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幸せへのキセキ
2012年06月19日

T0012201p.jpg 住まい探しで、訳あり物件というのはよく聞く話です。
 オバケの出る家なんて御免こうむりたいもんですが、動物園が付いてる物件なんてのは、いかにもアメリカらしいですな。

 妻に先立たれた男が子供たちと新しい生活を始めるために買った家は廃園寸前の動物園のオマケ付き。
動物園の再建に立ち向かった一家と仲間たちの姿を描く感動作で、イギリス人新聞コラムニスト、ベンジャミン・ミー著の実話の映画化。
 監督は「エリザベスタウン」のキャメロン・クロウ。


          
「ようこそ、ローズムーア・アニマルパークへ~!」

 「と、言っても2年間ものあいだ閉園状態なんだけどね。」

 「前のオーナーが死んじゃって、遺産のお金で職員さんが僕らの世話をしてくれてます。 ありがたいねえ。」

 「おや? どうやら、いらっしゃったようですよ。 噂の新オーナーが。」

 「ロスからお越しになったベンジャミンさん。 息子さんのディラン君は14歳。 下の女の子はロージーちゃん、7歳だよ。」
341580_001.jpg 

 「半年前に奥さんが亡くなったんだってさ。 気の毒だね。」

 「奥さんと初めて出会った思い出のカフェに近づくことさえできない。 パソコン内の奥さんの写真を正視することもできない。 ベンジャミンさん、なかなか立ち直れないみたいだね。」

 「他人を避けるというか、女性と接するのが特に億劫になってるね。 罪悪感てわけじゃないだろうけど。」

 「仕事も辞めちゃったのか・・・。 ディラン君は絵の才能があるんだけど、難しい年頃でお父さんと衝突してばっかりだな。 最近は暗い絵ばっかり描くし、心配だ。」

 「ロージーちゃんは天真爛漫だけど、彼女なりに耐えてんだろうね。」

 「動物園付きの家なんてとんでもないって最初は思ったベンジャミンさんも、ロージーちゃんの楽しそうな笑顔を見たら決心がついたね。」

 「いや・・・ベンジャミンさんにしたら、奥さんとの思い出が多い街にいると辛いだけだから、なるべく離れた場所に来たかったんだろ。 ディラン君はこんなクソ田舎が気に入らないみたいで相変わらずだな。」 

 「人間って難しいね。」

 「ほんとほんと。」

 「でもさ。 ズブの素人でしょ? ペットを飼う延長みたいな気分でやられちゃ、たまったもんじゃないね。」

 「職員の皆さんも、すぐに逃げ出すだろうって意見が大半だね。 一応お手並み拝見てな感じで協力的だけど。」

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 「飼育チームのチーフであるケリー・フォスターさんです。 やさしいけど、仕事にはすごくストイックです。」

 「動物園の再開を目指して、がんばってくれてます。 僕らも言うことを聞いて協力しなきゃね。」

 「ベンジャミンさんも、なかなかがんばってるよ。 医療費とか、修繕費とか資金繰りが大変だし、農務省の意地悪な検査官もムカつくよねえ。」

 「オレ、あのオッサン嫌いじゃあ~。今度会ったら顔面にウンコ投げたるし。」

 「やめなさい。 そんなことしたら、それこそウンの尽き。 なんちゃって。」

 「全然うまくないし・・・。 それより心配なのはベンガルトラのスパーじいさんだよ。 だいぶ歳でもうそろそろ、御迎えの時が来てる。 ベンジャミンさんは、なんとか一日でも長くスパーじいさんを生き永らえさせようとするんだけど。」
341580_002.jpg 
 「気持ちは分かるがな。 それは人間の勝手だと安楽死を主張してるケリーさんと真っ向から対立してしまって、これからどうなることやら。」

 「ベンジャミンさんと、ディラン君のギスギスした関係もな・・・。 でも、お互いがほんのちょっとの勇気を出せば、あっという間に解決するもんさ。 いずれその時は来る。」

 「“時は来た!それだけだ。”ってか。」

 「おおっ、橋本真也の伝説の爆笑フレーズだな。 あ~それ、俺が言いたかったな~」

 「おまえら、なんの話をしとる。 動物園の再オープンが決まったぞ。 愛想を振りまく練習をしとけよ。」

 「やっぱりなんかネタとかやった方がいいかな? 野生動物だけに、スギちゃんのワイルド・ネタとか。」

 「よけいなことはせんでいいの!」

341580_008.jpg 

 マット・デイモンの安心感は、いい話系特有のあざとさを感じさせませんな。
 お兄さん役が同じ猿顔のトーマス・ヘイデン・チャーチで、妙にハマってます。
 スカーレット・ヨハンソンにしては、あまり前に出てませんが、それよりも観るたびにツヤツヤが増すエル・ファニングを拝見しただけでOK牧場。


 誰の目にも明らかですが、この物語は廃れた動物園を再建した男の成功譚ではありません。
「動物園」はあくまで、ベンジャミン一家のメタファーであり、それがまたピタリと収まります。

 愛する人を失って、絶望の淵に立つ家族。
愛する妻・・・ 愛しき母・・・ お互い大きな存在を失くした父と息子の間には、最初から複雑な確執があります。

 劇中では語られませんが、重い病気だった妻に対し、ベンジャミンは延命治療を見送る決断をした経緯があったのではないかと個人的に想像します。
 息子の言う、「お父さんは何の相談もなしに勝手に決める。」というような怒りのセリフにも、それが伺えますし、ベンジャミンが妻の死を引きずるのは、そのことの後悔と自責があるからではないでしょうか。
 衰弱し、死期の迫る老トラの安楽死にベンジャミンが抵抗するのは、彼の贖罪の感情なのかもしれません。


 奇しくも、露と消えようとする命と向き合うことで、妻の死とも向き合うことを見出すベンジャミン
動物園付きの家を購入すると決めた時からすでに幸せへのキセキは始まっていたのです。

 言葉の通じない動物といかに理解し合うかも、極々シンプルな気持ちのぶつけかた次第で、これは人間同士も同じ。
自分がここで言わねばということはもちろん、相手が求めている言葉を伝えるのも必要。
心が通わなかった父と息子が本音の激論を交わすシーンはすごく重みがあります。

 一家の主としてしっかりしなきゃって思いながらも、お父さんだって辛い。
長男だからしっかりしろったって、ディラン君も辛かったんだろうよ。
コミュニケーションって周りは簡単に言うけど、お互いを思うからこそ難しいもの。

 でも、恐れたり、あきらめたりしてはいけない。
まさに今、気持ちを伝えなきゃという時になったら理屈は関係ない。
 失敗して元々なら、わずかな瞬間を冒険に打って出てもいいんじゃないか?
ベンジャミンが言う、「20秒の勇気」
「心に触れる」勇気に向けたエールこそが本作のモチーフです。


「なぜ、動物園を買ったのか?」ケリーベンジャミンに尋ねる。
「いけないかい?」
 一見にべもない答えですが、その一言には亡き妻にちなんだ、ある思い出が秘められているのです。

341580_009.jpg ベンジャミンが奥さんと最初に出会ったカフェに子供たちを連れていき、そのなれそめを再現するラストシーンの美しさ!

お父さんとお母さんはこうして出会った。
そして君たちがいる。
こんな素晴らしいキセキがあるかい?

君たちも、愛する人に想いを伝えたい時が来るだろう。
そんな時、おじけず迷わず運命に挑んでみよう。

冒険する心に、必ずキセキは訪れるんだ。



「賢人のお言葉」

 「行動はいつも幸せをもたらさないが、行動なくして幸せはない。」
ベンジャミン=ディズレーリ

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