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6才のボクが、大人になるまで。
2014年11月27日

T0019403p.jpg 「恋人までの距離(ディスタンス)」、「ビフォア・サンセット」、「ビフォア・ミッドナイト」の"ビフォア三部作"で知られるリチャード・リンクレーター監督の最新作。
今年のベルリン国際映画祭で監督賞(銀熊賞)を獲得したこの映画はちょっと凄い。

主人公の少年の6歳から18歳までの12年間を描いた作品なのだが、驚くべきは同じ主要キャストでそのまんま12年間も撮影を続けたということ。
もちろん、少年の役も同じ俳優が演じている。
ドキュメンタリーではない。 れっきとした劇映画である。

一本の映画を同じ俳優で12年間の歳月をかけて撮り続ける。
そんなことが可能なのか。 1年につき、わずか3~4日間の撮影とは言え・・・。
誰か一人ぐらいは、のっぴきならない事情で撮影に参加できなくなることだって有り得る。
ましてや、6歳から18歳までを一人で演じることになった少年は、家庭環境や教育上の問題など、彼一人の一存ではどうにもならないケースだって十二分に考えられる。

以前にマイケル・ウィンターボトム監督の「いとしきエブリデイ」という作品があった。
母子4人の物語を5年の歳月をかけて撮ったもので、あれはあれで歳月の重みがズシリとあったが、本作はそれよりも上の12年。
これは、無謀とも言えるプロジェクトを奇跡的に完成させたリチャード・リンクレーターの渾身のマスターピースである。

主人公の少年メイソンを演じたのはテキサス州オースティン出身のエラー・コルトレーン。
あどけない子供時代から、やがてビールとキスの味を覚える青年へと成長していく姿が、さすがに時の流れの説得力をまざまざと見せつける。
母親オリヴィア役にパトリシア・アークエット。 離婚して離れて暮らす父親メイソン・Sr.役にイーサン・ホーク。
どちらもリンクレーター作品のレギュラー・カスタマー。
サマンサには監督の娘さん、ローレライ・リンクレーターが扮している。

          

2002 【母、引っ越し宣言発令】
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ボクもお姉ちゃんも「ハリポタ」が大好き。
ママは毎晩ボクらの寝る前に「ハリポタ」を読んでくれる。

そんなママがある日、僕らに向かって「引っ越しします。」と言った。
ヒューストンだって。
もう一度大学に戻って勉強して教職員になりたいんだそうだ。
友だちと別れたくないお姉ちゃんは反対に1票を投じた。
パパがボクたちの居場所が分からなくなったら嫌なので、ボクも反対の意思を表明したけど、ママは強行採決に踏み切った。



2002 【両親緊急会談】
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今はボクたちと一緒に住んでいないパパはアラスカに行ってたけど、久しぶりに帰って来た。
お祖母ちゃんがパパに凄いイヤミを言っている。
パパはボクたちをカッコいい車に乗せて遊びに連れて行ってくれた。
ボーリングをした。 ガーターばっかりでつまらない。
バンパーレーンの方がいいってパパに抗議すると「人生は甘くないぞ。」という答弁が返ってきた。
関係ないと思うけど。

宿題そっちのけで遊びまわっていたので、帰ってきたママはオカンムリだった。
パパに「ちょっと外で話しましょ。」と言って、玄関前でパパとママの首脳会談が始まった。
それを見て、やっぱりパパはもう家には戻ることはないと思った。


2005 【母、再婚の儀&継父不信任案可決】
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ママが大学に通うようになって知り合った先生のビルとママが再婚した。
ビルにはミンディとランディという子供たちがいて、ボクらはすぐに馴染んだ。
だけど、ビルというオヤジは最悪のやつだった。
なんでもかんでもルールでボクたちを縛るんだ。
家の雑用を命令して時間内に出来なければ怒鳴る。 自分は酒ばっかり飲んで。
2週間に一度パパに会えるので気晴らしになるけど、パパにビルのことを言う気にはなれない。
ビルに無理矢理、五分刈りにされた時には、さすがにボクはママに「なんで再婚なんかしたんだよ。あいつサイテー。」」と抗議声明を発表したけど、ママは「完璧な人はいない。」と答弁した。

やがてビルは暴力を振るうようになり、ママは意を決して、友人の家に避難することにした。
ビルは物凄く怒ってたけど、ボクはミンディとランディのことが気がかりだった。
ボクとお姉ちゃんは、また学校が変ってしまった。


2008 【家族改革】
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僕はどうしてもパパに聞きたかった。
「今の世界に妖精なんていないんだよね?」
パパはクールに返す。 「理論上はな。」

バラク・オバマが大統領候補になり、熱烈な民主党支持者のパパはキャンペーンに大忙しだ。
ご近所さんの道路前の敷地に「オバマ&バイデンに一票を」という立て札を立てて回るんだ。
ちなみにパパはミュージシャンの道をあきらめ、保険計理士の資格を取って保険会社に勤め出した。
ママは修士号を取って教員になれる大学を探している。

15歳になったサマンサは、パパに「避妊はどうやってするの?」なんて聞いている。
パパはそんな話ならまかせろと言わんばかりに、テンションが上がり、人がたくさんいるファミレスの中で叫んだ。
「コンドームをつけろ!」
僕もパパに質疑応答を求めた。
「女の子と二人っきりになったらどんな話をしたらいいの?」
「カノジョを質問攻めにしろ。 その答えを熱心に聞いてやるんだ。 そうすればライバルを引き離せるぞ。」


2011 【青少年健全育成】
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ママの働く大学が決まって、僕たちはオースティンに引っ越し。
またまた学校が変って、僕はゲイ呼ばわりされながらも、友だちも多くできたし、ガールフレンドもできた。
ビールとキスの味を覚えた15歳。

ママは感謝祭のパ-ティで知り合った元陸軍兵のジムと一緒に、新たに買った中古の家で暮らし始めた。
一方パパはアニーという女性と再婚し、既に赤ちゃんもいる。
昔と比べて妙にまとまってしまったようなパパは、僕が16歳になったらくれるって約束したはずの車、ポンティアックGTOを売り払ってしまい、ファミリーカーに乗っている。
「俺、そんなこと言ってねーよ。」 「言ったよ!」
どのみちGTOはもうないからしょうがないけどね。

僕の誕生日の週末にお祖父ちゃんの家に行くと、プレゼント責めに遭った。
パパは自分で編集したビートルズのCDをくれた。 『ブラック・アルバム』だって。 それメタリカだよ。
お祖母ちゃんは聖書、アニーはスーツをプレゼントしてくれた。
お祖父ちゃんはライフル銃をくれた。 お祖父ちゃんの手取り足とりのレッスン付きだ。


2012 【思想及び良心の自由は、これを侵してはならない】
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僕はカメラを買ってもらったことがきっかけで写真に夢中になった。
たくさんの写真を撮って、コンクールでも上位になったけど、本当に撮りたい写真ってのはこんなんじゃないんだ。
授業をさぼってまで学校の暗室にこもってると先生もさすがに怒ってた。

高2になってから付き合い始めたシーナと一緒に、サマンサが住んでるオースティンの大学寮に遊びに行った。
僕も来年の夏にはこの街で自由を謳歌してるだろう。
今夜はサマンサもルームメイトも留守のはず。
僕とシーナはサマンサのベッドでいちゃついた。
翌朝、ルームメイトに思いっきり見られた。
「サマンサには黙っとくわ。」
サンクス、ルームメイト。 ソーリー、アネキ。



2013 【独立宣言】
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写真で賞をもらい 、奨学金で大学に進学。
自宅で開かれた卒業パーティーで、パパの家族もお祖母ちゃんもサマンサも大集合。

シーナとは別れたことをパパに言った。
「おまえがブレなければシーナみたいな女は山ほど来る。 得意なものがあれば女は選べる。 写真を続けろ。」

僕が家を離れるのを機に、ママも家を売り払うことにした。
僕とサマンサを大学に送り出して、あとは葬式しか残っていないと言いだしたママは今日を「人生最悪の日。」と制定した。
でも、ママは本を書きたいという目標を持っているじゃないか。
ママは弱くないよ。
さあ、僕も旅に出る日がやってきたようだ。
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劇中、大事件が起こるわけではない。
どこの家族にも、誰の人生にもあって不思議ではない、山あり谷ありの営みが丁寧に綴られている、ただそれだけのファミリードラマだ。
しかしである。
12年間の歳月をかけて、一人の少年の成長をカメラが追って、リアルな「時間」の息吹きを投影させた構成が、「こんな映画があるのか」という奇跡をまざまざと見せつけるのだ。

本来の大河的な映画なら、役者が時間の経過に沿った役作りをするが、本作はただ「時間」が自然と役者の役作りを補ってくれる。
パトリシア・アークエットが徐々に肉感を増していき、姉役のローレライは、いい意味で蓮っ葉なティーンへと変貌していく。
イーサン・ホークがほとんど変わらないのは、これはこれで驚き。
そして主人公役のエラー・コルトレーンの、積み重ねていった時間が醸し出す成長の姿が、メイソンという少年のキャラクターに血肉を通わせて圧倒的な説得力を持たせている。

12年間の時間を165分という、ある意味短いスケールに詰め込みながらも、役者の纏う「年の功」が、物語の中から省かれた「時」を確かにじんわりと感じさせてくれる。
その年の予定の撮影が終わり、再び次の撮影に入った時、それまでのインターバルに経験した人生の甘辛が顔に書いてあるようなエラー少年を観てるだけで楽しい。
とりわけ、高校生になった頃の彼の佇まいは、たとえば音楽の趣味が変り、俄然異性への興味がグンとハネているのだろうし、あまりのプチ・ヴィジュアル系になった彼の姿も微笑ましい。

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時間そのものの息づかいを肌で感じながら、ストーリーはメイソンの、少年と大人の狭間の移ろいをじっくりと描く。
夢を追い続けたあまりにママと離婚しても、なお自由にやってるパパは、たまに子供の世話をしにやってくる。
そして、我が子に人生のなんたるやを説法して「サラバじゃ!」と去っていく。
そんなパパも、夢をあきらめて、なんと保険の外交員になっている。
「どうだ、カッコいいだろう」と子供に自慢していた黒のGTOも売り払ってファミリーカーに乗り、なんとなく丸みがかったパパはそれでもビシッとシブい「俺の一言」を放つ。
そんなパパの生きざまを見ながらメイソンは、夢を追うのか、恋人や家族を想うのかで惑う自分を見つめたりしている。
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ママはパパとの離婚で、子供を抱えても自分の人生をあきらめたりはしない。
好きな男ができたら、ソッコーでくっつく。 決して男運は良くないけれど。
パパと結婚する前はどんな仕事をしてたか定かではないが、離婚後も勉強をし直して大学の講師になろうという、「オバチャンよ、大志を抱け」的な上昇志向には恐れ入谷の鬼子母神である。
恋も仕事も子育ても、ユッサユッサ巨乳を揺らして奮闘するママの一所懸命な姿を見てメイソンはパパのことと同様に学んだことも多かったはずだ。

中にはバカのひとつ覚えのように「ルールが大事だ」と怒鳴り倒す石頭の酔っぱらいもいたが、それはそれで大いに反面教師となっただろう。
だが、自分のやりたいことができても、壁にぶつかって本当にこれが自分のやりたいことなのかと迷い、家族からもらう多様なプレゼントを前にして戸惑うような、迷路の隅っこで縮こまっている行き詰まりのメイソンも、これはこれで、青春など遥か彼方に去った当方からすれば羨ましい限りだ。

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人生はその一瞬一瞬が美しい。
常に上を向いて走っていた両親のもとでメイソンはそれを知った。
その一瞬の美を多くでもすくい取ろうとメイソンが手に取ったのがカメラだというのもうなづける。
この映画自体が一瞬の尊さを謳った「時間の魔術」でもあり、メイソンが到達する「今を生きる喜び」の実感。
温かい感動がじんわりと広がっていく・・・・・。
「一瞬は常に今ある時間だ。」
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「賢人のお言葉」
 「時は一瞬も休むことなき無限の動きである。」
 レフ・トルストイ 
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