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五日物語 - 3つの王国と3人の女 -
2016年12月10日

T0021263p.jpg 世界最古のおとぎ話と言われている「ペンタメローネ〔五日物語〕」。
イタリアの詩人で民話作家でもあるジャンバティスタ・バジーレによって執筆され、彼の死後、1634年から36年にかけて刊行された民話集である。

導入の1話と50話から構成されていて、エロと暴力、エレガントでユーモラス、華々しさと淫猥さが混ざり合う、喜劇あり、ホラーあり、感動系ありの、まさにファンタジーの幕の内弁当。
その50話がそれぞれ一見別の物語に見えても、実際には全てが関連付けられているという仕掛けが施されているのだとか。

本来のタイトルは「物語の中の物語、すなわち幼い者たちの楽しみの場」。
長いし、なんのこっちゃ分からんとクレームがついた訳ではなかろうが、ジョヴァンニ・ボッカッチョの「デカメロン(十日物語)」にちなんで1674年刊行版から「五日物語」と命名された。

作者の嫌がらせなのか、独特のナポリ方言で書かれていたのを、1925年に文人べネデット・クローチェが現代イタリア語に翻訳。
以後、広く知られるようになったとはいっても、日本的には全然なじみ薄。
「ならばジャッポネーゼの諸君らにも、この由緒ある物語の魅力を伝えてしんぜよう」と思ったかどうかは定かではないが、イタリアのマッテオ・ガローネという画家出身の気鋭の監督が「五日物語」を映画化して下さったのだ。

さすがに全50話を映画化することは無理なので、厳選した3話を抽出して、狂おしい女性のサガの愛憎劇が描かれている。
言っとくが、グロイぞ~。
同時期に公開されてる日本映画のサイコスリラー「ミュージアム」程度でグロいと言ってるオコチャマには目の毒。
グロテスクとはこの映画のことを言うのだ。
 


ある家庭の夜。
おねんねの時間が来た幼稚園児の娘とサラリーマンの父は・・・・・・

 「パパ、おやすみなさい。」
 「ああ、おやすみ。 いい夢見ろよ。by柳沢。」
 「ねえパパ。 寝る前になんかオハナシ聞かせて。」
 「パパはこれからママと、アレとかコレとかしたいんだけどな。」
 「アレとかコレとかって?」
 「まあ色々とだよ。」
 「あっ、分かった。 弟か妹をこしらえるためのタネを仕込むんだね。」
 「そういう言い方はよしなさい。」
 「あ~、オハナシ聞きたいなあ。」
 「わかったわかった。 ちょっとだけだぞ。 と言っても3つの話だけどな。」
 「ほほぉ、3部作ですか。」
 「おまえにはちょっとキツいかも知れない話だぞ。 この衝撃におまえは耐えられるかな?」
 「何なの?その前フリ。」


【母親になりたいねん】
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ロングトレリス国の女王(サルマ・ハエック)は不妊に悩んでいた。 赤ちゃんが欲しい、あ~赤ちゃんが欲しい。
よその妊婦を見ただけで、この世の終わりのようにガックリ落ち込むほど、女王の悩みは深刻だった。
国王(ジョン・C・ライリー)は女王が不憫でなんとかしてやりたいが、こればかりは縁の物。
「オ~ヨチヨチ。」と慰めるほかにない。

そんな時にひょいと現れた一人の魔法使いがお告げをした。
「海の怪物の心臓をえぐり取り、処女の娘に調理させて食べればオメデタ保証。」
 「マジッすか。」
「ただし犠牲は覚悟してチョンマゲよ。」

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↑ これを見て、10CCの『愛ゆえに』を思い出した人はまあまあのオッサン。

国王は真鍮製の潜水服に身を包んで、怪物が棲む海へと潜る。
母ちゃんのためならエンヤコ~ラ。
真鍮の潜水服は水中だと相当重いだろうに、それも道具がモリ一本だけでどうなるねん!というほど怪物はアホほどデカいのだ。
まあ、そこをなんとかするのが国王だ。  「そんな無茶な。」
実際なんとかしたのだ。  「したんかい。」

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「獲ったどー!!」

仕留めた怪物の腹を裂いて、心臓が取り出された。
よかったよかったと言いたいところだが、国王は怪物との闘いで深い傷を負ってしまった。
海辺に上げられてひっくり返ってる姿は怪物と同じ格好というのがシュールではある。
あわれ、国王は深手が原因でポテチンと亡くなってしまった。
これが魔法使いが予言した“犠牲”。

「私のために命を張ってくださったのね、オヨヨヨ~」と女王が泣きむせぶかと思いきや、こんな時のレディはドライなもんだ。
目的の心臓が手に入ったら、あとは知らん!
城に帰った女王は生娘の下女をひっつかまえて心臓を調理させる。
story_img02.jpg
召し上がれ~

 「ナマやん! 調理してへんやん! めっちゃ血ぃしたたってるやん! それも丸々1個そのままって! 一口サイズに切り分けるとかせえよ!」

黙々と心臓にかぶりつく女王。
お味の方は想像もしたくないが、完食した女王はまもなく妊娠した。
が、同時に心臓を調理した下女のお腹も大きくなっていた。

それから16年後。
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女王が生んだ愛する息子のエリアスは立派な青年に成長した。
また、下女も男の子を産み、ジョナと名付けられた。
 「↑ どっちがどっち?」
まるでクローンのようにゲキ似。 そしてともにゲキ的に顔色が悪い。
 
エリアスとジョナは不思議な絆で結ばれたかのように仲が良かった。
女王は嫉妬して怒る。
「奴隷の子に近づいちゃダメざます。」

反抗するエリアスとジョナは密かに入れ替わって女王をだまし、二人で国の王になろうと企む。
怒り狂った女王は・・・・・


 「・・・? 女王は・・・? そのあとは?」
 「さあ、どうなったでしょう?」
 「教えてよ。」
 「続きはWebで。」
 「くだらないよ、パパ。」
 「女王は魔法使いの手を借りることにした。 その後、コウモリの怪物がジョナを殺そうとするが駆けつけたエリアスによって退治される。」
 「エリアス、やばい。」
 「倒されたコウモリの怪物の正体は女王だった。」
 「えげつな~! 我が子に殺されちゃったってか!」
 「“母”でいられる日はそんなに長くない。 子離れできなかった母は自ら大きな犠牲を払うことになるのだな。」


【新しい世界が知りたいねん】
tale of tales toby jones
ハイヒルズ国の王女(べべ・ケイヴ)は未だ城の外から出たことがない。
まだ見ぬ世界も知りたければ、大人としての恋もしたい年頃なのに。
娘が可愛いあまりに城に閉じ込める国王(トビー・ジョーンズ)は、娘の成長には目を背け、変化のない日々に満足していた。

娘を手放したくないからといってもベタベタするわけではない。
むしろ娘のことなど、さして興味はない。
ただ、いなくなったらそれはそれで嫌なのだが。
 「どないやねん。」

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娘が楽器を弾きながら、父のために作った曲を披露してもまるで上の空の国王。
それよりも手の上を這ってるノミのことが気になる。
ノミに指をチクっとされた国王はますますノミのことが気がかりになって、自分の部屋で育て始めた。
エサを与えて与えて与えまくり、国王が手塩にかけたノミはスクスクと育った。
そして、こうなった。
tale-of-tales-1-600x296.jpg 
 「なに食べさせたん!?」
小さく産んで大きく育てる、とでもいうのだろうか。
 「使い道ちがうし! そもそも国王が産んでねえし!」
チリも積もれば山となる。 ノミも育てばでかくなる。
 「自然の摂理、ムチャクチャやん! 育てる方も育てられる方も限度なしかい!」
国王はノミをたいそう可愛がった。 ノミも国王によくなついた。
 「キモいというより、一周回って微笑ましいのぉ。」

無題 
しかし、間もなくしてノミは病気にかかってしまう。
「しっかりしてくれ、私の可愛いノミちゃん。 今、お医者さんを呼んであげるからね。」

国王はうろたえていたが、呼びつけられた医者はもっとうろたえていた。  「そらそうやろな。」
どうにかしろと言われても一介の医者には、死にかけているノミなどどうすることもできない。   「そらそうやろな。」
やがてノミは・・・・・死んだ。

国王は死んだノミの皮を剥いで記念に残しておくことにしたが、そこである余興を思いつく。
この皮を、何の動物の皮かを言い当てた男に、娘を嫁にくれてやろうというのである。  「どうかしとるぞ、オッサン。」

やがて挑戦者の男たちがやってきては「羊」だの「豚」だのと言うが、もちろんハズレ。
「へっへっへ。当てれる奴なんていねえだろうな。」とタカをくくっていた国王の前に現れた一人のオーガ(鬼)が、「ノミ」と即答してしまったのだ。  「あちゃ~。」
一度国王が出した御触れは絶対である。
可愛い娘を怪物のような男にやるしかないのだ。
絶望のあまりに城から身投げしようとするほどパニくった王女だが、なんとか思いとどまって、オーガのもとに嫁ぐ決心をしたのだった。
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 「殺生な話だねー。」
 「無論そこで終わりではない。 高い山の頂上付近にあるオーガの住処に連れて行かれた王女はなんとか脱出を試みる。 やがて、向かいの山を通りかかった旅芸人の一座によって王女は救出された。」
 「よかったねー。」
 「しかし、鬼を甘く見てはいけない。 どこまでも追いかけてくるからな。」
 「まあ、考えてみれば鬼は何も悪くないんだけどね。」
 「この物語が示すのは、飼い殺しにされたノミのように、どんなに立派に育っても外の世界を知らなければ死んだも同然。 ただし、知らない世界がユートピアとは限らない。 人には人それぞれの生きる世界があるということだ。」


【若さと美貌が欲しいねん】
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ストロングクリフの国の城下に二人のババアが住んでいた。
姉のドーラと妹のインマは仲のいい姉妹だったが、ドーラはめっちゃ声がきれいだった。
それこそ知らない人が目隠しして聞いたら、「どんなベッピンやねん」と思うほどの美声をしていたのだ。

3 taleoftales
ストロングクリフの国王(ヴァンサン・カッセル)は城の庭に裸の女をはべらせるほどのドスケベである。
ある日、城下から聞こえてくる美しい歌声に魅せられた国王のテンションの上がり方はハンパではなかった。
国王は町に出て、声が聞こえてくるあばら家の前で愛をささやく。  「サブっ。こいつサブっ。」

「お嬢さん、どうか、顔を見せてはくれませぬか。」
ババアたちはめっちゃアセった。
正直に顔を見せてもいいが、人に幻滅されるのは傷つく。
とにかくその日は適当にごまかして帰ってもらったが、来る日も来る日も国王はやってきて“美声の持ち主”に会いたがった。

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ドーラは腹をくくるしかなかった。
闇夜に灯りをつけないでほしいという条件で、国王の寝室にお邪魔することを承諾したのである。
顔が見えなければOKでも、ベッドに入って国王とコトに及んだ時はどうするつもりだったのか。
ドーラにすれば、まだアチラの方は全然現役ですわよという妙な自信でもあったのだろうか。  「コントやのぉ。」

そして約束の夜、ドーラは国王の寝室にやってきた。
しかし国王は約束を破って、ロウソクでドーラの顔を照らして見てしまったのだ。
パンパンになってた国王のアソコはいっぺんにしぼんだ。
 「アソコって?」  「アソコはアソコだ。」
 「陰茎海綿体のことね。」  「やめなさい。」

国王はドカギレした。
「誰か、このバケモノを放り出せ!」
手下たちによって、ドーラは窓から森に突き落とされてしまった。
倒れているドーラのもとに魔法使いが現れて、なにやらゴニョゴニョやって去っていった。
すると・・・・
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あ~ら不思議。 ドーラはみるみるうちに若返って美しい女性へと変身していた。
翌朝目を覚ましたドーラ(ステイシー・マーティン)は森をさまよっていたが、そこへ狩りに来ていた国王とバッタリ出くわす。
国王は例によってテンションが上がった。 なんたって裸同然の格好でナオンがウロウロしているのだから、これは“お持ち帰り”OKに決まっているとガッテン承知した国王はその女性を城へと連れ帰った。
もちろんその女性が、あのババアであるなどとは知る由もない。

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しばらくしてインマのもとにドレスが送られてきた。
国王の婚礼に招待されたのだ。
ドーラはすっかり国王のお気に入りとなって、遂には結婚にまで漕ぎつけていた。

場内で催されているパーティーの中に入っていったインマはドーラと久しぶりの再会を果たす。
だがドーラはもう昔の仲のいい姉ではなかった。
ドーラにとっては、せっかくつかんだ幸せである。
「私もここにいたい。」と妹はせがむが、そんなわけにはいかない。 正体がばれたら水の泡だ。

「なんでそんなに若返ったのか」とインマに問われたドーラ。
気がつけばそうなっていたのだが、ドーラは適当に「皮を剥いだ」と答える。
やがて国王に見つかって城を追い出されたインマは、若さと美貌を求めて町をさまよう。 誰か、私の皮を剥いでくれないか・・・

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 「ウッゲー! マジか!」
 「昔の中国の刑罰にも「皮を剥ぐ」というのはあったらしいがな。」
 「でも、なんだか女の欲望がすっごいドロドロしたお話だったね。」

 「見た目の美しさの魅力は何物にも勝る。 国王も姉妹もあの美しい声が説く、目に見えぬ物の魅力を心から亡失してしまったがために悲劇に見舞われる。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 「これでお話は全部だ。 さあさあ寝た寝た。」
 「う~ん、あんまり刺激的な話なので目がさえちゃったよ。」
 「そう言わずに。 パパも早くママとアレやコレやをしたいんだよ。」
 「私、妹より弟が欲しいなあ。」
 「だったら早く寝なさい。」

 「へい。」

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バロック絵画やルネサンス絵画を意識しているのが明らかな構図がそこかしこに出てくる美しい映画ではある。
そうか。 思えばこの監督さんは元画家でしたな。
そして、絵画的映像美に並行して居座るグロテスク描写の雨あられ。
この融合がバッチリ効いている。
シュールと醜悪とスプラッタなど、ドン引きシーンが美しい色合いと構図で描かれれば却って「「ええもん見たな」という気分になれる。
なんとも不思議な感覚の面白さだ。
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女のサガに焦点を当て、三つの物語をささやかにリンクさせながら綴られる3人の女の悲しい物語。
おとぎ話的な教訓もいろいろと仄めかされてはいるけれど、やはり絵の力が凄いので、まずは目で楽しみたい映画だ。
極端に振り切れる人物の思考とキャラもおかしみがあって、そこも魅力の一つ。

「ペンタメローネ」の他のエピソードも映画化してくれないだろうか。
この監督さんの次回作は「ピノキオ」の実写版だそうだが。

16.jpg 

「賢人のお言葉」
 
「すべての人間の一生は神の手によって書かれたおとぎ話にすぎない。」
 ハンス・クリスチャン・アンデルセン
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