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The NET 網に囚われた男
2017年04月03日

T0021525p.jpg 近頃、政治情勢がゴチャゴチャしてるが、お隣の国も相変わらずである。


韓国ってのは、どうしてこうも大統領になった人が次々とインケツな運命に遭うのだろうか?
ここまできたら呪いだわね。
慰安婦像撤去してごらん。 呪いが解けるかもよ。

北朝鮮。 花火職人か、おまえらは。
もしも、またミサイル飛ばした時、誤って中国の方に飛んで行って落ちてくれんかな。
両国はどんなリアクションするだろうかね。
身内でも虫のように殺す豚ダルマ君はそもそも何がしたいんじゃ? どこを目指しとるんじゃ?


韓流のアウトロー、キム・ギドク監督の最新作は、韓国と北朝鮮の両国を舞台に描かれる一人の男の悲劇。
北朝鮮で漁師をしている男が、作業中に意図せず韓国側の領海に流されてしまったばっかりに、あまりに気の毒な運命にさらされるという、南北分断の闇の一面の物語。


無題 
男の名はキム・チョル(リュ・スンボム)。
北朝鮮の寒村で漁師をしながら妻子とともにつつましく暮らしている。
仕事柄か、海岸から近い場所にあるボロ家は最低限の家具と薄っぺらい布団があるだけの極貧とまではいかずとも、絵に書いたような質素な生活。
物静かで献身的な妻。 そして縫い目がほころびているクマのぬいぐるみを可愛がっている幼い娘。
そんな家族という財産を支えに、チョルはいつのように朝早くから網漁に出る。

家から一歩出れば『水素爆弾実験成功』などの国威発揚の看板がチラホラある。
しばらく歩けば監視所があり、そこに詰めている兵士たちとはすっかり顔なじみ。
「今日は風がきついから、あまり領海の近くには行くなよ。」と注意を受けてチョルはボートを出した。
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ところが。
網がエンジンに絡まってしまい、ボートは全く動かなくなってしまう。
焦るチョルだが、なすすべなくボートは韓国側の領海へとどんどん流されていく。
海に飛び込んで泳いで戻るしかないが、チョルにとってボートを捨てることは生活の糧を失うことを意味する。

双眼鏡で様子を見ていた監視所の兵士もこの異変に気づく。
脱北か? いや、助けを求めている素振りからしてどうもボートが故障したようだ。
しかし、このままだったら・・・と監視所は騒然とする。
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海を区切っているブイを越えたら最悪だ。
監視所では苦渋の決断をするしかない。
領海を越える前に射殺する・・・
しかし、ライフルを構えた兵士が躊躇している間にボートは遂に韓国の領海へと入ってしまった。


一隻のボートが北側から領海を越えて、こっちに進んできているのを韓国側の監視所も確認する。
男が一人乗っているだけで武器も持っていないようだ。 脱北なのか?
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韓国側に流されたチョルは、岸辺に先回りしていた韓国軍兵士によって拘束される。
大変なことになったことを悟るチョルには、南側が北の人間をこれからどうするのか予想もつかない。
車に乗せられた彼にできることは、目をつぶることだけ。
なぜ目をあけないのかと問われた彼は答える。
「北に帰るまでは何も見ません。」

高層建築物が林立している都会を臨むハイウェイを走る車の中で、頑なに資本主義社会の姿が目に入ることを拒絶するチョル
結局彼は警察当局の建物の中に入るまで、ずっと目をつぶったままで通す。

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ボートが故障してしまったのですか、ああそうですか、じゃあ気をつけてお帰り下さいと行くはずもなく、チョルは警察の執拗な取り調べを受ける。
裸にさせられて身体検査が済んだと思ったら、着ていた服は全部捨てられていた。
代わりにアンダーアーマーのジャージを、「今まで着ていたモノよりは断然着心地がいいだろ?」と言わんばかりにあてがわれる。

取調官(キム・ヨンミン)はハナからチョルをスパイだと疑ってかかり、チョルがどんなに潔白を訴えても聞く耳を持たない。
「嘘をつくな。おまえはスパイだろ。」
「本当です。 私はただの漁師です。」
「おまえも頑固だな。 そういうところがますます怪しい。」
「何度言ったら信じてもらえるんですか。」
「本当のことをしゃべるまでだ。」


取調官は朝鮮戦争で家族を失っている。
北側には並々ならぬ敵意を抱いており、チョルという男がたとえ無害な一般人であっても黙って帰す気はない。
どんな証拠でもでっちあげて、彼をスパイに仕立てた上で、思う存分意趣返しをしたいのだ。

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取調室のそんな様子をマジックミラー越しに見ている警護官のジヌ(イ・ウォングン)は、取調官のあまりに強引なやり方に憤慨し、同時にチョルの無実を信じるようになる。
家族の元に帰りたいと言うチョルのために、ジヌ取調官に抗議しても逆ギレされ、上司にもチョルがスパイでないことを訴えても歯切れが悪い。

そんな時、チョルジヌらと共に署内を移動中、自分と同じようにアンダーアーマーのジャージを着せられた男とすれ違う。
彼もどうやらスパイ容疑で捕まっている同志であって、捜査官に脇をガードされていたが、突然男が暴れ出してチョルに駆け寄る。
ソウルにある腸詰のスープ屋で働いている娘に伝言を伝えてほしいと言う。
「5月のツツジは7本。3本は鹿に。2本は・・・・」
そう告げた男は舌を噛み切って自殺してしまった。

何の暗号なのかはチョルには分からない。 自殺してしまった男が本当にスパイなのかはともかくも、自分がこのまま韓国に留まるのだろうと変な期待をされてるのがショックだった。
もう北には帰れないのか。 「亡命します。」と言わない限りは自由になれるはずもなく、ソウルの誰かさんへの伝言などできる訳がないのだから。
だがその機会はすぐに訪れることになるのだが。

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取り調べは日に日に苛烈さを増していく。
「そんなにスパイが必要なのか? 何人でっち上げたんだ?」
何がなんでもチョルをスパイにしたい意思を曲げない取調官の暴力的行為に対してチョルの体は自然に動いていた。
二人の男をチョルはあっという間になぎ倒してしまったのだ。

すぐさま取り押さえられたチョルは、元は『特殊第8軍団』に所属していたことを自白する。
【特殊第8軍団】※ ※ ※ 北朝鮮の特殊作戦部隊『軽歩兵教導指導局(TUGB)』の以前の名称。 工作員の数がおよそ18万人とも言われる破壊活動専門の機関である。

「そら見ろ。 やっぱりこいつはスパイだ。」
今は所属していない「元」であるが、取調官にとっては危険な男である。 その気になったらこいつは何をしでかすか分からないぞと。
チョルの隠された一面にジヌも少なからず動揺する。

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やがて警察上層部の意向でチョルはソウルの街まで連れて行かれる。
なんとしてでも彼を韓国に亡命させたいのだ。 取調官は不満を露わにするが。
しかし、チョルをスパイということにして投獄して終わらせるよりは、韓国社会の暮らしに惹かれて寝返ったという人物を公にさらす方が「国対国」のプロパガンダ戦争という観点では「勝ち」になる。
政府的にはその方がいいのだ。
「独裁国家に帰す訳には行かん。 彼が心変わりせずに北に帰ったら我々の負けだ。」

車で出発し、ソウルの繁華街のド真ん中に置き去りにされても、チョルはずっと目を閉じたままでその場から動こうとしない。
だが通行人にぶつかって転倒したはずみで目を開けてしまったチョルが見たもの・・・。
建物はどれも高く、カラフルな看板があちこちにあり、北ではまず買えないような高級服や貴金属を売ってる店もあれば、どんな味がするのか見当もつかないようなメニューのある飲食店が並んでいる。

街行く人々は誰もかれもが栄養満点なのか元気があり、きれいな服を着て楽しそうに歩いている。
自分の国ではまずあり得ないような光景に唖然としながら、チョルはソウルの街をさまよう。
だが、いいところばかりではない。
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まだ使えるようなパソコンが道端にポイと捨てられてあったり、繁華街の裏に足を踏み入れると一人の女性が男に暴力を振るわれていた。
彼女は家族を養い、弟を大学に行かせるために体を売っているのだと言う。
「もう死にたい。」などとつぶやく。
自由の国のはずではないのか? なぜ死にたがるのだ?
経済的繁栄の陰に隠された負の部分だった。
チョルは彼女の肩にそっとジャージの上着を着せてやる。

そして伝言を頼まれていたことを思い出し、自分をこっそり監視しているであろう捜査員たちを撒いてまで腸詰のスープ屋を探しあてたチョルは、男の娘らしい女に例の伝言を伝えた。
女は何かを悟ったように店を出ていく。 それだけだったが、このチョルの行動が余計な疑惑を招いてしまうことになるのだが。

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監視の捜査員たちにジヌも加わっており、突然チョルが姿をくらましたことに現場は騒然となるが、チョルのことを信じようとするジヌはずっと待ち続ける。
やがてチョルは戻ってきた。
「魚は一度網にかかったら終わり。」
どうせ行くあてはないどころか、むしろこの国には魅力などない。
自分のことを信じてくれている、お人好しにもほどがある一人の男の姿をそっと見たチョルはもう一度帰国の希望を信じてみようと思ったのだ。

街を一日中さまよった感想を聞かれたチョルは正直に答えた。
「この国では、なぜまだ使える物や食べ物を捨てるのですか? 男が女の人を殴っているのも見ました。 私の国では有り得ない。 物を粗末にしたり、女の人に暴力など振るわない。 物より家族が大事です。」

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署内で自殺した男が託した伝言をチョルがソウルで女に伝えたこともバレていた。
疾しいことがあればノコノコと戻ってきたりはしないとチョルが言っても取調官の暴走は止まらない。
私怨のためにやってることと周りに思われていようが、北のスパイをムショにぶち込むことが人生の全てであるかのように取調官はもう手段を選ばない。

亡命もしない。 さりとてスパイ容疑を否認し続ける。 そんな態度に業を煮やした上司のお墨付きもあって取調官は一線を越える。
自分とチョルの二人きりになった取調室の鍵をかけ、中の様子も分からないようにした取調官は傍らにある灰皿を手につかんだ・・・・


考える気力も萎えたチョル取調官「スパイだと認めれば罪には問わない。 北に帰すことを約束する。」という口車に乗せられて自白の書類に署名してしまう。
騙された知ってもあとの祭りだったが、事態は思わぬ方向に急転する。
チョルがソウル市内をさまよってる姿を一般人が撮影した映像がマスコミに漏れてニュースで大々的に報道されたのだ。
北朝鮮側は、チョルという漁師がボートのアクシデントで韓国に流されていったことを当然把握している。
北側が用意した、夫の帰りを待ちわびて訴える妻子の映像も流されており、ここぞとばかりに、スパイでもない一般人を南側が不当に拘束していると北朝鮮は激しく非難した。
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韓国にとっては、衝突を引き起こしてまでチョルを拘束する理由は無い。
亡命を押し付けようとするこちらの非も明らか。
取調官の過去のスパイでっち上げの証拠も出てきて、大きな問題になることを恐れた韓国当局はチョルを北に帰すことを決めた。
 
ジヌは娘さんにと、クマのぬいぐるみをプレゼント。 ボタンを押すとしゃべるクマだ。
そして「バレないように。」と餞別のつもりで米ドル紙幣をいくらか持たせた。
北朝鮮内では米ドルはつい最近まで流通していたが今は一応は違法。 それでも自国通貨が信用されていないので未だ堂々と使用できるところも多くあって当局も黙認している状態。
闇で使えばレートは数十倍に跳ね上がる非常に価値のある通貨なのだ。
それをチョルはある“場所”に隠して、遂に修理されたボートで韓国をあとにする。

着せられたジャージを脱ぎすてて、共和国旗を腰に巻きつけたチョル「共和国マンセー!」を連呼するのだった。

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やっと北朝鮮に帰れたね、良かったねえ・・・で終わる話ではない。
南北に分断されて、互いに相手を信じない二つの国の根深い闇は生易しいものではないのだ。

ボートが北朝鮮に辿り着けばお祭り騒ぎのような盛大な出迎えがチョルを待っていた。
外国向けのニュースで流すのか、テレビ局の人間も来てカメラを回している。
まるで傀儡政権に屈しなかった英雄のような扱いだが、その出迎えの人たちの中には妻と娘の姿がないのがチョルには気がかりだった。

車に乗せられて、妻子の待つ自宅に直行・・・ではなく、そのまま人民保安省に連れてこられたチョル
型どおりに労をねぎらわれたものの、その直後に入った狭い部屋の中で、またしてもデジャヴのような悪夢がチョルを待っていたのだ。
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また取り調べである。
当局の者にすれば、亡命をしなかったことなど当然のことであって、向こうで何を見て何を聞いたのか、思想が揺らいではいないかというのが一番の問題なのだ。
そもそも南が簡単に帰す訳がない。
スパイになる裏取引をしたのかもしれないし、そこまでいかなくとも何かおかしなことを吹きこまれていて、自国の思想に疑いを持ったままで帰って来たのなら見過ごすわけにはいかない。

チョルは何を見聞きしても忠誠は微塵も揺らがなっかたし、今もその気持ちに変わりはないことを、時に立ちあがっては「共和国マンセー!」と叫んで必死にアピールする。

だが一度疑われたら簡単ではない。
ジヌからもらったクマのぬいぐるみを隠すように持っていたのも良くなかった。
もはや当局にとってはチョルは英雄ではなく反逆思想の容疑者でしかない。
なぜボートを捨てて泳いで戻ろうとしなかったのか?
向こうの社会を見てうらやましいと思っただろ?
ほんのちょっとでも亡命のことが頭をよぎったんじゃないのか?


向こうでどういう風に過ごしたかを時間単位で事細かく文章を書くように要求されるチョル
そして書いても書いても些細な表現に難癖をつけられては、また最初から書き直しを命じられる。
これさえ書けば家族の元に帰れると信じてチョルは拷問のような作文を続ける。


腹の痛みに耐えきれず、トイレに行かせてもらい、胃袋の中に隠したビニール袋入りのモノを出したチョルだが、当局の人間はお見通しだった。
ジヌからもらった米ドル紙幣は没収される。
このことでおそらく裏切り者として扱われる自分にはこの先どんな運命が待っているのだろうかとチョルは絶望する。
しかし、米ドル紙幣をそのまま着服した当局の人間は、これまでのことなどどうでもよかったかのようにチョルを自由の身にする。

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ようやく我が家に帰ってきたものの妻の態度は今まで通り普通だ。
新しいクマのぬいぐるみをもらった娘は嬉しそうだが。

その夜。
チョルは妻を抱こうとする。 だが、勃たなかった・・・。 トラウマかどうかは分からないがそれよりも・・・
妻の肩や背中には何かで叩かれたかのような傷がたくさんあった。
( 「私の国では男は女の人に暴力を振るいません」 )・・・・今となってはバカバカしい世迷言を言っていたものだと虚しさだけがつのる。

どこの国も同じだ。
人を疑い、だまして、心を引き裂き、尊厳を奪って、あとはポイと捨てる。
人は国家思想という小さな池の中で泳いでいる魚のようなものだ。
網にかかって囚われ、今までとは違う風景の水槽の中で、食べたことのない餌を与えられながら生きていくことを強いられて決して池には戻されない。
食べられて死んだ方がマシだが、奇しくも池に帰された男にとって、そこの水はもう昔の水ではなくなっていた。

 
翌朝、いつものように起床したチョルは海へと向かう。
監視所の兵士たちはチョルに漁をする許可が取り消されていることを告げる。

「知るか。 撃ちたきゃ撃て。」
チョルはボートに乗り込んで海へ出ていくが・・・・・
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笑いごとではないが笑い話のような悲劇である。
ともかくも南北に分断されて尚もツノ突き合わせている、一つで二つの国家の間に深く根を下ろした感情そのものが物語の主役のようなものである。

一つ間違えば戦争しかねないほどの一度壊れた国家関係はちょっとやそっとのことでは修復しない。
どちらも相手のことを信じることなどできず、常に疑って疑って疑いまくる。
南の者は北を絶対信じない。 北の者も南を絶対信じない。
相手を疑ってこそアイデンティティが保てると信じてるかのように、互いの価値観の視点から外に出ようとしない。
そんな両国の間で、本作品のように起きても不思議ではないアクシデントによって猜疑心の渦に呑み込まれていく一人の男。
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スパイでもなんでもない、ただの漁師であって、予想外の災難で国境を越えてしまっただけなのだが、それをいくら訴えても取り調べに当たった男は信じない。
取調官は個人的な私怨があるが、それよりも北朝鮮の人間はどいつもこいつも危険人物であって問答無用で牢に繋いでおけよという考えこそが韓国人としての本懐のように思っている節がある。
北の者に善人などいないと信じることが彼のアイデンティティになってしまっている。
チョルが無害な庶民である事実はどうでもよくて、「相手が北朝鮮という国」だということが使命感の理由なのだ。

警察の上層部の男は国のメンツがかかっていることもあって、チョルを亡命させることに固執する。
どうせ浮浪者のような貧しい生活をしてきて国に不満を抱いているに決まっている・・・ ソウルの繁栄を見せたらコロッと思想を変えるだろう・・・ 北朝鮮の庶民はみんな"亡命希望者"にちがいない・・・ 意地を張っているのも洗脳されているからだ・・・
この気の毒な男を改心させれば対南情勢は心理的に優位に立てると踏んだからには、いくらチョルが家族の元に帰りたいと訴えても、そんな純粋な人間性さえ「北朝鮮人だから」という理由で疑っているのだ。
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人間、誰からも信じてもらえない状況というのは本当に苦しいものだ。
あまつさえ、チョルは自分の国に帰っても疑われることになる。

「ボートを捨てて泳いで引き返すことはできたはずだろ?」と、韓国でも北朝鮮でも同じ質問を受ける。
ボートは家族の命をつなぐ物。 もう捨てれる物などない困窮の暮らしをしていることさえも心に留めてくれない。

「魚は網にかかったら終わり。」チョルが嘆くように、韓国でも北朝鮮でも「疑われる者」として彼は居場所を失ってしまう。
そして疑いで始まり疑いで終わる南北の対立という駆け引きや心理戦争のコマとして使い捨てられた彼が自暴自棄になり、このあと家族がどうなるかさえも深く考えずに取った行動は目も当てられない悲劇として幕を閉じる。
ただし、あのままボートがまた韓国側へと流された時、大変なニュースとなる可能性を悟っての覚悟の行動ならば、それはそれで凄まじい決心ではあるが、やはりやり切れない悲劇である。

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そんな中でもチョルを信じる人間として、警護官を勤めるジヌという青年の存在は救われる気持ちにもなるが、彼は最後の最後に間違いを起こす。
チョルが北朝鮮に帰れることになって、彼はチョルに米ドル紙幣と娘への贈り物として新しいクマのぬいぐるみを持たせるのだ。
一時の間でも韓国で過ごした男のことなど北朝鮮という国が易々と信用するはずがないということに頭が働かなかったというのもそうだが、彼もやはりチョルのことを貧しい生活をしている可哀そうな北の人という目で見ていたことが分かる。
善意のつもりだったのは理解できるが、チョルという家族思いの男の、金銭やモノに固執しない人間性の本質を汲みとれずに悲劇の原因を間接的に招いてしまうことになる。


南北朝鮮の問題に限らず、他の国でも、我々の身近な人間関係でも、一旦こびりついた偏見や錯誤は相手が何を訴えようとも疑念しか生まれない。
疑うことは簡単だが、それだけに恐いものがあるし、信じることの難しさも痛感する。
キム・ギドクの監督作品としては珍しく暴力性や毒性もないが、非常にストレートなメッセージを放つソーシャル・サスペンスである。

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「賢人のお言葉」
 
「誤りがあるところには真理を。 疑いがあるところには信頼を。 そして絶望があるところには希望をもたらすことができますように。」
 マーガレット・サッチャー
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