません。
歴史に興味のない人も引きつけたいという意図であることをテリー・ジョージ監督も発言してますが、興味のない人に気を使わなくてもいいんじゃないんですかねえ。
ドラマは良かったですよ。 そっちの方に気を取られることに身をまかせましたので最後までどうなるのかと気をもみました。
なんだかんだでミカエル、おまえは身勝手だぞ。
        

362028_001.jpg
「サファリ」

シマウマさんと記念写真、ハイポーズ。
シマウマさん、おとなしいねえ。 ちゃんとカメラの方を向いてくれて・・・ってな訳じゃねえんですよ。
このシマウマさん、とっくに死んでます。 死体です。
頭は石や木の枝を使って固定させてあるんでやんす。
シマウマさんを殺しやがったのは、一緒に写真に映ってるこの男女(兄と妹らしい)。
そう。 こやつらはトロフィー・ハンティングの愛好家。

動物たちが農作物を荒らしたり、地域の住民に悪さをするわけでもない。
食糧補給のために殺すという訳でもない。
ただ、趣味で殺すだけ。 毛皮や頭部のハクセイのコレクションを得るため。

アフリカの観光レジャーの一環として、近年愛好家が増えているトロフィー・ハンティング。
なぜ、彼らは動物を不必要に殺すのか? 動物を殺戮することになぜ魅惑されるのか?
このドキュメンタリー映画は、トロフィー・ハンティングの全貌を見つめながら人間の倫理観を問うた問題作です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
余計なナレーションは一切入らず、ただただカメラはトロフィー・ハンティングを楽しむ一行たちに付いてまわって、ありのままを撮影してます。
父親と息子らしきハンター。 ハンティングのガイド。 現地人。 犬。 
この4人+1匹がサファリに出て、獲物を探し、やがてヌーを発見して撃ち殺して、記念写真を撮るというオープニング。
この他にも、ガゼルを殺すドイツ人夫婦や、先ほどのシマウマ、そしてキリンを殺す夫婦も出てくる。
双眼鏡を覗きながら、みんなヒソヒソ声で話し、「あそこにいるぞ」とか「肩を狙うんだ」などと言いながら、ライフルを構える。
編集で音響効果に手を加えてるのか、それともナマ音か、銃を撃つ時の音がハンパなくでかい。 どのシーンも、ライフルの発射音は心臓に悪いぐらいでかいのです。 映画館ではビクッとなってる人もいましたよ。
それにしても、肉眼では分からないほど遠くにいる動物を一発で仕留めるハンターの腕前が凄い。
そして死体を探して見つけたら、親子、または夫婦が抱き合って喜びあい、記念写真を撮る。

映画は動物愛護を掲げたり、ハンターたちを批判する内容ではありません。
ハンターの人たちも、よく出演してくれたなとは思いますが、映画はただ淡々とハンティングの様子をカメラで追い続け、さらには彼らの意見を一方的に流します。
そのうえで、観客に考えていただこうという趣旨のようです。
グロいシーンも多々ありますが、キリンを殺すシーンは衝撃ですね。
死んだのかと思いきや、近づいたら首をグルンと回して、撃った本人の女性がビックリするところがなんとも・・・
やがて息絶えたキリンの首がグニャ~ッっとなってる映像もキツいですね。

獲物をピックアップトラックで運んで解体するシーンもありますが、作業するのは現地の人。 これも収入源として成り立ってるんだろうね。
シマウマの皮をベロンと剥がしてカーペットのようにたたんでいく・・・・
キリンのお腹を裂くと、飛び出した臓器が風船のように膨らむ・・・(肺?)
もちろん長い首もバッサリ斬りおとされる。

彼らは言う。
「殺すという行為は小さな一面に過ぎない。 動物のための救済に近い行為だ」
「病気の動物や高齢で衰弱した動物を殺すことで我々は動物の生態系の維持を助けているんだ」
「殺すと言われるのは心外。 殺すじゃなくて“仕留める”が正しい」
「私たちは通常の観光客が2ヶ月で使う費用をたった1週間で使っている。 ハンティングはすべての者に利益をもたらしている」
「ハンティング禁止なんてどこかに書いてあるか?動物を殺す理由をなぜ説明しなきゃならない?」


法律に背いてるわけじゃないし、お金だって払っている。 ああそうですか。だから何をしたっていいじゃないかと?
まあ、こちらもとやかくは言えない。 殺すまでいかずとも、動物を“虐げている”という広い概念で言えば我々も似たようなことをしてるからね。
皮革製品とか動物園とか。 そんなこと言い出したらキリがないけど。
でもなあ。 動物を撃ち殺したその場でキャッキャと喜ぶ姿は、シンプルに変ですぜ。
        

354470_001.jpg
「アバウト・レイ 16歳の決断」

2016年の1月に公開予定されていたのが無期限延期状態となっていた本作。
お蔵入りにならずに公開されてなによりです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ホルモン治療を受けて、身も心も男になるのだと決心した16歳のトランスジェンダー、レイ(エル・ファニング)。
もちろん、これには親の承諾のサインがいる。
女手ひとつで育ててきた母マギー(ナオミ・ワッツ)はレイの気持ちを尊重しつつも、いざ同意書を渡されると心が揺れる。
レズビアンの祖母ドリー(スーザン・サランドン)の気楽で的外れなリアクションもマギーはイライラするのだが、それよりも憂鬱なのは、レイの父親である別れた夫クレイグ(テイト・ドノヴァン)のサインももらわねばならないことだった。
一刻も早く男となって、自分がスカートを履いてた少女時代を知る人が多いこの街を出たいレイは、マギーから「焦らないって約束よ」と言われても気がはやる。
今は郊外の豪奢な家で再婚相手と暮らしているクレイグを尋ねたマギーだったが顔を合わせるなり案の定ケンカになり、同意書のサインはせずじまい。
業を煮やしたレイは直接クレイグに会いに行くが、父と別れる原因になった母の秘密の過ちを知って絶望する。
男になりたいレイの願いは果たして叶うのか・・・・・ 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アメリカで2015年9月の公開を間近に控えていた本作は、それに先がけてトロント映画祭に出品されたのですが、ことのほか評判が悪く、配給権を持ってたワインスタイン・カンパニーが再編集を命じて公開延期。
今は業界から追放されたセクハラ大魔王のハーヴェイ・ワインスタインが直々に命じたかどうかは知らないけども、作品の手直しのために、もちろん日本での公開も流れてしまったという訳。
で? その甲斐があったのかどうか。
本国ではやはりウケがイマイチのようですが、個人的にはそんなに悪くはないと思います。
トランスジェンダーの映画となると、大体はその本人中心の話になるもんですが、本作は周りの大人がバタバタしてしまう内容に比重がかかっています。
トランスジェンダーをどうこう語る内容ではなく、ナオミ・ワッツ演じる母親がちゃんとしてりゃあ何の騒動も起きない話ではあります。
1時間半というコンパクトさを思えば、もう少しレイに対しての描写をに時間を割いて掘り下げても良かったかもしれませんが、まあまあ楽しめましたよ。
エル・ファニング、ナオミ・ワッツ、スーザン・サランドンという三世代の女優のアンサンブルにだいぶ救われていますが。
スポンサーサイト

スリー・ビルボード | トップページへ戻る | RAW ~少女のめざめ~

このページのトップに戻る

コメント

このページのトップに戻る

名前
題名
メールアドレス
WEBサイト
 
コメント
パスワード
  管理者にだけ表示を許可する

このページのトップに戻る

トラックバック

このページのトップに戻る

プロフィール

オハラハン

Author:オハラハン
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

カテゴリ

ご意見・ご感想はこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター

ブロとも一覧

月別アーカイブ

07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02