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海街diary
2015年07月01日

T0019224p1.jpg 「そして父になる」の是枝裕和の最新作。
マンガ大賞2013を受賞した吉田秋生の人気漫画の実写映画化です。
読んだことはないですが、性別・年代を問わず幅広い世代から高い支持を受けている作品だと伺っております。

是枝監督も、原作モノはめったにやらないというか、これまでは長編デビュー作の「幻の光」の1作品しかありません。(原作:宮本輝)
「原作モノに心動き、心踊ることは少ない」という是枝監督がコミック1巻目を読んだ時から、自分の手で映画にしたいと熱望したといわれる「海街diary」。
鎌倉に暮らす三姉妹が異母妹を引き取り共同生活を始め、絆を深めていく物語です。
いやあ・・・これはいい映画ですねえ。

鎌倉といえば、あぐらをかいたパンチパーマのオッサンの銅像しか思い浮かびませんが、この映画にはそんなベタ・ポイントは出てきません。
しかし、さすがは由緒ある古都。
どの風景を取っても、ほっこりと癒されますねえ。


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鎌倉の極楽寺に住んでいる香田三姉妹。
長女・(綾瀬はるか)
次女・佳乃(長澤まさみ)
三女・千佳(夏帆)

両親は離婚。
父は15年前に家族を捨てて出ていった。
(大竹しのぶ)も再婚して家を去り、姉妹を育てた祖母も亡くなって、広くて古い家に三姉妹だけが残された。

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幸:さち
市民病院の内科病棟看護師。(後にターミナルケア病棟の主任に昇格)
しっかり者を絵に描いたような、生真面目な長女。
妹たちに向かって、ああしろこうしろと言う姿は長女と言うより、まるでお母さん。
食卓でも・・・「ちゃんと座る!」「かき込まない!」
離婚直後に自分たちを祖母に押し付けて男のところへ逃げたとは未だにソリが合わず、顔を合わすたびに修羅場になる。
同じ病院の小児外科医・椎名和也(堤真一)と不倫関係にある。

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佳乃:よしの
信用金庫勤務。 店頭業務から後に外回りへ。
次女らしく、奔放な性格で細かいことは気にしない。
ビールが大好き。 しかし酒癖ワルし、ついでに男運もワルし。
金を貸してる年下のカレシの、ヘタレで胡散臭さい部分を仕事場でもろに見てしまって別れることに。
風呂場に出没するカマドウマ(便所コオロギ)が大の苦手。

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千佳:ちか
スポーツ用品店「スポーツマックス」に勤務。
マイペースで掴みどころのない性格。
姉たちがケンカをしても場を和ませる緩衝材のようなキャラクター。
父とは物ごころがつかないうちに別れてしまったので、どんな人だったのかを知らない。
「スポーツマックス」の店長・浜田三蔵(池田貴史)に好意を寄せている。


夏の日、父の訃報が届く。
再婚相手の女性はすでに亡くなっており、父は3度目の結婚をし、山形で暮らしていた。
三姉妹は父の葬儀に山形まで赴くが、そこで腹違いの妹・すず(広瀬すず)と出会う。
父の最後の奥さんとなった浅野陽子は、葬儀の挨拶もどうやっていいか分からない頼りない女性だったが、そんな義母を気丈に支えるすずの姿に心を動かされた「鎌倉で一緒に暮さない?」と声をかける。

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浅野すず
香田三姉妹とは腹違いの中学生の妹。
父と2番目の結婚相手だった母とはすでに死別しており、再々婚相手の義母のもとで暮していたが、父の死をきっかけに山形の家を出て、香田姉妹との同居生活を決心する。
長女似のしっかり者で、気配りも効くマメな子である。
以外にサッカー少女。 以外にドリブラー。
梅酒でぶっ倒れるほどアルコールは激的に弱い。(梅酒は案外酔うよね。ってか、中学生はダメでちょ!)

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こうして香田家にやってきたすず
もちろん最初は姉を「さん」付けで呼んだりして硬いのですが、徐々にほぐれてきてどんどん三姉妹の中に溶け込んでいきます。
こうした物語の中では、姉の中に一人ぐらいツレない態度を取る者がいる設定があったって不思議ではないのでしょうが、三人共に懐が広い。
それが普通なのだろうけど。
お腹が誰だろうと何より妹であるし、一番年下ということもあるし、入院中の時の父を義母よりも世話してくれてたことや、極端に言えば縁もゆかりもない義母のもとではすずの居場所がないことを思い遣ったことなど、姉たちがすずを受け入れる理由は少なくありません。

三姉妹は大仰に言うと両親に捨てられた存在です。
恨む気持ちもあれば、何であれ父親の今わの際まで傍にいたかった想いもあるでしょう。
父親の最期の顔、最期の声、最期の匂いを知る妹を家族に迎え入れることで、やっと家族の一員が帰ってきたという感覚が、姉たちのすずと接する姿から感じ取れます。
すずが家庭の中に加わり、少々複雑な状況にある妹と絆を深めていくうちに、三姉妹それぞれの人生観のドラマが動き出すのがミソですね。

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は三姉妹の長女というポジションのためか、とにかく自分がしっかりしなければと、なんでもかんでも抱え込んでしまうタイプですね。
下の妹に弱音を吐いたり相談したりということも滅多になかったのでしょう。(後半やっと相談するんだけどね)
大叔母(樹木希林)からは、安易にすずを引き取ったことに対して、「犬や猫じゃないんだから。 あの子はあんたたちの家庭を壊した奥さんの子なんだからね。」などと言われる。(随分な言い草ですがね)
こういう雑音が出るのも承知だし、それを払いのけてでもがこだわりたかったことは叶わなかった家族の再生なのではないでしょうか。
父が家を出て行った時の幸は丁度、すずと同じ年齢の頃ですね。
すずを一人にしてはおけなかったの気持ちは分かります。

ただ、も一方的に父を非難できない状況にあるのが複雑なところ。
自分も不倫をしてるんですからね。 それも彼が奥さんと別れるのをじっと待っている。
久しぶりに顔を見せた母親と幸が口論になった時、「元はといえばお父さんが女の人を作ったのが原因じゃない。」などと口走る。
それを耳にしたすず「奥さんがいる人を好きになるなんて、お母さんよくないよね。」とポツリと漏らした言葉が幸の心に突き刺さる。
家庭を築くのは難しいが、家庭を壊すのは簡単か・・・いや壊すのもそれなりに難しいものですな。 壊してはいけないんだけども。

死ぬと分かっている人の最期まで看取るターミナルケア病棟の配置になったにひとつの転機が訪れます。
不倫関係を続けてきた椎名和也がボストンに赴任するのだという。
妻とは別れるので一緒に来てくれと・・・・・

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佳乃がダメ男ばかりを好きになるのは父親の面影を追っているからなんでしょうか。
父と別れたのは小学生の頃なのでそのトラウマはよりも案外深いのかもしれません。
恋愛に関してはとは少し違う角度で影響を受けていますね。

仕事への向き合い方が変わり、渉外の業務に出ていくことになるのが佳乃の転機です。
男と別れたのが最初の引き金なんですが、すずとの関わりを通して、自分のことも含めて、人の人生設計の手助けに責任を負っていく仕事をチョイスする彼女の気持ちもなんとなく理解できます。
思いやりとシビアな側面を持ち合わせなければならない渉外業務はきついと思いますが。
彼女はその過程で、三姉妹の中では特に早く、いつかは訪れる物事の終わりという世の理を受け入れるのです。

行きつけの食堂「海猫食堂」の店主・二ノ宮さち子(風吹ジュン)の人生の幕引きの選択は、佳乃の殻が一枚剥がれるきっかけにもなります。
家族でもいつかは誰かが出て行ったり、亡くなったりするし、永遠なものではないことを真っ直ぐに捉え、だからこそ今という時の重みを知った佳乃は一回り大きくなったように感じます。

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三女の千佳は、父の記憶がありません。
生きている父と対面することなく、父が逝ってしまった事に対する感情は、どうせ「家族を捨てた人だから」と割り切ってたのでしょうか、それとも元々父親がいないという実感が無かったのかもしれません。
いずれにしても前半の千佳はその点に対して自分の想いを口にしないので何とも言い難いのです。
しかし、自分より幼いのに、遥かに自分より父のことを知っているすずが家にやってきたことで揺れ動く心理は切ないものがあります。
すずに対して嫉妬に似た感情を抱いてもおかしくないのですが、三姉妹の中では最も仲良くしてるのが千佳でしたね。
勤務先の「スポーツマックス」が後援してる地元サッカークラブにすずが入ったという繋がりもありますが、彼女がすずに対してあれこれ教えたりするシーンは、見たことのない父を仮想して話しかけてるような気がします。

ちくわカレーをすずと食べるシーンで、「今度、お父さんのこと、聞かせてね。」と語りかける千佳の表情がたまりませんね。
「今、聞かせて。」と言わないところは、やはり彼女なりに父の死を引きずっているのか、自分より父を知っている妹に対して強がっているのか、ここを想像するとなんとも胸がキューッとなります。

姉からは「男の趣味が謎だ」と評される千佳は、「スポーツマックス」の店長・浜田三蔵に好意を寄せています。
パンチの効いたアフロヘアーをしていて、まるで小型のパパイヤ鈴木です。
登山が趣味で、過去に遭難しかけて、凍傷で足の指を三本ずつ計6本失っている浜田さん
に足を見せたがる。 「見ます?」 見ねーよ。
登山は辞めてしまってるんですが、山のポスターを見てる浜田千佳「また登りたい?」と問いかけるシーンもこれまたいい!

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香田家にやってきたすずですが、彼女なりに自分の居場所について心が揺れ動きます。
自分の判断で決めたことですし、そもそも肉親は幸たちだけですから、すずが姉妹と暮らすのは筋は通っているのですが、すず本人が一番簡単に割り切れない複雑さを抱えています。
自分の母が姉たちの幸福な家庭を壊したこと。
その母親から生まれて育ち、身寄りのなくなった今、自分の母が壊した家庭の中へと入っていくことになる彼女が心の置きどころに迷うのも無理はありません。
「すずはここに居ていいんだよ。」から掛けられる温かい言葉もありがたいのですが、の口論を傍で聴けば、自分という存在が周囲の人を傷つけていることがすずの心を穏やかにはしません。

姉たちにとっては何のことはないのですがね。
も、佳乃も。千佳も、それぞれ自分の周囲を取り巻いている色んな事が人生観を広げている真っ只中。
すずの気持ちもおもんばかってやれるぐらいのハートは三人とも豊か。
すずは血のつながった可愛い妹。 それ以外の何者でもない。

姉たちや学校のクラスメイト、食堂のさち子さん、山猫亭の福田さん(リリー・フランキー)など、屈託のない触れ合いの中ですずが徐々に香田家の末妹として、鎌倉の民として、自分の居場所を固めていく。
そんな一人の人間の成長の移ろいを見守るこちらも温かい気持ちになりますね。
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そんなすずにも少しづつ恋の風が吹き始める。
風太(前田旺志郎)の気持ちを彼女はもう分かってるでしょうよ。
人を愛する気持ち。 それを知った時にお母さんを赦せるだろう。 お姉さんたちの気持ちももっと分かるだろう。

「桜のトンネル」のシーンが素晴しいの一言に尽きる!
ロケ地は沼津の愛鷹広域公園だそうです。 鎌倉じゃありませんが、そんな小っちゃいことはいい。
桜の命は短いが、こんなにも美しい花を咲かせる。
人の人生だってあっという間だ。 だからこそパッと花を咲かせようじゃないか。
自分が輝いて、見る人を幸せにして、そしてやがてはパッと散って幕を閉じる。
君よ、桜であれ。 君はどんな花を咲かせるのだろうか。

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劇中、四姉妹はとにかくよく食べる。
何が出てきましたっけね?
「しらす丼」、「しらすトースト」、「蕎麦」、「おはぎ」、「アジフライ」、「シーフードカレー」、「ちくわカレー」、「梅酒」などなどありましたが、この映画観て、「アレが食べたくなった」という人は多いでしょうし、それぞれ何にそそられたでしょうかね?
久々に梅を漬けてみたくなった人が多いようですが、アッシはアジフライですね。
アジフライ自体ハッキリとはシーンに出てこないんですが、海猫食堂自慢の看板メニューとしてあれだけ「アジフライ」を連呼されたら食べたくてたまらんですな。
確か、かっぱ横丁に「魚魚屋」があったよなあ・・・。

「食べる」ということが数多く描写され、一方で人の死もついて回るこの映画は、そこに「人が生きる営み」についての尊厳がさりげなく語られています。

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この映画で最も感服したのは、スクリーンのフレームの中の姉妹たちのポジションですね。
四姉妹全員、あるいは三姉妹が、同時にフレームの中に収まっている時の、位置取り、距離感が実に絶妙。
もちろん演出による計算のもとに配置されてると思いますが、いくらかのパターンを何テイクか撮って試行錯誤しながらやったのか、それとも一発でキメたのか、そういうところが気になったりしますね。
どんな映像作品でも、フレームの中に数人の俳優を配置して撮影する時のやりくりは当たり前にあるでしょうが、この映画は特に緻密。

本作はセリフの量もグッと抑えめなんですが、誰と誰がどこに立っていて(座っていて)、どのくらいの距離を取っているかで、元々饒舌ではないセリフの行間が埋められています。
人物がいかなる心理下で会話のやり取りがされているか、セリフの絶妙な"間"の良さも相まって、言葉以上に心がリアルに伝わってきます。
フレームの中の人間と空間の、息を呑むバランス感。 四季折々の風景美を捉えただけでない、五感を刺激する魔術が全編に行き渡っています。
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役者さんもみんないいですね。
四姉妹役の中で特筆すべきは長澤まさみですね。
彼女には驚かされました。 素晴しい仕事をされてますよ。
佳乃というキャラクターが個人的にいいってこともありますけどね。

綾瀬はるかは、遂に代表作キター!じゃないでしょうか。
こういう彼女を観たかったんですよ。
夏帆は「箱入り息子の恋」とは随分印象が変わりましたが、きっちりとキャラを作り込んできたってとこなんでしょうか。
広瀬すずも期待以上ですね。 風呂上がりにバスタオルをバーンとおっ広げるシーンに拍手!
17歳の女の子の失言の一つや二つ、いい大人が寄ってたかってワイワイ言いなさんなよ。
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由比ヶ浜のラストシーンがきれい~
続編製作か?みたいな話も持ち上がってますが、どうなんでしょうか。
期待したいですねえ。


「賢人のお言葉」
 「誰かが他の誰かよりも偉大であるということはない。 大人になれば父も母もない。 ただ、兄弟姉妹がいるだけなのだ。」
 シェルドン・コップ
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四姉妹は“大人の事情”を理解し、誰のことも恨んでいない。そして、自分たちの力で親不在の“家庭”をしっかり築き上げた。彼女たちの姉妹ゲンカも、恋も、普通っぽいファッションも見ていて楽しい。若い女性中心のホームドラマは新鮮だ。
作曲♪心をこめて作曲します♪: 2015年10月15日

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