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クラウド アトラス
2013年04月10日

T0010950p.jpg 「マトリックス」3部作のウォシャウスキー兄弟のアニさんが、いつのまにやらアネさんになってたなんて最近知ったばかりであります。
 ローレンス改めラナ&アンディ・ウォシャウスキー姉弟と、「ラン・ローラ・ラン」のトムティクヴァの3人監督によるトロイカ演出で「人生の謎」を描いた壮大な叙事詩。

"クラウド アトラス"とは直訳すると「雲図帳(うんずちょう)」。
雲の形状の分類を解説した気象資料のこと。

 大地より天上に向かって雲は流れ流れて、様々に形を変えて光と闇を演出する。
姿かたちが変ろうとも魂の根源は不変。
愛と憎悪の6つのアンサンブルを奏でる「世界の正体」・・・・


 1849年 南太平洋諸島

 理想に燃える若き弁護士アダム・ユーイング
義父の依頼で奴隷貿易の契約のためにサンフランシスコから島を訪れていた彼は突然、病にかかってバタンキュー。
帰国の船の中でも日に日に弱っていく一方。
「もう、あかん。死ぬぅ~」
医者を名乗る老人グースから薬を飲ませてもらうが。
「先生、この薬をお飲みなせえ。グイッと!」
ても一向に回復の兆しなし。
それもそのはず。 薬と称して実は毒を飲ませてアダムの金品をいただこうというグースじじいの悪だくみ。

 船に密航していたところをアダムに匿われていた奴隷のオトゥアが彼の危機を救う。
帰国した彼は最愛の妻ティルダを連れて、奴隷制支持者の義父と決別する決断を下す。
「一滴のしずくはやがて大海となりますよってに。」 五木寛之みたいですな。
無題 


 1936年 スコットランド

 才能はあるのに、放蕩が過ぎて父親から勘当された破天荒な作曲家ロバート・フロビジャー
しばらくはゲイの恋人ルーファス・シックススミスの家に入り浸っていたが、一念発起してスコットランドの大作曲家ビビアン・エアズのもとで採譜者となる。
「オトンを見返したるさけえのぉ。」
現在は半引退状態のエアズの爺様はとにかく口が悪い。
「どこでそんなピアノ習ったんじゃ、この三流めが!」
しかし、フロビジャーは持ち前の才能を生かして次第に彼に認められ、数年後に『クラウド アトラス六重奏』なる名曲を完成させる。

 ところがエアズフロビジャーのアイデアを横取りして、かつての名声を取り戻そうと画策する。
自分がゲイであることを笑われ、エアズの本性にブチ切れたフロビジャー
彼は手にした銃の引き金を引いた。
そしてシックススミス宛てに手紙をしたためる。
「より良い世界が僕らを待っている。 そこで君を待つ。 次の世界で会おう。」
343488_007.jpg 


 1973年 サンフランシスコ

 三流雑誌記者のルイサ・レイは、今は物理学者となったシックススミスとたまたまエレベーターで乗り合わせる。
その際に、重大な情報提供を持ちかけられるが、直前にシックススミスはホテルの部屋で何者かに暗殺される。
と同時に自らも命を狙われる羽目になったルイサ
「冗談や、あらへんで、ホンマに。」
原子力発電所の欠陥を突くシックススミスの報告を握りつぶした社長は、実はとんでもない陰謀を隠し持っていた。
「原発事故OK。 エネルギーは石油でOK。」

 社長を裏切った部下たちの助太刀を得たルイサは果たして殺し屋の魔の手から逃れることができるのか。
危険を顧みず巨悪に立ち向かったジャーナリストの父の背中を追って、ルイサの勇気ある逆襲が始まる。
「なぜ人は同じ過ちを繰り返すのかしらね。 何度も何度も・・・。」
1973.jpg 


  2012年 ロンドン
 編集者ティモシー・カベンディッシュは災難に巻き込まれていた・・・。 

  ワシの担当していた作家のホギンズが無礼な書評家を殺しちまいやがったよ。
著作権をそっくり譲ってもらったはいいが、あんな本は売れるわけねえわい・・・って思ってたら、ラッキーなことに本は逆にバカ売れ。
そのお金は借金の返済に充てたら、もうあんまり残っていないけど、まあいいや・・・って思ってたら、ホギンズの弟たちがやってきて、「俺らの金わい!?」と凄まれた。
兄貴に泣きついたら、ワシをかくまうために、ある老人ホームを紹介してくれて、ああよかった・・・って思ってたら、ここがとんでもない施設じゃった。
血も涙もねえ暴力看護師どもめ。
こんなところにおったら寿命が縮むわい・・・ってか、そんなに寿命ないけど。

 兄貴の奥さんとネンゴロになったのがバレとったようじゃの。
それで兄貴はワシをこんなところへ放り込んだんじゃろな。
 
脱出じゃ! とにかく脱出じゃー!
343488_008.jpg 


 2144年 ネオ・ソウル

 水没したソウルの後に作られた全体主義国家ネオ・ソウル。
人間が遺伝子操作で作り上げたクローンをレストランの給仕として酷使する社会。
自我を持たず、24時間同じサイクルで働き続けるクローンたち。
 その中で、人間の暮らしに興味を持ち、次第に知能が発達したユナ939に誘われたソンミ451は「カベンディッシュの大災難」という映画を観た。
「犯罪者の餌食にはならんぞ。」
このセリフがソンミ451の自我を目覚めさせる。

 反政府組織のへジュ・チャンソンミが革命への希望だと信じて、レストランに潜入。
「人に与える者は人を制する。 人から奪う者は力を保持できない。」
クローンの末路を知ったソンミ451チャンと共に革命への道へと歩み出していく。
「命は自分のものではない。 子宮から墓まで人と他者はつながる。 過去も現在も、全ての罪が、あらゆる善意が未来を作る。」
sonmi.jpg 


 2321年 ハワイ

 文明が崩壊した後の原始的な世界。
ヤギ飼いのザックリーが暮らす村では“ソンミ様”を女神として崇めている。
人食いのコナ族の襲撃で義弟を失った傷心のザックリーのもとに、進化した人間コミュニティー、【プレシエント】からの使者メロニムがやってくる。
「うちば、“悪魔の山”まで案内しちゃってん。」
「カサゴん毒にあたった姪っ子ば、助けてくれたお礼だけん、案内しようや。 だけん、うちばアンタのこと信用していませんちゃ。」

 道中幾度もメロニムに対して殺意を覚えるザックリー
だが、自らの力で邪悪な心に打ち勝った彼はメロニムの真の目的を知る。
決断の時は来た・・・。
343488_002.jpg 
 それから25年後、満天の星空の下で、焚き火を前に「彼」は自らの物語を語る。 
 
       
あれこれ説明するよりも、「まあ、ダンナさん、いっぺん御覧になっとくんなはれ。」としか言いようがないですな。
始まってしばらくは取っつきにくいけれども、ここを必死に食らいついて観るべし。
172分の長尺にわたる6つのストーリーの平行移動という幻惑のアプローチにも、深い狙いが隠されておりますでな。

 6つのストーリーに連なるモチーフは「強者と弱者」、「支配する者と支配される者」。
これを基軸にした、あらゆる時局での下剋上の物語が500年の時空の上に散りばめられておりますでな。
一篇一篇を別々に横の移動で観るだけでなく、縦の視点で6篇全体をマクロで眺めてこそ、真理が見えてくるのであります。


 錚々たる役者が名を連ねてますが、一人一人が違う時代の、違うキャラクターを何役も演じるという大胆な試みが成されております。
人間は何度でも生まれ変わって、異なる人生を生きるというコンセプトのキャスティング。

 トム・ハンクス(悪医者~ホテルの支配人~発電所従業員~作家~俳優~ザックリー)
 ハル・ベリー(農園の女~作曲家の妻~記者ルイサ・レイ~パーティに出席しているインド人女性~闇医者~メロニム)
 ジム・ブロードベント(船長~作曲家エアズ~編集者カベンディッシュ~路上の二胡弾き~プレシエント族)
 ヒューゴ・ウィービング(奴隷商の権力者~指揮者~殺し屋~看護師~統一政府評議員~悪魔)
ジム・スタージェス(弁護士アダム~ホテルを追いだされる男~シックススミスの姪の父親~スコットランド人サポーター~反政府武官チャン~ザックリーの義弟)
ペ・ドゥナ(弁護士の妻~シックススミスの姪の母親~メキシコ人女性~ソンミ451~ソンミ351~売春婦)
・・・てな具合に、その他、スーザン・サランドン、ベン・ウィショー、ヒュー・グラントなども、ひとり複数役のハードな仕事をこなしております。

 メイクのスタッフさんも、ここぞとばかりに張りきっております。
 性別も変えるし、原形をとどめていない人も多数。

 エンドロールでは、『この人がこの役をやってましたよ』みたいな映像が出ます。
それ観たら、「えーっ!」とのけぞること必至。
トム・ハンクスは、どの役も“ハンクス”が出てますし、第一、声ですぐわかりますが。
ヒューゴ・ウィービングの、おぞましい女装も笑えます。
中には写真だけの出演や、ワンカットのみでセリフなしの役もあります。

 では、ここでクイズ。 この人は誰でしょう?
imagesCAVO3BUZ.jpg 
(1) ジム・スタージェス
(2) ペ・ドゥナ
(3) ベン・ウィショー
(4) ハル・ベリー
~~映画をご覧になった方はおわかりですね。


    
 「ウィ~ッと。 一度っきりの人生だしよ。 面白おかしく生きてナンボだっての。 他人を踏んづけてでもオイラは好きに生きていくぜ。 なあ、カカア。おい聞いてんのか。」

 「うるっさいねえ、アンタはさっきからブツブツと。」

 「やかましい! 酒、切れてんじゃねえか。早く酒持ってこいよ。 さっさとしろ!」

 「ハイハイ、クソ亭主様。 今すぐお持ちしますよ~」

 「ケッ!使えねえ女房だぜ。 酒がまずくならぁ。 ・・・おっ?なんだこの光は? ウォッ!ま、まぶしい!」

 「享楽をむさぼる俗人よ。耳を傾けなさい。」

 「おろ? おたく、どちらさん? いつの間に人んちに上がり込んだんでい?」

 「俗人よ、頭が高い。  余は神であるぞよ。」

 「え?神様?・・・今日は酔いが回るのがやけに早えな。」

 「俗人よ、よく聞くのじゃ。 人の人生は一度ではない。 魂は永遠に不滅のものなのじゃ。 肉体は滅んでも魂は再び新たなる時代で、新たなる肉体を得て違う人生を送る。 そのくり返しじゃ。」

 「そりゃまた、けっこうなこってすね。」

 「しかし、人間の本質は変わらない。 善人は次の人生でも善人であり、悪人は次の人生でも悪人なのだ。 人間であるからこそ、それぞれの『個』があるというのに、いつの時代になっても世界の本質さえ不変である。 そうは思わぬか?」

 「そうかなあ? 時代が進んで世界も随分と変わったと思いますがね。」

 「外枠はな。 だが考えてもみよ。 世界、あるいは社会というのは、強い者が弱い者を圧する歴史のくり返しじゃ。 お金、知性、体力、容姿・・・人の世の営みに必然たるものは常に階級を産み出すと同時に差別も産み出す。 持つ者と持たざる者に分かれた時、支配こそが欲望の根幹となり、果ては憎しみと争いを産むだけなのじゃ。」

 「確かに人類は有史以来、戦争がなかった時代はねえからな。」

 「魂は永劫に回帰しても本質が変らない限り、人はいつの時代も同じ過ちをくり返す。 そして、やがては全てを失う時が必ずやってくる。 だがのぉ、人間は変われぬものか? 否。 魂の生まれ変わりは、“人は生まれ変われる”という、そのまま意味をスライドさせてもよいのじゃ。 輪廻転生はまさしく与えられたチャンスなのじゃ。 勇気を持つのじゃ。 支配者に与しない強い心を。 邪悪な誘いを跳ね返す克己の心を。」

 「ハハアーッ、ありがたきお言葉。」

 「よいか、俗人よ。 そなたの周りにいる誰かのうちは、かつて、そなたとつながりがあった者の転生した姿かもしれぬのだぞ。 不思議とウマが合う人とか、やけになつくペットなど、遥か昔、または未来でそなたはその魂に触れておるのだ。 いや、もっと言えば、そなたはかつての他者であり、他者はかつてのそなたであったことも有りうるであろう。 人を愛するのじゃ。簡単なことであろう。 魂の上にも下にも魂を置いてはならぬ。 より良き世界のために。 真の平和が実る次なる次元へ。 精進せよ、俗人よ。 では、さらばじゃ~」

 「ハハアーッ。」

 「あっ、言い忘れておった。 クイズの答えは、(4)のハル・ベリーじゃ。」

 「ハハアーッ。」


「賢人のお言葉」
 「人間の本質が人間の最高のものであるならば、実践的にも最高かつ最善の掟は、人間に対する人間の愛でなければならない。」
ルートヴィヒ・アンドレアス・フォイエルバッハ
  
 
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