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ラ・ラ・ランド
2017年03月29日

T0021440p.jpg3月5日に観に行った。
とてつもなく感動してしまった。

観た直後から、名シーンと名曲の数々が脳内に湧いて出てきて止まらんのである。
気がつけば「Another Day of Sun」「City of Sters」のメロディを口ずさんでいる。
頭の中までLA LA LAND。 すっかりラララのおじさんである。
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これはレレレ。
 
とにかく・・・
もう一回観たい!それもできるだけ早く!
こうなったらしょうがない。
『午前十時の映画祭』の「愛と哀しみの果て」を観たかったが、その予定はご破算だ。
すまんな、レッドフォード。

リピートするにあたって、やっぱりTOHOシネマズでポイント鑑賞した方がお得ざますわよねえ、と日程などをチェックした際、なんばの劇場では「IMAX上映」していると知ったラララのおじさんはソッコーで予約した。

3月18日、再鑑賞。
ラララのおじさんは鬼感動に酔いしれた。 このまま座席に座ったままポックリいっても本望だ。
2017年の洋画ベスト3の中の一本が早くも決定したと今から言っておいても良かろう。
第89回アカデミー賞において14部門にノミネートされ、監督賞、主演女優賞、作曲賞、歌曲賞、撮影賞、美術賞の6部門を制した、その誉れに疑いの余地はない大傑作である。
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まず断っておくが、「あたしミュージカルって苦手な人だしぃ~」とか「突然歌いだしたり踊りだしたりって有り得なくネ?」などとのたまう諸兄諸姉には「話題になってるから観てみようかな」というようなムリはしないでください。

ミュージカルに抵抗がある人でも楽しめるという評判はたくさん上がっているし、確かにこの作品ならウケるんじないかなという手ごたえはあるけれど、ミュージカルはミュージカルである。
オープニングからいきなり「歌え踊れ」が来るので、ここから赤面してるようではちょっと・・・。。

監督はデイミアン・チャゼル。 世界に衝撃を与えた「セッション」を撮った人がこんなミュージカルを撮るなんてと思うが、元々この人はデビュー作がミュージカル映画なのである。 それもジャズ・トランぺッターの話だったし、「セッション」といい「ラ・ラ・ランド」といい、ジャズ愛がパネえ監督でもある。

物語は至ってシンプル。
片や女優、片やジャズクラブの店を持つという夢を持ってハリウッドにやってきた男女の愛とすれ違いを描く切ないラブストーリーである。
まずはあらすじをガッツリと。

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セブことセバスチャン・ワイルダー(ライアン・ゴズリング)

ジャズをこよなく愛する孤高のジャズピアニスト。 といっても存分にジャズを演奏できる場が無い時代なのを憂いている。
いつかは自分の店を持って、存分にジャズを弾きたいというのが夢。
人気が今ひとつで、死にかけてるジャズを自分の力で救うのだという自負を持っていて、とにかくジャズに関しては人一倍アツ苦しい男なのだ。
かつてのジャズクラブの名店「ヴァン・ビーク」が今やサンバとタパスの店に変わったことがどうしても許せずない。

愛車は82年型ビュイック・リビエラのコンバーチブル。 カーラジオが壊れかけ。
「ジョージア・オン・マイ・マインド」の作曲者としても知られるジャズ・ピアニスト、ホーギー・カーマイケルが座ったらしい古い木製のスツールが彼の"家宝"。
姉のローラ(ローズマリー・デウィット)からは安定した職と結婚を急かされているが。 「俺の人生はまだノックダウンじゃない。」

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ミア・ドーラン(エマ・ストーン)

ネバダ州ボールダーシティ出身。
女優になる夢を叶えるために、大学を中退してまでロスにやってきて数年。
現在はワーナー・スタジオ内にあるコーヒーショップのバリスタ嬢をしながら、オーディションを駆け回る毎日だが、なかなかチャンスに恵まれない。
有名女優が来店してカプチーノを注文。 店長が「サービスです。」と言うと、「あら、それはダメよ。」とスッと代金を置いてカップを手に颯爽と店を出ていく姿にホレボレ。

シナリオを書くことにもいささか自信があり、自称「脚本の神童」。
3人の友人たちとルームシェアしている部屋には、イングリッド・バーグマンの巨大なポスターが貼ってある。
愛車はトヨタ、プリウス。

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二人の最初の出会いは最悪だった。
ハイウェイの渋滞中に車の中でオーディションの練習をしていたミアは、車列が動き出したのに気づかずに後ろの車から思いっきりクラクションを鳴らされる。
PUUUUUUU~!!!
(ボーッとしてんじゃねえ、このタコ!) (うっせえ!ヘナチン野郎!)・・と、お互い思ってたんだろうと想像。
抜き去っていくビュイックを運転する男に向かって、ミアはビシッと中指をおっ立てた。
これがセブミアのファースト・コンタクト。

その次は、ミアがルームメイトと共に行ったパーティーから一人帰る時だった。
前を通ったレストラン「Lipton's」から聴こえてきた美しいピアノのメロディに誘われて思わず中に入ると、ピアノの主はあのハイウェイの時の失礼な男だった。
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一度はクビになった店に出戻ってきたセブは、オーナーのビル(J.K.シモンズ)から「絶対にフリージャズは弾くなよ。私のリスト通りに弾け。」と釘を刺されていた。
「半々じゃダメ?」と冗談で聞いてもビルは鬼のような顔をしているので、やむを得ず弾きたくもないクリスマス・メドレーの鍵盤を叩いていたセブだったが、(どうせここの客は誰も聴いちゃいねえよ)と、発作的にオリジナル曲を全力で弾いたのだった。

当然、ソッコーでクビである。
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「あれほど言ったよな。 クビだ。」
「いやあ、本心は別なのかなと思って。」
「クビだ。」
「待ってくれよ。 せっかくのクリスマスなのに。」
「クビだ。」
「もう一度チャンスを。」
「宇宙人か、おまえは。 クビだ。」


やるなよ、やるなよと言われても、それは逆の意味だと受け取っていいのはバラエティ番組に出てきたお笑い芸人のお約束。
しかし、レストランのピアニストはやるなと言われたらやっちゃいかんのである。
店の雰囲気を演出することが仕事であって、そこはピアニストのライブ会場ではないからだ。
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しかし、猛烈に感動している女がひとり。
オーディションを受けても受けても落ちてばっかり。
自分の演技などキャスティング・ディレクターがろくすっぽ見もせずに帰されることも珍しくない。
チャンスを見つけるなんて、それこそ夢のまた夢。
いつまでこんな毎日を送るのだろうかと悩んでいたミアの心を癒したのが、セブが思いあまって弾いた物悲しいピアノの旋律だった。

「素晴らしい演奏だったわ。」と、こちらに向かって歩いてきたピアニストの男に伝えようとしたが、思い切りショルダー・アタックをかまされ、シカトをくらったミアは戸惑うが、またまた偶然の出会いが続くのである。

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相変わらずオーディションの毎日のミアは、あるホームパーティーに出席した際に、a-haの「テイク・オン・ミー」を演奏しているパーティー・バンドのメンバーに例の“失礼男”を発見する。
赤いブルゾンに赤いショルダー・キーボード。 「おまえはハバネロか」と突っ込みたくなるような笑える格好の“失礼男”を見て大いにウケるミア
暑苦しさ満点のヴォーカルのニイチャンがリクエストを募るので、ミアが嬉々と手を挙げて「『アイ・ラン』!」と叫ぶ。
思わず二度見するセブ(この女、あの時の・・・)

なんでまたフロック・オブ・シーガルズの82年の唯一のヒット曲「アイ・ラン(So Far Away)」をリクエストしたのか定かでないが、多分PVの中で赤シャツを着ていたマイク・スコアから連想したんだろうと思う。

大人のジャズ・アーティストを目指すセブにすれば懐メロのニューウェイブを弾かされるのはまあまあの屈辱である。
こちとら食うために仕方なくチャラい仕事も我慢してやってんのに、この女やってくれたなとセブは終了後にミアに御挨拶。
二人の最初の会話はお互いの見栄の張り合い。
「これでも本物のミュージシャンだよ。」 「私は女優ですけど。」

夜。 パーティーから帰ろうとするセブ「ジョージ・マイケル!」と呼び止めるミア
おそらくミアにすれば悪口のつもりじゃなく、80年代のスターとして思いついただけで言ったのだろう(と思う)。

何度も会う偶然が重なって、言葉を交わし合い、最初はイヤミが口を突いてばかりの二人だったが、互いに自分の夢を熱く語るうちに惹かれあっていく。
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「私はジャズは嫌いよ。 エレベーターのBGMでしょ。」
命知らずの暴言である。
レディだから良いようなものの、ヤロウだったら確実に顔面に鉄拳が飛んでいたであろう。

邪道とされるケニーGぐらいしか名前が出てこないミアセブはハモサ・ビーチにある「ライトハウス・カフェ」に“連行”する。
「ジャズはニューオーリンズの安宿で生まれたナンタラカンタラ・・・・」 「フンフン。」
「ジャズとは会話なんだナンタラカンタラ・・・・」 「ホォホォ。」
「あのサックスを見ろ。 演奏を支配しているナンタラカンタラ・・・・」 「ヘエヘエ・・・いや、わからんし!」

淑女をジャズクラブに連れ込んでジャズのナンタラカンタラを熱く演説する男。 ウザいと思うなかれ。
夢を見る者という同じ立場にいるミアにすれば、暑苦しさよりもシンパシーという名のまばゆい熱の輝きがハートをくすぐるのだ。
いつかは自分で自由にジャズを弾ける店を持ちたいと言うセブ。。 チャーリー・パーカーが好きだったチキンスティックがメニューにある店・・・・
「ジャズは死にかけてる。 世間は死なせてやれと言うが俺は許さない。」

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一方のミアは『The O.C.』もどきのドラマのオーディションの一次審査に通る。
セブは我がことのように大喜び。
「O.C.もどきは言いすぎね。 『理由なき反抗』かしら。」
「おおっ!『弾は抜いたのにぃ!』(ジェームズ・ディーンのセリフ)」 「???」
「さては観てねえな。 リアルト劇場でやってるから今度一緒に観にいこう。」

パーティーで知り合った脚本家のグレッグとのデートをすっかり失念していてダブルブッキングしてしまったミア
そわそわしながらレストランで食事をつついていたが、スピーカーからあのピアノメロディが流れてくる。
居ても立ってもいられず、席を立ったミアは映画館へ。
二人の距離は一気に縮まる。

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やがて二人は恋人同士になった。
デートの時は、セブミアのアパートまで車で乗り付けたらビュイックのクラクションで合図。
PUUUUUUU~!!!

間もなくしてミアセブのアパートに移り住み、夢を語り合い、励まし合う。
自作自演ならオーディションともオサラバだというセブの助言もあって、ミアはシナリオを書き始め、セブの店の名前やロゴも考案。
セブの店だから『Seb’s(セブズ)』。 それじゃおめえ、炭火焼肉の『たむら』とおんなじじゃねーかよというダメ出しもなく、夢見るユメオ君とユメコちゃんは幸せ絶頂で夢見ることに酔いしれるのだった。

だがセブの店が今にも実現しそうかのようにテンションが上がっているミアの膨張した期待感がセブには少しづつ重荷になり始めていた。
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いつぞやライトハウス・クラブで再会したのは学生時代からの旧友キース(ジョン・レジェンド)。
一緒にバンドを組んでた仲でもあるが、ジャズに対するポリシーはセブほどでもない男である。
あまり会いたくもない男だったが、「一緒にやらないか?」という誘いはセブの気持ちを揺さぶる。

貯えがある訳じゃないし、レギュラーの仕事もないのに、店を持つことなど果てしなく遠い夢だった。
実現するかどうかさえ怪しいし、実現したとしてもジャズが流行らぬ時代にそんな店に客が寄りつくなんてそれこそ非現実的だとセブの胸の内では諦念が広がっていた。
先立つモノがなければ夢もへったくれもない。

キースは言う。
「ジャズを救うなんて、誰も聴かなきゃ始まらない。 伝統に固執するな。」
おまえさんのおっしゃる通りだよ。 文化や歴史にしがみついてメシは食えないさ。
妥協する時が来ているのかも知れない・・・・

何よりも愛する人がいるということ、守るべき未来ができたことが大きかったのだ。

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キースのバンド「ザ・メッセンジャーズ」のキーボードとして契約したセブ
もちろんジャズバンドではない。 リハではフュージョンっぽいのをやってたが、ジャズのジャの字もないAORバンドである

キースの誘いにあまり乗り気でなかったはずのセブが、そのバンドに加わったことの真意よりも、ミアにとってはまた彼のピアノ演奏が聴けるのだと胸が高鳴っていた。
楽しみにライブ会場へ足を運んだものの、いざ始まった曲は予定調和なシティポップス。
途中からバックダンサーがなだれ込み、いびつなライティングの中で、ステージの上だけでなく外の観客もかしましく、ミアは大いに戸惑う。
そしてセブが弾き出したシンセサイザーの(ミアにとって)軽薄なソロフレーズは彼女に大きなショックを与えた。
あんな音楽を一番嫌っていたのは彼自身ではなかったのか?

店を開くための稼ぎとして一時的にバンド参加しているのだろう。 彼がアレでいいのなら文句を言う筋合いではないと、ミアも自分を納得させる。
ライブ、ライブで忙しくて、なかなか会える時間がめっきり減ってしまったが。
ある時、帰宅したらセブがこっそりと帰っていてディナーをこしらえていた。
その席で将来のことに話が及び、二人の思いが決定的にズレていたことから思いがけない口論に発展してしまう。
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バンドをいつまで続けるのか、店を持つのはどのくらいの先になるのかとミアは気になって聞いたのが口火だった。
数年、いやもっと先・・・というより、いつまでとは考えていないセブの口ぶりからは、もはや店のことなど明らかにあきらめているらしい。

「これは君が望んだんだ。」などと言う。 「私がいつそんなことを?」
安定した稼ぎを得るために、現実味のうすい夢など捨てることもすべてミアのため、二人のためだとセブは言う。
「だいたいジャズなんて誰が聴く? そんな店、誰も来るもんか。」
「あなたが人の好みを気にするなんて。 情熱があれば人は来るわ。」
「甘いよ、君は。 俺たちは大人にならなきゃ。」
「昔からの夢は?」
「これが俺の夢さ。」


そしてセブが放った決定的な一言はミアを傷つけた。
「君は優越感のために不遇の俺を愛したんだ。」
「本気で言ってるの?」
「・・・ああ。」


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ミアはかねてから自分で演じる一人芝居のためにシナリオを書いてきた。
そのシナリオが芝居としてようやく形になる。 女優への第一歩だ。
小さな劇場を借りて、セットも揃えて、開演の日を迎えた。
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芝居のタイトルは『さらば、ボールダーシティ』。
泣いて田舎に帰るまいという決意のようなタイトルの芝居だが、現実は厳しすぎるものだった。
観に来た観客は数人程度。 これでは劇場の賃料も払えやしない。

セブの言う通りなのかもしれないとミアは打ちのめされる。
情熱だけで人なんか来ない。 誰も興味を持ってくれなきゃ、どんなに美しき夢でも誰も振り向いてはくれないのだ。
しかも楽屋の外からは、「ひどかったな。」、「大根だな、あれは。」というこきおろしの声・・・。
才能もないのに、夢を見てた愚かさを思い知らされたミアの傷は深かった。

先日の謝罪を言いにきたセブの手を払い、ミアは車に乗り込む。
「もう終わりよ。 田舎に帰るわ。」
いつ、帰ってくるんだ?」
「もう帰らないって言ってんのよ!」



ボールダーシティの実家に帰ったミアだが、ある夜に聞き覚えのある車のクラクションが静かな住宅街に鳴り響く。
PUUUUUUU~!!!
近所の人から「静かにしろ!」とドヤされてるのは紛れもないあの男。
セブが言うにはキャスティング・ディレクターが自分を探しているのだとか。 大作映画のオーディションを受けに行けとセブが発破をかける。
「もうたくさんよ。」 「なぜ、たくさんなんだ?」
「十分傷ついたわ。」 「赤ん坊だな。」
セブ「明日の朝8時に迎えに来る。」と有無を言わさなかった。

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オーディションを受け終えて、「あまり期待はしてないけど。」というミアの表情からは手ごたえを感じているようだ。
二人がそれぞれの道を歩む決断をする時が来ていた。

「君の夢だ。 没頭した方がいい。 俺も自分の道を進む。」
ふと見上げると、そこにはグリフィス天文台。
二人の心が繋がり合った場所は、確かにあの時はキラキラしていたはずなのに・・・。
「こうして見たら、パッとしない風景だな。」 「そうね。」

互いに夢を見て、互いに傷つけ合って、互いに一回り成長した。
夢の詰まったラ・ラ・ランドで、夢見る少年少女から大人になった二人は別の人生を行く・・・・・

そして数年後・・・の結末に触れるけど、それはのちほど。
ここまでが記事の前半。 長いよ~、今度も。
つき合ってね。
後半はミュージカル・シーンについて。

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ミュージカル映画の肝は楽曲いかんにかかっている。
ストーリーに挟み込まれる絶好のツボとタイミング、そしてダンスのスペクタクル性と噛み合って、観る者の五感にダイレクトで訴えるような楽曲を聴かせられるかどうかが、スベるかウケるかのフォーク・イン・ザ・ロード。

ジャズミュージシャンの話であって、ジャズのナンタラカンタラといった小ネタもあるにはあるが、ジャズについての知識などこれっぽっちも必要ない。
「シェルブールの雨傘」や「ロシュフォールの恋人たち」といった過去作のインスパイアについての知識も無駄。
忘れた方がいい。 ラ・ラ・ランドに足を踏み入れたからには。

一にも二にも、夢の世界に引き込まれるような楽曲の素晴しさは筆舌に尽くし難い。
いちいち突き刺さってくるのだ。 なんで、こんないい曲ばっかりなん? どうゆうこと?
ミュージカル映画は色々観たが、こんなにもお耳にデリシャスな楽曲が雨アラレと降ってくる不思議な映画は初めて。

パフォーマンスシーンも、物量で攻める映画ならではのダイナミックなものから、カメラワークと色彩を活かしたものや、タップダンス、ファンタジックなボールルームダンス、ピンスポットのソロバラードなど多士済々。
パフォーマーの躍動感もアメージング・レベル。
もともとオリジナルの舞台が存在しない映画なので、ドラマにミュージカルを「付け足した感」というのが皆無といっていい完全融合が大きな魅力になっている。


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「Another Day of Sun」

今、私は頂を目指す
輝く光を追い求めて
打ちひしがれても立ちあがり前を向く
また朝が来れば新しい日


“ラ・ラ・ランド”とはLA、つまりロサンゼルス、おもにハリウッド地域の愛称で、「ハイになる状態」や「夢の国」とも同義の言葉。

ハーバー・フリーウェイ110号線とグレン・アンダーソン・フリーウェイ105号線の「ジャッジ・ハリー・プレガーソン・インターチェンジ」付近を道路封鎖し、38度近い暑さの中で撮影された圧巻のオープニング。
色んな国や地域から夢の実現を求めてLAにやってくる人々の志を歌っている、とにかくエグいほどの名曲。
この数分のシーンがもう一回観たくてリピートしたと言っても過言ではない。

ウキウキのアゲアゲがハンパない壮大なポップにのって30人のダンサーと100人のエキストラが祭り倒すというワンカット(に見せている)のスペクタクル。 
楽しそうやなあ。 この中に入って行って一緒に踊りたくなるよね。
だからというか、YouTubeでもこのシーンの「なんちゃって動画」が一杯投稿されてるのもうなづける。


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「Someone In the Crowd」

夢見る場所へ行けるかも
運命の誰かを探そう


ひょっとしたら自分の運命を変えてくれる業界の誰かと出会えるかも?と、ミアとルームメイトたちがパーティーへ向かうシーンから始まり、そのにぎやかこの上ないパーティー・シーンで流れる曲。
映画館の予告でもバチバチ流れたお馴染みのキャッチーなナンバー。
ガンガン押して来るパワフルなノリが楽しく、一度聴いたら耳にこびりつく。
ダンスでスカートの裾をピュンピュンやるところがキュン。

エマ・ストーンと共演しているのは[赤]のカリー・ヘルナンデス(トレイシー)・[緑]のジェシカ・ローテ(アレクシス)・[黄]のソノヤ・ミズノ(ケイトリン)。
アッシはジェシカ・ローテがお気に入り。


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「Mia & Sebastian's Theme」

本作を語るに欠かせないエッセンシャル・ナンバー。
セブが弾く、物悲しいピアノの旋律はセブミアの出会いと別れを演出。
切ないと言う以外、何を言えばいい。
ラストシーンで、「ここでやっぱりあの曲を弾くんだろうな」と想像がついてその通りになっても、切なさに胸がキリキリする。
夢を見て、その夢のために犠牲となった愛を慰めるレクイエム。


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「A Lovely Night」

恋の気配もないなんて素敵な夜がもったいない
恋の気配もないなんて言うけれど決めるのは私よ


セブミアが3度目の偶然の再会となったパーティーの帰り、ミアのプリウスの駐車場所を探しながら、マウント・ハリウッド・ドライブにやってきた二人がタップダンスを踊る名シーン。
ミアがさりげなくミュールからタップシューズに履き替えております。
恋の予感を告げるシーンを、軽やかで爽快なワンカットのミュージカルが盛り上げる。

ライアン・ゴズリングとエマ・ストーンの息ピッタリなアクティブかつエレガントなパフォーマンス。
すんばらしいっ! どんだけ練習したんだろうね。

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「City of Sters」

スターの街よ その輝きは俺のため?
スターの街よ 今こんなに輝いている


不意に訪れた、かけがえのない愛との出会いに希望と不安を歌うセブ
暮れなずむハモサ・ビーチの桟橋でのシーンのなんと美しいことか。
また、この曲はミアセブが部屋でデュエットするシーンでも深い印象を残す。

エンドロールでは、エマ・ストーンがハミングで歌う。 これも必聴。
アッシ個人の解釈だけど、本編が終わっても物語がまだ続いていて、今でも私生活の中でミアがふと思い立ったようにセブを思い出して口ずさんでいるのだろうという、そんなことを想像したのである。


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「Planetarium」

セブミアが映画館で「理由なき反抗」を観てると、いい雰囲気になりかけたら映写機トラブル。
ちょうどグリフィス天文台が出てくるシーンの時だったので、「いいアイデアがあるわ。」ミアが提案して二人はガチのグリフィス天文台へデート。 おたくら不法侵入ですぞ。

そして二人はプラネタリウムが映し出す夜空へと舞い上がり、ボールルームダンスを踊るというファンタジックなシーン。
曲は「Mia & Sebastian’s Theme」のオーケストラバージョン。
宇宙をバックにシルエットになったりという少女コミック的な表現に、多少こっぱずかしくなるけれども、2回観ればその味も分かる。
彼らはこの時点ではまだ“スター”になったわけではないが、二人の心がひとつになったその瞬間、宇宙のどの星よりも美しい“スター”となって天を周る。
愛の始まりの祝福でもあるが、始まりには終わりもまたあるということを仄めかしているからこそ、この曲なのだろう。


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「Start A Fire」

火をつけろ 燃やせベイビー
形勢逆転だ


キース役を演じるジョン・レジェンドが書き下ろし、メッセンジャーズのライブシーンで歌われるニューエイジポップ。
本作中の立ち位置としては“悪役”扱いなナンバーだけれど、これって・・・めっちゃいい曲じゃねえっすか!
ミアとしてはシンセでキュインキュインやってるセブに面食らってしまっただけで、この曲自体は「いい曲だけど。」と認めてる。
セブ自身の、ロープ際で打たれているボクサー状態から反撃に転じた彼の心境でもある。 心の底はともかく。

「Start A Fire」という、同じタイトルの歌ならライアン・スターの歌もカッコイイよね。 関係ないけど。


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「Audition(the Fools Who Dream)」

おばは私に教えた 少しの狂気が新しい色を見せると
明日は誰にもわからない だから夢追い人が必要と
反逆者たちよ さざ波立てる小石よ
画家に詩人に役者たちよ
そして乾杯を 夢見る愚か者に
イカれてると見えても
どうか乾杯を 敗れた心に
どうか乾杯を 厄介な私たちに
私が女優を目指した理由 おばと雪とセーヌ川
笑顔で跳んだおばは言った もう一度跳ぶと・・・・・・


失意から急転、大作映画のオーディションを受けることになったミア
オーディションで「何か話をしてみて。」と要求された彼女が語り出す、セーヌ川に何度も飛び込んだおばの話から、ピンスポットの中でこの感涙のバラードへとシフトする。

この映画は、幾多の夢追い人たちのスピリットに対する慈しみが捧げられていることが十分に伝わってくる。
歌手になりたい、役者になりたい。 そんな夢は誰しも少なからず抱く。
それでも歌手になるぞ、役者になるぞと実際に“跳んでみる”人は少ない。
そういう人を、周りの人はどうせ叶いもしない夢なのに、人生の時間の無駄な消費をしている愚か者と笑う。

確かに、夢を追って破れて去っていった人たちは星の数ほどいる。
それでも、少しの狂気でもってさざ波を立てた勇気ある反逆者をどうして笑えようか。
アイドルとしてテレビ画面や音楽シーンをにぎわせている彼女たちや、映画館に行けばいつも私たちに夢を与えてくれる俳優さんたちも、そこまで来るのに、何かを犠牲にしてきたのだ。 決して勝者ではない。 むろん敗者でもない。
夢が叶ったか叶わなかったではなく、夢見る愚か者たち全てのスピリットを讃えたい。
夢見る魂を礎として築かれた、世界中にある“ラ・ラ・ランド”が私たちに夢を与えてくれるこの幸せに感謝し、乾杯を捧げたい。


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数年後。 ミア・ドーランは押しも押されぬスター女優となっていた。 コーヒーショップに行けば店長がサッと出てきて「サービスです。」などと言われて、「それはダメよ。」とサッとチップを置いて去っていく。
数年前に憧れた女優と同じことをするまでのスターになったのだ。

すでに結婚していて幼い娘もいる。
だが伴侶の人はセブではない。
クリスマスの夜。 夫と共に車で出かけたミアは高速道路の渋滞を避けて途中で降り、街中のあるジャズクラブに入った。
中に入って気がついた。 店の名前は『セブズ』
壁際には、ホーギー・カーマイケルが座った木製のスツールが展示されている。

小さなステージで行われていたジャズの演奏が終わり、姿を見せたMCはセブだった。
もちろん彼も、ミアに気がつく。 誰にともなくつぶやく。
「セブズにようこそ。」
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そして、おもむろにピアノを前にしたセブが弾きだしたのは、あのメロディだった。
数年前のクリスマスの夜、レストランの前で、この曲に心を奪われて店内に入り、彼と出会ったのだ。

セブの胸にも、ミアの胸にも、もしかしたらあったかもしれない違う人生の光景がよぎっていく。
ラ・ラ・ランドで見た未来の夢。
着実に夢のステップを駆け上がり、ミアはオーディションに受かり、女優への道を行く。
セブキースの誘いなどにブレることなく、自分の夢を実現させていく。
二人は結婚して子供もできて、幸せな生活を築いて今に至り、クリスマスの夜にあるジャズクラブに入って一緒に音楽を楽しんでいる・・・という儚い幻想にしばし二人は想いを馳せるのだった。

だが現実にはもう二人は別々の道を歩いている。
これは二人にとってはアン・ハッピーエンドだろうか。 そうではない。
愛も夢もすべて叶わなかったのは、ほんの少し、ステップと呼吸がずれたダンスを踊ってしまった結果である。
夢を手にするのも、愛を実らせるのも、これが完璧という方法を知っている人などいない。

愛は成就しなかったけれど、二人はそれぞれの夢を叶えた。 これも二人の出会いがあったからこそ。
夢を追いかけた二人は、これからは人々に夢を与える者として道を行く。
私たちは非常に切ない思いの中で映画を観終わることになるが、これぞドリーム・カム・トゥルーを讃えたハッピーエンドなのであることは間違いない。

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何も言わずに去っていくミアがドアの前で立ち止まり振り返る。
ステージから見送るセブ
(俺たち、これでよかったんだよな) (私たち、これでよかったのよね) 二人の目が語り合う。
二人とも、わずかに口元をほころばせた後、セブが小さくうなづく。

このうなづき! このうなづきが、たまらん!
観てるこちらが救われる気持ちであっていいのに、あまりに切ない感情がギュッとわしづかみにされるこの感覚は何なのだろうか。

数年前のクリスマスの日。
あの曲を聴いてミアは店の中に入り、セブと出会った。
そして再びクリスマスの夜。
今度はあの曲を聴いて、店の外へ出ていくミアセブと別れることになる。
魔法がかけられたかのような出会いと別れの奇跡の意匠。

思えば二人の最初の出会いは交通渋滞の高速道路だった。
そして数年後に再会するきっかけも交通渋滞なのだ。
高速道路が渋滞していなければ、ミアが思いついたように「そこのインターチェンジで降りましょう。」と夫に言わなければ、この再会は無かった。
いや、他にもセブがレストランで忠告を無視してあの曲を弾いたことなど、偶然を挙げればキリがないのだ。 この二人の運命に関しては。

ラ・ラ・ランドには魔法があるのだ。 間違いなくあるのだ。
この映画は、そんな魔法に導かれた男と女のドリームシアター。
この春、なんらかのスタートラインに立つのであろう、夢追い人の諸君よ。
君たちは感じるか、ラ・ラ・ランドの魔法を。
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「賢人のお言葉」 
 
「君が夢見る方向へ自信を持って進みなさい。 そして、君が想い描いた人生を生きなさい。」
 ヘンリー・デイヴィッド・ソロー
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