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パトリオット・デイ
2017年07月14日

T0021843p.jpg 昔と比べたら、テロのニュースを見聞きする頻度が明らかに上がっている。
それだけ、いつでもどこでもテロに遭ってもおかしくない状況ということなのだろうが、それでも我々日本人は まだピンとは来ない。
そもそも、日本という国を標的にするほど、テロリストから相手にされてないんじゃないかという、妙な感覚で気を抜いているのも事実である。

テロ云々は別として、日本国内での爆弾による事件とか銃乱射事件というものが、極わずかであるのも、テロに対するリアリティが希薄になる要因の様に思う。
でも、もうそろそろ、いつかは日本でも起きるのではないかという危惧が、以前よりは頭の中にチラつくようにもなった人も少なくはないだろう。

ただし、「自分の行く所に限って」と深く考えないようにしてしまうのも、日本人の感覚として致し方ないのかも知れないが、少なくとも外国に行く時は、遺書でも残しておくぐらいの覚悟はして出かけた方がいい。
そういう時代なのだ、今は。


ボストンマラソン
アメリカの独立戦争開戦の4月19日を「愛国者の日(パトリオット・デイ)」とし、それを記念して1897年に第1回が行われ、昨年で120回目を迎えた歴史あるマラソン大会である。
毎年4月の第三月曜日に行われ、マサチューセッツ州の8つの町を走り抜ける大会で、日本人では瀬古利彦(2回)など計7人の男子が優勝している。

33キロ付近の『心臓破りの丘』は有名だが、その割に好時計が出る。
しかし、コース条件のいくつかが国際陸連の規定に達していないために、最高タイムを出しても「世界記録」には認定されないのだそうだ。

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2013年4月15日。
117回目の開催となったボストンマラソンは、かつてない大惨事となった。
午後2時45分頃。
ボイルストン・ストリートのゴール付近で爆発が起き、その12秒後にゴールから100メートルほど向こうでも爆発が起きる。
その際、沿道で大会を観戦していた3人が死亡。 ランナーを含む183人が重軽傷を負った。

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爆発物は圧力鍋に釘などの金属片を詰めて殺傷力を高めたIED(簡易手製爆弾)。
トップランナーは2時間前に大勢がゴールしていたが、スタートから4時間9分が経過していた時間帯は毎回平均して、市民ランナーが大挙フィニッシュする時間帯であり、そこを狙われたというのも怖ろしい話である。

日本でも大きく報道されたが、事件発生時の生々しい映像には、淡々とマラソンを続けているランナーもいた様子が印象深い。
それほど、警察も多少の混乱はあったのだろう。
マラソンの中止も即時という訳にはいかず、事件を知らない後方のランナーは現場に近づくに連れ、何があったのかと不安になりながらも走っていた。

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現場はあちこちで悲鳴やうめき声であふれ、爆発で吹き飛んだ肉体の一部が所々に転がっているなど、凄惨を極めた。
それでも、警官をはじめ、無事に済んだ一般の人々が負傷者を助けようとすぐさま動き、「自分に今できること」に必死になっているニュース映像が独特の感慨をもたらした。

容疑者はチェチェン移民の兄弟、タメルラン・ツァルナエフ(26歳)とジョハル・ツァルナエフ(19歳)。
4月19日。 兄のタメルランは警察との銃撃戦の末に死亡し、弟のジョハルは同日の夜に民家の裏庭に隠れていたところを逮捕された。
事件発生からわずか4日後。 それも奇しくも「パトリオット・デイ」での解決にボストン市民は大いに沸いた。

一般市民からの情報提供が多数寄せられたことがスピード解決につながったことは警察関係者も認めており、憎むべきテロに対してボストン市民が一丸となって協力した「ボストン ストロング」のスピリットは全米のみならず世界中に共感をもたらした。


あの事件から4年。
解決までの4日間に何が起きていたのか。
警察は、市民は、犯人はどう行動したのか。
「ローン・サバイバー」、「バーニング・オーシャン」の監督ピーター・バーグとマーク・ウォールバーグが3たびタッグを組んで描かれる、苦難と団結に揺れたボストンの知られざる4日間の感動の実話。

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2013年4月15日の朝。
ボストン警察のトミー・サンダース(マーク・ウォールバーグ)の気分はすぐれなかった。
彼は殺人課の私服刑事であるが、この日は着たくもない制服を着せられて、ボストンマラソンの警備に駆り出されていた。

カッとなるとつい、手ではなく足の方が先に出る。
仕事はできる男だが、上司と揉めるとその足クセの悪さが出て、何かと物を蹴飛ばす態度のペナルティとして、彼は久しぶりの制服に袖を通しているのだった。
前日の晩も、ある手配犯の家に押し入る際、ドアを蹴破ったら打ちどころが悪かった。
気分はもちろんだが、ゆうべからズキズキする膝の痛みは全く治らない。
最悪の気分でトミーは4月15日を迎えたのだった。

趣味は野球カードのコレクション。
日々の激務も妻のキャロル(ミシェル・モナハン)の笑顔が癒してくれる。
一年に一度のイベントがあるこの日は、せっかくだからキャロルにもマラソンの見物を楽しんでもらおうと、トミーは自分の持ち場に近いゴール付近に妻を呼んでいた。

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マーク・ウォールバーグが演じるトミー・サンダースに特定のモデルはなく、数人の実在の警官を混ぜ合わせた人物で、妻のキャロルも架空の人物である。
これは現場に携わった実際のボストンの警官たちの想いや行動をひとくくりに体現したキャラクターであり、キャロルも警官たちを支えた家族の象徴というキャラと解釈していただきたい。

午後2時45分。
ゴール付近で二度の爆発が起こり、一瞬にして街は地獄絵図と化す。
至る所に血だらけの人が倒れており、大人も子供も泣き叫び右往左往していた。
どうにか無線で指示を送りながら、トミーキャロルを探す。

幸いなことに妻は無事だった。
妻を帰宅させたトミーは、FBIの指示のもと、病院に搬送された負傷者への聞き込みを一晩中続けた。
ヘトヘトになって翌朝に帰宅すると、親戚連中から質問攻めに遭う。
そんな喧騒を強引にさえぎって妻と抱擁したトミーは、今までこらえていたものが溢れだすのを抑えられなかった。
「おまえを呼んだ俺をうらまないでくれ・・・」
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映画は、トミーの行動を中心に、FBI、地元警察、被害者、犯人など、様々な人物の4日間が並行して描かれる。
ここでは「捜査の推移」・「犯人の行動」・「被害者のドラマ」と大まかに分けて語っていこう。

やがて見えてくるはずだ。
この物語が警察の追跡アクションなどという単純なものではなく、愛が支える人々の強い心を讃えた感動の記録であることを。


★ 【ボストンの4日間・・・捜査】
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FBIボストン支部特別補佐官リック・デローリエ(ケヴィン・ベーコン)。
現場に足を踏み入れ、想像以上の凄惨さに愕然としながらも、デローリエは悪魔を追い詰めるための目を凝らす。

爆発付近の現場に飛び散った金属片からテロと断定せざるを得ない。
パトリック州知事(マイケル・ビーチ)やデイヴィス警視総監(ジョン・グッドマン)はイキり立つ。 そりゃそうだろう。 これがテロでなくてなんだと。

デローリエは色んな意味でクールだった。
「テロ」という言葉は予想してる以上に重いのだ。
テロが起きたと大騒ぎするだけで株価にも影響が出るし、容疑者も断定されないうちに大衆がイスラム教徒のせいにしだすと、また余計な軋轢を生む。
とは言っても、これがどこぞの頭のおかしな奴が短絡的に行った一犯罪などではないことも明らかだった。
用意周到に計画が練られ、強い憎悪を剥き出しにして、一人でも多くの人を殺そうという意思が現場に残っていた。
最終的にデローリエもテロと断定するまでには、さほどの時間は要しなかった。

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ボストンにやって来る客船すべての停泊港であるブラックファルコン・クルーズ・ターミナルの空き倉庫に捜査本部が設置される。
床がラインで区画され、実寸の現場のマップが作られる。
ところどころに並べられた紙袋。 それは被害者の遺留品。 異様な光景である。
その時、どこに誰がいたかが可能な限り再現されていた。

とにかくまずは情報が必要だった。
現場の通りにある街頭の監視カメラや、店舗先の防犯カメラの映像は十分すぎるほどあった。
しかし、その映像の中から怪しい人物を絞り込むには、やはり目撃情報がまずは取っ掛かりとなるはずだが、市民から寄せられた大量のメールで回線はアッという間にパンクした。

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4月16日。 
単独犯の可能性は低いとデローリエは踏んでいた。
そのうち、ビデオを食い入るようにチェックしていた捜査員の一人が、不審な動きをしている人物を特定する。
爆発の5分前、マラソンには脇目もふらず、ゴール地点から逆方向へと歩いていく「白い帽子の男」。
それは一瞬だけだった。 その後の足取りは?
複数場所のカメラの映像はたっぷりとあるが、「白い帽子の男」は次にどのカメラに映っているのか。

そこで付近のことに詳しいトミーが協力を求められる。
トミーは完璧に「白い帽子の男」の行動を予測し、足取りを確定。
「白い帽子の男」が映っているカメラの映像がどんどん発見されていく。
やがて、もうひとり。 サングラスをかけた「黒い帽子の男」の存在も浮上する。

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二人の男の画像は鮮明だが、当初は要注意人物のリストには見当たらない人物だった。
写真を公開すべきだとデイヴィス警視総監は迫り、トミーも同意見だった。
だが、ここでもデローリエは慎重を期す。
「もし無実でイスラム教徒だったら大変なことになる」

しかし、事件から3日後の4月18日。
その写真がマスコミに流出した。
街ではそろそろデマも流れだしている。
危険な状態だと判断したデローリエはメディアが報じる前に、写真の公開に踏み切った。

このことが幸か不幸か、事件は急展開を迎える。
捜査の進展の早さに焦った容疑者が新たな動きを見せたのである。
マサチューセッツ工科大学の学内警察の警官を射殺して銃を奪い、その後、中国移民の青年を車ごと拉致して逃走。
人質になっていた青年はガソリンスタンドでスキをついて逃げ、「マラソンの事件の犯人だと名乗っている男たちが今度はニューヨークでテロを行う気だ」と通報してきたのだ。

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日付は4月19日になっていた。
ボストンの西に隣接している街ウォータータウン。
手配中の車を発見した警察と、二人の容疑者との激しい銃撃戦が繰り広げられ、閑静なローレルストリートは戦場さながらの様相を呈していく。
容疑者は銃だけでなくパイプ爆弾も大量に所持しており、警官たちは思わぬ苦戦を強いられる。

ウォータータウン署の巡査部長、ジェフ・ピュジリーズ(J・K・シモンズ)。
34年間、この街の治安を見守ってきた大ベテランの警官は、出勤前に近所のダンキンドーナツに寄って、奥さんのためにコーヒーを買うのが日課の優しい男である。
警察無線を聴いて駆けつけたピュジリーズは、容疑者たちの裏手に回って応戦。
見事、容疑者の一人を負傷させたが、その男はもう一人の容疑者の乗る車に轢かれて間もlなく死亡した。

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死んだ容疑者の指紋から割り出されたタメルラン・ツァルナエフという人物は結局要注意人物としてリストアップされていたことが判明。
逃走中のもう一人の容疑者は弟のジョハル・ツァルナエフ
タメルランの妻キャサリン・ラッセルも共謀の容疑で拘束された。

4月19日のパトリオット・デイはまもなく夕暮れを迎えようとしていた頃、ウォータータウンの一件の民家から通報が入る。
裏庭に置いてあるボートに誰かが隠れているような気配がするのだと。
駆け付けた警官隊がボートを包囲。 外ではトミーもことの成行きを見守っていた。
威嚇射撃の後、ジョハル・ツァルナエフがボートから姿を現して投降した。

こうして、トミー・サンダースにとって最も忘れ難い4日間は終わった。


★ 【ボストンの4日間・・・兄弟】
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テロを実行した兄弟。 こちらは実際の写真。
左が弟のジョハル・ツァルナエフ。 右が兄のタメルラン・ツァルナエフ

2人とも2002年ごろにチェチェンから難民としてアメリカに移民してきた。
当時兄は15歳、弟は8歳だった。
共にアメリカでの永住権を取得している。

兄のタメルランはコミュニティ・カレッジに在籍し、ボクサーになることを目指していたが中退している。
移民してきた時が微妙な年齢で、言葉の面で苦労したのか友人はほとんどいなかった。
その挫折がイスラム過激主義に傾倒していくきっかけだったとも言われている。
2009年には女性を殴って逮捕されており、その時からFBIが彼をマークしていた。
2010年にアメリカ人女性のキャサリン・ラッセルと結婚し、女児をもうけている。

弟のジョハルは兄とは対照的に社交的で友人も多かった。
マサチューセッツ・ダートマス大学で口腔学を学ぶ医者志望の青年はクラスメイトからも「明るくて面白いやつ」と評されたが、兄と一緒にいる時は一転して大人しくしていたという。

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4月19日の朝。
自宅で淡々と準備を行う兄弟の姿は、ピリピリと緊張する訳でもなく、もちろん明るくリラックスしている風でもない。
通勤前のサラリーマンのように全くのフラットなのだ。
兄の妻も、娘を抱っこしながら、二人が圧力鍋をリュックに詰めているところを無表情で見守っている。

彼らの覚悟は相当なレベルである。
一つの物事に本気で人生を賭けたら、人間はここまで達観できるということか。
失敗するかもなどという不安は微塵も見せないし、自分たちのやることがどれほど怖ろしい事かは理解してても、それをやって当然、やらなければならないという義務感が最高度のレベルにある。

テロの実行後、帰宅して観たニュースで、死者の数が思ったほどではなかったのか、弟が言い放つ言葉は寒気がする。
「もっと上の位置で爆発させればよかった」
本当に人間なのか、おまえは。

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事件からわずか3日後で、自分たちの当日の行動が特定され、写真まで公開されたことに兄弟は驚く。
身元までは判明してないらしいが、そこまで分かるのも時間の問題だろう。
もう少し、ほとぼりが冷めてから次回はニューヨークでテロを起こす計画だったが、こうなれば捕まる前に一日でも早く実行に移そうと兄弟は動く。

しかし、その焦りが逆に行き当たりバッタリな行動にならざるを得なくなる結果となる。
マサチューセッツ工科大学の構内で巡回していたパトカーを襲い、警官から銃を奪おうとするが、予想以上の抵抗に遭ってやむなく射殺。
その直後に、停まっていたベンツのSUVに押し掛けて、乗ってるアジア人風の青年に銃を突きつける。
青年も乗せたまま車を奪った兄弟は西を目指す。

ボストンマラソンのテロ事件が自分たちの仕業であることや、これからニューヨークでもテロを起こすことをタメルランは青年に向かって吹聴する。
「車はあげるから解放してくれ」と縮こまっているアジア人はどうせ逃げる勇気もないだろうと彼らはタカをくくっていた。
ガソリンスタンドで給油する間、ジョハルに買い物をさせて待っていたタメルランはすっかり油断していた。
一瞬のすきを突いて逃げた青年に店に駆け込まれては、それ以上深追いはできない。

「おまえがグズグズ買い物をしてるからだ!」
「兄貴がちゃんと見張ってないからだろ!」
人生が思い通りに行かないのは、チェチェンに住んでたガキの時代から分かっているはずなのに、兄弟同士でつまらない罵り合いをしながらタメルランは自分たちが少しづつ追いつめられているのを覚悟するのだった。

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ウォータータウンで警察との銃撃戦となる。
後先のことは考えてはいられない。
ありったけの爆弾を使い切ってでも逃げ延びるつもりである半面、タメルランはその時が来たらと腹をくくっていた。

一人の警官と撃ち合って負傷したタメルランは弟を逃がす。
組み伏せられたていたタメルランだが、弟の乗った車が警官たちに向かって突入しようとした際に轢かれてしまい、そのまま死亡した。

そして弟のジョハルも車を捨て、ある民家の裏庭のボートに身を潜めていたのだが・・・

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タメルラン・ツァルナエフの妻、キャサリン・ラッセル(メリッサ・ブノワ)。
ロードアイランド出身のアメリカ人である。

ボストンのサフォーク大学在学中に、タメルランと2010年に結婚。 妊娠したことで大学を中退している。
その際にイスラム教に改宗し、ヒジャブをまとうようになった。
映画では明らかに夫と義弟がテロを起こしたことを確実に感知しているが、実際の彼女は「全く知らなかった」と証言し、「捜査にも協力する」と述べている。

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なんと「権利通告なし」で当局に連行されたキャサリンを取り調べる「謎の女」。
一応「ヴェロニカ」という役名は付いている。

FBIでもCIAでもない。 突然やってきて、「私にまかせなさい」と言わんばかりに振る舞っても、デローリエをはじめ誰も何も言えない。
キャサリンと正対し、「爆弾は他にもあるのか」という尋問を執拗に繰り返すが、キャサリンも頑として答えない。
「質問に答えること。 それ以外は許さない」
キャサリンが弁護士を要求しても、「あなたにその権利はない」などと、この謎のオバチャンは恐い事を言い出すのだ。

「あなたの娘はいつか知るわ。親がモンスターであることを」
「シリアではもっとたくさんの人が死んでるわ。 貧困に苦しんでる子供たちの苦しみなどあなたには分からないでしょうね」
尋問官もある意味すごいモンスターであるが、キャサリン腹のくくり方も相当だ。

尋問官はヒジャブをまとっているが、実はこれはポーズで、彼女はイスラムとは無関係。
“おまえたちのやったことは同門の人間でも許さない”という意思を見せて揺さぶったつもりなのだろうか。
取調室を出た途端、彼女はヒジャブを脱ぎ捨てる。

2008年にオバマ大統領がテロ対策の一つとして新設した「HIG」(重要拘束者尋問グル―プ)。
正体がはっきりしないままで終わる謎の女はおそらく、「HIG」からの刺客。
目的のためには人権さえも無視するやり方は本当だろうか。
キャサリンは最後まで質問に答えなかったが、尋問官はこのやり取りだけで、背後に大きな組織が関与はしていないと確信する。


★ 【ボストンの4日間・・・愛は勝つ】
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ボストンマラソンの爆弾テロでは2人の女性と男の子一人が亡くなっている。
マサチューセッツ州のレストラン経営者クリスティー・キャンベルさん(29歳)。
ボストン大学大学院の中国人留学生ルー・リンチーさん(23歳)。
家族と5人で観戦に来ていたマーティン・リチャード君(8歳)。

映画では名前は出てこないが、8歳の男の子が犠牲となって、現場に横たわる遺体に白いシーツをかぶせられるのだが、すぐに動かすことができずに、なんと4時間もそのままにされる。
遺体に残った破片も重要な証拠であるために、おいそれと遺体を移動させることができないのだ。
こんなことがあったなんて、傷ましいにもほどがある。

シーツがかぶせられた小さな亡骸を見守るために、一人の警官がそばでじっとたたずむ姿がたまらない。
この警官のおじさんの心中いかばかりかと察する。
彼がそばにいてくれたからマーティン君の魂は寂しい思いをしなくて済んだと思いたい。
やっと遺体が運び出される時、警官が敬礼をするシーンに胸が熱い。

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マサチューセッツ工科大学の学内警備警官ショーン・コリアー巡査(ジェイク・ピッキング)。
彼も事件の犠牲者である。 享年26歳。

前から気になっていたアジア人の女学生に声をかけて、コンサートに行く約束をしたばかりだった。
構内をパトカーで巡回中、ジョハル・ツァルナエフが襲いかかり銃を奪おうとする。
コリアー巡査は最期の最期まで抵抗し、もみ合った末にジョハルに射殺される。

サマービルの警察官になることを目指していた彼の、最期まで正義の心で立ち向かった勇気を讃える声は多い。

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事件解決の隠れたヒーロー、ダン・マン(ジミー・O・ヤン)。
中国からの移民の彼は、ベンツの黒のSUVを購入したばかりで、15日の朝は中国にいる両親にビデオチャットで車を自慢していた。

4月18日の夜9時過ぎ。
ツァルナエフ兄弟に銃で脅され、人質になったまま車を乗っ取られる。
9.11についてどう思うかとか聞かれたり、ボストンマラソンのテロは俺たちがやった、これからニューヨークへ行って同じことをするなどとと、二人の男たちがベラベラと激ヤバなことを言っている。
さぞや生きた心地はしなかっただろう。

買ったばかりのピカピカの高級車なのに、「車はあげるから解放してくれ」は本音だろう。
だが、顔を見ている以上は絶対自分がこのまま帰されるはずがないという危機は承知していた。
冷静に大胆に。 よくぞ逃げたと思うが、うっかりしていたタメルランの兄のボンクラさが幸いしたと言えよう。

ダン・マンとは対照的なのが、大学のジョハルのルームメイトたち。
ジョハルが爆弾を作っているのでは?と思わせる物を発見しても通報せず、彼らは後に捜査妨害で逮捕されている。
バカどもめ。

無題 c 
183人の負傷者のうち、手足の切断を余儀なくされた重傷者は少なくとも10人いると言われている。

パトリック・ダウンズ(クリストファー・オシー)とジェシカ・ケンスキー(レイチェル・ブロズナハン)は事件の7ヶ月前に結婚したばかりだった。
ボストン・レッドソックスの発音について、「レッドソークスだよ」 「いや、ソックスでしょ」という微笑ましい問答をしてマラソン観戦に出かけ、二人は悲劇に巻き込まれる。 ちなみにコテコテのボストン人は「ソークス」と発音するのだそうな。

病院に運び込まれた二人は共に足のケガの状態がひどく、やむなく切断の措置が取られる。
命は助かったが、意識を失っている間にともに左足を失った夫婦は、目を覚ました時、足のことよりも、愛する人を失わなかったことに安堵して互いに微笑みあった。

それから一年後、二人はボストンマラソンのハンドサイクル部門に出場して完走。
この映画の製作中の2016年にはパトリックさんは義足でボストンマラソンに出場し、見事完走する。
3年前に怖ろしい体験をした場所で、妻のジェシカさんが夫を出迎えて抱き合う実際の映像がラストに出てくる。
この不屈の夫婦の姿こそ、愛が悪に勝った瞬間である。
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まるでハリウッド版「踊る大捜査線」のようなクライムサスペンスの語り口と並行し、警官や市民がいかに強い心でこのテロの脅威に向き合ったかが描かれる。
容疑者確保に全力を挙げた捜査機関の人々。 惜しみなく情報を提供した市民の協力。 その他にも亡くなった人も手足を失った人もみんながヒーローであると映画は讃えている。

物語から強いメッセージとして感じ取れるのは、私たち一人一人に「愛」というパワーがあるということだ。
爆弾で世界を変えれると思っている奴らがこの世には多くいる。
それで何が変わったかを振り返ることもしない癖にだ。
私たちは、人々からかけがえのないものを奪う悪魔と一緒の目線に降りてはならない。
私たちに爆弾というパワーは必要ない。 「愛」という武器をハートの中にすでに持っているからだ。

大国の親方は一口に「テロとの戦い」と言う。 彼らは彼らだ。 今さら、とやかくは言わない。
最初に書いたことと少々矛盾するかもしれないが、私たちにできる戦いは、「恐れない」ということではないか。
爆弾の1個や2個ぐらいで「おまえたちには何かを変えれる力など、これっぽっちもないぞ」ということを見せつけてやるのが、私たちのする「テロとの戦い」だとこの頃は強く思う。
 
難しい理想論なのは承知の上。 死んでしまえばそれまでだしね。 戦いだもの。
だが、大切な人を失ったり、手足がなくなろうとも、またそれらに苦しむ人たちと共に、私たちは支え合い、励まし合い、何があろうとこの世界は素晴しいのだと誇れる心で立ち続けるのだ。
少なくともテロリストに対して「もう勘弁して下さい」と許しを乞うたり、彼らの主張に耳を貸すことなど言語道断。
「テロなんかありましたっけ?」と、とぼけてみせるぐらい完無視してやればいい。
人を傷つけるよりも、私たちは愛で世界を変えて見せよう。
テロに屈しない強き心と愛。 平和を愛する者なら誰にもあるパワーだ。

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クライマックスでトミーが絞り出すように語るセリフが印象深い。

目の中に善と悪の戦いが宿っている
悪魔に打ち勝つ唯一の武器が愛です
悪魔は愛を奪えない
愛の力で戦うんです そうすれば負けない



無題 b 
当時まだ現役だったボストン・レッドソックスの“ビッグ・パピ”ことデヴィッド・オルティスが、フェンウェイ・パークでの追悼セレモニーでスピーチして市民を鼓舞した映像も登場。 放送禁止用語入りで。 字幕ではどうだったかね?
“fucking”というワードはこの場合、あえて「クソ素晴らしい」という表現でいいのでは。

「俺たちのクソ素晴らしい街だ。 でも誰にも自由は奪えやしないぜ。 これからも強くあれ!」

なんだか、ボストンが好きになりそうだ。

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これは「LIFE誌」の表紙にもなった実際の写真。
3歳のレオ・ウールフェンデン君は、お父さんのスティーヴ・ウールフェンデンさんと観戦に来ていた。
マラソンに出場していたお母さんのアンバーさんを応援していたのだ。
死傷者が多数出た場所にいたにもかかわらず、いたいけな坊やは頭のかすり傷で済んだ。
だが、事件発生直後の混乱により、警官に保護されたレオ君は、大怪我を負って病院に搬送されたお父さんと離れ離れになってしまう。

スティーヴさんは左足を失った。 だが自分の足のことよりも、行方の分からなくなった息子が気が気でならない。
負傷者に聴き込みに来ていたトミー「息子を探してくれ」と頼む。
そして4月19日の再会のシーンで、これ以上ないレオ君の笑みに私たちは救われる。


今回の「賢人のお言葉」は、レオ君のお父さんのコメントを拝借しよう。
 「私は未来が明るいと楽観しているよ。 息子のレオが大人になり、この世界を好奇心とユーモアでもって見てくれるよう望んでいる」
 スティーヴ・ウールフェンデン
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