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他にもこれ観ました  ~9月編(上)
2017年09月18日

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「関ヶ原」

1600年9月15日、徳川家康率いる東軍と石田三成率いる西軍が激突した天下分け目の一大決戦「関ヶ原の戦い」。
日本の歴史上、最も有名なこの合戦を映画化した作品はこれまで皆無だったというのが不思議ですね。

「クライマーズ・ハイ」、「日本のいちばん長い日」などの名匠・原田眞人監督が司馬遼太郎の原作を基に撮り上げた歴史大作ですが、これはなかなかの本格的な作品です。
原作は未読なので想像していたのとは違いましたね。 もっと合戦そのものをガッツリ描いているのかと思いきや、合戦に至るまでのプロセスを濃密に描くことに時間をかけたドラマになっています。

まさか歴史には、まるで興味がないけど好きな俳優さんが出てるからという理由だけで観に行く方はいらっしゃらないとは思いますが、これはある程度、事前の勉強が必要ですね。
「関ヶ原の戦い」があったことは知ってるぐらいの予備知識でもしんどいでしょう。
なによりセリフの数も膨大ですし、他の批評でも言われてるようにセリフが少々聴き取り辛いシーンも目につくのは確かです。
なので、詳しくない人は「何がなにやら?」でしょうし、詳しければ詳しい人ほど入り込めると思います。

それでもですね。 歴史物はどこを切り口にするかが分かれ目。
原作のどこを端折ってどこを強調したかは分かりませんが、個人的には架空の人物の女忍者・初芽は原作に囚われずにバッサリ切ってもよかったんじゃ?と思うんですがね。
重要人物にもっと焦点を当てて欲しかったなと。
小早川秀秋の心情も曖昧ですし、上杉景勝や宇喜多秀家の扱いも極薄です。
その分、島左近や大谷刑部にウエイトがかかっていますが。
史実的にもいろんな思惑を持った人物が入り乱れるので、2時間半という時間でもやっぱり短いです。
ずいぶん昔、TBSで放送された「関ヶ原」は3日連続で6時間半。 やっぱりこれぐらいの時間が必要でしょう。映画じゃ無理ですけどね。
それだけやっぱり難しい題材だと痛感しますね。
        

無題 
「パターソン」

ジム・ジャームッシュが特に好きってわけじゃないです。
基本的にはストーリーで映画を選ぶことが多いので、ジムジャム先生のポエムでストーリーレスな映画には心から浸れることができないのです。
でも、観てるやんけ。 そうですねん。 なんでか観てしまいますねん。
この作品もね、バスの運転手をしている主人公の何気ない日常を淡々と綴っているだけで、これという起承転結もなく映画的な出来事が起こるわけじゃありません。
ずーっとね、淡々淡々淡々淡々淡々淡々淡々淡々淡々淡々淡々淡々ってな調子ですわ。
「おまえ、これのどこがおもろいんじゃ」っておっしゃる貴兄もおられるでしょう。
それもまた正しいと思います。
「あんた、これの良さが分かんないの?」と言える人がうらやまちぃのぉ。

何度かでもジムジャム先生の作品をご覧になった方ならガッテン承知でしょうがストーリーを追うのではなく、イメージを捉えるもの。
物語がどうなるかなどは気にせずに、キャラクターの物の考え方とかを観察していた方が入り込めるでしょう。

長野県の長野さんや宮崎県の宮崎さんがいるように、ニュージャージー州のパターソンという街でバスの運転手をしているパターソン君が主人公。 演じてるのがアダム・“ドライバー”って・・・。
午前6時に起きて歩いて出社。 バスの運転手をしつつ、街の景色や人の会話などから浮かんだ詩をノートに書き綴る。
帰宅したら奥さんと飯食って、ブルドッグのマーヴィン君と散歩。
途中でバーによって一杯ひっかけて帰って、奥さんの隣でご就寝。
そんな毎日を繰り返すパターソン君の日常徒然草。

で、何に感銘を受けるかと言うと、パターソン君の何かにつけてポエムにつなげる物の見方。
何も起こらない、変わり映えしない毎日。 でも昨日と同じ日はない。
ほんの些細な瞬間に感じる美しくも愛おしい時間。
「おっ、ここがポエムだな」と詩に書くパターソン君のセンスがおもしろい。
アッシも帰ってから、ポエムを感じ取ろうという感覚で周りを見てみました。
「なるほどな」って思いましたね。 もう、ずーっとそこにある物や全く変わらない風景の中に意外ときれいな詩が潜んでるものです。

ブルーチップのマッチ箱...グレートフォールズの滝...円形模様のカーテン...カップケーキ...双子...モノトーンのギター...アボットとコステロ...映画「獣人島」...などなどジムジャム先生の「これ好きやねん」がポツポツ放り込まれてます。
パターソン君が持参するサンドイッチ入りの弁当箱がツボでしたね。
奥さんが歌う、「♪ 線路は続く~よ ど~こまでも~ ♪」もウケました。
そしてラストの永瀬正敏。 「白紙のページに可能性が広がることもある」 おおっ、またしてもポエム。
        

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「新感染 ファイナル・エクスプレス」

ゾンビ物としては久々に面白かった韓国映画。
舞台となるのは韓国のソウル発プサン行きの特急列車KTX101。
総車両20、営業最高速度305キロ。
フランスのTGVの技術を採用したという高速鉄道車両で、そのまま在来線にも乗り入れているので、日本の新幹線のシステムとはまた違います。
この列車の中でゾンビが増殖するというパニック映画なのですが、前へ前へと襲ってくるゾンビの群れと後ろ後ろへと逃げ惑う人々の「直線レース」の構造になっているサバイバルがなんといっても面白いのです。

列車止めて外に逃げたらええやんって思うでしょうが、韓国の街中がゾンビパニック状態なので、外に出るのも地獄。
このゾンビ。無感染者の姿が見えなければそれ以上そこから探し回ってでも動こうとしない特性があります。 要するにトイレに隠れるのが一番。
それと列車がトンネルの中に入ってる間の暗闇になると五感が全く効かなくなるようで、そこにわずかながらのサバイバル・チャンスが訪れるのもミソ。

列車に乗り合わせた様々な人物の人間模様の側面も描かれており、ゾンビ並みに厄介な人間のエゴの恐ろしさも加わっていくカタストロフィは終始緊張の連続。
利己主義の塊のようなファンドマネージャーの男とその幼い娘。
身重の奥さんを連れたガテン系のポッチャリ親父。
野球部員の高校生と女子マネージャー。
仲のいい老姉妹。
小心者で抜け目のない会社役員。
ソウルから逃げてきたホームレスの男。

いろいろと人間性が試される場面がやってきて、意外な人物が意外な行動を取ることも。
大半の人物が残念な結果になりますが、それほどにこの地獄は容赦なし。
ラストはちょっぴりホロリとさせられます。

それにしても、このタイトルは・・・
インパクトを重視したと言ってますが、ダジャレでインパクトは生まれません。
座布団一枚もらえるとでも思ったか? 誰がやるか!
        

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「ナインイレブン 運命を分けた日」

2001年にアメリカを揺るがせた同時多発テロ、いわゆる「9.11」。
この時にマンハッタンのツインタワーのエレベーター内に閉じ込められた人々の脱出劇を描いたサスペンス映画です。
舞台劇「Elevator」を原案とした物で、実話ではありません。

チャーリー・シーン、ジーナ・ガーション、ウーピー・ゴールドバーグ、ルイス・ガスマンらのキャストの他、往年の名女優ジャクリーン・ビセットも健在なところを見せてくれます。
実業家のジェフリー(チャーリー・シーン)。 ジェフリーと離婚調停中の妻イヴ(ジーナ・ガーション)。 金持ちの恋人に別れを告げに来た女ティナ(オルガ・フォンダ)。 妻と3歳の娘がいるバイク・メッセンジャーのマイケル(ウッド・ハリス)。 ギャンブル好きのビルの保全管理者エディ(ルイス・ガスマン)。
この5人がノースタワー(最初に航空機が激突したビル)のエレベーターに乗り合わせます。
富裕層の白人、アフリカ系、ヒスパニック系と、もろにニューヨークの縮図のようなシチュエーションです。

テロによってエレベーターが38階あたりで停止したままウンともスンとも言わなくなります。
ケータイの電波も悪いし、何が起きてるのかさえ分からないけど、これはただの故障ではないことを悟った5人は何とか、エレベーターからの脱出の方法を探ります。 とは言っても、ほとんど何もできないんですがね。
かろうじてインターコムを通じて管理室のオペレーター、メッツィー(ウーピー・ゴールドバーグ)からのアドバイスを受けながら状況を把握していくのですが、外からの救助を待つしかない、いや、そもそも救助は来てくれるのかどうかという絶望的な現実が彼らを打ちのめしていきます。

ワンシチュエーションで展開されるドラマですが、これはもう少し何とかならんかったですかねえ。
右往左往するだけが現実だというのが、そこはリアルでいいでしょう。
だからあとは人物描写のドラマってことになりますが、あざとさばかりが目につきますね。 そこがリアルじゃないんですよなあ。
なんなの?このB級臭さは。
誰の演技がとか、演出がとかいうよりも、もう全体が臭い。
スーパーヒーローが出てくるわけじゃないので、何もできない状況は結局盛り上がらず、そこを無理して盛り上げようとする悪あがきが見えます。

本当かどうかの豆知識。 乗っているエレベーターのワイヤーが切れそうだという状況が迫り、落下して下に叩きつけられる!となった時は、床に寝そべること。
こうした方が助かる率が高いのだとか。 マジですか?
        

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「散歩する侵略者」

宇宙からの侵略者によって日常がジワジワと乗っ取られていく怪奇譚。
劇団「イキウメ」の人気舞台を「岸辺の旅」、「クリーピー 偽りの隣人」などの黒沢清が映画化したもので、これはなかなか面白いです。

ほとんど田舎と言っていい地方都市。
鳴海(長澤まさみ)のもとに、数日間行方不明だった夫の真治(松田龍平)がまるで別の人格になって戻ってくるところから物語は始まります。
真治は宇宙人に体を乗っ取られており、もちろん宇宙人の目的は地球の侵略。
真治を乗っ取った奴の他に、あと2人います。 天野(高杉真宙)という若者と、女子高生の立花あきら(恒松祐里)。 この二人も宇宙人。
彼らは侵略に先駆けて、まずは人間の持つ「概念」について調査しており、自分たちが興味を持った概念を相手から奪い取ってしまう能力を持っています。
これが怖いんですね。

私たちは、例えば「あなたにとって(※※)って何?」と質問されても言葉では説明しづらいものがあります。
「自由」、「家族」、「仕事」、「自分と他人」(・・・"の"という所有の概念)、そして「愛」。
他にもいろんな概念があるでしょうが、宇宙人から「それ、もらうよ」と言われて指差されたら、その人からその概念だけがすっぽりとなくなってしまう。
肉体的な健康に直接支障は出ないのですが、性格はやはりコロッと変わります。 それもまた概念によっては千差万別で、中には引きこもりだった青年が人生の素晴らしさに目覚めてハツラツとしたりするのはいいのですが、「仕事」の概念を奪われた社長さんはちょっと悲惨ですね。
これらを見てると、人間って悪く言うと惰性で生きてるんですね。
それでも、感覚的というか抽象的なものにすぎない概念でも、心の中から失われるのはやっぱり恐ろしいですね。

この映画は、「宇宙人の侵略だ! さあどうする人類!」っていうパニックものではなく、「侵略」はさておき、異星人が人間ってなんだろう?と学び歩く物語で、ある意味いろんなものに縛られている私たちの人生の善し悪しなところを考えさせてくれる、実にユニークな寓話です。

人間の概念をよく知らない宇宙人は行動がちょっと変なので、概念収集において人間の「ガイド」を雇います。(ガイドからは奪わない)
それが真治の妻・鳴海であったり、二人の若者と行動を共にするジャーナリストの桜井(長谷川博巳)なんですが、彼らは侵略者と過ごすことによって奇妙な絆が芽生えていくんですね。
もともと不仲だった鳴海と真治の夫婦が、初めて会った時からやり直すような関係になれば、国家権力に翻弄される桜井は以前から社会のつまはじき者だった孤独感を抱えていて、自分を必要としてくれる侵略者に奇妙なシンパシーを感じていきます。 この鳴海と桜井の変化も面白いですね。


「散歩する侵略者」というこのタイトルは「ウルトラセブン」が好きな人なら、少しはビビッときたでしょう。
事実、イキウメの前川知大氏もそのイメージは意識したとのこと。 やっぱり。 これは嬉しい。
        

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「裁き」

インド映画ですが、これまた「そうくるか」みたいな一本でしたね。
カンブレという歌手の爺さんが、「お前の歌で人が自殺したぞ」と、自殺ほう助の罪に問われて裁判にかけられる話なんです。
なんでも、「下水清掃人は排水溝に顔を突っ込んで死んでしまえ」みたいな歌を歌ったらしいんですね。爺さんは否定してますが。
すると下水清掃人の溺死体がムンバイのマンホールから発見されたんだと。 「それ、おまえのせいやで」ということで法廷に引っ張り出される爺さん。
で? 真相やいかにいっ!?ってな話なのかなと思うとさにあらず。
そもそもこの映画の主人公は爺さんではなく、むしろ弁護士や検事、裁判官の方でしょうか。
もっと広く言えばインドの社会の一面や法制を、ある意味ユーモラスな感覚で捉えた社会派ドラマです。


インドの下級裁判所にはそれこそ、扱わねばならない案件が山のようにあるようで、法廷に座ってる人たちは傍聴人なのかなと思ってたら、自分の裁判の順番を待っている人でして、「ハイ次ぃ~、ハイ次ぃ~」みたいな感じで裁判をやってます。
半袖で入廷したらダメなんですね。 初めて知りましたよ。

もう見ててイライラするほど、たどたどしいというか要領よく運べない弁護士。
大昔の前例をひっぱり出してきて「懲役20年」を主張してさっさと裁判を片づけたい女性検事。
とかく公正であろうとする裁判官。
いやいやいや。 爺さんが歌を歌っただけやで?
ああ、これはこのほど我が国でも可決された「共謀罪」で引っ張っていかれるということがこういうことなのかとも思いましたが。

弁護士さんは家に帰ると何かと口喧しいお母さんにヤイヤイ言われてる。
検事さんは良きお母さんであるけれど、家族で観に行く芝居は「他州出身者を追い出せ」みたいなヘイト演劇だったりする。
そして裁判官。 この法の番人も言語障害の親戚の子に占い師を紹介したりする普通の人。
そして親戚が集まってのパーティーで疲れてベンチで寝てたら、子供にイタズラされてマジギレしたりするのであります。
こういう法に携わってる人の私生活までも淡々と描写し、我々のあまり知らないインドの側面をも見せるこの映画はかなり斬新な語り口でユニークですね。
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