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ブレット・トレイン
2022年09月25日

1_202209181206536ae.jpgここんとこ、全然小説を読んでない。 読書から離れてかれこれ1年以上になる。
それまでコンスタントに小説を読んでたが、最近はなぜか時間的余裕がない。

好きな作家さんは色々いるけど、やはり伊坂幸太郎は外せない。
なんといっても人物の会話が魅力だ。 あのウイットは憧れる。

「陽気なギャングが地球を回す」でハマって以来、伊坂作品のほとんどは読破。 

「ゴールデンスランバー」や「死神」シリーズの他に「オー!ファーザー」や「ガソリン生活」も個人的には評価高し。
もちろん「殺し屋」シリーズも最高。

その「殺し屋」シリーズの2作目である「マリアビートル」がなんとハリウッドで映画化。
おやおや。 日本の映画界は何してた? 先に取られてるじゃないか。 まあいいけど。

タイトルが「ブレット・トレイン」。
1975年の東映の「新幹線大爆破」のアメリカ公開時のタイトルと同じ。
ブラッド・ピットが主演。 監督は「ワイルド・スピード/スーパーコンボ」のデヴィッド・リーチ。

ところが舞台は日本のままでいくというのだから、攻めるねえハリウッドは。
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昔でこそ、外国映画で表現される日本はスッとぼけたトンデモ描写が多くて、そんな西洋人に「こいつら日本に来たらマジでハラ切らせたろか」と思いたくもなったが、今やそういうムッチリ無知無知な外国人は地球上に生息していない。

最近のハリウッドは比較的ちゃんとやってくれるが、たまに昔の“やらかし演出”を逆手にとって、日本の街やカルチャーを異世界空間的なアートとして表現している映画も見受けられる。

この「ブレット・トレイン」もそうで、東京から京都まで行く高速列車での舞台のアレコレは、微笑ましいほどサイケデリックにデコレートされた「和・次元ワールド」が堪能できるのである。

受け止め方次第だが、映画はもちろんツッコミどころは多々ある。 それなりに伏線回収パターンは押さえられているが、それでも思ったほどの伊坂幸太郎テイストはない。
しかし、乗り物空間限定アクションの面白さはバッチバチで、時間経過と共に右肩上がりで疾走感が増すエンタメ構成がすばらしい。
デヴィッド・リーチ、さすがだと思う。
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あらすじをザッと。

世界一運の悪い殺し屋レディバグ(ブラッド・ピット)。 彼は東京発の超高速列車からブリーフケースをパクって、次の駅で降りるというオツなミッションを請けた。
ベリー簡単な仕事のはずだったが、ひっきりなしに襲ってくる殺し屋たちと遊ぶ羽目になり、「ぶらり途中下車」をしたくてもできない最悪な状況になる。
レディバグを乗せたまま終着駅の京都へ突っ走る弾丸列車。
やがて明らかになる殺し屋たちの過去の因縁。 そして世界最大の犯罪組織のボス、ホワイト・デスと対峙したレディバグに思いも寄らぬ運命が待ち受けていた・・・・・

・・・・・しかし、この東海道殺し合い大会が繰り広げられた列車には、映画には登場しなかったある二人のキャラクターも乗り込んでいたのであった・・・・・

死神のリュークとレムである。
もちろん彼らの姿は誰にも見えていない。

(ではこの先、ちょっと伊坂幸太郎を意識しながら)

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「♪ 線路は続くよ どこまでも~ ♪」
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「ごきげん極まりないね、リューク」

「鉄道の旅、これぞロマンだよな」
「人間のようなことを言うんだね」
「車内販売にリンゴが売ってねえ。 減点だな、JRさんよ」
「あいにくだが、私たちが今乗ってるのはJRでなく「NSL」という会社の超高速列車だがな」
「今頃そんな、あいにくな情報を聞かされても」
「あいにくな情報を聞くときというのは、だいたいタイミングが悪いものだ」

「しょうがねえ、リンゴは諦めよう」
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「ところで、どこまで行くのだ?」
「京の都で観光どすえ。 伏見稲荷、清水寺、金閣寺、銀閣寺、平等院、東寺、平安神宮・・・・」
「寺と神社ばかりではないか」
「そういう言い方は良くねえぞ、レム」
「死神が神仏参りするのか?」
「オツなもんだろ? とは言え俺らも一応は神だからな」
「オツな嫌がらせだな。 しかし本当の目的はそれではないのだろ?」
「そうだ。 この列車には死のニオイがプンプンする」
「私も感づいていた。 乗客の中に人を何人も殺してる者が乗り込んでいる。 それも一人二人ではない」
「これは絶対偶然じゃねえ。 何かが起きるぜ」
「デスノートもないのに、多分何人かが死ぬだろう。 楽しいショーが見れるぞ」

「時々この世界はおもしれえことが起きる。 だから人間に干渉することが辞められねえんだわ」

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「おいレム見ろ。 ブラッド・ピットがご乗車されてるぞ」
「ブラッド・ピットに見えるがブラッド・ピットではない。 頭の中を読んでみよう。 彼はコードネームがレディバグという殺し屋だ」
「男なのにレディなのか?」
「レディバグとはテントウ虫のことだ。 お天道様に向かって飛ぶ姿から、天の使いとされ、幸運の象徴とされている虫だ」
「幸運の虫・・・、縁起がいい名前の殺し屋か。 危ねえ橋を渡らにゃならねえ裏仕事をしながら、なおかつ運が良けりゃ、これほど最強なことはねえな」
「ところが、この男の行くところ不思議とトラブルがつきまとう。 自分だけでなく無関係な周りの者も巻き込むというハタ迷惑かつ壊滅的悪運の持ち主らしい」
「名前におもいっきり完敗してるじゃねえか。 テントウ虫にとっちゃ営業妨害もんだ」

「全国のテントウ虫が黙ってはいない。 彼は改名を迫られるだろう」
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「しかし、運が悪いというのなら、この男だってとっくに墓に入っててもおかしくねえがな」
「一周回って運が良いのだろうな」
「一周回るもんなのか、運ってのは」
「回る。 運とはそういうものだ。 場合によっては彼は全国のテントウ虫から尊敬されるだろう」
「こいつはこの列車に乗り込んで誰かを殺そうとしてるのか?」
「違うようだ。 ブリーフケースを盗んで品川駅で降りる・・・というミッションらしい」
「そんなもんミッションって言わねえだろ。「はじめてのおつかい」で子供がやってることより簡単な用事じゃねえか」
「子供はブリーフケースを盗まない。 ブリーフケースを盗めというおつかいをさせる親もいない」
「まあそうだけども。 ほれ、テントウ虫野郎がさっそくブリーフケースを盗んだぞ。 あとは次の駅で降りるだけだな」


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「殺気でおなかが一杯の奴が乗ってきたな」
「平井堅か?」
「平井堅ではない。 平井堅に殺気はない。 この手の顔を見てすぐに平井堅と結びつけたがる妙な病気がこの日本には蔓延している」
「「平井堅結びつけたがり病」か。 気の毒な平井堅だ。 今度彼にデスノートを与えてやろっかな」
「この男はウルフというメキシコの殺し屋だ」
「髪型がウルフカットでもないのにウルフと名乗るとは、よほど千代の富士へのリスペクトがキツいんだな。 おっ、さっそくおっぱじまったぞ。 やれー!殺せ殺せー! どっちも死ねー! あっ、ウルフ死んだ。 しかもカッチョ悪い死に方」
「千代の富士がテントウ虫に負けたな。 歴史が変わったな」
「早く終わりすぎだよ。 つまんねえの。 まあ、テントウ虫野郎が品川で降りそびれたので楽しみは続くだろうが」
「お楽しみはこれからだと昔、あるジャズシンガーが言った」

「そのジャズシンガーの言葉を信用しよう」
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「「カタギじゃありません」って顔に書いてあるような二人組だな」
「左の奴はマテンロウのアントニーか?」
「アントニーはカタギだ。 ついでに言うが大トニーもカタギだ」
「何人殺したかの数を言い争っているな。 やっぱりこいつらも殺し屋なんだな?」
「左のカタギ・アントニーがレモンというコードネーム、右のヒゲ野郎はミカンと言う」
「なんだ、その「フルーツこだわり」は? なにかのキャンペーンか?」
「柑橘類を愛してやまないのだろう。 この二人は幼い頃からの付き合いのようだ」
「柑橘類は友情にも厚い」
「レモンは「きかんしゃトーマス」を崇拝している。 「きかんしゃトーマス」から人生を学んだ男だ」
「「きかんしゃトーマス」から人生を学べるのか?」
「学べるとも。 他者との関わり合いや自分らしい生き方など、語られることは意外と深い」
「「きかんしゃトーマス」を見て殺し屋になることも学んだ訳だな。 それは確かに深い」
「ブリーフケースの持ち主は彼らだ。 盗まれたと知って、さあどうするかな?」
「ブリーフケースには何が入ってるんだ?」
「現ナマだ。 彼らは犯罪組織の大ボス、ホワイト・デスに雇われた者たちだ。 中国マフィアにラチられたボスの息子を救出し、身代金も奪い返して今、ボスのいる京都にご帰還中だ」
「そりゃお勤めご苦労さん」
「しかし息子はこうなった」

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「血の涙を流すマリア像のようになっちまってるじゃねえか。 いやキリスト像か。 どっちでもいいか」
「全身から血を噴き出して死んでいる。 おぞましいにもほどがある。 これはもしや、「北斗の拳」でラオウがレイを死に追いやった秘孔「新血愁」を突かれた可能性もある」
「北斗神拳の使い手が車内にいるのか?」
「かもしれないが、もう一つの可能性としてはブームスラングという蛇の毒を盛られたことも考えられる」
「毒で殺した奴がいるのか。 すると、蟲の呼吸の使い手だな」

「虫ではなく蛇だがな。 息子を殺したのはこいつだ」
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「胡蝶しのぶとは似ても似つかねえ。 ましてやラオウでもねえ」
「ホーネットという殺し屋だ。 彼女もホワイト・デスからの刺客だ」
「あれ? ホワイト・デスに雇われたこの女がホワイト・デスの息子を殺したのか?」
「その通りだ」
「簡単に即答したな」
「極道の家庭にも複雑な家庭事情がある。 いや、極道だからこそ親子でもややこしくなる。 デキの悪い放蕩息子など、いつも命を張ってる父親からすれば捨てねばならないゴミとなるのだ」
「バカ息子を守れず、カネまで奪われた柑橘類コンビがこのショーをもっと面白くさせてくれそうだ」
「ブリーフケースを盗んだ奴が息子を殺したと思っているからな。 テントウ虫の男はやっぱり不運な奴だ。 全国のテントウ虫は今頃苦虫を噛みつぶしたような顔をしてるだろう」
「虫が虫を噛みつぶした顔を見てみてえな」
「スズメバチ(ホーネット)とテントウ虫の戦いが始まったぞ」
「二人とも頑張れよー。 あっ、ホーネット負けた」

「テントウ虫がスズメバチに勝った。 昆虫の勢力図が変わったな」

小休止
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「おい、チャニング・テイタムに似た奴が乗ってるぞ」
「あれは「似た奴」ではない。 チャニング・テイタム本人だ」
「まさかあ」
「会話で分かる」
「話しかけたテントウ虫野郎に「俺と一発ヤリてえのか?」と言ってるぞ」
「やはりまちがいない。 奴はチャニング・テイタム本人だ」
「なんでぇ、その確認の仕方は」
「あまり聞くな。 彼自身もノリノリでやってるセルフジョークだ」
「ブラピに平井堅にアントニーと、似たもの祭りかと思いきや、まさかの本人とは」


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「これまたチョコプラの「悪い顔選手権」でぶっちぎりで優勝しそうな顔をしている。 公共の場所でする顔じゃねえな」
「キムラという元殺し屋だ。 彼の息子ワタルがデパートの屋上から突き落とされて意識不明の重体で病院にいる。 ワタルをひどい目に遭わせた犯人を突き止めたキムラが列車に乗り込み復讐を果たそうとしているのだ」
「ちょいと待ちなせえ」
「待てと言われて待つ理由はないが、待たない理由もないので待とう」
「息子が突き落とされたデパートってのは2階建てくらいか?」
「知らないな。 デパートというからには5階建て以上はあるだろう」
「子供がビルの屋上から落ちりゃ普通は死にませんかって話をしてるんだよ」
「よほど元気にたくましく育ったのだろう。 タンパク質とカルシウムを侮ってはならない」
「「お母さん、丈夫に産んでくれてありがとう」ってやつだな」
「「産んでくれて」よりは「育ててくれて」の方が正解だ。 最初から成熟した丈夫な筋骨を持った赤ちゃんを母親が産むわけではない。 免疫力及び健やかな筋力と骨を育むのは、親が正しく栄養を与えることと、それを健康体に反映させるためにいかに本人が精進するかだ」
「「小さく産んで大きく育てよ」だな。 それにしたって、屋上から落ちたんだぜ?」
「生死の境をさまよっているが現に生きてる」
「「ワタルという子供が最も最強である説」を立証してみたくなった」

「最強のワタルを病院送りにしたのはこいつだ」
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「う~ん・・・・」
「どうせおまえのことだ。 誰に似てるのかを考えてるのだろ? リュークはすっかり“似たもの例え病だな”」
「“似たもの例え病”を治せる医者を探してみたがいなかった。 まっ、治したいとも思わねえがな」
「人形のような顔をしているのは、裏返せば特徴がないと言うことだ」
「金髪にすればサンダーバードのレディ・ペネロープなんだがな」
「髪型を変えたらとか、目を細めて見たらとか、「○○すれば似てる」というのは似てるとは言わない」
「もういいや。 例えるのはあきらめた」
「女性だが、名をプリンスという。 実はホワイト・デスの娘だ」
「出た。 またしても複雑な家庭事情。 極道も大変だな」
「レディバグとは違い、やたらとラッキーに恵まれる、テントウ虫もうらやむほどの神級の強運の持ち主だ。 全国のテントウ虫から引っ張りだこになるだろう」
「虫がタコを引っ張るとはスゲえ世の中だ。 それにしても、子供を屋上から突き落とすとはひでえことをしやがる。 どんな教育を受けてんだ?」
「子供を屋上から突き落としてはならないと学校でわざわざ教える教科はそもそもない」
「これからは国語・算数・理科・社会の他に「子供を突き落とすな」という科目を入れてほしいもんだな」
「彼女の目的はキムラを列車に誘い込み、自分の父親を殺す計画に利用しようとする腹づもりだ」
「親父はバカ息子を殺し、娘から命を狙われる。 極道の家庭崩壊はひと味違うな」
「キムラの息子ワタルが入院している病院にはプリンスの手下がいつでもワタルを殺せるように病室の前でスタンバイしている」
「息子を人質にとってキムラに言うことを聞かせるのか。 狡猾な女子学生だ」
「女子学生はだいたいが狡猾だ」

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「真田広之だったら、列車内で日本刀を振り回すことも許されるのか?」
「「真田広之が列車内で日本刀を使用することは禁じられている」と法律に記載はされていないが社会通念としてダメだし、真田広之も心得てる」
「なのに振り回している。 真田さんも還暦を過ぎてグレだした」
「彼はキムラの父、エルダーだ。 病院で命を狙われていた孫の危機を救い、プリンスの計画に協力させられようとしていたキムラを止めに米原から乗車してきたのだ」
「さすが二代目ファイト一発。 元気なジイジだ」
「彼は峰岸組というヤクザの幹部だった。 ところがロシアンマフィアのホワイト・デスに組長と自分の妻を殺害されて組を乗っ取られてしまい、彼は姿を消して長年復讐の機会を伺っていた」
「またホワイト・デスの名前が出てきたな」

「すべての元凶がこの男なのだ」
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「ラスボスにしては、なんだかなあ・・・ で? この男の何がホワイトなんだよ?」
「「ホワイト・デス」というのは「ヘロイン」のことだ。 手を出したらあの世行きだということだ」
「なるほど。 薬物問題の啓発に一役買う、いい名前だ」
「本名はロシャン・レスニコフという。 殺し屋が同じ列車内に乗り合わせて殺し合いになるのは、実はこの男が仕組んだことなのだ」
「酔狂な極道だな。 楽しいショーをプロデュースしてくれて感謝するぜ」
「ここで昔話をしよう」
「俺は坊やじゃねえし、これからネンネをする良い子でもねえ」
「いいから聞け。 彼の妻は、サツに捕まった息子を迎えに車を走らせていた時、他の車に衝突されて重体となり結局は助からなかった。 この時、衝突した車に乗っていたカーバーという人物は実は殺し屋で、車にホワイト・デスが乗っているものだと勘違いしていたのだ」
「おやまあ」
「その時、ホワイト・デスは留守だった。 ボリビアで自分の部下が全滅させられたことを知って、ボリビアに向かっていた。 ボリビアでホワイト・デスの部下を殺したのはミカンとレモンだ」
「柑橘類コンビ、すげーな」
「妻は最初は助かる見込みがあったが、腕利きの医者は2日前にホーネットによって暗殺されていた」
「ここまでくりゃ絵に書いたような因果応報だな」

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「自分が留守にしていなければ・・・ 妻が車に乗っていなければ・・・ バカ息子がお騒がせしていなければ・・・ 医者が生きていれば・・・ ミカンとレモン、カーバー、バカ息子、ホーネット。 ホワイト・デスは妻を失う原因となった人物全員を片っ端から抹殺するために、素性を伏せて殺し屋たちに依頼を持ちかけて列車に集め、殺し合いを仕向ける計画を立てたのだ」
「待ってくれ。 カーバーという奴など列車に乗っていなかったぞ」
「カーバーは直前になって腹イタを起こして来れなくなった」
「腹が痛ぇくらいで仕事をふけるとは子供みてえじゃねえか」
「自身は医者じゃないのだから自己判断は危険だ。 体調が整わない時は医者を優先するのがプロしての判断だ。 腹痛で仕事を休むのは大人でも子供でも間違った行為ではない」
「へいへい、わかりまちたよ」
「むろん事情など知らない元締めがカーバーの代役として指名したのがレディバグだったのだ」
「やっぱり運の悪い奴だな。 これはもう全国というより、世界中のテントウ虫が非難の声明を出すだろう」
「経済制裁もんだな」
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「平井堅もどきのウルフは何だったんだ?」
「あれは別件だ。 ウルフは妻との結婚式で恩人のカルテルのボスなどを含めた式の出席者全員が毒殺される悲劇に見舞われていた。 もちろん妻も死んだ。 犯人はホーネットなのだが、結婚式にボーイとして潜入していたレディバグの顔をウルフは覚えており、彼が犯人だと思い込んでいた。 無関係のレディバグはウルフのことなどを覚えていなかったのでとんだ災難だ」
「そこまでくりゃあ、テントウ虫が幸運の虫という説の方が間違ってやしないか?」
「しょせんこの男のコードネームだからな。 だいたい、テントウ虫の背中の七つの模様は、聖母マリアの七つの喜びと七つの悲しみを意味している。 彼は周りの者の不幸を肩代わりして、喜びを人に分け与えているのだ」
「付けた名前が良くなかったのか、それとも元々不幸体質だったのかはマリア様もお悩みになられるだろう」

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「ホワイト・デスにとって誤算だったのは、娘のプリンスが列車に乗り込んでいたことだ。 父親から相手にされなかった恨みを抱き、抹殺する計画を立てたプリンスは、持ち前の幸運力であれよあれよというまにお膳立てを整えていく」
「レモンもミカンもいいように翻弄されたんだからな。 彼女のパワースポット体質にはお手上げだな」
「結果的に復讐も果たせたんだからな。 だが京都で予想外の不幸に見舞われるとは彼女も予想しなかっただろう」

「というより、防弾チョッキをたまたま着ていたレモンのラッキーに屈したことになる。 結局アレだわな。 運も準備しとかなきゃ巡ってこねえってこった」

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「おいレム。 サンドラ・ブロックが出てきたぞ。 いや、似てる方か? どっちだ?」
「あれはサンドラ・ブロックに似ているがサンドラ・ブロックではない。 レディバグに仕事を依頼するマリアという仲介業者だ。 もしもあの女がサンドラ・ブロックだというのなら、男の方はブラッド・ピットだ」
「論理的だ」
「そしてブラッド・ピットはこのサンドラ・ブロックのカメオのお礼として「ザ・ロストシティ」という映画に出演することになる」
「縁というやつだな」
「我々が乗っていたこの新幹線の列車の名前は「ゆかり(縁)」という」
「論理的だ」


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「人間の縁なんてのは不思議なもんだよなあ。 愛や友情が生まれるだけじゃねえ。 ちょいと狂えば果てしない憎み合いと殺し合いがおっぱじまりやがる。 デスノートなんかなくたって、ご覧の通りの死ね死ね祭りに花が咲く。 人間っておもしれえぜ」   
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「運命には逆らえない。 人間は常に運命に支配される。 逆に運命を支配した者が世界をも支配できるということだ」

「そんな方法がありゃ、人間誰も苦労はしねえがな」
「運命を100%コントロールするのは不可能だが、少々なら味方に付ける手立てはある。 今回の「東海道殺し屋-1グランプリ」を拝ませてもらって、そのことがよく分かった」
「興味深いじゃねえか」
「自分の思い通りにうまくいく人生なんてないということを人間は知っている。 つまり人生とは人間にとって総じて不満が多いものなのだ。 要するに不意に訪れる運命というのは良いことよりも悪いことが起きることを指す」
「まあどうしても物事を都合よく考えたいのが人間だからな。 その分、運命に裏切られたと思う感覚になるんだろう」
「悪いことばかり起きると思えば、それに備えればいいだけのことだ。 地震や火事や水害などの防災準備、ケガや病気を防ぐための健康管理と治療の保障などなど、自分で手を打てる運命は考えようによってはいくらでもある」
「死神にあるまじきアドバイスだ」

「運命に逆らってはいけない。 運命を受け入れて備えるのだ。 災害も病気も人を選ばない。 自分だけは災害に遭わない、病気にならないと思うのは愚の骨頂だ。 何が起きてもリスクは最小限に抑える準備をする。 いかなる運命の降りかかり方も心がけ次第だ」
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「いかに腕の立つ殺し屋たちでも運命にはなすすべがなかった」
「人の道に背く者に運命は味方しない。 ホワイト・デスは多くの人間を傷つけ、人の運命を自分の手で蹂躙してきた。 運命を無責任に汚した報いは必ず跳ね返ってくる。 複数の要素が重なって妻を失う因果応報もしかり。 ロシアンルーレットによる殺し方も、最後は自分でルールを曲げ、運命に逆らったために自分に跳ね返ってしまうのだ」
「自分の設定を変えるのはブサイクだよな」
「ウルフも自分が投げたナイフがブリーフケースに跳ね返って自分に刺さって死ぬ。 ホーネットも自分の武器で毒殺される。 ミカンを死に追いやったプリンスは、みかんの配送トラックに轢き殺される。 因果応報という不可避な兵器を繰り出す「運命」。 運命こそ最強の殺し屋だ」
「ジョン・ウィックよりもか?」
「ジョン・ウイックよりもだ」
「ファブルよりもか?」
「ファブルよりもだ」
「じゃあその「運命」を作ったベートーベンもある意味スゴいわけだ」
「「運命」というタイトルはベートーベンが付けたものではない。 耳が不自由だったベートーベンの世話をしていた秘書が勝手に話を盛って付けたものだ」
「じゃあ、秘書が最強ということだ」

「ねつ造エピソードを後世に残したという意味では最強だろうな」 

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「自分に幸運が舞い降りたときにはどこかで誰かが不運な目に遭い、自分が不運になったら、どこかで誰かが幸運になっている。 運命が行き交い、縁が生まれ、因果も残る。 人間の世界は不思議な力で回り続けるのだ」
「たまにゃあ死神がチャチャを入れるがね」
「人生をネガティブに捉えてはいけない。 いいことの方が多いと思っている方が運は向く。 人は悲しみを背負い、共に喜びも背負い、テントウ虫のように陽の方向へと飛んでいく。 美しい生き物だ」

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「レム、一つ聞いていいか?」
「なんだ?」
「なぜ列車にあれだけ外国人が乗ってきたのだ? 日本なのにあれほどの外国人比率のが高いのはどうかしていると思うが」
「ハリウッド映画だからだ」
「は?」
「なんでもない。 こっちの話だ、気にするな。 東京から京都まで行く新幹線だったら観光客などの外国人が多くても不思議ではなかろう」
「外国人観光客受け入れが再開されたら、どうぞ京都におこしやす」
「おすすめの寺や神社がたくさんあるぞ」
「だから、そういう言い方は・・・・」


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「賢人のお言葉」 
 「すてきな旅は、夢で見るのが一番かもしれない」
 (「きかんしゃトーマス」より)

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コメント

爽快感

ブレット・トレインは久々に興奮したアクション映画でした~
殺し屋達と同じように列車に乗車し、映画を見終えて下車という感覚になりました!

原作にあたる「マリアビートル」を日本が映画化しなかったのは伊坂幸太郎さんが断っていたみたいです。(パンフレットのインタビューより)


「映画化されたものを観ればそれでいい」と思われちゃうのは辛いな、という気持ちがあった。
特に「マリアビートル」はエンターテイメントに徹したので、映像化したら小説とそれほど変わらないものになってしまう予感もあって。
国内で「映画化したい」と熱心におっしゃってくれる映画関係の方もいたんですが、その度に「これは小説のままにしておきたいので」とお断りをしていたんです。

コメントの編集

Re: 爽快感

クルゼイロさん、コメントありがとうございます。

映像化作品が多い伊坂さんですが、「この小説だけは」という特別な思い入れが伝わりますね。

日本人キャストでやるならというのも考えますが、ハリウッドはハリウッドでうまくアレンジしてくれて、楽しい映画になってましたね。

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