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イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所
2014年11月02日

T0019428p.jpg人生は時に突然、選択の岐路に立つことがある。
いずれを選ぼうとも、何かを捨てなければならない究極の決断。
絶望の中で生きるのか、心救われるために死ぬのか。
今、17歳の少女が、愛を試される分岐点に立つ・・・・・

2009年に刊行されたヤングアダルト小説「ミアの選択」をノンフィクション・クリエイターのR・J・カトラーが映画化した、感動のヒューマンドラマ。
突然の自動車事故で家族を失い、一人昏睡状態のまま生死の境をさまよう主人公の少女を、クロエ・グレース・モレッツが好演。


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ミア・ホール(クロエ・グレース・モレッツ)は17歳の女子高生。
幼い頃にクラシック音楽に目覚め、チェロの才能を伸ばし、ジュリアード音楽院を受験。 あとは結果を待つのみ。
同級生で恋人だった、ロックバンドのギタリスト兼ヴォーカルのアダム(ジェイミー・ブラックリー)とは、それぞれの道を目指すために最近別れたばかり。

教師のパパ、デ二ー(ジョシュア・レナード)、ママのキャサリン(ミレイユ・イーノス)。
パパは元はバリバリのパンク・ロッカーだったらしい。
ママママで筋金入りのロック・フリークだ。
幼い弟のテディ(ジェイコブ・デイビーズ)も、その血を受け継いだのか、イギーポップが好きな変わったオコチャマである。
そんなロックな家庭の中で、ミアだけがクラッシックを愛し、ヨーヨー・マを信奉するチェリストの卵だった。

「クラシックの秩序と感覚が好き。」

ある日、雪で学校が休みになり、家族で祖父母の家に車で行くことになった。
"人生は思い通りにはいかない。 人生は何があるか分からない"・・・・・・
それは一瞬の出来事。
家族の乗った車は、スリップした対向車と激突。
凄惨な事故現場で目覚めたミアはレスキュー隊員たちが駆け回る中、安否の分からない両親と弟を探す。
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しかし、レスキュー隊員たちが誰ひとりとして、自分の存在に気づかないのが不思議だったが、やがてその理由をミアは知る。
路肩で倒れたまま、隊員たちの蘇生措置を受けているのは、パパでもママでもでもなく、自分の姿だった。

自分は死んで幽霊となってしまったのか?
いや、周囲の会話や様子からして自分はまだかろうじて生命反応があるらしい。
これが幽体離脱というものなのだろうか。
それよりも、両親と弟はどうなったのか。

ミアは自分が搬送される救急車に同乗し病院へと向かう。
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このテの映画でよくあるのは、いわゆる幽体となった人物が人や壁をすり抜けるような描写だが、本作ではそういう技は一切なし。
ただミアの姿はもちろん誰にも見えない。

医者や看護師の会話の断片を聴いても、正確な情報が分からない。
「父親は軽傷だ。」・・・ 「まだ小さいのに可哀そうに。」・・・
希望と絶望が交錯する。
病院に駆けつけた祖父母や叔母も、ハッキリとしたことが分からないらしく、青い顔で右往左往している

聞こえないと分かっていても、ミアは必死で祖父母たちに呼びかけるが・・・

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ミアの容態はかなり危険な状態にある。
緊急手術で出来る限りの措置は施されたが、回復するかどうかはミア自身の生きようとする精神力にかかっている。
一人の黒人の看護師ラミレス(アイシャ・ハインズ)はミアの耳元でそっとつぶやく。
「運命は自分次第よ。」


軽傷だとばかり思っていたパパのことは人違いで、パパは病院に運ばれて間もなく息を引き取った・・・。
ママは事故の際に即死だったらしい。
弟のテディは傷だらけの顔で病室に寝ていた。
心配そうに叔母が声をかけると、テディは少しだけ腕を上げて応えた。
弟は助かったが、パパママはもういない。
自分も意識が戻ったとして、弟と一緒にパパママがいない哀しみと孤独に耐えられるだろうか?


ミアは思い出す。
それまで当たり前にあった、ささやかな普通の日常の日々を。
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パパは若い頃はパンク・ロックバンド「ナスティ・ブルーズ」のドラマーだった。
ママは、パパのバンドの大ファンだったらしい。

私がクラシックに目覚め、毎日のように朝から晩まで、学校のお古のチェロで練習に没頭する姿に、ロックンローラーの両親はかなり困惑したらしい。
その時パパは思ったそうだ。 「潮時だな・・・。」
翌日、パパはドラムセットを売り払って、楽器屋さんで買った新品のチェロを私にプレゼントしてくれた。

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アダムとの出会い・・・
すでにバンド「ウィラメット・ストーン」のギター&ヴォーカルとして活躍していた彼は学校でも女子の人気者だった。
そんな彼が突然話しかけてきた時はビックリしたし、第一音楽の趣味も違うのに。
まんざらでもなかったけど。
親友のキム(リアナ・リベラト)も「アイツがあなたを泣かしたら、私が殺してやるからね。」と、やっかみ半分で喜んでくれた。

私とアダムは間もなく付き合い始め、私は彼がロックを演奏し歌う姿を見守るのが楽しかった。 ロックはまだちょっと私には難しいけど。
アダムはわざわざクラシック・コンサートのチケットを買って私を誘ってくれた。
コダーイの無伴奏チェロなんて凄く難しいのに、私のことをもっと理解しようとしてくれようとしている彼の気持ちが嬉しかった。
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私はクラシック音楽が好きでチェリストになりたかったし、彼はロックが好きで既にプロのミュージシャンとしても歩み出している。
向かう道が少しずれていたけど、それでも私たちはこのままずっとやっていけると思っていた。
ダメ元で願書を出した名門ジュリアード音楽院からオーディションの通知が来た。
夢の一歩が開けたということは、アダムとの距離が開くことを意味していた。
私はアダムを失いたくなくて、ジュリアード入試のことは内緒にしてしまい、そのことで彼も私を失いたくない悲しみから感情を激しくぶつけた。
二人の甘い時間は終わった。

パパは言う。
「人が道を選び、選んだ道が人を創る。」
ロックの道で一旗上げたかったパパは、私のためにドラムを捨てた。
自分が夢描いた人生を犠牲にし、私の未来の方を選択してくれたのだ。
おじいちゃんは言う。
「愛する者には犠牲を払うものなんだ。」
不良の象徴のようなロックに溺れていく息子を昔から認めることのなかったおじいちゃんは、娘のために全てを投げ打った息子を今では誇りに思っているようだ。
ママも私が辛い時や悲しい時はいつもそばにいてくれた。
アダムとの話題を作るために女性ロックシンガーの名前を教えてと聴いたら「なにそれ?学校の社会の問題?」と言いながら、デボラ・ハリー、パメラ・ムーア、ジョーン・ジェットとスラスラ名前を上げたファンキーなママ

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その後、和解したアダムは私のオーディションのために、サンフランシスコのステージの天井に描かれているフレスコ画を私の部屋に再現してくれた。
「それを見て練習すれば本番では緊張しないで済むだろ?」
オーディションではサン=サーンスを懸命に弾き切った。
見上げた天井のフレスコ画はアダムのようにも見えた。
あとは結果の通知を待つだけ。
でも、ニューヨークのジュリアードへ行くことが現実になったら・・・・
アダムと私は前向きに関係に終止符を打つことにした・・・。


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未だに目を覚まさない私を毎日見舞いに来るおじいちゃんは、眠る私の頭を撫でながら涙ながらに語りかける。
「どうか私たちと一緒に生きてくれ。 でも、辛いのなら逝きたい時は逝ってもいいんだぞ。」
私はおじいちゃんの手に触れる。 少しだけおじいちゃんは私の想いを感じてくれたようだ。
生きたい。 生きなければとおもったが・・・。

テディが亡くなった。
硬膜化血腫を発症しており、容態が急変し、幼い体には耐えられなかった。
テディはこれから先、色んな事を経験したりして、目一杯人生を謳歌するはずだったのに。
恋をしたり、好きなことに存分に打ち込んだりする人生を経験することなく、あの子は逝ってしまった。

パパママもいないどころか弟まで失った。
この先、私が目覚めても家族はもういないし、アダムとも終わっている。
生き残った私がチェロの道に専念できる人生を送ることなんて想像がつかない。
なにより、今は生きる気力が沸いてこない。
目覚めて絶望の人生を送るのなら、このままパパママテディの待つ向こうの世界へ行く方が私の心は安らげる。
私の選択は決まった・・・・
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突如、全てを失った少女が生死の狭間で選択を迫られる。
幽体となって病院内を駆け回り、無残な喪失と周囲の愛情を受けとめながら彼女は生と死の岐路で「IF I STAY(もし私がとどまったのなら・・?」と自問自答する。
生きていける希望がそこにあるだろうか。
その答えを導き出すまでの過程には、彼女が歩んできた“取り捨て選択”の数々がある。

最大の命題として根を下ろすのがアダムとの関係だった。
恋人を取るか、夢を取るか。
スポーツ選手やアイドルなど、そんな選択を迫られた人も多いだろう。
衝突したこともあったけど、ミアアダムもお互いが望んだ夢を尊重し、あえて“捨てて得る”という選択をする。

父親は娘の将来のためにロックを捨てた。
祖父は生死の境で苦しんでいる孫娘をおもんばかって、「逝きたい時は逝っていい。」という苦渋の末の“捨てる”愛を覚悟してみせる。

人生は何かを得るために捨てることを繰り返す。
捨てることが人生の上では幸せな時だってあるのだ。
進学、就職、友情や恋愛、結婚、我が親や我が子のことなど、そのために捨てた犠牲もあったテイク・オア・リーヴが人生にはついて回る。

主人公が幽体となって状況を知ることができてこその一見御都合的なシチュエーションだが、生か死かの重要な選択にぶちあたる17歳の少女の運命のドラマが語るテーマの前にはSF的な邪推は入り込まない。
家族をいっぺんに亡くしたミアの選択の彷徨は、捨てることになるかも知れぬ存在への愛を認識することで扉が開く。
それは迷えるアダムにとっても同じこと。
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病院内にベートーヴェンのチェロソナタが流れる。
26歳で聴力を失くしてもベートーヴェンは夢を失わなかった。
「運命」も「月光」も「エリーゼのために」も、そして「第九」も、みなベートーヴェンが世界の音を失ってから得た芸術なのだ。
娘のために我が道を捨てたの愛を無駄にしてはならない。
幼い命を散らした弟も、家族のことは捨てて姉の人生を歩んでほしいと願っているはず。
アダムおじいちゃんキム、その他たくさんの人から受けた愛を抱えたまま旅立つわけにはいくまい。
その愛を持って還る場所はひとつしかない。

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思えば「キック・アス」はかれこれ4年前。
もう4年か、まだ4年かはともかくも、すっかり大人びたクロエ・グレース・モレッツ。
ヴァンパイアや超能力少女など色んな役をやっているが、等身大のリアルな役のモレッツを観れるのもまた嬉しい。

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強い印象を残した、祖父役(具体的な役名はナシ)のステイシー・キーチ。
TV「私立探偵マイク・ハマー」でおなじみ、映画ではどちらかというとワルかヤンチャな役が多い人だけど、そのギャップもあってか、ミアに語りかけるシーンが意表と共に涙腺を突き倒す。
う~ん、やられた。


「賢人のお言葉」
 「私は運命の喉首を締め上げてやるのだ。 決して運命には圧倒されないぞ。 この人生を千倍も生きたならどんなに素敵だろう。」
 ルードヴィヒ・ヴァン・ヴェートーベン
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