Sun 07/01 2012

容疑者、ホアキン・フェニックス

17:06 感想 0
T0013149p.jpgホアキン・フェニックス
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 たぶん最初にお目にかかったのは、ジョエル・シュマッカー監督作の「8mm」だったはず。
「ああ、リバー・フェニックスの弟さんですか。」という印象どまりでしたが、「グラディエーター」で皇帝コモドゥスを好演したあたりから頭角を現しましたね。

 「サイン」「ヴィレッジ」といったシャマラン作品や、「ホテル・ルワンダ」のジャーナリスト役など、兄の七光りを感じさせない実力派へとのしあがり、「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」のジョニー・キャッシュ役でアカデミー賞主演男優賞を獲得。

 霜降り牛肉か、はたまた大トロか。
数年前は、まさに脂が乗りに乗って、「一度食ってみな」状態のホアキン・フェニックスでした。
 ところが・・・・・2008年。
 彼は突然、俳優を引退し、ラッパーに転向すると宣言し、世間をアッと驚かせたのです。

 待て待て。 どうしたんだホアキン
かつてはマイケル・ジョーダンがいきなりベースボールに挑戦するという破天荒なことがあったが、あれは神と評価される人だからこそ、世間はおおらかな目線で見たのだ。
 オヌシは神ではない。
一線級の役者だけど、まだ神級のグレードではない。

 しかし、曲がりなりにも成功をおさめているハリウッドスターが、その座を捨ててヒップホップの道を行くとは無鉄砲にもほどがあるのではないか。
ラップって、そんな簡単なもんじゃないでしょ?
君にそんな才能があったんかいな。
わからんなあ・・・・・。


 このたび「映画参道当局」は、ホアキン・フェニックス容疑者の身柄を拘束し、取り調べを行いました。 
 「とにかく真意が知りたい。 本気か、遊び半分か。 どうなんだ。 なんとか言いなさい。」 

 YO! YO! 役者稼業にグッバイ
俺の新しいショーバイ
HIPHOPのユメシバイ
みんな大好き ママのオッパイ YO! 

 「だいたいなんでヒップホップなのかが分からないんだけど。」 

  YO! YO! これが求めてたアート
俺の熱いハート
魂にジャストミート ノックアウト
舞の海は技のデパート YO! 

 「言っとくがラッパーなんて簡単じゃないよ。 成功する自信があんのかい?」 

 YO! YO! この手につかむドリーム
俺の未来はノープロブレム
世界に放つぜハッピービーム
3時のおやつはヒロタのシュークリーム YO! 

 「もういいかげん普通にしゃべれ!」 

 「すんまそん。」 

 「それにしても、そのヒゲとボッサボサの頭。 大人でしょ、ちゃんとしなさいよ。」 

 「見る影もないっすね。」 

 「自分で言ってんじゃねえわ。  一体なんなのよ、きっかけは?」

 「脚本家の書いたシナリオ通りに、ああしろ、こうしろと動かされるってのがイヤになったの。 表現者としては、こんなのは絶えられないのさ。 」

 「 ふーん、表現者ねぇ・・・。 それでラッパーに転向と。 まあ、おたくの自由だけどさ。」

 「だろ? なのにみんなオイラのことを小バカにしたようなリアクション取るんだよな。 すっげえムカつくよ。 こっちはマジメにやってんだからさ。」

 「いやいや、マジメには見えないからだよ。 今までラップのラの字も言ってなかったし、しばらく引きこもってたかと思えば、無人島帰りみたいなツラ下げて、意味不明なこと口走ってたら、そりゃみんな茶化すよ。」

 「誰が何と言おうとオイラは真剣なんだよ。 オイラの魂のポエムで世間をギャフンと言わせてやるから、チェケラ~」

 「どうでもいいが、なんでカメラを回してるんだよ。 カメラ持ってるのは義兄さんのケイシー・アフレックだな。」

 「なんだよ~、いけないのかよ。 オイラのサクセス・ドキュメンタリーの記録を撮ってるだけじゃねえか。」

 「そもそも、引退騒動自体がヤラセじゃねえかって噂で世間様は盛り上がってるよ。」

「あーもうっ、うるちゃい、うるちゃい!」
YO! YO! 俺はラッパー
一生ディスるぜ フォーエバー
君のハートのスナイパー
ジャパネット価格はイチキュッパー YO!


 「やっぱ、おまえ逮捕!」

 「ええっ!」

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 もうすでに世間的にネタバレしてますが、この映画はウソです。
いわゆるモキュメントです。

ホアキン・フェニックスが俳優引退・・・ウソです。
ホアキン・フェニックスがラッパー転向・・・ウソです。

 テレビ番組に「リアリティ番組」というジャンルがあります。
一般人が出演して、ある体験をしたり、いろんなチャレンジをする番組。
日本でも昔から今でもけっこうやってます。
 全番組がそうだとは言いませんが、内容の全部か一部かはともかく、あれは演出です。

 アメリカではリアリティ番組は昔から「ヤラセ上等」なほど、力を入れて作られておりましたが、近年はヤラセをせずとも編集の切り貼り次第がモノを言い、リアリティのレベルが格段に上がってるんだそうです。

 クイズ、オーディション、シミュレーション・・・これら一連のリアリティ番組に対し、真に受けて観ている視聴者が意外に多いということを知ったホアキン・フェニックスは、義兄のケイシー・アフレックと共に、今回のモキュメントを作ることに至ったわけであります。

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 「オイラが役者辞めてラッパーになるって言ったらみんなビックリするぜ。」
 もちろんドッキリなんですが、発想があまりに突飛だったため、周囲の反応も冷ややかで、カメラを回してるケイシー・アフレックが常にそばにいることから、ヤラセ疑惑は早くから言われておりました。

 バレバレのイタズラをやっても、何の意味もないわけですが、それでも「オイラのバカに付き合ってくれよ。」の本人に対して、「おめえのバカに付き合ってらんねえよ。」という大衆とのギクシャク感がおもしろ悲しい映画なんですね。


 で・・・この映画はどこまでが本当で、どこまでがウソなのかが判別がつきません。

 ホアキンはCDデビューに向けて、いろんな人にプロデュースを依頼して断られ、ようやくディディことショーン・コムズパフ・ダディの名称の方がおなじみ)にアポを取ってもらい、2回ほど会うのですが結局は、「君のレベルでは・・・」とすげなく断られます。

 またデイヴィッド・レターマンがMCを務めるTVショーに出演し、散々おちょくられるシーンが情けないやら、悲しいやら。
ヒゲのことをいじくり倒され、ようやく「CDデビューはいつ?」と聞かれる。
 「真っ先にこの番組で披露するよ。」
 「お断りだよ。ワッハッハ。 ジョークだよ、ワッハッハー」

 ホアキンの引退を心配して脚本まで持ってきたベン・スティラー
第81回アカデミー賞授賞式でナタリー・ポートマンと一緒にプレゼンターとして登場したスティラーは、グラサンに付けヒゲをしてガムをくちゃくちゃさせて、明らかにホアキンのモノマネで大爆笑を取ります。

 これらの一連のシーンに登場する人も、ホアキンのドッキリを知っての協力者でしょうか?
だとしたら、凄いですけどね。
 あの下手なラップもわざとでしょ?
 ライブで客とケンカをするシーンも出てきますが、あの客も仕込みだったりして。

 安住の地を捨て、未知の大海へ出ようとするチャレンジャーを、冷やかし、からかい、袋叩きにするという大衆の低劣さを垣間見せるという目的があるにせよ・・・。
 何から何まで全部フェイクの集合体で成ってるとすれば、こんなによくできたモキュメントはないわけで。

近年ホラー映画にモキュメントの手法がよく用いられますが、もう最近は「映像には一切手を加えてないよ、ウソじゃないよ、ホントだよ!」って言うたびに、「うるちゃいわい!」と言いたくなりますが、ホントとウソの境界線がこれほど不明瞭な本作は、ある意味、名品です。


 「なんでオイラはこんなバカなマネをしたんだ~・・・メソメソ・・・」と嘆くホアキン
名演技だ!
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 それにしても、ヤローがフルチンではしゃいだり、顔にウンコかけられたり、ゲロ吐いたりと下品極まりないのであります。
そこまでしなくてもなあ・・・。


「賢人のお言葉」
 「人間は偽装と虚偽と偽善にほかならない。 自分自身においても、また他人に対しても。」
ブレーズ・パスカル 
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