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君の名は。
2016年09月10日

 新海誠監督の待望の最新作。T0020640p.jpg

思えば「秒速5センチメートル」は傑作すぎましたな。
観る人を選ぶ作品かもしれないけど、アッシにとってはアレはちょっとした衝撃を与えられた「体験」そのものの映画だった。

現実ドラマである「秒速5センチメートル」の次作、「星を追う子ども」が一転してジブリ色満載のド直球ファンタジー。
なんだかなあ、これ・・・と思いながらも、「ほしのこえ」や「雲のむこう、約束の場所」(2作とも未見ですが)などの初期作品はもともとSF志向。
なので、むしろ方向性を戻したのならばやむを得ないなあと思ったのだが、その次の「言の葉の庭」がまた現実路線。 この映画も悪くなかった。

SFファンタジーもいいが、あれだけ神的ハイクオリティの映像を表現される監督さんだから、その背景美に浸りながら、奇をてらわないリアルなドラマが観たいなあと思うのだが。

これからも、新海監督について回るスタンダードになるであろう「秒速5センチメートル」をひょっとして超えたのではとの呼び声も高い「君の名は。」。
お客さん、入ってるねえ。
目ん玉飛び出そうなほどの鬼ヒットじゃないですか。 これほどとは予想外。
「シン・ゴジラ」といい、「君の名は。」といい、東宝さんウハウハだね。 おめでとうございます。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

東京に暮らす男子高校生と、田舎町に暮らす女子高生の、二人の不思議な体験を通じて描かれる、出会いと運命のファンタジー。
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立花 瀧:たちばな たき(神木隆之介)

東京都心に暮らす男子高校生で 父子家庭。
マジメな秀才君でもなければ、不良でもない。 そこそこしっかりした友人たちと、のほほんとした高校生活を送っている。
イタリアン・レストランでバイトしており、同僚の奥寺先輩(長澤まさみ)にその気あり。

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宮水 三葉:みやみず みつは(上白石萌音)

山間部の田舎町、糸守町に暮らす女子高生。
宮水神社の歴史と伝統を守る家系であり、三葉は神社の末裔で、祖母の一葉(市原悦子)は神主。
神職を捨ててまで町長になった父親はすでに家を出ており、妹の四葉(谷花音)と祖母とで三人暮らし。
小さくて狭くて何もない町に嫌気がさしており、東京あこがれがハンパない。

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
主人公のこの二人。 もちろん、お互いのことは知らない。
ある朝目覚めると、なんとなく部屋の感じが違う・・・。
何よりも、自分の体がおかしい。
そして、ようやく自分の体がどこかの他人の体と入れ替わってることに気づくのである。

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それが、ずーっとそのままで元に戻らない訳ではない。
一晩寝て、次の日の朝に起きたら元に戻っている。
そして、これが一日置きという訳でもなく、不定期の割合で、寝て起きたら体が入れ替わっていることが幾度となく繰り返されるのである。

最初の頃は夢ではないかと思いつつ、次の日に元に戻っても、自分を取り巻く状況が微妙にあるいは劇的に変わっていたりするのである。
やがて、お互いの名前や私生活などを知るに当たり、いよいよこれは現実に起きてることなのだと知る。
もちろん最初は戸惑うが、二人はお互いだけの秘密にし、入れ替わってる間は三葉として、知らない田舎の街で三葉の生活をし、三葉として、憧れの大都会・東京の暮らしを満喫する。

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だからと言って。 入れ替わってる間の相手の人生をかき回さぬようになどと神経を尖らせはしない。
田舎暮らしの女子高生と都会暮らしの男子高校生という、お互い全く正反対の世界を交換するとなると、やっぱり楽しまなきゃ損とばかりに、けっこう余計なお世話までやっちゃうのである。

82年の大林宣彦監督作「転校生」を彷彿とさせる内容ながらもさすがに今どきの話であるがゆえ、スマホ抜きには語れない。
入れ替わってる間に何をしたかの記録や、連絡事項の申し送りなど、スマホをバンバン活用。
普通、こんなオカルトな事態に陥ったら、なんとか日常を取り戻したくて、何か手を打とうと奔走したくなるもんだと思うが、不安に思うことなく未体験人生をエンジョイできるのは、モバイルの機能の大活躍があったればこそ。
便利な世の中じゃのお。
とにかく新海監督作の中では、特にスマホがやたらと幅を利かせてるのが本作の特徴の一つ。

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三葉暮らしているのは、山に囲まれた大きな湖が中心にある糸守町。
宮水神社に古くから伝わる神事が今も残り、世界最古の酒と言われる「口噛み酒」を神社のご神体に奉納する儀式を務めるのも末裔である三葉の役目。
少々見た目が奇異に映る神事に携わってる時の三葉を、学校の同級生たちはバカにするが、テッシーこと勅使河原君と早耶香ちゃんとは幼なじみの大親友で理解も深い。

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三葉の体に入ったが、朝目覚めてすることは、まずは胸を触ること。
小4の妹、四葉「ねえちゃん、いつまで寝とるんね!」と障子を開けたら、胸をもんで恍惚としてる姉の姿に出くわすことしばしば。
最近どうも姉の様子がおかしいことを気にかける四葉ちゃんのリアクションもまた面白い。

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宮水神社の風習を守るお祖母ちゃんの一葉は、伝統工芸の「組み紐」を通じて三葉)に「ムスビ」について説く。
「ムスビ」とは糸守で土地の氏神様を言い表す古い言葉。
広い意味で、神様の成せる業であることはすべて「ムスビ」。
糸や人をつなげること、人の体に入ったものが魂と結びつくこと、時間の流れもまた「ムスビ」なのである。

最初は今いちピンとこない、婆様による講釈は後のち重要な意味を帯びてくる。
そしてこの婆様も意外なキーマンであるのだが。


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の友人は、やけに落ち着き払っているメガネ君の藤井司と、大柄で世話好きな高木真太。
学校に迷うわ、バイト先の場所も忘れたというを怪訝に思いながらもクールにアドバイス。
糸守ではバス停前の自販機横のスペースが唯一の「カフェ」だった三葉にとって、たちと行く「カフェ」はまさに夢にまでみた空間でテンションが上がる。

三葉の心に入れ替わったは、憧れだった東京での生活に浮かれながらも、今まで縁遠かった「恋愛」にも首を突っ込むところがミソ。 
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のバイト先であるイタリアン・レストランで同僚たちの憧れの的である先輩の奥寺ミキは優しくて大らかで少しオトコマエな匂いもある美女である。
みんなが入れ込むのも分かるぐらい、これぞ「ザ・いい女」の典型なのだ。

中身が三葉になってるの、いつもと違う感じがどう受けたのか、奥寺先輩から誘われる。
同僚たちの殺気立った視線が痛い。
三葉が勝手にデートの約束を取り持ち、(ノーマルの)は舞い上がりながら奥寺先輩とヒルズのシティビューへ。
なんと奥寺先輩、オフショルダーで登場。 めっちゃ似合ってるっす!かわいいっす!

でも、この時すでにの心には自分で意識していないが、別の一人の女性の存在があった。
奥寺先輩はそういうところにも敏感である。
引き際もカッチョよすぎる大人な奥寺先輩。 アッシでよければどうですか!

後半ではのために一肌ぬぐ奥寺先輩司君が大活躍だ。

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ティアマト彗星が地球に最接近しているニュースで巷が盛り上がってる時、ある日を境に「入れ替わり」がパッタリとなくなった。
それはそれで今までの日常に戻ったからいいのだろうが、はどうしても三葉のことが気になって仕方がない。
三葉に電話するが、いつもつながらない状態なのが気になる。
やがて三葉に会うために糸守町へ行くことを決心するのだが・・・・

さて、映画はここから後半へと入っていくが、三葉が入れ替わるという現象には一つのれっきとした意味があり、映画の前半の明るかったトーンをガラッと変えるほどの、あまりに悲惨な真実が突きつけられる展開になだれ込む。
まるでキツネにつままれたかのような、時空を隔てた「大惨事」の歴史がに立ちふさがり、三葉との絆が「過去」となって途絶えてしまう。
だがはあきらめることなく「ムスビ」を信じて、一度は切れた糸を元に戻そうとするのだが。


あれこれ詳しく書いてもいいが、あえて伏せときましょう。
気になる方は余所をあたってください。と言うよりも、ぜひ映画館で本編を拝見していただきたい。
ともかくもあまりに壮大であり、ファンタスティックなストーリーは単にその面白さだけに留まらず、人にとっての「出会い」という事象についての真理の核心にまで思いを馳せずにはいられない。
大き過ぎて、形そのものがつかみ辛いテーマが不思議と心の中にスッと染み込んで、なんとも言い難い余韻を残していく。
色々と問いかけては色々と仄めかせてくれる映画なのだ。
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私たちはこの世に生まれ落ちてから人生を歩んでいく中で、たくさんの人と出会う。
その中から親友になったり、恋人になったり、伴侶となったり、または誰かに仕えたり、恩師になったり、あるいは傷つけたり、裁いたりと、自分の人生に深く関わる人との出会いの中には、いかなる運命の差配があるのだろうか。
人智を超えた何かの手によって、様々な色や太さの糸を絡ませて繋げて、私たちはその人に会うべくして会っているのかもしれない。

また人だけでなく、学業や職業などの人生のステージ、そして好きな音楽、好きな動物、好きなスポーツ、好きな映画など、これらを選択した時の自身の感覚にはその心の奥底にある何らかの"選んだ理由"が秘められているとも考えられる。

数多くある選択肢から、なぜそれを選んだのだろうか。
たくさんの顔と名前とすれ違ったのに、なぜその特定の人と繋がったのだろうか。
なぜ好きな趣味と興味のない物事に分かれたのだろうか。
多くの人と物と出会う人生には必ずや意味があるのではないだろうか。
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その誰かと出会ったのも、その仕事を選んだのも、好きな趣味ができたのも何か理由がある。
この世界が「人」という糸の繋がり合いで出来ていて、どこかの誰かと誰かが互いに影響を受けながら紡がれた糸は一枚のタペストリーとなって、人生に「物語」という意味を吹きこんでいく。

私たちには、生まれた時からどこかの誰かに勇気を与えて、癒して、励まして、愛するという使命を担っている。
「自分は誰の影響も受けていないし、誰かを救ってるつもりもない」と思うなかれ。
実感はなくとも、過去にも、またこれからの未来にも、貴方の人生の選択は世界のどこかの誰かの心に繋がっている。

この映画を観てて、この20年で日本人が体験した3つの大きな震災が頭をよぎる人もいるだろう。
未曽有の災害は「なぜ?」や「あの時こうしていれば」の疑問や後悔が多くの人の心を苛んだ。
のように時空を超えた奇跡など私たちには起こせないけれども、それでも大災害の中で生に留まった人には必ず"生かされた"意味がある。
亡き魂から託されたなんらかの使命があるはずなのだ。
遠い地で右往左往した我々にも、全員ではないにせよ、これからの人生の選択が傷ついた多くの人とどこかで将来繋がることになるのかもしれない。
その時下した決断と行動は「誰か」のためにある。
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三葉が祖母である一葉から組み紐を習いながら縦の糸や横の糸との絡みで、神様や時間との繋がりを説くシーンには、中島みゆきの「糸」という歌を思い浮かべる人は少なくないはずだ。
・・・縦の糸と横の糸が織りなす布はいつか誰かを暖め、誰かをかばう。
・・・逢うべき糸に出逢えることを「仕合せ」と呼ぶ。
・・・赤い一本の組み紐が繋ぐ縦の私と横のあなたの物語が辿り着く「仕合せ」に、人と人がめぐり会うということの奇跡に強烈な感動を覚えずにはいられない。

とは言っても、「糸」の歌詞がピッタリ過ぎても、そこで劇中にカバーを流すほど安易ではない。
新海監督の作品の特徴でもある「歌」は、今回「RADWIMPS」が劇伴も兼ねて主題歌などを担当。
歌は4曲提供されてるが、流れるシーンごとの小憎らしいまでの使い方には身もだえするばかり。
いやあ、ちょっとずるい。 感動するなってのがムリ。
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♪ 君が全然全部なくなって チリヂリになったって
もう迷わない また1から探しはじめるさ
むしろ0から また宇宙をはじめてみようか

  「前前前世」より

♪ 運命だとか未来だとかって言葉が どれだけ手を伸ばそうと届かない場所で僕ら恋をする
時計の針も二人を横目に見ながら進む
そんな世界を二人で一生 いや何章でも
生き抜いていこう
  「スパークル」より

♪ 5次元にからかわれて それでも君をみるよ
また「はじめまして」の合図を決めよう
君の名を 今追いかけるよ
  「夢灯籠」より

♪ 僕らタイムフライヤー 君を知っていたんだ
僕が僕の名前を覚えるよりずっと前に
君のいない世界にも 何かの意味はきっとあって
でも君のいない世界など 夏休みのない八月のよう
君のいない世界など 笑うことないサンタのよう
君のいない世界など
  「なんでもないや」より

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「賢人のお言葉」
 
「人間は一生のうちに逢うべき人には必ず逢える。 しかも、一瞬早すぎず、一瞬遅すぎない時に。」
 森信三
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