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ブレードランナー 2049
2017年12月07日

T0021551p.jpg1982年のSF映画「ブレードランナー」は史上に残る不朽の名作として名高いが、実際のところ、日本で公開された当時、興行的には目も当てられないほどの大コケだった。
一応は「SFアクション」と銘打ちながらも、内容は全く地味で、抑揚に乏しい文学志向のストーリーが観客には全くウケなかったのである。

「SF映画」には「派手」という既成概念が居座っていて、小難しいストーリー性よりも映像だけで誰もが理解できる明快さを観客は求める。
「ブレードランナー」はそこを真逆に行ってるせいもあって、世界観に取っつきにくいまま終わってしまった人も多いのかもしれない。

それでも一部には熱狂的なマニアもいて、ビデオが発売された時はレンタルも含めて爆発的なセールスを記録しているのである。
こんなにも隠れファンがいて、なぜヒットしなかったのかが不思議なくらいで、これぞ「ブレードランナー」がカルト的名作として語られる所以でもある。

個人的には、言われてるほど難解な話ではないと思う。
どちらかといえばチャンドラーのハードボイルド小説を読んでるような感覚でストーリーを追う映画だ。
まさにSF版フィリップ・マーロウ。 シブいダンディズムを伴った愛と生命のフィルムノワールである。。
ビジュアル面に関しても、多くのSFに有りがちなキラキラした舞台装飾は皆無であり、退廃的でシックな近未来世界が「攻殻機動隊」などをはじめ、後続のSF作品に影響を与えたという点でも偉大な映画である。

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フィリップ・K・ディックの小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」をリドリー・スコット監督が映画化した先鋭的傑作「ブレードランナー」の時代設定は2019年。
現実時間では再来年である。 この年には遺伝子工学の発展により、人間と見分けのつかない人造人間「レプリカント」が製造され、宇宙開拓の奴隷労働などに送り込まれているという世界になっている。

やがてレプリカントに感情が芽生えて反乱が多発。
人間社会に紛れ込んだレプリカントを「解任(処刑)」する任務を負ったのがブレードランナーと呼ばれる専任捜査官である。
危険な反逆レプリカント4名の解任を任されたブレードランナーのリック・デッカード(ハリソン・フォード)はレプリカントの創設者の秘書レイチェル(ショーン・ヤング)と出会う。
レイチェルもまたレプリカントと見抜いたデッカードだが、人間との境界線上で苦悩する彼女に惹かれながら、反逆レプリカントのリーダー、バッティ(ルドガー・ハウアー)と最後の闘いに挑んだのちにレイチェルと共に姿を消したのだった。

前作公開から35年。
その間、何度か噂に上った続編製作が現実となった。 なんと長い道のりだっただろうか。
製作リドリー・スコット、監督に「メッセージ」のドゥニ・ヴィルヌーヴを迎えた新たなる「ブレードランナー」の物語が刻まれる。

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2020年 : エルドン・タイレル博士を創設者とするタイレル社が開発したレプリカント。
当初は安全装置として、わずか4年の寿命に設定されていたが、博士の死後、タイレル社は寿命制限のない「ネクサス8型」を製造・流通させる。
2022年
: 西海岸でレプリカントの反乱による大停電が発生。 アメリカ国内の電子データが破壊され、財政や金融市場が破綻し、世界的な食糧危機を招く。
2023年 : 政府はレプリカントの製造を禁止し、タイレル社は倒産。 ネクサス8型はすべて解任の対象となった。
2025年 : 天才科学者ニアンダー・ウォレスは遺伝子工学による合成食料の技術を無償で公開し、食糧危機を終焉させる。
2028年ウォレスが、倒産したタイレル社の負債を買い取る。
2036年 : レプリカント禁止法を廃止させたウォレスは、従属的かつ寿命も制御可能な「ネクサス9型」のレプリカントを開発。

そして2049年。
気候変動により海抜が上昇し、初夏でも雪が降るロサンゼルスは以前にも増して貧困と病気が蔓延し、異星への移住ができない貧しい人間たちが取り残されている世界となっている。

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ロサンゼルス警察に所属するブレードランナー、KD6‐3.7。 通称「」(ライアン・ゴズリング)。
レプリカントでありながら、旧型のレプリカントを解任する職務に就いている。
職場の人間の同僚からは「人間もどき」と蔑まれて、居場所のない孤独感に苛まれながら、人間に従属する以外の選択肢などない生き方を日々重ねてきた。

人間に創られた、人間のようであって人間ではないもの。
必要とされたのか、必要とされてないのか。 創られたのになぜ忌み嫌われるのか。 
この世界に生まれた意味は何なのか。 意味のある生き方ができるのか。
答えを求めながら彼は人間社会と折り合い、人間のごとく振る舞うことで心を満たし、人間のために目的を遂行する。

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自宅に帰れば"恋人"が迎える。
ジョイ(アナ・デ・アルマス)は、ウォレス社が一般家庭用に提供しているAI搭載のホームオートメーションシステム。
ホログラムの女性の姿で応対し、ユーザーの反応や周囲の環境に瞬時に適合して、あたかもそこに実在してるかのように振る舞う。

そんな実態のない存在でも、には唯一の心の安らぎである。
彼女はの傷ついた心をほぐし、いたわり、包みこむ。

自分は人間ではないが彼女も人間ではない。 触れることすら叶わない。
それでも愛しい人と共に語らい、時間と空間を共有できること、人間のような在り方を得られることに自分は救われるのだとは思う。

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は一人のレプリカントを解任した。
カリフォルニアの農場で線形動物の養殖を行っている農夫、サッパー・モートン(デイヴ・バウティスタ)。
元衛生兵で、形式番号NK-68514のネクサス8型のレプリカントである。

「どんな気分だ?同類を殺すのは」
「同類を解任することはない」
型は違うが、確かに同類といえば同類だ。
だがやはり違う。
片や、仲良しだった人間の女の子を襲う暴漢を殺してしまった男。
片や、人間に取り入り、命令を疑うことなく実行する男。
にとって、サッパー・モートンはうらやましいほどに人間味の匂いをさせていた。

「おまえら新型がそんなクソな仕事で満足してるのは、奇跡を見たことがないからだ」サッパー・モートンは言う。
奇跡とはなんだ? 俺らのような存在でも人間になれるということか?
そんなものはまやかしだ。
こうしては解任の仕事を一つ片づけた。

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だが、モートンの家の近くにある一本の木の根元に一輪の花がそっと置かれていたのを見たは何かを感じた。
花が生えて枯れるような場所ではない。
まるで墓標に供えられたかのように、ささやかなオレンジ色の花びらが横たわるその意味は・・・
この下には何かがある。 サッパー・モートンが命を賭してでも守ろうとしたものが。

その後の調査で、土の下から不審な箱が発見され、中にはレプリカントの骨が収められていた。
30年前に埋葬されたらしいその骨は女性のレプリカントであり、驚くべきことに帝王切開の痕跡があり、出産時の合併症で亡くなったことが判明する。

レプリカントが妊娠し出産・・・・ 有り得ないことだった。
これがサッパー・モートンが守ろうとしていた"奇跡"なのか。

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ロサンゼルス警察特捜部司令、ジョシ(ロビン・ライト)。
の直属の上司であり、マダムと呼ぶ。

ジョシはレプリカントの繁殖と子供の存在の可能性が世界の秩序の崩壊を招くとして、にその子供を見つけ出し、全ての事実を抹消する任務を与える。
「この世には秩序の壁がある。 その壁がなくなれば戦争が起きる」

子供を殺すのか・・・
創られたものではなく、生まれてきた者。  たとえレプリカントのお腹の中からだとしても、愛されて望まれて生まれたそれはレプリカントとは違うのではないのか。
は動揺する心を自分でも不思議なほどに感じていた。
「生まれた者には魂が。 生まれたものの解任は初めてで・・・」

マダムの前で命令に抵抗するような素振りをわずかに見せてしまった。
どう思われたのだろうか。 返ってきたマダムの言葉は「あなたは魂がなくても大丈夫」
魂を欲しがってると言われればそうなのかもしれない。
もとより手の届かないものを望むほど身の程知らずではない。
自分は自分のできることをするだけ。

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は骨と共に残された毛髪を手掛かりに、旧型レプリカントのデータを調べるためにウォレス社に赴く。
応対したのはラヴ(シルヴィア・フークス)という女性の代理人。
彼女もまた新型レプリカント、ネクサス9型。

魂など必要としていない、覚悟あるレプリカントだとは直感した。
この女は身体も精神も強い。 命令に対する実行力とその闘志が、を見えない圧で呑み込む。

ラヴはタイレル社の機密アーカイブにアクセスして、2020年の大停電に損なわれたデータを復元。
その骨は30年前にブレードランナーのリック・デッカードと共に忽然と姿を消したレプリカント、レイチェルのものだと判明する。

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ウォレス社の代表である盲目の科学者ニアンダー・ウォレス(ジャレッド・レト)。
遺伝子組み換え食物を開発して世界の食糧危機を救い、その功績をバックにタイレル社の負債を買い取ってネクサス9型の開発を進める。
レプリカント禁止法を廃止に持ち込み、労働力であるレプリカントの増産で、地球外植民地の開発を増やして全宇宙の支配をもくろんでいる。

「天使は贈り物を持たずに神の国に入ることはできない」
レプリカントが子供を産めることができるのなら・・・
増産につながるレプリカントの生殖技術を是が非でも手に入れたいウォレスは、ラヴにレイチェルの子供を見つけてくるように命令する。

その後、ラヴはロサンゼルス警察に忍び込み、遺骨を盗み出す。

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デッカードの行方を追うは、再びモートンの農場へ向かい、箱が埋められていた木の根に掘られた数字を発見する。
"6 10 21"
その数列は自身が記憶する誕生日(製造された日)と一致していた。
2021年6月10日。
レイチェルが帝王切開の合併症で死んだ日。 つまりこの数字は、子供が誕生した日でもあることを意味する。

これはまさか偶然なのか・・・
レイチェルから産まれた子供というのは・・・・・

自分が捜し出そうとしているものは、見つけてはならないものか、それとも自分の手で見つける運命にあるものなのか・・・
は胸騒ぎを抑えられなかったが、その先を知りたい衝動が彼の背中を押していた。

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レプリカントにはあらかじめ精神安定用として、創られた記憶が移植されている。
本物の人間の記憶を移植するのは違法で、技術者が自由に創造した物語の記憶を移植するのである。

にももちろんその記憶があり、彼の場合は少年の頃の記憶である。
小さな玩具の木馬をいじめっ子と取り合いになり、それを奪った彼は、いじめっ子に追いかけられた。
孤児院まで逃げ切った彼は木馬を焼却炉の中に隠したのだ。
玩具の木馬の脚の裏には、"6 10 21"と刻まれていたのだ。

作り物の記憶であるのに、その数字がモートンの農場にある木の根で見つけた意味は遥かに重い。
もしその記憶が作り物ではなく本物だとしたら・・・

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は署内のDNA保管室で、2021年6月10日の出生記録とDNAの記録を調べ、同一のDNAを持つ男女の2名の記録を発見する。
2名とも同じ孤児施設にいて、「女児は死亡、男児は消息を絶った」ということを知る。
そして今は廃墟となった孤児施設へ向かったは、記憶をたどって焼却炉の中から玩具の木馬を見つけ出す。

これは何を意味するのか、は混乱する。
自分の記憶ならば自分はなぜ純粋なレプリカントだと思っていたのか、なぜここにいて、なぜブレードランナーをしているのか。
自分が生まれた後に何があったのか。
自分が持っている記憶は本当に自分の記憶なのか。
もしこの記憶が仮想のものではなかったとすれば、それはの運命を大きく揺さぶるものであることを意味していた。

ジョイが製造されたものではなく生まれたものであることを祝福するのだが。

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レプリカントに移植するための記憶を創っているステリン研究所で所長を務めるアナ・ステライン(カーラ・ジュリ)は最高の記憶創造者。
免疫不全のために8歳の頃からガラス張りの広い部屋の中で一人暮らしている。
彼女の想像力が創り出す、あまりに精巧でリアルな記憶がレプリカントの精神を安定させている。

はステリン研究所に赴き、自身の記憶をサーチしてもらい、真贋を確かめる。
アナ「これは本物の記憶」と言う。

本心としては「これは作り物だ」と言ってほしかった。
自分が製造されたものではなく、父親もいて母親もいて、愛されて生まれた存在だとするならば、その事実は同時にのこれまでの人生を否定するものであった。

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「おまえは奇跡を見たことがない」と言ったサッパー・モートンをこの手で始末したのだ。
デッカードの子を産んだ母親を、生まれた子供を労わった恩人を自分は・・・・・
レプリカントとして生き、ブレードランナーとして生きてきた、魂のない人生がそれこそ空虚なものであったのだ。
そして彼の人生は、抹消されるために追われる運命と化したことを冷酷に告げている。
「ちくしょーっ!」
は呪われた運命を心の底から罵倒するしかなかった・・・・・

警察署内に入るにはいかにでも正常性試験をパスしなければ入れない。
絶対服従のレプリカントの精神状態をチェックするためだが、は試験に失格となる。
「今回だけよ」と、ジョシの部屋に通されたは、子供を見つけて処分したと虚偽の報告をして帰宅する。

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の嘘をアッサリと信じたジョシのもとにラヴが現れる。
「彼はどこ?」

子供は生きていて、はそれを知っている。 ジョシは瞬時にそれを悟った。
ウォレス社もを追っているのだ。
まがい物の生命で秩序の壁を破壊する逆賊にだけは屈してはならない。
ましてやレプリカントに命令されてひざまずくくらいなら、この命などいくらでもくれてやろうとジョシは腹をくくった。

ためらいなくジョシを殺害したラヴは、端末からの居場所を突き止める。
2022年に大停電を引き起こした高高度核爆発により、今は誰も立ち入らない砂漠の街ラスベガス・・・・

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孤児院の廃墟から見つけた玩具の木馬から大量の放射性物質トリチウムが検出されたことから、デッカードがラスベガスにいることを確信していた。
木馬を作ったのはおそらくデッカードに違いない。

デッカードに会わって聞かねばならない。 
自分が何者であり、何があったかを。 この30年間はデッカードにとって何だったのかを。

無為にレプリカントを狩るだけの人生などオサラバだ。
もうマダムに会うこともなかろう。
ブレードランナーのKD6-3.7はたった今自ら「解任」した。
これからウォレス社や他のブレードランナーが自分を追ってくる人生が待っている。
それでも今は。 は真実を知りたかった。 奇跡というものを知りたかった。

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廃墟となったホテルに彼はいた。

最初に現れたのは飼い犬らしき黒い犬だったが、おそらく人造動物であろう。
このご時世に本物の動物はほとんど存在しない。

「チーズを一切れ持ってないか?」と言って姿を現した、かつての凄腕のブレードランナー、リック・デッカード(ハリソン・フォード)。
年季の入った旧式のブラスターが時の流れを感じさせる。
デッカードの警戒心はやけに強く、話を聞くにはしばらく時間を要した。
こんなところまで来て、大先輩によって自分が解任されたらシャレにもならない。
大先輩どころか、もしかしたらこの人は自分の・・・

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プレスリーの『好きにならずにいられない』が好きだと言う。 
なんてまたベタな大昔のポップスだと思いながら、そういう自分はシナトラの「サマー・ウィンド」が好きだ。 あまりヒットした曲ではないが。
ブレードランナーは音楽の好みも似るのだろうか。 それとも彼が自分ともっと深い繋がりがあることの証しなのだろうか。

聴きたいことは山ほどあった。
デッカードは重い口を開く。
身ごもったレイチェルを「仲間」に託し、当局の出生データの改ざん方法を教えたのだと言う。
そして生まれた子供とは一切関わらずに他人として過ごしてきた。
「時には誰かを愛するなら他人でいた方がいい」

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を追跡してきたラヴ の急襲を受け、デッカードが連れ去られてしまう。
抵抗を試みるだったが、足くせの悪いラヴのかかと落としを受けてあっけなく昏倒。

“エマネーター”(ホログラフィデータを外に持ち出せる携帯機器)で、に同行していたジョイも、ラヴにエマネーターを踏みつぶされて消失した。
どこまで足くせの悪い女なのだと薄れる意識の中では毒づく。
ジョイは消える寸前、「愛してる」とつぶやいた・・・   俺もだ・・・

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気がついたの前に現れたのは、「レプリカント解放運動」というレジスタンス・グループの女性リーダー、フレイザ(ヒアム・アッバス)だった。
フレイザに仲間に加わるように言う。
やがて彼女の口からは衝撃の事実を聞かされることになる。

2021年6月10日生まれで同じDNAを持つ男児と女児・・・
女児は死亡し、男児だけがどこかで生きている・・・の、はずだった。
男児など最初から存在してはいなかったのだ。
生まれたのは女児だけ。
子供を守るために活動家たちがデータを改ざんしたのだ。

すると自分は・・・ あの記憶は・・・
とてつもない虚無感がを襲う。
動揺するフレイザは憐れむ。
「自分だと思った?」 

の記憶はレイチェルの娘の記憶であり、これも意図的に移植されたものだった。
にはその娘が誰なのかはすでに察した。 最近彼女と会ったばかりなのだ。
デッカードウォレスに拉致され、女児や解放運動のメンバーの情報が漏れることを恐れたフレイザデッカード殺害を依頼する。
「大義のための死は何よりも人間らしい」

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自分にとっての大義とは何だろうかとは考える。
レプリカントの未来を守ることか。
人間が望む社会の秩序を守ることか。

元から自分は誰かの人生を抱えて生きてきたのだ。
魂をひた隠すための空き箱として。
異類に服従し、同類を手にかけてきた背徳者に今さら偉そうな大義を語って生きていくことはできないが・・・。

自分は人間ではないか。 人間になれるのではないか。
そんな夢想を描いたこともあった。
それはおとぎ話だけの迷いごと。
嘘にまみれた2049年のピノキオに妖精は微笑まない。

だが、これまでの人生を意味あるものにし、大義に殉じて人間らしくなれるならば、の出した答えはシンプルだった。
デッカードを死なせてはならない。
愛したレプリカントの遺した子の父親として、デッカードが果たさねばならぬ義務を見届けるのだ。


一方、ウォレスの尋問に屈しなかったデッカードは、拷問にかけられるために植民地へ輸送されようとしていた。
空港へと駆けつけたは再びラヴとの死闘に挑むのだった。
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監督がドゥニ・ヴィルヌーヴであり、リドリー・スコットも製作に噛んでるので、ヘタな続編は作らないだろうという期待は当たっていた。
地味なストーリー展開だった前作を踏まえて、一見の客層を考慮して、チャラい娯楽作品に逃げるというようなことをやらかしても不思議ではない。 そういう続編映画は多い。
だがこの「ブレードランナー」の三十数年越しの続編は、予想以上にブレておらず、ちゃんとしたものを作ってくれたのが嬉しくもあり、驚きでもある。

公開から1か月以上経過して、今頃この映画の記事を書いているのは、初見の際の感動冷めやらず、公私ともにクソ忙しいスケジュールを強引にこじ開けて、つい先日リピートしてきたためである。
やっぱりいい映画だ。
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前作を観ていないとダメですかと問われれば、正直なところ不利である。
観ておいた方がいいのだが、その前作を観て「これは自分に合わない」と思ったら、この「ブレードランナー 2049」にしてもオススメはできない。
アッシも、自宅にある「ディレクターズカット 最終版」を引っ張り出してきて、久しぶりに鑑賞してから続編の本作を観たのでこれが大正解だったと思う。

2時間43分という長尺に加えて、お世辞にも軽快なテンポとは言い難い語り口。
予備知識のヨの字も知らずに観たら、まずはユル~いテンポに波長が合わないこと必至。
派手なシーンだけをつないだ商業的予告編につられて、息つくヒマもないようなギラッギラのエンタメ・アクションでスカッとしたいと勘違いしながら映画館に行ってドツボを踏んだお客さんも少なくないだろう。
真夏の太陽の下でグイッと飲み干す炭酸飲料ではなく、窓から夕陽を見ながらチビチビやるブランデーと例えたいのがこの映画でもある。
オタク向けとまでは言わないが、少なくともアート志向に近い、大人のためのフィルム・ノワールだ。

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前作の世界観を損ねていない点は大いに感心したし、それでいながらストーリーは少々エンタメ寄りになりつつも、アーティスティックな表現は前作を遥かに凌駕している。

人間になれなかった一人のピノキオが、自分が何者であるかを見つめ、いかにして己の生き方を見出していくかという、魂の彷徨の物語をサスペンスフルかつスタイリッシュに紡ぎあげた、一続編にしては出来すぎなほどの仕上がり。
その物語には、人間であろうがなかろうが、「どう生きたか」を問う、普遍的な人生訓が横たわっている。

「人間らしく」とは何か。 そもそも人間らしいことが善か、それとも悪か。
姿かたちは製造できても、その中に宿る魂までは作れない、
いかに生きるか、いかに生きたかで顕在化する魂は一体どこから生まれてくるのだろうか。
我々はこの映画を観ながら、生命の意味や、人として生まれて生きて死ぬ人生に秘められた真実を、という人物と共に求め彷徨う旅に出るのである。

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デッカードがロイ・バッティに生かされたように、またしても彼は一人のレプリカントの命と差し替えによって人生の指標を示される。
デッカードとレイチェルの愛の結晶・・・ その親子対面のラストシーンから湧き上がる感慨深いものは、やはり前作を観ていてこそなので、改めて本作は前作のチェック必須であることを言っておこう。

デッカードを見送った後、は建物の外階段に体を横たえる。
ラヴとの死闘で負った傷から血が流れ続け、致命傷となっていた。
レプリカントには元々、熱いとか冷たいとかの感覚には疎いのかどうかは不明であるが、大量に出血したせいもあってか、そこではようやく雪の冷たさを実感するのである。
彼が最後の最後に一瞬だけ人間になれた奇跡のひとときである。
その雪の冷たさを体全体で受け止めるかのように天を仰ぎながらは命を全うする。
この美しいラスト。 2回目に観た時には泣きそうになった。

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もっと深読みできる描写は多々あるが、そこを掘りだすとキリがないので。
元々デッカードがレプリカントであるか否かの論争にはアッシは正直そんなに興味はないし。
人間であってほしいなあとは思うが。



「賢人のお言葉」
「それをやりに俺が生まれてきた。 そのことだけを考えればよい」
 アーネスト・ヘミングウェイ
(「老人と海」)
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