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11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち
2012年06月24日

T0010961p.jpg あ~もぉ~っ! かたい!
かたくるしいぃっ!
楽にしたまえよ、君たちぃっ!
・・・・・というわけにはいかんのですよ。


 オウムの最後のお尋ね者が御用になりまして、一連の事件からもうかれこれ17年ほど経ちます。
若い人の間では、事件については「聞いたことはあるがよく知らない」人が増えるのも無理なかろうかと思います。

 三島由紀夫については、なおのことでしょう。
それこそ、アッシにとっては「あまりよく知らない」御方です。
 “あの事件”の時は寝小便たれのハナたれ小僧でして、その後、学校でも習いませんし、メディアでもそんなに採りあげませんからね。

やがてオッサンへの道を行くにしたがい、少しずつ知識に肉付けがされていきますが、それも限界があるわけです。


 「小説家」・・・それは知ってる。 でも作品名は知らない。
 「右翼」・・・ああ、そんなイメージあるね。
 「クーデター」・・・ポシャりましたが。
 「自衛隊で演説した後、割腹自殺」・・・三島由紀夫イコールそれですわな。


 「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」(長い映画だけど大傑作!)
 「キャタピラー」(鬼気迫る反戦映画)
 怒れるアナーキスト・若松孝二監督が最新作に選んだ三島由紀夫
左よりの若松さんが、いかにナショナリストの象徴を描くのか。
否定か、肯定か、それとも・・・・・
そこが若松さんの面白いところ。


341168_007.jpg もの書きとしては、ノーベル賞候補にもなるぐらいの大先生です。
もとより、「自衛隊サイコー!」「天皇陛下バンザイ!」の人なのですが、何ゆえに超売れっ子作家の座を捨ててまで、クーデターへと走ったのか。
そのプロセスを辿ったのがこの映画です。

 「自衛隊を日本の軍隊に!」
とにかく自衛隊に対する惚れこみようは尋常じゃありません。
“他国が侵略してきても武力抵抗してはいけません”という憲法によって宙ぶらりんになった自衛隊に、グツグツと心の中のマグマが煮えたぎる。

 学生運動が過激さを増し、左翼がのさばる世相を憂う三島の思いは日増しに強くなって、自ら民兵組織[盾の会]を結成。
「自衛隊の名誉回復と国軍化」こそが三島の人生の至上命題なのです。

 そして1970年11月25日。
森田必勝はじめ、盾の会の一部のメンバーと共に自衛隊市ヶ谷駐屯地に押し入って演説をぶち、自衛官らに決起を促すも失敗。
直後、三島森田は切腹。


 映画は事件のおよそ10年前ぐらいから描かれるのですが、監督が左系でも距離を置いた視線で、右にも左にも媚びずに三島由紀夫という人物を描いています。
「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」では、赤軍の「総括ごっこ」をブラックコメディすれすれで描いてましたが、本作も三島を茶化してるわけではないのでしょうが、観ようによっては彼の「熱血自衛隊一直線」が少々こっけいに映り、「笑っていい場面か?」みたいなシーンも多々あるのです。
 時代の趨勢から微妙に浮いている三島のがむしゃらぶりは、もはや右とか左に定義されない彼のピュアな魂の活写であります。
341168_005.jpg 
大盛堂書店・船坂弘会長から贈られた名刀「闇の孫六」。
この刀が後に・・・。


 【何に刺激を受けたか】
日系韓国人が差別に抗議するために静岡の旅館に立て籠もった「金嬉老事件」。
「世の中に強く訴えたい時は、人質を取るっていう手もありだな。」
 いや、ないでしょ!
赤軍派による、「よど号ハイジャック事件」のニュースを知り・・・
「先を越されたか・・・。」
 ちょっと!ちょっとちょっと!
三島先生のハートに火をつけたのが左翼系の行動とは皮肉・・・。


 【自衛隊・LOVE】
自衛隊学校の訓練に参加。
ランニングでヘトヘトになるなる三島先生
「あ~ダメだ! 情けない~! こんなんじゃダメなんだぁ!」
 なにが?

 料亭で学校の教官らと打ち上げ。
「自衛隊は素晴らしい! 男の世界だ!」と盛り上がる三島先生
「必ずやクーデターのチャンスが来るから、その時は私も一緒に。」と熱くなる三島先生
「クーデターの手法が有効なのは発展途上国だけ。」と、シラけ気味の教官。
「いやあ、まいったなあ、ハハハハ。」(貴様の心が発展途上じゃ、ボケ!)
「ワハハハハ。」(戦争終わってんのに何を抜かしとるんじゃ)
img_0175_large.jpg 


 【天皇は絶対】
 全共闘の学生たちとディスカッションする三島先生
考え方の違いはあるけれど、既成概念の破壊という志には激しく同意。
「君らから「天皇」という一言があれば。」
 「ナンセンス!」 「僕らと共闘するのか、しないのか!」
「拒否します。」
 「ナンセンス!」 「何しに来たんじゃい!」


 【熱い男だぜ、森田】
森田必勝。 必勝と書いて「マサカツ」。
三島由紀夫に異常なほどお熱になります。
早大の右派グループ「日学同」所属も後に除名され、本格的に三島の右腕になります。

 「先生のためには自分はいつでも命を捨てます」

「森田。 おまえの信じるものは何だ?」
「この日本であります。」
「そうだ。この国で美しく生きるとは、この国で美しく死ぬということだ。」

「森田、一曲歌え。」
「はい! 義理と人情 秤にかけりゃ~

「僕は先生のように強くなりたい!」
「落ち着け、森田。」
「先生と一緒に立ちあがれるのなら本望です!」
「焦るな、森田。 若さとは愚かさではないんだぞ。」

「先生、今こそ行動を起こす時ではありませんか。」
「俺はすでに死を覚悟している。」
「俺もです。 先生に預けた命が叫んでるんですぅーっ!」

 劇中、「先生のためなら」というセリフを何度も口走る森田必勝
熱い! 熱すぎるぞ、森田!!
341168_002.jpg 


 【サウナは男のオアシス】
作戦会議、反省会・・・
盾の会のミーティングはサウナで行われる。
「俺たちだけでやるしかない・・・。」
「先生、僕たちもお供させてください!」 「せんせーっ!」
 タオル一丁の脂ぎった男たちが横に並び、眉間にしわ寄せ熱く語りあう。
ただでさえ熱い一室の中で、この過熱ぶり。 常人ならブッ倒れること必至。



 【11.25】
三島由紀夫森田必勝、小賀正義、小川正洋、古賀浩靖の5人がいざ出陣。
目指すは陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地。
 車の中で「ヤクザ映画ならここで主題歌が流れるんだよなあ。」と全員で「唐獅子牡丹」を合唱。

 益田兼利東部方面総監を人質に取り、正午までに全自衛官を本館前に集合させることを要求。
そしてバルコニーに現れた三島由紀夫の演説が始まる。
少し離れた場所に立ち、見守る森田必勝
main_large_20120624164447.jpg 
 1969年10月21日に起きた国際反戦デーでの大規模な左翼暴動に自衛隊の出る幕がなく、これにより憲法改正の道はなくなったと怒るところから始まる。
「治安出動がいらなくなったので、すでに憲法改正は不可能になったのだ。 分かるかあ、この理屈が!」
「諸君らは去年の10.21から後だ。 もはや憲法を守る軍隊になってしまったんだよ。」
「去年の10.21から一年間、俺は自衛隊が怒るのを待ってた。 もうこれで憲法改正のチャンスはない。 自衛隊が国軍になる日はない。」
「ここでもって立ち上がらなければ、自衛隊が立ち上がらなければ、憲法改正というものがないんだよ。 諸君は永久にだね、ただ、アメリカの軍隊になってしまうんだぞ。」
「諸君は武士だろう! 武士ならば自分を否定する憲法をどうして守るんだ。」
「自衛隊は違憲なんだ。貴様たちは違憲なんだ! ついに自衛隊というものは憲法を守る軍隊になってしまったのだということに、どうして気がつかないんだ。」
「諸君の中に、一人でも俺と一緒に起つ奴はいないのか。 一人もいないんだな。 それでも男かあっ!それでも武士かあっ!」

 ザックリと要約しましたが。
 まじめに耳を傾けない聴衆のヤジや怒声。 報道ヘリコプターも飛んでる中で拡声器も使ってませんから、伝えたいことが、まるで伝わらない、妙な一人相撲の空気にいたたまれずに長時間予定していた演説はわずか10分足らず。
そして「天皇陛下万歳」を三唱した後、三島由紀夫が割腹。 その直後に森田必勝も後を追う。


 もっとやり方が他にあったろうにと思うんですが。
仮にこの時、決起が実現してたら、日本の国は今頃変わってたでしょうか?
 「たられば」はキリがないですが、今の日本は三島が憂いていた通りの惨状になっております。

 右にしても左にしても、日本の国を良くしたいという思いはみな同じ。
個人のことよりも真剣に日本の未来を案じ、発言し、行動してた若者がたくさんいたということはやっぱり重い。
向いてる方向は同じなのに、歩き方が違うことから、暴力がはびこって、ただ血が流れるだけの有り様から、逆に学びとらねばならないことが多くあったはず。

 この映画から、政治的思想について悶々とするか否かは自由。
アッシは右や左に偏るのは御免ですけどね。
時代の風向きに抗いながら、美学に殉じた男のカッコよくもあり、カッコ悪くもある生きざまを、次代を担う人が観て、いろんなことをストレートに感じ取ってほしいなと思うのですよ。


 事件から5年後、三島夫人の瑤子が古賀浩靖に問うラストが印象深い。
「なにを残したの?」
じっと両掌を見る古賀。
三島森田の首を拾った手にその重みはあるはずなのに・・・。
なにが残ったのだ。 なにもない。 なにも見えない。 なにも感じない。




「賢人のお言葉」
 「人間、正道を歩むのはかえって不安なものだ。」
三島由紀夫
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