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女神の見えざる手
2017年11月19日

T0022322p.jpg石原慎太郎が東京都知事だった時に始まったオリンピックの招致活動。
この頃から「ロビー活動」という言葉がメディアで盛んに聞かれるようになった。

「ロビー活動」とは特定の主張を持った個人や団体が政府の政策決定に影響を及ぼすために、政党や議員に働きかける私的な政治活動のことを言う。

アメリカの政界では特に盛んで、製薬業界、建築業界、銃器産業にかかわる政策決定にはロビイストの活動が大きな影響を及ぼしている。
アメリカの政治プロセスには当たり前にあるシステムで、ホワイトハウスの北側にあるKストリートにはロビイストの会社がズラリと軒を連ねており、ロビイスト屋さんの秋葉原状態になっている。

接待や根回し、コネ作りなどには日本人的には今ひとつよくないイメージがあるが、国が動く裏には欠かせない仕事である。
世界は、人脈を築くことはもちろんのこと、つぶすことでも成り立つ。
そんな政治の裏側で驚愕の寝技を繰り出す一人の女性ロビイストの姿を描く「女神の見えざる手」。
「恋におちたシェイクスピア」、「マリーゴールド・ホテル」シリーズのジョン・マッデン監督が放つポリティカル・サスペンス。


入院回顧雑話(フィクション)PART2
アッシが耳の病気で入院し、早や一週間以上が経過した。
術後の状態も良く、退院の日もそう遠くはない。
それでも映画を観れないというウズウズ感は一向に収まらず、このままでは別の病気になりそうである。


「先生、退院はいつ頃になりそうですかね?」
「病室でホイットニー・ヒューストンを激唱しなければ早く帰れるよ」
「その節は失礼しましたね」
「まったくだ。 真面目な話、退院はあと2~3日ってところかな」
「そう言わず明日にでも」
「うん、いいよって私が言うと思うかね」
「思いますけど」 「思うなよ。2~3日ぐらい我慢しろよ」
「そこをなんとか」
「なんとかできるんだったら医者はいらんよ」
「うちにある取って置きのアダルトDVDを何本か差し上げますよ」
「けっこう」
「かわいいネーチャンがいるお店を紹介しまっせ~」
「何者だ君は。 まるでロビイストみたいだな」
「はい、キタ――――――!!!!」
「ビックリするだろ。 病院の中で大声を出すんじゃない」
「ここに入院する前にロビイストが主人公の映画を観たんですよ」
「そこにつながるのか」
「面白い映画でしたよ。 どんな話か聞きたいです?」
「私の顔を見てみろ。 “忙しい”って顔に書いてあるだろ」
「“私は日本一の名医”って読めますけど」
「・・・・まあいい。 ちょっとぐらいなら付き合おう」

「国の行く末さえ左右するロビイスト。 もちろんロビー専門の会社の組織力もあるのでしょうが、行きつくところは「人対人」ですから、ロビイスト個人の力量が優れていなければなりません。 この映画に登場する女性ロビイストはハンパではない凄腕の持ち主です」
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エリザベス・スローン(ジェシカ・チャスティン)
大手のロビー会社「コール=クラヴィッツ&ウォーターマン」に所属するエース・ロビイスト。
クライアントの要望に応えるためには仕事に一切の妥協をせず、常に完ぺきを追求するロビイングの鬼女。
目的のためには手段を選ばす、彼女の手にかかればどんな有力者も首を縦に振る。
業界内だけでなく政治家たちからも一目置かれ、メディアも注目する凄腕の仕事人である。

★信念にそぐわない仕事はしない
保身のためには踏み絵も踏むという民進党議員のようなユルユルの理念など持ち合わせてはいない。
金にも地位にも固執せず、自分自身のイデオロギーを貫く、雇われ根性などこれっぽっちもない真のプロフェッショナル。

★勝つためには利用できるものは何でも利用する
人の心を動かす、それも政治に関わることならば生半可なやり方は通用しない。
世論を揺さぶるためなら部下のプライバシーまでも武器にする非情の寝技使いである。

★自費で諜報チームを外注
生き馬の目を抜く世界を知る彼女は、自分以外の人間は疑うところから始まる。
稼ぎの中から自腹を切って、盗撮・盗聴などお手の物の裏方さんを秘かに雇っている。

★筋金入りの負けず嫌いで超激情型
基本、他人は自分より下という考え方。 意見されたり否定されたりすれば相手が誰だろうと黙っていられないタイプですぐに激高する。
その反動なのか、クールダウンした時の知力の切れは底知れない。

★ファッションは世界と渡り合うための武装
おそらく年収は100万ドル以上。 自分で買い物はせずにパーソナルショッパーが買い付けてくれる服を着用。
サンローラン、ヴィクトリア・ベッカムのスーツやドレス。 アクセサリーはピアジェを好む。

★寝るヒマがあるなら仕事
ロビー活動のためには寸暇も惜しむ。 寝てる時間がもったいないので強力な眠気止めの薬を常用し、パーティーに顔を出しまくっては根回しに奔走する。

★かりそめの私生活
友人も恋人もいない。 性欲はエスコート・サービスで処理。  
晩飯は深夜もやってるヌードルショップでチャッチャと済ます。

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「ロビー活動に人生を捧げてるような女だなあ」
「もちろん実際にはこんな極端なロビイストはいませんがね」
「だろうな」
「なので、この映画は「ロビー活動ってどんなの?」とか、ロビイストの実態とかについて学べるものではありません。 こんなダークヒロインですから敵もできてしまうので、自分を窮地に陥れようとする相手に彼女がどう立ち向かうかを描く、特殊なキャラクターによるサスペンス映画です」
「なるほど。 でも、聞いてるとイヤな女だなあ。 これが悪役じゃないのかあ」
「そうですね。  そこが面白いっちゃあ面白いですがね。 仕事は熱心ですけど、金や地位を欲しがるわけでなく、それでいて徹底的に他人を利用しまくるんですからね」
「孤独だな。 敵だらけになる、そういう生き方は」

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「映画はエリザベスが過去の不正を問われて聴聞会にかけられる〔現在〕のシーンから始まり、その3ヶ月前の〔過去〕のシーンを行き来しながら展開します」
「ややこしそうだが」
「これがですね、クライマックスのどんでん返しのための伏線を生かす絶妙な効果を生んでるんです」
「ほぉ、どんでん返しがあるんだ」
「策士のヒロインですからね。 彼女の仕掛ける罠は侮れませんよ」
「この聴聞会で彼女が責められてるのは、一体何をやらかしたんだ?」
「“ヌテラ法”というパーム油にかかる税金の法律があるんですが、この法律制定のためにインドネシアを視察した議員に彼女が経費を負担したというのが贈賄にあたるのではと問われてるんです」
「それは敵にハメられた濡れ衣とか?」
「いえ違います。 本当にやらかしてしまったんです」
「なんだよそれ。 ガチの悪女じゃないか」
「まあ目的のためには色々とやってきた人ですからね。 でもこの聴聞会もちょっとした裏があるんですよ」
「ハハァン、そこがどんでん返しにつながるのか」

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「聴聞会から遡ること3ヶ月前。 エリザベスの勤めるコール=クラヴィッツ&ウォーターマン社(CK&W)に銃擁護派団体の代表、ビル・サンドフォードが仕事を依頼してきます。 政府で新たな銃規制法案が審議されているんですが、なんとか廃案に持ち込んでくれというものです」
「いきなりアメリカらしい話だな。 銃を規制するか銃所持の自由を認めるかは未だにもめてるからな」
「どれだけ銃乱射事件があったって、それとこれとは別という考え方の国ですからね」
「銃擁護派にすればそりゃ規制法なんてたまったもんじゃないわな。 別にやり手のロビイストに頼まなくったって、銃規制法なんてのは議会を通過せんのがアメリカじゃないのか」
「このサンドフォードというオヤジはですね、女性の銃所持をもっと推進させたいんですね。 女性が護身用として銃を気軽に購入できるようにしたいという点を女性のロビイストが訴えてくれたら説得力もあるし、銃購入者の前科をチェックするという新法案に対する反対票が増やせるという目算です」
「必死だなあ」
「ところがエリザベスはこの依頼を断るんです」
「おおっ」
「黙って話を聞いてたエリザベスですが、突然大爆笑しながら『陳腐な発想ねえ』とサンドフォードをけなすのです。 目の前にいる上司も面喰うしかありません」
「なるほど、彼女は個人的には銃規制に賛成なんだな」
「そうなんです。 引き受ければ会社にも自分にも見返りは大きいでしょう。 しかしエリザベスにとっては銃規制に反対するなんてのは自分の信念を曲げることになり、仕事を受ける選択など有り得ないのです」
「でも会社に雇われてるんだからなあ・・・」
「上司のジョージ・デュポン(サム・ウォーターストーン)はもちろんブチ切れます」
『要求に応じられないのなら君にいてもらう必要はない』
「そりゃそうなるよ」

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「そんな彼女に接近してきたのが小規模のロビー会社『ピーターソン=ワイアット』のCEOロドルフォ・シュミット(マーク・ストロング)です」
「ナンパとはいい度胸だ。 『ゲーハーはアッチの方も強いんだぜ~』とか言いながら」
「違いますよ。 ヘッド・ハンティングですよ」
「髪が欲しいのか? もう手遅れだぞ」
「ちーがーうーだーろー!」
「分かっとるよ。 この男のロビー会社は銃規制賛成派議員を支援する会社ってことか」
「シュミットも長年にわたって銃規制問題のロビー活動を続けてきた男です。 『私と一緒に闘おうじゃないか』と条件も提示してエリザベスを誘います」
「まあ、この姐さんだから、そう易々と尻尾は振らんだろう」
「でも、上司もクライアントも怒らせたので、どのみち会社には居られませんでしょうし」

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「エリザベスは会社に出てきて、この時に例のインドネシアを視察する議員の宿の手配をします。 若い部下から『倫理規定違反では?』と言われても強引に処理させるんです」
「それが後々、彼女が足元をすくわれることになるのか」
「彼女と同世代の同僚であるコナーズ(マイケル・スタールバーグ)がチョコマフィンをかじりながら、サンドフォードを怒らせたエリザベスを『バカか?』と罵倒します」
「尻ぬぐいさせられたんだろうなあ」
「ところで先生。 朝食にケーキを食べるってどうなんですかね?」
「いきなり何だ? ダメに決まってるだろ。 朝の空腹時に食べる時が一番血糖値が上がるんだよ。 甘いもんなんか食べたら尚更大量にインスリンが分泌されて、消費できなかった糖が脂肪となって蓄積されてしまうんだ」
「エリザベスに言わせれば『朝食にケーキを食べる文明人はいない』んだそうです」
「いいことを言うじゃないか。 ああ、コナーズが朝からチョコマフィンを食ってたからか」
「ついでに言いますと。 コナーズは『マフィンはケーキじゃない』と言うんですが、『ケーキと同じ材料だからマフィンはケーキ』なのだとエリザベスは仰ってました」
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「で、そんなやりとりの直後、彼女はスタッフ全員の前で『会社辞めます宣言』します」
「決めちゃったか」
『信念を曲げてまで仕事はできない』と、この会社が銃規制法案を廃案に持ち込もうとするのを阻止するために別の会社に移籍することを表明」
「宣戦布告か・・・」
「そして今まで共に仕事をしてきたスタッフに『私についてくる人は?』と呼びかけて、半分の4人が同調」
「物々しい展開だな」
「しかし、エリザベスが最も信頼していたジェーン(アリソン・ピル)はこれを拒否し、会社に残ることを告げるのです」
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「んちゃっ!んちゃっ!」
「いや確かにアラレちゃんメガネですけども」
「大人しそうな子じゃないか。 こんな子があのエリザベス・スローンに反旗を翻すのか」
「こう見えて、デキる子なんですよ、このジェーンって御方は」
「エリザベスの右腕的存在だったのは伊達じゃないんだな」
「自分をあまり主張しないようなキャラに見えるんですが」
「内心ためてることもあったのかな? 信頼していた部下に裏切られて、さぞエリザベスはショックなんだろうね」
「いや実はですね。 彼女が本当に"デキる部下"なんだということが、のちに分かるのです」
「なんだよそれ?」
「さあ、なんでしょう?」
「教えなさいよ」
「じゃあ明日退院ということで」
「それはダメだ」

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「4人の部下と共に『ピーターソン=ワイアット』(PW社)に移ったエリザベスは闘志満々です」
「敵に回すことになった古巣はプライドもあるからな。 相当なことを仕掛けてくるぞ」
「前の会社の「CK&W」は大きいし、資金力もありますからね。 銃規制法案に賛成か反対かを決めかねている議員の票の奪い合いは、一進一退の攻防となります」
「ロビイストの本気が見られるわけだ」
「“働きかけ”なんて言葉は生ぬるいぐらい。 法的にアウトかスレスレのような圧力や揺さぶりが横行し、息子が選挙に出馬する予定の議員さんは両方から翻弄されまくります」
「親族を責められたら弱いわな」
『息子の選挙区に強力な対抗馬を立てちゃろうかえ?』なんて言われたら、言うこと聞かなしょうがねえっすよね」
「ほとんどヤーサンの世界だな」
「しかも「CK&W」はなんと『PW社』のスタッフ一人を買収してスパイに仕立てあげます。 ブロンドの美人なんですけどね」
「票の取り合いと言うより、互いをつぶそうとする企業間戦争か。 いやもうそれ以上か」
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「エリザベスは個人で盗撮や盗聴専門の諜報グループを自費で雇っています。 そこからの情報でつかんだ社内の裏切り者をみんなの前で暴露してクビにするのです」
「敵もさる者だが、エリザベスも相当なタマだな。 つまり最初からスタッフ全員を疑って身辺を探らせてたんだろう」
「まあ銃規制法案を通すための戦いとなると、仁義を通すことなど二の次。 それだけアメリカの銃信奉はとてつもなくガードが固いですからね。 彼女が『今までが手ぬるすぎたのよ』というのは当たってますね」
「地方じゃ銃規制に賛成したら民主党議員でも落選するって言うからな。 今やアメリカはタバコ吸ってる人より、銃を持ってる人の数の方が多いからね」
「そういう社会を変えようとするエリザベスですが、それでも彼女のやり方はエグいのです。 一番のとばっちりを受けるのが同僚のエズメさんです」
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「エリザベスの新たな右腕となった部下のエズメ・マヌチャリアン(ググ・バサ=ロー)は、高校時代に銃乱射事件に巻き込まれて生き延びた過去を背負っています。 エリザベス以外誰にも言っていないトラウマです」
「過去に苦しみながらも、この仕事に打ち込むエズメの気持ちに応えようとするエリザベス。 いい所があるじゃないか」
「甘い。 甘いな先生は。 開運堂の真味糖よりも甘い」
「あのお菓子は甘いからなあ」
「そうではなくて。 言ったでしょ、他人を利用するのがエリザベスという女なのですよ」
「聞きたくない話だな」
「エリザベスはテレビ番組でかつての同僚コナーズと討論をするのですが、エズメも一緒に来ていて離れた所から見学していました。 コナーズとの討論が白熱化してきた時、エリザベスはエズメの過去のことを喋るのです」
「やりやがったな」
「人が隠してきたトラウマを利用して同情を誘うやり方、しかも見学していたエズメにテレビカメラを向けさせて、彼女を「顔」としてメディアや世間の前に引っ張り出すのです」
「それは汚い。 エズメをかわいがったのは最初からその作戦が目的だったわけだ」
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「エズメも相当戸惑いますが、このやり方で効果があるならと渋々悲劇の主人公としてテレビなどに顔を出すようになります。 ただ、エリザベスに当初抱いていた尊敬はこれっぽっちもなくなっていますが」
「そりゃそうだろうよ」
「エリザベスの狙い通りに世論は銃規制法案賛成に傾きます」
「そりゃ良かったな。 人の心の傷口をさらしものにして満足か」
「でもその後、エリザベスでさえも予測できなかった事態が起こります。 エズメが銃を持った男に襲われたのです」
「そりゃ大変だ」
「その男は銃規制に反対していて、たびたびメディアに出て銃規制を訴えるエズメを懲らしめてやるつもりだったようです。男は夜の街角でエズメにいきなり銃を突きつけ、そのまま撃ち殺しそうな勢いでした」
「彼女はどうなったんだ?」
「幸い無傷でした。 というのも、その暴漢は、事件に気づいた通りがかりの男に射殺されたのです」
「なんとまあ。 ザ・アメリカだな」
「つまりエズメはですね。 銃によって救われたということです。 通りがかりのフランク・マッギルという男が正規に登録された銃所持者であり、とっさの事態に銃を抜いて、エズメを殺そうとしている男を射殺しなければ、今頃はエズメの方が死んでいたかもしれません」
「ややこしいことになってきたな」
「この事件により、エズメを救ったマッギルという男性がヒーローのように扱われ、「銃はやはり護身用として持つべきだ」、「女性も気軽に銃を購入できるようにしよう」という銃規制反対派にとって絶好の風向きに変わってしまうのです」
「エリザベスには誤算だったな」
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「CK&W社は手をゆるめません。 法案賛成のロビー活動の先頭に立ってたエリザベス自身の個人攻撃に乗り出すのです」
「スキャンダルをばらまこうってのか」
「目的のためにはどんな手でも使うエリザベスですから、叩けば必ずホコリが出るはずだと睨んだデュポンの指示のもと、かつて彼女の右腕だったジェーンがエリザベスの泣きどころを見つけ出します」
「ああ、それが例のインドネシアに視察に行った議員の旅行費用を負担した贈収賄疑惑だな」
「そういうわけで、エリザベスのロビイスト資格違反を問う聴聞会が開かれるのです」
「絶体絶命だな。 ってか身から出たサビだな」

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「聴聞会の委員長を務めるのがスパーリング上院議員(ジョン・リスゴー)です」
「はりきってジコチュー女を裁いてやってください」
「実はこの議員さんはですね、CK&Wのジョージ・デュポンに買収されています」
「なんだって?」
「元は銃規制法案には賛成の人だったんですが、デュポンに圧力をかけられ、聴聞会でエリザベスを徹底的に吊るしあげる約束をさせられているのです」
「それじゃ話が変わってくる。 まったくどいつもこいつも・・・」
「インドネシアの件だけでなく、ドラッグの乱用、男を買っているという公序良俗を犯したことなど、あらゆる角度からエリザベスを追い込んでいきます」

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「弁護士との打ち合わせにより、何を聴かれてもエリザベスは『憲法修正第五条により、弁護士の助言に従い、答えることを拒否します』を連呼します」
「逃げの一手か。 彼女には不本意だろうが」
「そうですね。 だから彼女はやっぱり黙ってられないんです。 痛いところをついたら激高する性格だということも把握されていて、委員長の思惑どおりに挑発にキレてしまいます」
「年貢の納め時だな」
「ところがですね。 この聴聞会に臨むエリザベスはとんでもない“爆弾”を持っていたのです」
「そこだよ、気になるのは」

『ロビー活動は予見すること。 敵の不意を突くことが大事。自分が突かれてはいけない』
「彼女のモットーが示すように、敵がどう動くかを読み、仕掛けた策がズバリとハマる。 あまりに周到な彼女の“見えざる手”はいつから動いていたのか。 一気に形勢逆転するシーンのカタルシスはなかなか爽快です」

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「この映画には、さして教訓めいたものはないんですけど、一にも二にも突出したキャラクターの面白さで見せる映画ですね」
「大出世するか、犯罪者になるかの紙一重。 それも女性ってのが魅力」
「そんなダークヒロインが国を左右する闘いに身を投じる話です。 確かに実際にいたら絶対に好きにはなれない人でしょうが、自分の信念のためには会社も辞めて正義を貫くその姿には、我々一介のサラリーマンにはうらやましいバイタリティを感じますね」
「日本じゃ感覚的には銃規制賛成の目線で観てしまうけど、アメリカではどんな反応だったんだろう?」
「おおむね肯定的な評価ですけど、ストーリー自体銃の問題に深く言及してるわけではないですからね」
「どんなに乱射事件があっても一緒だからな。 だからこそ自衛のために銃を持ちたいという悪い方向へと行ってしまってるのは否めない」
「まあそれはそれとして、なんといってもエリザベス・スローンを演じたジェシカ・チャスティンという女優の凄味をまざまざと見せつけられました」
「ジェシカ・チャスティンといえば、フェミニストであることでも有名だな」
「いろんなところでズバズバ発言してるので、常に何かと闘ってる印象を受けるジェシカ・チャスティンそのままの役柄のようにも見えますね」

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「よぉよぉ、お二人さん。 そろそろミーに気づいてくれてもいいんじゃないのかな」
「おい、そこはアッシのベッドだぞ」
「なんだ君は。 いつからそこにいたんだ。 見たことのない入院患者だな」
「残念なことにミーは病人じゃない。 ましてや医師でもないし看護師でもないんだなあこれが」
「まるでMen's Healthの表紙から抜け出てきたような・・・」
「当たらずといえども遠からず。 ハズレといえども近からず」
「何を言っとるんだこいつ」
「先生、彼はですね、エリザベス・スローンが性処理で利用しているエスコートサービスの男、ロバート・フォード(ジェイク・レイシー)です」
「メンズのデリヘルがなんでうちの病室のベッドで、ひと仕事終わったような格好で寝てるんだよ」
「ミーだってストーリーの中でチィとばかし活躍したんだぜ~い」
「そうでした。 聴聞会でエリザベスが私生活で男を買ってることを追求され、証人として彼が呼ばれたんです」
「呼ばれちゃったんだよなあこれが」
「チャリティーパーティーでエリザベスにバッタリと出会った時に他人のフリをされたのを根に持ってるんじゃないかと思ってましたがね」
「ミーはそんなヒップの穴が小さい男じゃないね。 お互いに世を忍ぶ関係なのに気安く人前で声をかけてしまったミーが悪い子なのさ。 ロバート君、反省の巻」
「だからあの証言?」
「それもあるけど、色々言われてても彼女は孤独な人なのさ。 周りには強い女のように見せててもミーは誰も知らない彼女の孤独な一面を見てきたのさ。 それでも彼女は聴聞会で弱音を吐くことなく窮地に立ち向かっている。 そんな彼女の力になってやろうと思わなきゃ男がすたるってもんじゃないかい」
「いいところあるじゃないか」
「ミーだってこんな仕事をしててもプロのはしくれさ。 他人のプライバシーを針でつつくようなクズどもに加担したら、仕事どころか男を廃業しなきゃなりませんっての」
「なんだこの感動は。 同じ男として惚れるじゃないか」
「先生よ、あいにくミーはカマを掘るサービスは受け付けておりません。 それよりも、ミーは今気がついたんだがエリザベスを救う証言をしたのはこれは恋のせいかもしれない。 これでは仕事を続けられない。 この恋の病を先生の腕で何とか治療してほしいのでさっそく入院希望宣言ときたもんだなこれが」
「そう言われても」
「先生、ベッドが空いてないんじゃ?」
「そうだ。 君ね、退院したまえ」 「へ?」
「映画観たいんだろ? おお観ろ観ろ。 退院おめでとうさん」

というわけで、アッシは病院を追い出さ・・・いや、めでたく退院したのだった。

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「おめでとちゃん。 お大事にね」


「賢人のお言葉」
 
「微笑む時、彼女はヴィーナス。 だが歩く時、彼女はジュノー。 そして喋る時、彼女はミネルヴァ」
 ベン・ジョンソン
(17世紀の英国の詩人)
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ドリーム
2017年11月11日

T0021729p.jpg未来を切り開く新しい技術を開発する。 街を活性化させる施設を作る。 人々に夢を与える芸術を生み出す。
偉大なるひとつのプロジェクトが成し遂げられるのは、携わった人々が汗水を流した"チーム"という結晶の成果であるのは言うまでもない。

しかし、チームを成している小さな力である"地上の星"の名や、仕事ぶりが世に伝えられることはあまりない。
それがチームの功績としてくくられることゆえに致し方ないことなのだが、大きなプロジェクトの中で誰がどんな仕事をしたかを知るのは、後世に続くプロの卵のための夢の原動力になるのではないだろうか。



【入院回顧雑話(フィクション)PART1】
アッシは耳の病気で入院することになった。
入院2日目に手術が行われ、無事に済み、あとは経過次第であるが、早くも入院4日目にして映画中毒に襲われ、禁断症状が出始めていた。・・・・


「う~っ、苦しい・・・エイガぁ~、エイガぁ~・・・う~ん、エイガぁ~・・・。 いかん、ナースコールだ。 ポチッとな」
PINPO~N
そこへ看護師さんがダッシュで病室に駆け込んできた。

「どうかされましたか?」
「あっ、看護師さん。 今日もナチュラルメイクがキマってますね」
「そんなことを言うために呼んだんですか?」
「実はお願いがあるんですよ」
「なんでしょう?」
「映画を観に行きたいんですよ。 映画館に行ってきていいでしょうか?」
「ハイいいですよって私が言うと思います?」
「思いますけど」 「思うなよ。ダメに決まってるでしょ」
「え~。そんな石屋の小僧みたいな固いこと言わずにさあ」
「私は石屋の小僧じゃありませんよ」
「ちょっとぐらいいいじゃないですか。 行って30分、映画が2時間、帰るのに30分。計3時間。 それぐらいいいでしょ?ねっ」

実際そうなのである。
朝の診察のあと、10時から約1時間の点滴が終われば、次の19時の点滴まではほとんど何もすることがないのである。
そんな時間があるにもかかわらず、映画鑑賞の自由を召し上げられるというのは麻酔なしの手術よりも辛い。


「3時間だろうと3秒だろうとダメなものはダメなの。 それにしても本当に映画が好きなんですね」
「そう。映画が観れないのなら、せめて美人の看護師さんでも拝みたいけど、この病院には一人もいないようだ」
「そのケンカ、買いましょうか?」 「冗談ですよ」
「最近おもしろい映画ありました?」
「うん。 『ドリーム』っていう映画ですけどね」
「まあ、ベタなタイトル」
「ですよね。 でも“ドリームなんとか”や“なんとかドリーム”っていう映画はたくさんありますけど、案外に『ドリーム』そのままはほとんどないんですよ。 何年か前のインド映画に一本あるかな」
「で?その『ドリーム』って、どんな話?」
「60年代にアメリカとソ連の宇宙開発競争が激化していた頃、NASAで働いていた黒人女性の実話なんですよ」


1957年10月。 ソ連が人類初の人工衛星スプートニク1号の打ち上げに成功した。
これはアメリカにとっては鼻から牛乳を吹くほどのショックな一大事だった。
 
時は米ソ冷戦真っ只中。 核ミサイル開発に突っ走るソ連は大陸間弾道弾(ICBM)の実験も極秘裏に進めていた。
でかいだけでボンビーな国にそんな技術があるもんかとタカをくくっていたアメリカは「さ~て、どちらが先に人工衛星を打ち上げるでしょうか?」という競争に敗れてしまう。

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ソ連人が作った物体がアメリカの空を自由に飛んでいる・・・
アメリカ人は夜も眠れなかった。
しかもその1ヶ月後。 ソ連はライカ犬を乗せたスプートニク2号を打ち上げ、人類が宇宙に行けることを証明する。 いやそれよりも・・・
スプートニク2号の全重量が500キロ超。 これはソ連が水爆を搭載したロケットをアメリカにいつでも撃ち込めますよということを意味していた。 アメリカ人はチビった。

これはいかんとアセったアメリカだが、エクスプローラー1号というスプートニクに比べればオモチャのような人工衛星を打ち上げるのが精一杯だった。
それを経て1958年10月に発足したのが「NASA(アメリカ航空宇宙局)」である。 それと共に有人宇宙飛行計画「マーキュリー計画」が本格的に始動。

しかし・・・・
1961年4月。 ソ連が有人宇宙船ボストーク1号を打ち上げた。
地球をグルッと一周した飛行士ガガーリンは「地球は青かった」と言い、アメリカ人の顔は真っ青になった。


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「そこからいよいよNASAが巻き返すわけね」
「NASAの有人宇宙飛行計画『マーキュリー計画』には、弾道飛行するレッドストーン・ロケットと地球周回飛行するアトラス・ロケットの2つが計画されていました」
「ポーンと遠くへ飛ばすだけのやつと、地球の周りを回るやつね」
「航空宇宙工学というのは、やっぱり高度な計算が必要になりますけど、現代じゃコンピューターが計算すればいいのですが、この時代はまだそこまでは行っていませんでした」
「なるほど」
「映画の後半にIBMのコンピューターが導入されるシーンがありますが、それまでは大勢の人間が総がかりで計算をやってました。 それでも人員不足なのは否めず、教職に就くほど頭脳明晰であれば、黒人女性も積極的に採用したんですね」
「女性ばっかり?」
「女性の方が計算能力が高いんですよ」 「ええそうでしょ、そうでしょ。分かってるじゃないの」
「計算なんて女にやらせときゃいいんだっていう、要するにバカにされてた面もあります。」 「けしからんわね!」
「そんなわけですから黒人の女なんですよ。 でも彼女たちだからこそ、凄いことを成し遂げちゃったんですけどね」

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キャサリン・ゴーブル・ジョンソン(タラジ・P・ヘンソン)
「世の中には本当に天才という人がいるもんでね。 この人は数学の才能が凄かったんですよ」
「そんなに?」
「なんせ10歳で高校に入りましたからね。 幼い頃から二次方程式や因数分解を理解していたぐらいです」
「グレートだわ」
「大学院から教職を経てNASAのラングレー研究所に雇われることになります。 この時すでに旦那さんとは死別しており、お子さんが2人います」

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ドロシー・ヴォーン(オクタヴィア・スペンサー)
「おむすびに目と口を書いたような人だわ」
「怒られますよ、あなた。 上手い女優さんなんですよ。 このドロシー・ヴォーンも数学はもちろんなんですが、マネジメント力をあらゆる所で発揮します」
「ほほぉ」
「先の先を見据える感覚が優れてるおり、様々な事柄に備えるためには難しいことでも学ぶことをいとわない御方です」

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メアリー・ジャクソン(ジャネール・モネイ)
「この方は工学志向でエンジニアになることを夢見ています」
「頭のいい人ばっかり出てくるのね」
「ロケットが大気圏に再突入する際に、空気が圧縮されるために火に包まれるでしょ?」
「ボーボー燃えてるわよね」
「あの時、中のパイロットが死んでしまわないように機体の外に遮熱版ってのがたくさん取り付けられてるんです」
「へ~」
「でも当時はね、その遮熱版が実験段階でどうしても外れてしまう問題があって、なかなかロケット開発が進まなかったんですよ」
「そういうことか」
「でもその問題を解決してしまうのが、この女性なんです」
「すごいじゃないの」

「この3人の女性がNASAで働いて、有人宇宙飛行計画の成功に大いに貢献する話なんですが、一筋縄ではいかない試練が待っています」
「あ~、この時代のアメリカだもんね。 やっぱり人種差別でしょ」
「その通り。 そんな理不尽な仕打ちを乗り越えて、彼女たちが素晴らしい仕事を成し遂げるんですが、それと同時にこの映画は、いかに差別というものが国営を損なうバカらしいものかということも描いています」
「今またアメリカは逆行してるけどね」

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「冒頭、キャサリンの子供時代のフラッシュバックのあとに、キャサリン、ドロシー、メアリーの3人が車に相乗りでNASAに出勤しようとするんですが、エンスト中にパトカーの白人警官に職質されます」
「イヤな予感だわ」
「そう思うでしょ。 でも警官はね、彼女たちがNASAの人間だと知って、『俺にまかせろ』ってな具合に、職場までパトカーで先導してくれるんですよ」
「あら、優しい」
「それぐらいアメリカ人はソ連にビビってたっていう描写です。 NASAだけが頼りですからね」
「職場でも白人が優しくしてくれればいいけど、そうはいかないのね?」
「そうなんです。 NASAに配属された黒人女性の計算手は30名ほどいるんですが、彼女らは別の場所で働かされるんです」
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「その時代はバスの席とか、役所の窓口とか、公衆トイレも「WHITE(白人用)」・「COLORED(有色人種用)」に分けられていたもんね」
「ラングレー研究所の宇宙特別研究本部が本来の仕事場なんですが、黒人女性の計算手たちは本部から800メートル離れた“西計算グループ”の建物の中で仕事をしなければなりません」
「まあ、要らない気を遣わなくて済むけどね」
「本部の建物は小ざっぱりしたオフィスビルなんですが、西計算グループは外壁がレンガ造りの図書館っぽい建物です。 ボロくて劣悪な環境だというわけではないんですが」
「邪魔されずに仕事に集中できるんなら良しとしましょう」
「ドロシーが計算手のみんなを引っ張っていくリーダー格になるんですが、かといって管理職の立場でもありません。 そこでドロシーは上司のヴィヴィアン・ミッチェル(キルスティン・ダンスト)に管理職への昇進を申し出るのですが却下です」
「なんで?」 「知りませんよ。 『黒人グループに管理職は置きません。 仕事があるだけ感謝しなさい』でバッサリ」
「キルスティン・ダンストの憎まれ役ってのも珍しいわね」

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「一方、エンジニア志望のメアリーは技術部に転属。 遮熱板の風洞実験を間近に見て、遮熱版を留めるコネクターに欠陥があることを見抜くのです。 それで同僚のゼリンスキーから技術養成プログラムを受講できる学校へ行くことを勧められるのです」
「今さら学校に?」
「NASAで正式にエンジニアとして働くには大学課程を修了していないとダメなんです。 その高校でプログラムを受けているだけでもOKなんですが、その高校は白人専用なんです」
「またそれかよ」
「国の法律としては『差別をしてはいけない』ということが決まっても、多くの州が『州法では認めない』と言うので、実質難しいんです」
「悲しいお国だこと」
「ですからメアリーは『私は黒人女だから叶わない夢は見ない』と言ってあきらめるんですね」
「ダメよ。 そんな差別に屈してはいけないわ」
「彼女のことはのちほど。 さて、3人の中で最もストーリーの中核を担っているのはキャサリンです。 特別研究本部から解析幾何学に精通した人材が西計算グループにいないかという要請を受けてドロシーがキャサリンを推薦したことから、彼女は白人だらけの本部で働くことになります」
「前途多難が見えてくるようだわ」
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「まず服装。 これは白人女性もそうなんですが、スカートはひざ下。靴はパンプス。 そして真珠のネックレスを着用すること」
「そんなことを強要されんの?」
「よく分かりませんがね。 キャサリンには真珠なんて買うお金はありませんので、ビーズで間に合わせるしかありません」
「そんなことに金を捨てなくたっていいわよ」
「それでこの本部。 もちろん男ばっかりです。 キャサリンが入ってくるなり、『ああ、そこのゴミを捨てといて』とか言って、てっきり清掃婦だと思ってる。 それでも彼女は完無視して席に座るとみんながビックリしてるっていうそんなムード」
「まあ予想通りというか、無理もないというか。 嘆かわしいにもほどがあるわ」
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「仕事もね、本来のレッドストーン・ロケットやアトラス・ロケットの軌道計算も男たちがやってしまって、キャサリンには提出された計算データを検算する役目を与えられます」
「間違いないかをチェックするのね」
「しかし、書類が所どころマーカーで塗りつぶされてたりするんですよ。 これじゃ仕事になりませんわな」
「なんで塗りつぶされてんの? 検算しろったってできないじゃん」
「全部見られたら、(こいつ、スパイするんじゃねえか?)って思われてんでしょうね」
「アホらしいて、なんも言えんわ」
「でも、キャサリンさん。 塗りつぶされたマーカーが薄いもんだから、明かりにかざして問題解決。 しかも自分なりの軌道計算を付け加えたりする」
「いいじゃないの」
「ポール・スタフォードという直属の上司がイケ好かないやつでして、『おまえ、余計なことすんじゃねえ』みたいな態度ですからまともに仕事させてくれません」
「ちっちぇえ男だわね」
「看護師さん、それはそうと仕事の方はいいんですか?」
「え?ああ、いいのいいの。続けて続けて」
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「でもこのキャサリンさん、骨のある人ですからちょっとやそっとのことでへこたれません。 元々計算能力はずば抜けてましたし、おもむろに黒板に上がって「フレネ標高」によるレッドストーンの軌道計算をスラスラ~ッとやっちゃうんです、周りが『こいつスゲェな』ってなります」
「先生、質問です」 「なんでしょ?」
「今言った“フレネヒョーコー”って何ですか?」
「フレネ標高とはですね。 3次元空間の曲線を解析する公式の一つです。 接ベクトルと法線ベクトルを基底のベクトルとして扱い・・」
「もういいです」
「でしょうね」
「だいたい分かりました」
「ウソつけよ。 アッシだってわかってねえんだから」

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「もちろん人種など気にしない、ちゃんとした人はいます。 キャサリンの能力をいち早く認めるのが研究所を統括する本部長のアル・ハリソン(ケビン・コスナー)。 この人は国の威信を背負っている責任者ですから必死なところもあるんでしょうが、肌の色や性別で人を差別したりしません。 このオフィスにいる以上は、みんな仲間であり、貴重な戦力だという気持ちで部下に接する人です」
「黒人女性の味方よね。 『ボディガード』を思い出すわ。 ♪エンダァァァァァ♪」
「歌わんでよろしいよ。 キャサリンはハリソン部長から認められて軌道計算のレポートを任せられますが、そう簡単に環境は変わりません」
「そのほかの男は心の狭い奴ばっかりだもんね」
「オフィスにコーヒーポットがあるんですけど、仕事の合間の息抜きに誰が飲んだってOKのはずです。 それをキャサリンがカップに注いで飲むんですがね。 でも翌日には2つのポットが置いてあって、「白人専用」・「非白人用」のラベルが貼ってあるんです」
「なんなの、その差別根性。 ヘドが出るわ。 ハリソン部長は気がつかないの?」
「ガラス張りの別室とは言っても、ワンフロアほど高床になってて死角になるんですよ」
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「あとはやっぱりトイレですね。 本部のトイレは使わせてもらえないんです。 ですからキャサリンは催した時は800メートル離れた西計算グループの建物のトイレまで駆け込まねばなりません。 雨の日でも、ずぶ濡れになってでもトイレに15分かけて行かねばならないキャサリンの姿は見ていてかわいそうと言うよりは、本当に差別とはバカげた愚行だと思いますね」
「こんなことだからソ連に勝てないのよ。 そんなことも分からないのかしら、アメリカ白人どもは。 こいつは黒人だから、こいつは女だからと、さもしい神経で人を見下すような奴に国を守れる力なんてありゃせんわ。 元々ソ連人に対しても「あいつらなんかどうせ・・」って見くびってたから宇宙開発競争におくれを取ったんでしょうが。 そりゃソ連みたいな共産国家は国で一丸となったら驚異的に強いわよ。 それなのに、才能を埋もれさせてでも人種排斥に躍起になって、最初からチームがバラバラになってるようじゃダメよ。 差別は国力を低下させるのよ。 差別こそがアメリカの弱点ね。 そこを肝に銘じなさい。  はい御清聴どうも」
「ご苦労様でした。 キャサリンのトイレ事情も気がつかなかったハリソン本部長ですが、彼女に責任の重い仕事を任せたこともあって、ようやく気がつくんですね」
「お願いします、本部長」
「キャサリンがたびたびオフィスを離れ、なかなか帰ってこないことに気づいたハリソン本部長は『君は一体どこで何をやってるんだ!』と叱責するんです」
「あらぁ~」
「するとキャサリンは堪忍袋の緒がチョンですよ。 真珠のネックレスのこととか、コーヒーポットのこととか、トイレのこととかをブチ切れた彼女は一気にまくし立てるんです」
「おー言うたれ言うたれ」
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「すると本部長は、コーヒーポットに貼ってある白人用だの非白人用だのというラベルをベリーッとはがし、西計算グループの建物にある女子トイレの『COLORED』の札をバールで叩き壊して、こう言い放つ」

『NASAでは小便の色はみな同じだー!』

「カッコいい!」 
「名言ですねえ」
「♪エンダァァァァァ♪」 「いや歌わなくていいから」
「トイレの問題が解決してよかったわ」
「さて、レッドストーン・ロケットの弾道飛行実験は成功したものの、次のアトラス・ロケットの地球周回飛行となると、楕円軌道から放物線軌道へと移る際の軌道計算が異常に難しい。 いくら計算しても気象条件やロケットの構造変更など、会議をするたびにデータがいちいち更新されるので計算が追いつかないのですね」
「大変ね~」
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「これではラチがあかないと、キャサリンは自分も一緒に会議に出席させてほしいと本部長に頼み、女性そのものが出席することさえ有り得なかった会議の場に入ることになるのです」
「誇りに思うわね」
「スタフォード部長からは『君は発言すんなよ』と釘を刺されますがね」
「このマーカー男だけはムカつくわねえ」
「会議のやりとりを聞いただけで答えの見えたキャサリンは居ても立ってもいられず、話に割って入り、ボードにアトラスの軌道を計算し始め、着水地点の緯度と経度をズバリと特定するんです」
『バハマ沖です』
「胸がすくわぁ」
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「男たちは唖然とする者や「ほんとかよ~」みたいなリアクションなど様々。 この一連の様子をニコニコしながら見ていたのが同席していた飛行士のジョン・グレン(グレン・パウエル)です。 映画ではえらく若く描かれていますが、当時40歳のジョン・グレンももちろん差別感情などこれっぽっちもありません」
「偉業を成す人はそんなちっぽけな人間じゃないってことよ」
「『いいねえ、君おもしろいねえ』とキャサリンを絶賛するグレンは、彼女の計算力よりも、差別社会に憶せずに前に出て、自分のやるべきことを全うする勇気ある姿に、命をかけた宇宙飛行に挑む自分と重ね合わせて、勇気を与えられたのでしょう」
「英雄は英雄を知るのよ。 三国志の曹操の言葉よ」
「これを機にキャサリンはジョン・グレンから全幅の信頼を得るのです」
「そう言えばジョン・グレンは昨年亡くなったわね」 「残念ですねえ」

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「とは言っても、キャサリンでさえ計算が追いつかない状況をNASAがそのままにするわけではありません。 ラングレー研究所に遂にIBMのコンピューターがやってくるんですけど、これが部屋のドアから入らないことがその時になって分かって、仕方なく壁を壊すというのがなんともトホホですね」
「こういう所よ。 当時の男のバカさ加減って言うのかしら。 見られて困る書類の要所を塗りつぶすのに、明かりにかざしたら透けて見えるような薄いマーカーを使ったりするのもそうだし、“冷蔵庫買った時の失敗アルアル”みたいな、コンピューターが部屋に入らない凡ミスなんかね、国家プロジェクトに携わる人間には思えないわ」
「しかもどうやって起動させるか男どもは四苦八苦」
「情けないわねえ」
「そこをたまたま部屋に入ったドロシー・ヴォーンがチョチョイとやってしまう。 機械に向かって『いい子ねえ』とか言いながら」
「キャサリンも凄いけど、この人も凄いわ」
「ちゃんと努力してるんです。 コンピューターが導入されることを聞いていたから、人間の計算手が不要になる時が来ることを見越して、図書館でプログラミングの勉強をしてたんです。 まあ本は「非白人用」の棚にはなくて「白人用」の棚から借りなきゃいけないんですが」
「つくづくイヤな世の中ね」
「図書館で人から白い目で見られて警備員につまみ出されても彼女は本をちゃっかり失敬しますが」
「かまうことはないわ。 どうせ白人のオツムにはプログラムの本なんて解りっこないわよ。 あっ、こんなこと言っちゃ逆にまずいわね」
「コンピューターを動かしたドロシーの腕が見込まれ、西計算グループの女性たち全員にプログラム作業の仕事が任されることになります。 やがてドロシーは管理責任者に昇格。 その辞令を届けに来たのは・・・」

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「さて、エンジニアをあきらめていたメアリーさんですが、彼女を応援する同僚のゼリンスキーの、自身もポーランド出身で迫害受けてきたユダヤの家系ながら必死で夢を追いかけてきたのだという言葉が次第に彼女を突き動かします」
「そうこなくっちゃ」
「プログラム取得のために白人専用の高校に入学できるように裁判所に請願するのです」
「そうよ。とにかくまずは行動。 結果がなんであろうと」
「裁判官は言います。 『前例がない』と」
「そんなのは言い訳よ。 考えるのが面倒なのよ。 「昔から決まってることだから」とか「それまで誰も何も言わなかったから」と、それ以上の思考を放棄してるのよ。 法の番人のくせに見損なっちゃうわね」
「メアリーは言います」
『あなたが今日、処理する案件の中で100年後も意義あるものは? あなたが前例になれば?』
「名言だわっ!」
「裁判官はにっこり微笑んで、『私は歴史に名を残すことをまだ為し得ていないが・・・』と、メアリーの訴えを認めるのです」
「さすが法の番人。 見直したわ!」 「どっちなんだよ」

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「1962年2月2日。 ジョン・グレンがアメリカ初の地球周回飛行に挑みます。 しかし、この時すでにキャサリンはこのプロジェクトから外れています」
「何かあったの?」
「先ほど言ったように、コンピューターが導入されたことから、人の手による計算が不要になったのです。 ドロシーの予見した事態になり、役目が終わったキャサリンは職務を離れ、自宅のテレビでアトラス・ロケットの打ち上げを見守っていました。 そこへ一本の電話がかかってきます。 ハリソン本部長からです」
「どうかしたのかしら?」
「発射時刻が迫っている時に、コンピューターが計算した数値が間違っていることが発覚するのです」
「そんなことってあるの?」
「この頃のコンピューターの性能はファミコン以下ですからね。 計算が早くても誤差が生じることがままあるのです」
「そこでキャサリンに?」
「そうです。 ジョン・グレンが指名するのです。 彼女でなければダメだと。 キャサリンにもう一度計算してくれと。 発射時刻が刻々と迫る中、キャサリンは研究所へと急ぐのです」
「ドラマチックな展開だわ」
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「モニターが並ぶコントロールルームからキャサリンがジョン・グレンに向かって自分が計算した数値を伝えたあと、ここは自分がいてはいけない場所と察して部屋を出ると、ハリソン部長が引きとめます。 『君も立ち会え』
「♪エンダァァァァァ~♪」
「だからエンダーはいいから」
「感動せずにはいられないわ」
「周回飛行の成功は史実ですから、それはそれとして、すべて無事に終わったあと、ハリソンがキャサリンにたずねます」

『我々は月に行けるかな?』
『もう行ってます』

「♪エンダァァ~ イアァ~ ウィロ~ウェイラァァ~ブユゥゥゥ♪」
盛り上がったアッシと看護師さんは、この映画には全く関係のないホイットニー・ヒューストンの「I Will Always Love You」を大合唱した。
ふと気がつくと、病室の入り口で担当の先生が鬼のような顔で仁王立ちしていた。
ジョン・グレンは宇宙から帰還したが、アッシはまだまだ入院生活から帰れそうにないらしい・・・・・
{PART2に続く}


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この映画のストーリーは、細かい所で何ヶ所かは史実と違うところもある。
ケビン・コスナーが演じたアル・ハリソンやキルスティン・ダンストのヴィヴィアン・ミッチェルも架空の人物だし、3人のヒロインたちの境遇も映画で描かれるほどの極端な差別を受けていたわけでもない。
だがその時代の風潮はもちろん、NASAで計算手として従事していた女性への扱いに対するイメージの全体的な描写としては間違ってはいない。

この映画の邦題には『私たちのアポロ計画』というサブタイトルが付けられていた。
「マーキュリー計画を扱っているのに、アポロ計画はおかしいのではないか」という批判が多数寄せられたことで、サブタイトルが削られて『ドリーム』だけのタイトルになったと聞く。
そんな炎上騒ぎはどうでもいいのだが、この映画を観るにつけ、キャサリン・ゴーブル・ジョンソンをはじめとした計算手がいなければアポロ11号の月面着陸さえ実現しなかったのではないだろうか。
それほどまでに彼女たちの功績は大きい。

大きなプロジェクトを成し得るのは一人ひとりが力を合わせた“チーム”という大きな力の賜物である。
その中の「誰が」と、量や内容についての差を語られるべきではないというのは承知していても、彼女たちの勇気ある行動は宇宙計画を成功に導いただけでなく、アメリカの国の未来に大きな波紋を投げかけたと言っても過言ではない。
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理不尽な差別環境にさらされれば仕事を投げ出しても不思議ではない。 誰からも文句は言われない。
それでも国のために尽力し、なおかつ人種差別という人の心にも愚直に立ち向かっていった。
与えられた才能が人の心にも響き、社会を変えれる可能性を信じていたのだ。

こういう人たちをことさらに美談でまつり上げろとは言わないが、国のために力を振り絞った“地上の星”を、歴史の本の袋閉じにしてはいけない。
原題は『Hidden Figures』(隠された人々)。
名もなき勇者を世に伝え、後世の糧にすることが健全な国を育てていくのだ。
いまだに白人至上主義を叫んでいる輩は幼稚園からやりなおせ。
「差別は国のためならず」だ。

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タラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサーともに実力派の力量をいかんなく発揮し、「ムーンライト」で女優としてもハイ・ポテンシャルを感じさせたシンガーのジャネール・モネイはここでも優れたパフォーマンスを見せつけている。

便宜上、記事から省略したキャサリンの再婚相手であるジョンソン中佐(マハーシャラ・アリ)との交流のシークエンスも温かい印象を残す。
子供たちの前でプロポーズするシーンは涙腺が♪エンダァァ~する。
しかもプレゼントは真珠のネックレス!
ジョンソンを演じたマハーシャラ・アリは「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」でもタラジ・P・ヘンソンと夫婦役を演じている。

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ドロシー・ヴォーンもメアリー・ジャクソンも残念ながら故人であるが、98歳のキャサリン・G・ジョンソンが第89回アカデミー賞授賞式に登場。
「ドリーム」のヒロインたちタラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイが「長編ドキュメンタリー賞」のプレゼンターとしてステージに上がり、発表に先立ち、「アメリカの英雄です」と紹介されて現れたキャサリン・G・ジョンソンに会場総立ち、万雷の拍手。

寄り添ってマイクを持ってるのは娘さんだろうか?
一言いただきました。
「Thank you berry match」


「賢人のお言葉」
「自分というものを持って、固く自立している人には、宇宙もまたその味方をして立つ」
 ラルフ・ワルド・エマーソン

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他にもこれ観ました  10月編
2017年11月05日

急病で入院しておりましたが、4日の朝に退院してまいりました。
ご心配おかけしました。
さっそく再開ですが、入院前に駆け足で観ていた作品をまとめてドドっと。



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「いつも心はジャイアント」

狭頭症という難病を患い、見た目の偏見にさらされながらも力強く生き、夢を追う一人の青年の姿を描くスウェーデン映画。
スウェーデンのアカデミー賞であるゴールデンビートル賞で作品賞など3部門を受賞。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
頭蓋が変形した狭頭症という難病を発症したまま生まれてきて、今は福祉施設に暮らしている青年リカルド(クリスティアン・アンドレン)。
父親は誰か分からない。 母親は出産後まもなく精神を患い、リカルドを育てられなくなり、今は別の施設に暮らしている。
普通の人とは違う外見のせいで周囲から差別を受けきたリカルドだが、彼にはひたむきに打ち込んでいるものがある。
フランス発祥の球技「ペタンク」である。

【ペタンク】とは、1体1、あるいはチーム対チームで、コート上で互いに金属製のボールを目標に投げ合いながら得点を競い合うスポーツ。 イメージとして近いのはカーリング。

リカルドはこのペタンクで意外な才能を発揮し、地元のペタンククラブの一員として、いくつもの大会で優勝していた。
ある日リカルドは、ペタンクの練習中に背後から飛んできたボールを頭部に受けて一時意識不明になる。
幸いにも回復はしたが、この自体を問題視したクラブの役員は、リカルドを北欧選手権に出場させることはできないと通告する。
普通よりも視力が半分しかないリカルドは、コートを行ったり来たりして危険だという。
ショックで落ち込むリカルドを支える親友のローランド(ヨハン・シレーン)は“チーム・スッギ”という二人だけのチームを結成し、大会への出場を目指すのだが・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
体が小さくて、現実の世界では無力なリカルドは時折イマジネーションを膨らませます。
空想の世界の彼は60メートルもの巨人で、のっしのっしと山や町を歩く、強くて大きな存在です。
特撮を使っての空想シーン以外は、手持ちカメラによるドキュメンタリータッチのような映像構成になっています。
それゆえに障害のために言語も不明瞭なリカルドの心情を無理に引っ張り出す演出もなされていません。
お涙頂戴にしていないのはいいのですが、ストーリーはアッサリすぎるほどシンプルです。
外見の障害を持つ人への偏見や差別といった問題も声高ではありません。
差別する人も、理解する人の言動も普通にある光景という、一歩引いた感じで描いています。
小さな巨人リカルドが教えてくれるのは、人の心のポテンシャルは自由で無限大だということ。
今と違う自分を想像するのは逃避ではなく、力強く前進していく巨人の勇気なのだと。
        


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「アウトレイジ 最終章 」

北野武の「アウトレイジ」シリーズの3作目にして完結編。
相も変わらず「なんだコノヤロー!」、「うるせえバカヤロー!」、「アホ!」、「ボケ!」が少なくとも50回は聞けます。 耳で青汁を飲んでるような清々しさ。
そして、人もアホほど死にます。(100人は死んでますな)
パーティーでの乱射シーンがなければ十数人で収まってるんですが。(それでも多いけどね)
しかし、前作に比べればバイオレンス色はそうでもないですね。
今回はヤクザ社会の窮屈さが行きつくところまで行くストーリーの面白さが格別です。 サラリーマンの社会も窮屈ですが、ヤクザはゴメンで済まない分、もっと窮屈。 命取られますからね。
前2作とも、凄まじい抗争へと雪崩れ込んでいくその経緯が、ヤクザの滑稽さや悲哀があって面白いのですが、今回も笑えるぐらいのドタバタ。
芋づる式?それともドミノ倒し?っていうの? いずれにしても、ちょっとしたことからアレヨアレヨというまに大ゴトに。

大友(ビートたけし)は前作のラストでマル暴の片岡を殺したあと、韓国のフィクサー張(金田時男)のもとでかくまわれながら裏の歓楽街を仕切っています。
一方、前作で山王会を傘下に収めた花菱会は、先代の娘婿という縁で新会長となった元証券マンの素人極道の野村(大杉漣)と古参の若頭・西野(西田敏行)の対立が表面化。
花菱会の幹部・花田(ピエール瀧)が韓国で大友の仕切るガールズバーの女をボコボコにしてしまった上に、張会長の部下を殺してしまったというバカをやらかしてしまうのがコトの発端。
西野が詫びを入れに行っても話はややこしくなるばかり。 しまいには張会長が命を狙われる、大友がブチ切れる、花菱の野村と西野のダマし合いがエスカレート・・・
ヤクザの世界じゃ、そりゃそうなるわねというキリのない修羅が展開されますが、前2作のようなエグい描写は避けられています。
大友の、そういう風にしか生きられない不器用な生きざまのドラマでもありますが、銃弾でしか物事を片づけられない極道たちの、次は誰がやられるのかという展開を想像しながら観るだけで楽しめます。

1作目・「ドライブ行こうか」 2作目・「野球やろうか」 そして今回は「キャンプ行こうか」。
ゴチでピタリ賞を連発させた大杉漣さん、えらいことになります。
        


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「アナベル 死霊人形の誕生」

呪われた人形としてアメリカ、コネティカット州のオカルト博物館に厳重に保管されて、今も神父が月2回祈祷するというアナベル人形。
ジェームズ・ワンが手掛けたホラー、「死霊館」シリーズの4作目ですが、本格的にアナベル人形の恐怖を描いた2作目の「アナベル 死霊館の人形」の前日譚となる最新作です。
呪いの人形はいかにして誕生したのか・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1945年のカリフォルニア。 人形師のサミュエル・マリンズとその妻エスターには幼い娘アナベル(愛称・ビー)がいた。
目に入れても痛くないほどビーを可愛がっていた両親だったが、ある日不幸にもビーは交通事故で亡くなってしまう。
12年後・・・、サミュエルは、寝たきりとなった妻エスターの世話をしながら静かに暮らしていた。
夫妻の暮らす屋敷に6人の孤児とシスター・シャーロットを乗せたバスが到着する。
孤児院の閉鎖による新たな移転先として、この屋敷を借りることになったのだ。
やがて6人の孤児の一人である、足の不自由な少女ジャニスの周りで奇怪な現象が起きる。
絶対に入ってはいけないとサミュエルから言われていた部屋にジャニスが入ったために、邪悪な何かが目覚め、他の少女たちにも恐ろしい現象が降りかかる。
そしてシスターはエスターの口から恐ろしい事実を聞かされる。
娘を亡くした悲しみを癒すために“何者か”と取引し、夫の作った人形にビーの魂を入れることを許可したのだという。
しかし人形に宿ったのはビーの霊ではなく、罠を仕組んでいた邪悪な存在だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
このシリーズの作品はどれも怖いですが、本作もなかなかのもんですね。
時には真正面から、時にはジワジワと。 その緩急をつけた恐怖演出が冴えてます。
ここでそんな怖がらせ方を持ってくるのかという意外性もあって、まあまあの緊張感を強いられます。
アナベル人形に顔が似ているリンダに悪魔が憑依するのかと思っていたら、ストーリーの後半になってジャニスに取り憑くのですが、実はこのジャニスこそが・・・という種明かしが前々作「アナベル 死霊館の人形」のオープニングにつながっているという仕掛けに「なるほどね」と唸ります。
        


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「すばらしき映画音楽たち」

大昔のこと。 ラジオ番組を聴いてると、その中の雑談で、「音楽が印象に残る映画なんて、それだけストーリーがつまらなかったってことじゃないの?」というタワゴトをのたまうパーソナリティーがいたのを思い出します。
あいや待たれい!
音楽ってのは凄く重要なんですよ。
映画音楽は名作を創り上げるには欠かせないものなのです。
このドキュメンタリー映画は、映画音楽の魅力と製作の裏側が語られている、映ヲタには実にタメになる作品です。

映画音楽はサイレントの頃からあり、一つの楽器による単調な音の繰り返しだけなんですが、それでも観客の気持ちを盛り上げる効果が存分にうかがい知れます。
人物の心情を代弁したり、「これから何かが起きるぞ~」という期待感や緊張感を観客の心の中から引っ張り出すのです。
映画がトーキーに発展しても、もちろん廃れることなく、1933年に公開された「キングコング」は顕著に音楽の効果を示しています。
「音楽がなければチープな映像だけど、音楽を入れることによって、これがガラッと変わるんだよ」という解説で観る「キングコング」は「なるほど」と膝を打ちますね。
文章では伝えにくいのがもどかしいですが・・・。

観客が映画を観ている時の目線の移り方を計算に入れての音楽の挿入が効果を上げている「カールじいさんの空飛ぶ家」
単調で耳障りな音なのに、恐怖感を倍加させる効果を出したヒッチコックの「サイコ」
劇中にメインテーマを何度も繰り返してモチーフとすることで観客に期待感や安心感を抱かせる「ロード・オブ・ザ・リング」
オバマ大統領がスピーチ終了と同時に会場に流した「タイタンズを忘れない」も「上手い使い方だ」と絶賛されています。
「この映画を観るだけで観客はあのテーマ音楽を思い浮かべるはずだ」という「ロッキー」
名作ある所に名曲あり。 名曲ある所に名作ありです。

映画音楽といえば、やはりこの人を抜きには語れないレジェンド、ジョン・ウィリアムズ。
この人はなんなんでしょう? 映画の世界観をパーフェクトに楽譜にすることでは神の域に達している人です。
それだけ聴けばいかにも狙いすぎな感のある「ジョーズ」にしても、完全に映画の一部と化して恐怖とスリルを生み出しました。
ピアノを弾くジョン・ウィリアムズの横で、スティーブン・スピルバーグと談笑しながら「こういうのはどうだい?」とウィリアムズがメロディを奏でると「いいね~」とニコニコしているスピルバーグ。 こんな映像が残ってるのかあ。面白いなあ。
「スター・ウォーズ」「E.T.」、「スーパーマン」「未知との遭遇」「ジュラシック・パーク」「レイダース 失われた聖柩(アーク)」・・・・ エポック・メイキングなスコアを世に出してきたジョン・ウィリアムズ。
彼がオーケストラの前でタクトを振るシーンやピアノを楽しそうに弾く姿は印象的で貴重な映像です。

ジェームズ・キャメロンが今は亡きジェームズ・ホーナーの思い出を語ります。
「タイタニック」の“スケッチ”のシーンで流れたピアノの旋律に秘められた裏話にはホロッときましたねえ。

「パイレーツ・オブ・カリビアン」「ダークナイト」など、今や超売れっ子のハンス・ジマーは「仕事を引き受けてから、あとになって逃げ出したくなるよ」というプレッシャーを吐露していたのも印象的でした。
        


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「リングサイド・ストーリー」

「百円の恋」の武正晴監督の最新作。 差し詰め「百円の恋」の男版といったところでしょうか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10年間同棲している江ノ島カナコ(佐藤江梨子)と売れない役者の村上ヒデオ(瑛太)。
ヒデオは7年前に大河ドラマのチョイ役で西田敏行に泣きの演技をほめられて以来カン違いが止まらない。
最初の頃は小さな役でもセリフがある役で細々とやりながら、「いつかカンヌに連れてってやる」とカナコに豪語していたヒデオだが、最近はオーディションに落ちてばかり。
プライドが高くて、やっとこさマネージャーが取ってきたエロ系Vシネの仕事さえドタキャンしてしまう。
ある日、カナコが勤め先の弁当工場をクビになってしまい、突然の家計のピンチ。
ヒデオがなんとなく差し出したプロレス団体の広報の仕事の募集を目にしたカナコは成り行きで武藤敬司率いる団体「WRESTLE-1」に応募して面接に受かり、さっそく裏方として働きはじめる。
あまりにイキイキしているカナコの浮気を疑ったヒデオは職場に忍び込んで、とんでもない事件を起こしてしまう。
大口ばかり叩いて仕事もせずにブラブラしているヒデオは遂にカナコにキレられた上に、さらなる事件を起こしてしまったことから、K-1のチャンピオンと闘わさせられる羽目に。
カナコへの愛を証明するためにヒデオは一世一代の格闘技の舞台に立つ・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「百円の恋」ほどのメラメラとした鬼気のようなものはまったくなく、カラッと明るいムードでダメ男とそれにホレた女のラブストーリーが描かれています。
瑛太のダメ男ぶりがハマってて面白いですね。
サトエリもいいですねえ。 この人は良い意味でユルくなりましたねえ。 人の母親になったからでしょうか。
ひねりや深みはあまりない直球型のラブコメですが、プロレス団体のさりげない日常も描かれていて興味深かったです。
        


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「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」

「創世記(ジェネシス)」、「新世記(ライジング)」ときて、3作目は「聖戦記(グレート・ウォー)」。 毎回このシリーズのネーミングはいいですねえ。
「エイプ(猿)はエイプを殺さない」という猿の道徳的支柱としてエイプを率いてきたシーザー(アンディ・サーキス)が前作でコバを殺してしまったことから、猿としての秩序と意義が大きく揺らいでるという心理で3作目に突入。

エイプ根絶に並々ならぬ信念を燃やす冷酷なリーダー、大佐(ウディ・ハレルソン)に妻子を殺されてしまったシーザーが復習を挑むストーリーなのですが、ただでさえコバを殺してしまった自責から信念がぐらついているのに、個人的な復習に駆られていくというシーザーの闇をえぐり出したヘビーな内容になっています。

冒頭で大佐の部隊の兵士を捕まえてもすぐに解放し、「我々が野蛮でない証しだ」と言うシーザーですが、自らの手にかけたコバが出てくる悪夢にうなされるなど、常に葛藤と闘っている状態。
妻子を殺された怒りから大佐に復讐しようとするシーザーは他のエイプを巻き込まないために単身で大佐の部隊を追いますが、オランウータンのモーリスから「まるでコバみたいだ」と言われ、大佐からは「おまえは人間の目だな」と言われます。
このシリーズは「猿の惑星」がなぜそうなってしまうのかの過程を描くものですが、根本の物語は人間と猿の両世界でつながっていたシーザーが理想と現実の間で苦悩する生涯を追いかけた大河でもあるのです。

動物学的に言う「進化」とは一体なんでしょうか?
二足歩行し、言葉を喋り、武器を使い、同じ種を憎んで同じ種を殺してしまう生き物を果たして「進化した」と呼べるのでしょうか?
砂浜に埋まった自由の女神像が象徴するように、旧五部作から深遠に語られていた「人間は何一つ進化していない」というメッセージと表裏する形で 人間を支配するまでに至った猿も結局は人間と同じように道を踏み外すという連鎖は、決して高潔な存在が地球の頂点に立ったのではない、進化の無意味を考えさせられます。
「創世記」で高い知能を与えられ、人間の感情を学んだシーザーは同時に人間に失望し、「新世記」では猿は人間とは違うと信じてきた絶対的な尊厳が崩れ、「聖戦記」ではそれが決定的なものとなって、全てを清算しようとするあまりにシーザーは人間に近づきすぎてしまいます。
そして最後にはそのツケを払わされるという結末が待っています。

クライマックスは雪崩が兵士を呑み込むあたりからエイプの一行が長旅の末に東のとある地に辿り着くくだりはモーゼの十戒を思わせる「出エジプト記」。
なるほど、そう来たかという展開。

コーネリアスや、猿の磔、ノバと名付けられる少女の登場、そして人間はなぜ喋れなくなったのかという謎など、旧作への布石あり。
ただし、ノバに関してはオマージュみたいなもんでしょうか。
旧作のノバ(リンダ・ハリソン)は黒髪でしたしね。
        


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「婚約者の友人」

フランソワ・オゾンの最新作であります。
本国フランスで大ヒットし、セザール賞でも11部門にノミネートされた作品です。
第一次世界大戦終結後の1919年を舞台に、敗戦国のドイツ人女性と戦勝国のフランス人男性の愛が描かれる物語です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ドイツのクヴェードリンブルクの外れにある墓地。
アンナ(パウラ・ベーア)はフランス戦線で戦死した婚約者フランツの墓参りに訪れた。
するとフランツの墓地の前で見知らぬ男が泣いているのを見かける。
戦前にパリでフランツと知り合ったと言う男の名はアドリアン(ピエール・リネ)。
アンナとフランツの両親は彼とフランツの友情に感動し心を癒される。
そしてアンナもアドリアンに対して婚約者の友人以上の感情を抱きはじめる。
しかし、それまで心苦しそうに多くを語らなかったアドリアンは衝撃の事実を告白した後、突然フランスへと帰ってしまう。
アドリアンの告白のショックから立ち直ったアンナはアドリアンのあとを追ってフランスへと向かうが・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
予告編から見てとれるようなミステリー色は思ってたよりは薄いですね。 そこらへんを期待すると肩透かしを食らいます。
それでも物語はユニークですね。
本当のことを言った方がいいのか、嘘をついて相手を傷つけないのがいいのか、罪悪感を伏せる嘘がまた罪悪感を生んでいく。
お互いに戦勝国と敗戦国を行き来する男と女が見る、当事国のナショナリズムの中で秘められた想いが交錯していき、予想していたのとは違う結末。
あらまあ・・・と思いつつも、やっぱり女は強しですねと思わせるオチにするところはオゾンの映画ですね。
        


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「斉木楠雄のΨ難」

週刊少年ジャンプで連載中の人気漫画の実写化。

生まれながらにして、あらゆる超能力を身につけている高校生、斉木楠雄(山崎賢人)。
テレパシー、サイコキネシス、透視、テレポート、空中浮遊、透明化などなど、超能力と定義されるパワーをすべて備え持つ“ひとりX-MEN”のような男である。
それぞれの能力があまりにエグすぎるためにチュッパチャップスのような制御装置を頭部に差し込んでいる。
全ての超能力を駆使すれば3日で人類を滅ぼすことができるという。
だが、何でもたやすくできてしまうということは、努力するゆえの達成感という喜びが得られないということ。
そんな幸福感ゼロの人生に嫌気がさしている楠雄は、とにかく普通の高校生活が送りたかった。
とにかく目立たないように努力するのだが、彼の通うPK学園のクラスメイトはクセの凄いキャラの吹き溜まり。
楠雄の願いもむなしく、クラスメイトたちのやらかす災難に巻き込まれ、なんとかバレないように超能力で危機を回避する毎日。
そして毎年恒例の文化祭「PK祭」。
もちろんクセキャラたちは大人しくしてるはずもなく、次々に降りかかる災難に果たして楠雄は・・・!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
監督は「銀魂」が好評だった福田雄一。
この手のものはこの監督に任せておけば大丈夫。
そりゃあね、後世に残るような名作じゃありませんけど、毎度毎度突き抜け感をフルに出すコメディを撮れる人はおそらく日本では、いや、世界でもこの人が一番じゃないでしょうか。
ギャグの流れや間(マ)の取り方が「HK 変態仮面」、「女子ーズ」でもそうだったように、マンガを読んでいるのと同じような味わいがそのまま出ているんですね。
この映画にしても、アッシは原作は未読ですけど、マンガ的な間(マ)の面白さが存分に出ています。

山崎賢人のクールな絶妙な棒読み(いい意味でね)のツッコミがバッチリとフィット。(100おっふ)
その突っこまれるキャラクターたちが実に楽しいですね。
橋本環奈が橋本環奈であることを捨てた照橋さん。 鼻の穴をおっぴろげての「ありえるぅ―っ!」。 ここまでやってくれるのが嬉しい。(80おっふ)
「暑くるえよぉー!」の灰呂(笠原秀幸)のドッジボールのくだりは笑いましたねえ。(50おっふ)
100%高校生に見えない新井浩文の燃堂の割れアゴ。(30おっふ)
重度の中二病、漆黒の翼こと海藤(吉沢亮)。(30おっふ)
隠れヤンキーの亜蓮(賀来賢人)。(20おっふ)
だから何なんだよ、その「おっふ」って。

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お知らせです
2017年10月23日

【お知らせです】

◆◆◆ 管理人オハラハンでございます。
わたくし、このたび急病につき少しばかり入院することになりました。
1週間ほどの予定ですが、長引けば2週間ほどになるかもしれません。
当ブログもそのあいだ更新が止まることになりますので、何とぞご了承ください。



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マジか、おい。 大変だな。

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あら、バットマンじゃないの。 どうかしたの?

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おお、キャットウーマン。 このブログの管理人がな、病気で入院だとよ。

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まあ、急にどうしたのかしら。 さては、また道に落ちてるものを拾い食いしたから変な病気になったのかしら。
 
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俺も最初はそう思ったがな。 実は『真珠腫性中耳炎』という病気なんだそうだ。

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し、真珠をアソコに埋め込むですって! まあいやらしい!
 
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誰もそんなこと言うとらんわ!

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中耳炎って・・・。 中耳炎なんかで入院しなきゃいけないの?
  
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中耳炎にもいろいろあるんだろ。 手術しとかねえと将来聞こえなくなるんだってよ。

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あら、怖いわね。
 
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ゆっくり進行する病気らしくてな。 幸いなことに、まだ病状は軽い方らしい。  だから今のうちに悪化させないための処置をしときましょうってなニュアンスの手術だそうだ。

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でも、入院てのは気が重いわね。

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そこだよ。 本人は「映画観られへんやないけ」ってブーたれてるらしいぞ。

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耳ですもんね。 寝たきりで動けないって訳じゃないんだから、それはストレスたまるでしょうね。

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だから、やっこさん。どうやって病院をぬけ出して映画館に行ってやろうかと今から必死で計画を練ってるみたいだぞ。

 
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いや、寝てなさいよ! 安静にしてる方が治りも早いんだからさ。

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「病院の屋上からバットシグナルでサインを送るから、その時にバットウィングで迎えに来てくれ」って俺に頼みやがんの。

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まさか引き受けたんじゃないでしょうね。

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俺も一緒に映画をおごってくれるんならいいぞって言ったら「じゃあ、いらん」って断りやがった。 フン、ケチ野郎め。

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どっちもどっちのスカポンタンね。
 
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まっ、気長に待ってやろうじゃねえか。 1週間や2週間なんてすぐじゃろ。

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お大事にね。


と、いうわけでございます。
まあ、一週間ぐらい更新しないのはままあることではございますが。
できるだけ早期の復帰を目指しますので、それまでしばらくお待ちください。

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おクジラさま ふたつの正義の物語
2017年10月22日

320_201710152150494dc.jpg和歌山県のほぼ南端にある町、太地町。
クジラ・イルカの追い込み漁で、すっかり有名になった町です。

日本の古式捕鯨発祥の地として知られる太地町のクジラ・イルカ漁は400年以上にわたってその伝統が受け継がれてきた文化です。

ところが2009年に公開された一本のアメリカ映画が太地町を揺るがせました。
クジラ・イルカ漁を批判したドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」。
この映画は公開されるやいなや大反響を巻き起こし、アカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー賞を受賞。
それ以来、外国の反捕鯨団体や環境活動家らが太地町にやってきては漁の妨害行為をするなどして、大きな問題となりました。
この太地町の騒動はいまだ続いており、動物保護と伝統文化の軋轢が大きな議論の的となっています。


「ハーブ&ドロシー」が好評だった元NHKのキャスターでもある映画監督、佐々木芽生が「ザ・コーヴ」の一方的な描写に疑問を抱いたことから製作に背中を押されたというドキュメンタリーが完成。
「おクジラさま ふたつの正義の物語」は、太地町だけの肩を持った単純な反論映画ではありません。
この問題の解決にお互いが歩み寄る糸口はないのかという観点に踏み込んだ、新鮮な視点をもたらしてくれる傑作です。

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あれ以来、太地町は相変わらずというより、さらにひどくなっているのだとか。
秋の追い込み漁の季節になると、欧米から活動家が来るわ来るわ。
大型バスで乗り付けての一大ツアーです。

浜を見下ろせる高台から漁を撮影し、漁師さんにもカメラを向けて、「イルカを殺さないでー」、「恥を知れー」などのシュプレヒコールを続ける青い目のニーサンネーサンがた。
漁師さんも、もういちいち挑発に乗らないようで、最近はこういうのには相手にしないようにしてるみたいです。
まあそれでも活動家だけでなく、メディアも国内外から多数来ますし、地元からは政治団体の街宣車がやってきてワイワイ言いますので、一触即発の状態。
警察や海上保安庁、さらには機動隊まで出動して警戒にあたります。

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そして環境保護団体といえば、これを抜きには語れないのが『シーシェパード』。
反捕鯨を叫ばせたら右に出る者はいません。
この、いかにもなキャラに仕上がっている御方、スコット・ウエストさん
シーシェパの代表者ポール・ワトソンから「おまえ、ちょっと行ってこいや」と言われて、全ての生活を捨てて観光ビザでこの太地町にやってまいりました。
学生である娘のエローラさんも一緒です。

目的はもちろん、イルカ漁を監視して、その実態を世界中に発信すること。
この人が呼び掛ければ、シーシェパのサポーターたちが、私財を投じて太地町にやってきます。

自分の国で他にやることないんかいと思いますが、彼らにとってイルカへの思いはそれほどのものなんでしょう。
やり方はともかくも、言ってることはシンプルですし、動物の命を尊ぶ気持ちは何も悪いことではありません。
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主に彼らが言うのは、クジラやイルカは絶滅の危機に瀕していて、人間との意思疎通も図れる非常に知能の高い生き物を捕まえて食べたり、水族館に売り飛ばしたりして奴隷のように扱う行為が野蛮なんだということなんでしょう。

どうしても奇異に映る過激な動物愛護運動家に対して、我々は「じゃあ牛や豚を殺すのは許すんかい」という定番の理屈を投げかけたくもなります。
佐々木芽生監督のインタビューの言葉を抜粋しますと・・・・
そもそも欧米では牛・豚・鶏などの「家畜」を命として意識していないのだとか。
人間がコントロールして再生産も容易にできる「食料資源」として割り切っているのが欧米人の感覚です。

家畜はそれぞれの国が扱いを管理しているのだから口出しはしないし、陸上動物に関しても同じ。
しかし、イルカやクジラは領海とか関係なく、世界中の海を自由に泳ぎ回るので、人類共有の財産とみなされています。
日本の領海に入ってきたからといって勝手に殺さないでくれというのが彼らの言い分だと佐々木監督は述べられてます。

なるほど。 家畜は家畜。
イルカやクジラは寿命の長い動物であるがゆえに、一度に多くの子供を出産しませんからね。
数が減りだすとコントロールが効きません。
イルカやクジラが人間に近い賢さを持ってることから愛着が沸くのも分からないではないですが。

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さて一方の太地町の漁師のみなさん。
前述したように、「ザ・コーヴ」の時の騒動の時のように、活動家たちに目くじらを立ててやり合ったりするようなことは今はないようです。
活動家たちも以前のようにウェットスーツを着て入江に入り、漁を妨害するような強行手段に出ることは今はないみたいですね。

ただ、ずっとこの太地町に居座ってる彼らは、町中で漁業関係者を取り囲んで勝手にカメラを向けたり、あちらこちらでプラカードを持って立ちながら、やいのやいのと野次るなどの口撃は相変わらず。

そして最近で最も顕著な彼らのやり方はSNS。
漁の現場を勝手に撮影してはそれをSNSで拡散させて世界中にこのイルカ漁のことを広めて、日本バッシングをとことん煽っていこうというもの。
これはタチが悪いですね。
太地町にやってくる外国人が以前よりもむしろ多くなっているのはそのせいでしょう。

ある意味、活動家たちが距離を取り始めたことから、漁師さんもいちいち気にしないというか、感情的になるのを控えることにしたようです。
挑発に乗ってたらキリがありません。 放っておくのが一番の策。・・・で済まないのがSNSの怖さなんですがね。

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外国人が動物愛護を言うならば、こちらは日本の食文化だという主張がぶつかり合うのはずっと変わりません。
よその国じゃ猿とか犬だって食べます。 猿も犬も知能は高いのではないですか。
その国には何も言わないくせに、日本という島国の小さな町に長く息づいてる食の文化だけが批判されるいわれはないでしょう。

動物の命を奪うことは誰だってしのびない。
しかし、太地町のクジラ・イルカ漁はそれとこれとは違います。
町の暮らしと歴史を築いてきた資源です。
命は命だけれど、牛・豚・鶏を食べてきた世界基準と同等の食文化です。

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太地町の町長・三軒さんおっしゃるところによると・・・・・
「我々の町は本州の最南近くに位置して、交通の便の非常に悪いところですよね。 水も少なく、そのために野菜をもとれない、コメもできない、非常に住民が暮らしにくい。 ただ、たまたま鯨の通り道にあるわけですよね。 生きなければならないがために、その鯨に400年以上も前に挑んだ町です」

古い文献によると、1606年の徳川の時代には、すでに太地町で捕鯨が組織化された事業として行われていました。
太地町が古式捕鯨発祥の地と言われるゆえんです。
欧米の捕鯨は鯨油さえとれれば、あとの肉は海に沈めてしまいます。
日本人はクジラの肉、全ての部位を食べるなり、工芸品などに利用してきました。
「戦後食料難の時代、鯨肉を食べることで飢えをしのいで戦後を生き抜いてきた人々の中には、クジラに命を助けられたという感謝の念を持っている人が多いのですよ」と町長さんはおっしゃいました。

町の至る所にはクジラのモニュメントのようなものが見受けられますし、毎年秋にはクジラの供養祭や太地浦くじら祭りも催され、クジラに感謝の念が捧げられています。
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「ザ・コーヴ」の時から気になった方もおられるでしょうが、太地町の追い込み漁で獲られているのは紛れもなく「イルカ」ですが、漁師さんをはじめ漁業関係者の方は「イルカ」と言いません。 必ず「クジラ」です。
これは知らない人からすれば、「イルカを殺している罪悪感から、言い方を“クジラ”で通すことで自分の気持ちをごまかしてるんじゃないの?」と思ってしまうでしょう。
 
ざっくり言うとイルカとクジラは同じです。 単なる大きさの違いで呼び方が変わるのです。
生物学上では同じ鯨類に属しているイルカとクジラは、成体が4メートル以下のものを「イルカ」、それより大きくなると「クジラ」と呼びます。
国によっては基準が少し変わる所もありますが、日本ではそうやってイルカとクジラを分けるのが慣習です。
でも獲られているのはイルカなのに「クジラ」で通されているのは、この町が昔からクジラの漁で存続してきた歴史がる為の、ある意味リスペクトを込めて「クジラ」を忘れまいとする意志なのではないでしょうか。

ちなみに、太地町で獲られている鯨類はマゴンドウやバンドウイルカなどの7種類で、これらは絶滅危惧種ではありません。

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確かにイルカは可愛いです。 人間にもなつきますしね。
外国人から見れば、そりゃ追い込み漁の光景は残酷に映るでしょう。
日本人でも抵抗を覚える人だっていても当然です。
我々が犬を食べてる国に嫌悪感を覚えるのと同じなのかも知れませんが、少なくとも私たちの国は犬を食べる国に行って「犬を殺すな」と喚き散らすことはしません。
よその国の文化に踏み込んでいく方がよっぽど野蛮でしょう。

外国人から言われたくないという主権と命の尊厳という価値観がぶつかり合って、これは少々のことでは解り合えません。

最近では屠殺の現場をブルーシートで隠すようになり、これに対して活動家は「自分たちがやっていることを恥じているからだ」と非難する。
太地町漁業協同組合の〆谷さんは・・・
「牛や豚、殺すとこオープンですか? 生き物を殺すシーンを隠して何が悪い? 普通そうやって人目にさらすものじゃないでしょ? そういうことで金もうけしている外人の方が、よっぽど生き物に対して失礼やと思います」

「いくら払えばイルカを解放するのか」と、シーシェパードが漁師たちに寄付金を提供する提案を出したことに対し、漁師の三好さんは・・・
「彼らが働いて、汗水たらして、その金だったら納得いきますけどね。 寄付金から来た金でそんな話が成り立つと思いますか? それが一回で済むならいいけど、僕らはもう年いって引退する立場やから、だけど若い子らはこの生活を受け継いでいかねばあかんわけよ」

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そして劇中に登場する一人のオジサンのインパクトがまた強烈。
「日本世直し会」の中平敦さん
「僕たちのこと皆、右翼団体と思ってるのよ。(えっ、ちがうの?) 考え方は真ん中。 だから右翼とか左翼とか関係ないのよ。古いのよそれは。 最初はシーシェパード来たからびっくりしたのよ。 なんだよ、あいつはって思ったけれど、今は違うね。 考え方は違うけど尊敬してる。 話し合いすればいいのよ」

毎日街宣車に乗って、太地町を訪れる外国人に英語で呼びかけます。 「みなさん、話し合いましょう」
この人、どこの出身かな? 少なくとも関西人じゃないよね。
まあそれはいいんだけれど、やたらに熱血なテンションを放出している人で、ちょっと胡散臭さがありますが、この町の騒動が互いにネチネチジメジメしたような空気になっている現状では、雰囲気に流されずに元気よく喝を入れる人は必要かもしれません。
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考え方は違うけど尊敬してるなんて言える懐の広さはたいしたもんです。
「話し合いましょうよ」という正論中の正論でもって太地町問題にぶつかっていく。 シンプルでまっすぐな姿勢には好感が持てます。
実際、この人の呼びかけで、太地町と外国人活動家との対話集会が実現しちゃうんだもの。 あっぱれですな。

集会場の外に群がって関係者にインタビューしようとするマスコミに、「どけどけー!コラァー!道あけろー!」と、"素を出した"中平さんの怒声がこだまする。
対話集会と言っても、お互いが言いたいことを簡潔に述べただけ。 他にもっとあったかもしれないけどカットしてるのかは定かでないが、それでもさほど実りのある話し合いではなかったみたいです。
でもやっぱり、きっちりと話し合わないといけないというのは痛切に感じますね。

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この映画は単に、「ザ・コーヴ」への反論ではなく、活動家批判でもありません。
こちらが正義ならば、それに対するは悪ではなくて、もうひとつの正義だという見方で、今一度この太地町の問題を考察しているところがこの映画の秀逸な語りです。

シーシェパードという団体自体のやり方や、組織構造などは納得できないところはありますが、それは一旦置いといて、「可愛くて頭がよくて、人間の友だちにもなれるイルカを残酷に殺さないでくれよ」という人の感情も分からないではありません。
メディアの情報だけを見聞きして受け流さずに、何とかしなければと実際に行動を起こした姿勢は敬意を表しますし、感情的にならずにこの際じっくりと言い分に耳を傾けた方がいいのではと、この映画を観ていて、より感じました。

「長く続いているからといって、良い文化とは言えない」
特に日本では現実に即していないのに「昔からやってきたことだから」ということで続いている妙なしきたりもあります。 でもこの文化は慣習とは別ですよ。
「動物に敬意を持ってると言ってるがそうは見えない」
漁に敬意を求められても・・・とは思うなあ。
水族館に売るための捕まえ方に抵抗を覚えないことはないですね。 「奴隷売買だ」までは言いすぎじゃない?

でも食文化は、形ばかりが重んじられる冠婚葬祭とは違って、文化というよりも暮らしの糧ですからね。 やめれませんよ、おいそれとは。
ですが・・・・・・

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しかし現実としては、日本人のクジラの肉の消費量は悲しいほど少ない。
フリージャーナリストの佐久間淳子さんによると、「世論調査をすると日本人は多分7割以上の人が捕鯨に賛成しているのに、一人あたり年間30グラムしかクジラ肉を食べない」と言う。
多くの日本人が捕鯨に賛成する理由は、白人にイルカはかわいいから殺すなと言われることへの反発があるからだと佐久間さんは指摘されています。
敗戦国感情というのでしょうかねえ。 確かにそういう感情的になってるところはあるでしょう。

アッシもクジラは食べませんねえ。 っていうか、売ってませんからね。 クジラ料理の店は知ってますけども。
小学校の頃はたまにクジラの肉が出てきたんですよ。
これが固いのなんの。 まずくはないんですが、さりとてほっぺが落ちそうなほど美味でもありません。
噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで・・・・飲み込めるまで時間がかかるもんだから、好きじゃありませんでした。
給食で出たのに、家に帰って「今日の晩御飯のおかずは?」って聞くと、「喜べ。クジラやで」と言われて一瞬魂が抜けたことが何回かありましたね。

昔は鯨肉は安かったのよね。
今は柔らかくて美味しい鯨肉なんでしょうが、昔は何かと言えばおかずがクジラだったもんなあ。

昔と違ってほとんどの日本人が鯨肉をあまり口にしなくなった昨今。それは年々減少傾向にあると言います。
クジラを獲る分化よりも先にクジラを食べる文化がなくなると、もはやそれは文化としては破綻してはいないか、無意味に続けてるそれは、守るべき良き文化と言えるのかという疑問もわいてきます。
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以前から指摘されている、鯨肉に含まれるメチル水銀の数値の高さも避けては通れません。
バカみたいに食べ過ぎなきゃいいですが、少なくとも妊婦の方は控えた方がいいとも言われています。
そんなこと言やあ、本マグロだって水銀値は高いからね。

太地町の追い込み漁で捕獲されたイルカの半数が海外の水族館向けに輸出されていますが、2015年、「WAZA(世界動物園水族館協会)」が、「動物に苦痛を与える方法」だとして、非人道的に映る追い込み漁に対して「JAZA(日本動物園水族館協会)」に警告をしました。
それに従い「JAZA」は追い込み漁で捕獲されたイルカの入手を行わないことを発表。

「JAZA」からイルカを買い付けるなら退会してくれと言われた「太地町立くじらの博物館」は上等とばかりに退会。
他にも下関や新江ノ島の水族館も「JAZA」に反発して退会してます。
教えてほしいですな。 動物に優しい捕獲の仕方を。
「見世物にするから来てくれない?」と頼んで「わかりました」と自分から網の中に入る動物がいるか、バカモノ。
そもそも、かわいそうというなら捕獲をするんじゃない。
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「太地町立くじらの博物館」は年中無休。
大人:1500円  小中学生:800円
イルカ・クジラショーのイベントや、ふれあい体験もできますよ。


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日本に住んで20年という、元AP通信のジャーナリスト、ジェイ・アラバスターさん
太地町に越してきてまで長年この問題を見つめてきた彼が、劇中頻繁に登場し、中立の立場から多角的な視野を提示してくれます。

最初にこの町にやってきた時、活動家たちからは「危険を感じたら躊躇なく逃げろ」とアドバイスされたという。
そんなに危ない町なのかと構えたが実際はそうではなく、確かに外国人=反捕鯨という色眼鏡から距離を取られたものの、地道なコミュニケーションが実って、すっかり町の人とも打ち解けています。

「クジラやイルカが絶滅寸前だと議論をしているが、こんな小さな町こそ絶滅危機にある」
町が育てた文化。 その文化によって町が育てられていくこともあります。
しかし、その文化が大きな問題に直面し、存続さえ危ぶまれ、意義や矜持が揺さぶられています。
ひとつの町がどうなるやも知れぬ運命にあるのです。 外国からの銃も爆弾も使わぬ侵略によって。

漁師さんたちは活動家たちの声を無視して相手にしないことにしましたが、それこそが危険だとアラバスターさんは指摘します。
活動家たちが撮影した漁の様子はSNSで瞬く間に世界中に拡散。
これを放置しているから、圧倒的に一方の意見だけが世界基準として独り歩きしてしまっています。
太地町も意見をSNSなどで発信しなければとアラバスターさんに諭された漁師さんが戸惑った表情で固まってしまうシーンがなんとも言えませんね。

もはや事態は「VS保護団体」ではなく、「VS世界」になってしまっていますからね。
一方的に言われっ放しはダメだと分かってはいますが、何をどう発信して、世界に伝えたいことが伝わるのかと、あまりに大きくなりすぎた問題に泡を食うのも無理からぬこと。
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今や世界は「自国ファースト」がトレンディとなり、多様性を認めなくなっています。
人種も宗教も文化も国家元首の価値観ひとつで選別されます。
それで自分の国が発展すると思ってるのでしょうか。 非常に残念なことです。
自分の基準と合わない価値観は、排除ありきではなく、まずは知り合って理解し合うことの方が大事だと思います。

この太地町の問題も、活動家の一方的な価値観の押しつけの姿勢に抵抗するだけでなく、漁業関係者の方にも相手の主張する「正義」に耳目を傾けて見る必要性が問われています。 また"部外者"である我々も感情的なナショナリズムで安易な口撃をするのではなく、もうひとつの正義があるという観点で考えることが要求されています。


この映画のタイトルである「おクジラさま」は、徳川五代将軍綱吉が御触れを出した「生類憐みの令」の「お犬さま」に掛けてのもの。
人間以外の生き物も敬う。それはそれで好令です。
確かに大事で立派な姿勢ですが、強圧的な干渉が度を過ぎて、人間の生活を破壊してしまった悪令として歴史に残る結果になりました。
環境保護団体という名の"綱吉公"がかわいがる「おクジラさま」。
日本の民はどこへ向かえばいいか。 会話さえできれば、おクジラさまに聞くのが一番手っ取り早いのだが。

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「賢人のお言葉」 
 「君の立場になれば君が正しい。 僕の立場になれば僕が正しい」
 ボブ・ディラン
 「いつもの朝に(one too many mornings)」

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デス・レース2000年
2017年10月15日

a128b80c7c15da37.jpgB級映画・C級映画を次々と量産するハリウッド稀代のならず者、ロジャー・コーマン。
御歳91を迎えたばかりながら、血のめぐりが良すぎるのか、相も変わらずカクシャクとしている絶倫翁である。

これまで製作した映画の数が500本を超えるコーマンの映画作りのポリシーは、とにかく金をかけないこと。
ボンビーなのではない。 あえてリーズナブルに映画を撮るのがコーマン流。
大金さえブッ込んだらオモロい映画が作れるという「お金ズム」に染まり倒したハリウッドに反旗を翻し、徹底して"安くてもうまい"映画作りに邁進しておられる御方なのだ。
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もちろん、コーマン映画は金のかかったハリウッド大作と比べたら、クオリティは格段に下がる。
グダグダのプロット。 やっつけ感満載の特撮。
突っこみだしたらキリがないほどの無茶が網羅された作品ばかりである。
それでも、安上がりなりに創意工夫と努力が随所に垣間見れるところが微笑ましく、その分、不思議な味わいが出る。

まともに作れそうなシーンでも、あえてハズした演出に振り切って、B級映画を中途半端にAB級映画にしないのがコーマンの「俺道」でもある。
観ていて腰骨が砕けそうになっても、そのバカさを粋に楽しむのがB級映画鑑賞の鉄則だ。

さて、そんなB級映画の永世皇帝ロジャー・コーマンが1975年に製作したのが「デス・レース2000年」。
近未来のアメリカを舞台に、人を殺す数を競い合うカーレースの凄絶な死闘を描く、伝説のカルト・ムービーである。
日本公開40周年を記念して、このたび限定リバイバル。
これは観たことがなかったので、アッシは颯爽と劇場へと殴り込んだ。

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時は西暦2000年の近未来。 いや、近過去。
あれだけ気をもんだ「2000年問題」は愛想もクソもないまま通り過ぎ、めでたく「プレステ2」が発売され、シドニー五輪でヤワラちゃんが金メダルを獲ってニッポンが大いに沸いていた頃。
アメリカでは、どえらいことになっていた。

ユナイテッド・プロビンセズ・オブ・アメリカと名称を変えた「アメリカ連邦」は、大統領の独裁国家となっており、国民の思想を完全統制していた。
国民の唯一の娯楽が年一回開催される、全米大陸横断カーレース「デス・レース」。
殺人兵器にカスタマイズした車にレーサーと性別の異なるナビゲーターが同乗した5組のチーム。
その5台の車が東から西へ疾走しながら、3日間でどれだけの人を殺せるかをポイント制で争うというもの。

とにかく人を殺してナンボのゲーム。 殺す対象によってポイントも変動。
人ひとりにつき10点。
40歳なら得点は3倍。 女性ならプラス10点。 12歳以下の子供は70点。
75歳以上の老人の息の根をすみやかに止めれば100点のボーナスが与えられる。
つまり弱者であればあるほど高得点。
まさに畜生道ここに極まれりを地で行く、非人道的なルールがまかり通るゲームなのだ。

2000年で開催20回目を迎える本レース。
エントリーしたのは次の5組。

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★フランケンシュタイン(デヴィッド・キャラダイン)
パッと見てショッカーの戦闘員かと思うがそうではない。
前回の優勝者にして、絶大な人気を誇るスーパースター。
過去のレースで片腕、片足がもげ、顔の半分がベロンチョになってしまったために、全身を黒のレザーで覆っている。
義手となった腕で繰り出すギアチェンジの速さは自称0.05秒。 多分ウソだろう。 次元大介の早撃ちより速いのか?

ナビゲーターは初コンビとなるアニー・スミス(シモーヌ・グリフィス)。

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『ザ・モンスター号』
なにかの怪獣がコンセプトなのか、フロントから剥きだした牙がいかにもイキり倒しているデザイン。

     

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★マシンガン・ジョー・ビテルボ(シルベスター・スタローン)
何度も優勝していながら、自分よりも人気が高いフランケンシュタインを目の敵にしている。
やたらに血の気が多く、常に何かを怒っており、些細なことでも女に手をあげる。 そのくせケンカは弱いという激安クソ野郎である。

そんな野郎に苦労させられているナビゲーターのレディーはマイラちゃん。

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『ピースメイカー号』 
フロント中央に巨大なナイフ。 サイドにドラムマガジンのトンプソン・サブマシンガンを装着し、刺す・撃つ・轢くという三面攻撃を実現させたアホ丸出しのデザイン。

     

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★カラミティ・ジェーン(メアリー・ウォロノフ)
西部開拓時代に実在した女ガンマンの名を名乗る、カウガール風情の美人ドライバー。
「男運が良くなるとレース運が落ちるかも」というコメントに誰もが心の中で「知らんがな」と突っこむ。

ナビゲーターはなかなかのイケメンであるピート君。

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『雄牛号』
牛をイメージしたのは理解できるが、鼻輪まで表現する必要まであったのかどうか。

     

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★マチルダ・ザ・ハン(ロベルタ・コリンズ)
世間からひんしゅくを買うこと必至のコスチューム。
“ナチスの恋人”と自称するほどのナチス信奉者。
カラミティとはお猿とワンちゃんの仲で、顔を合わせれば所かまわず舌戦に突入する。

メガネ君ナビゲーターは"ドイツの狐"ことハーマン・ザ・ジャーマン。

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『誘導爆弾号』
ルーフに戦車の砲身がドッカと据えられた、お子様レベルのセンスが涙を誘うフォルム。

     

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★ネロ・ザ・ヒーロー(マーティン・コープ)
ローマ帝国第5代皇帝にして、母や妻でさえも殺した暴君として知られるネロを名乗る、見るからに暑苦しい男。
本名はレイ・ロニガン。

ローマ帝国をコンセプトにする世界観のこだわりだけはどのチームより強い。
ゆえにナビゲーターの女もクレオパトラを名乗る。
その彼女が巨乳であるのはロジャー・コーマンのこだわり。

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ライオン号』 
ローマ帝国では罪人を処罰する方法としてライオンの群れの中に罪人を放置したと言われる。
ライオンに見えなくもないけれど・・・

     
果たして優勝は誰の手に。
21世紀の幕が開けたアメリカで、地獄の娯楽の殺人競争が火ぶたを切る。
その裏では、反体制派の革命軍がレースを邪魔するためのテロを始めようとしていた。
そして、デス・レースのカリスマであるフランケンシュタインは、ある目的を秘めてレースに臨んでいた・・・・


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製作費が30万ドルと、コーマンの映画にしてはまあまあ金がかかってる方。
それ故にか、妙にすかした近未来感覚や、車の改造をはじめとした漫画チックな作り込みは、マジメとオチャラケの間の絶妙なバランスを生んでいる。
らしくないと言えばらしくないが、ここまで変にしっかりしているコーマンのB級映画も珍しい。

キャラクターも面白いし、倫理クソ食らえの殺人カーレースにおけるブラックユーモアもキレがいい。
想像していたほどグロさはなく、カラミティのナビゲーターがドタマをグシャッとやられるシーン以外、スプラッタな描写は皆無。
車でハネ殺したり、武器で突き刺したりするというのをガッツリ見せるとなると、スタントマンを雇う費用や、テイクの数も増えるので金と時間の無駄。
役者が「ワーッ」だの「ギャーッ」だのと叫んで、苦悶の表情のカットからバタリと倒れる演出で、観る者に脳内保管を促している。

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中でもユニークだったのは「安楽死デー」というのがあって、病院から入院中のジー様バー様が運び出され、公道上に放置されるシーンである。
不謹慎ながらも思わず笑ってしまう、なかなかのブラックスパイスが効いたシーンだ。
ここへフランケンシュタインの車がやってきて、さてどうするかと思いきや、医師や看護師が見守っている沿道へと突っこんでいき、はねられた人間が植え木の陰からピョンピョン飛び上がる、マンガのような演出が笑いを誘う。

こういったユーモアは随所に見られ、マチルダが革命軍のしょーもない罠にひっかかって死ぬシーンなんかは「そんなアホな」とのけぞること請け合い。
一人の間抜けなオッサンが闘牛士の恰好でカラミティの雄牛号に挑み、いとも簡単に逝きなさるシーンには「そらそうやろ」と声も出る。
フランケンシュタインのファンクラブの女子が、自らの身を犠牲にしてポイントに貢献するシーンには思わず目頭が熱くなると同時に、肛門の穴がゆるんでスカベが漏れる。
さらに休憩ポイントのホテルの部屋で、フランケンシュタインが黒のブリーフ一丁でアニーとダンスするシーンのシュールさは、筋弛緩剤でも打たれたかのような脱力感が襲ってくる。

一応は真面目にやってるのだろうが、その他にも笑える小ネタはチョビチョビと顔を出す。
もうみんな、おかしくなっているのだ。
いかに、この世界の人物たちがイカれてるかの表れである。
冷静に観ればバカ丸出しだが、これぞB級映画の真髄。 バカを見物するのがB級映画への正しきたしなみ方。

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フランケンシュタインを演じたデヴィッド・キャラダイン。
70年代のTVシリーズ「燃えよ!カンフー」の主役で人気を博した彼だが、ハーフのカンフーの使い手であるケインの役は元々原案を担当していたブルース・リー自ら演じることになっていた。
しかしリーがハーフに見えない(そりゃそうじゃ)という役柄上の不都合から、TVドラマの「シェーン」でジワジワ人気が出ていたキャラダインが抜擢された。 キャラダインもハーフには見えないが。

ある意味幸運をつかんだキャラダインだが、この「デス・レース2000年」の主役もラッキーチャンスが巡ってきた賜物である。
ロジャー・コーマンは当初ピーター・フォンダを望んだ。 「イージー・ライダー」のキャプテン・アメリカ役の反体制の象徴のイメージは、「デス・レース2000年」にも打ってつけだった。
だがフォンダは脚本を読んで「アホらしいわい」とオファーを蹴り飛ばした。
そこで白羽の矢が立ったのがデヴィッド・キャラダインだったのだ。
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テレビでは人気が出たものの、映画ではノンクレジットの時もあるほど、まともな役はもらえなかった。
テレビスターのイメージがつくことを恐れていたキャラダインにはまさに渡りに船ならぬ、渡りに殺人カーだった。
とはいっても、その後のキャラダインの作品は圧倒的にB級映画が多い。

だが、やはりなんといっても強烈な印象を残したのがタランティーノの傑作「キル・ビル」シリーズのビル役であろう。
「キル・ビル Vol.2 ザ・ラブ・ストーリー」に本格的に登場したDIVASの首領、ビルの近寄りがたきオーラぷんぷんの出で立ちは映画史上に残るインパクトだった。

2009年にタイのバンコクのホテルで不可解な死を遂げたキャラダイン。
一体なんだったのだろう。
ともかくも一時代を疾風のように駆け抜けたデヴィッド・キャラダインは忘れ難いスターである。

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「ロッキー」でブレイクする半年前のシルベスター・スタローンがマシンガン・ジョーを好演。 ガッツリと爪痕を残している。
40年も前だから当然と言えば当然だが、この油の乗りようというか、ピチピチしたスタローンは強烈な「売れたい臭」までもが感じられて初々しい。
役者としてなかなか芽が出ずにウルトラボンビーだったスタローンの力が入りすぎた演技も、これはこれでマシンガン・ジョーのキャラクターを存分に引き出す結果としてついてきている。

本作がカルト的な人気を博している一因は、若き頃のスタローンが出ているということもあるが、その他にも「へ~」いう人も出ている。
ネロを演じたマーティン・コープは、のちに「ベスト・キッド」シリーズの悪役のコブラ会のクリース師範役を務め、「ランボー 怒りの脱出」でもスタローンと再び顔を合わせている。
また、マシンガン・ジョーのナビゲーター・ガール、マイラを演じたルイザ・モリッツは「カッコーの巣の上で」でジャック・ニコルソンが病棟にこっそり招き入れる女友達の一人を演じていた人である。


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近年はミニシアターでの企画モノでしか、こういったB級映画は観られなくなった。
大抵はDVDスルーである。
と言いながらも、仮にメジャーの映画館でこの手の安もん映画が公開されてもアッシだって二の足を踏むのが正直なところ。

いい意味で、お金をかけて、CGを使ったり、いい役者を起用して、ちゃんと作った映画に我々は小慣れてしまったのだ。
だが、「B級映画」という概念さえあやふやだった時代は誰もが自由に好きな映画を撮っていた。
製作費がどうだの興行収入がどうだの、黒字がどうした赤字がどうしたなどと、お金のゼロの数の多さだけで、作り手も観る側も一喜一憂するようになった時代は、結局貧乏な映画人はいつまでも陽の目を見ないし、観る側もB級映画の裏側にある作り手の魂に気を留めなくなった。

それでも、レンタル屋の棚を見ていたら「なんじゃこれ?」みたいな映画は氾濫していると言えるほどにある。
そこから、あえてお金を出して観てもらえるチャンスは限りなく低い。
「楽しんでほしい」という精神は、どんな大作にもひけはとらないはずなのにだ。

この「デス・レース2000年」にはB級映画のエンタテインメント・スピリットがあふれている。
現代の感覚でいえばアホらしいところだらけだが、そのアホらしさの中にこそ、ものすごく自由なノリで、娯楽作りに勤しんだ、あの頃の息吹が感じられるのである。
B級映画はこう作れというお手本のような映画なのだ。
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「賢人のお言葉」
 
「あらゆるものの真価とは、それを獲得するための苦労と困難である」
 アダム・スミス

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他にもこれ観ました  ~9月編(下)
2017年10月09日

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「あさがくるまえに」

臓器移植。 そこにはドナー(提供する側)とレシピエント(受ける側)、双方の家族、そして医師、コーディネーターなどの様々な葛藤のドラマが生まれます。

日本では臓器移植の定着はかなり遅れていますが、人口が日本の約半分であるフランスの臓器提供者数は日本の25倍。
生前に拒否の意思表示をしてなければ、推定同意制度により、誰もが原則的にドナーとして扱われるというお国柄なので当然かもしれません。
そんなフランスから届いた、臓器移植についてのヒューマンドラマ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
青年シモンは夜明け前、まだ恋人が眠っているベッドからそっと脱け出して友人とサーフィンに出かけた。
しかしその帰り道、交通事故に巻き込まれたシモンは搬送先の病院で脳死状態と判定される。
駆けつけた両親は動揺を抑えられない。
医師はシモンが蘇生する可能性は無いことを両親に説明し、臓器の提供を持ちかける。
「息子さんの気持ち、答えを見つけませんか?」
「おまえは子持ちか?何が分かる」
停まってしまった心臓は移植はできない。 猶予は1日。 翌日の「朝が来る前に」。

一方、パリに暮らす音楽家の女性クレールは心臓の変性疾患の末期にある。
二人の息子は移植を強く勧めるが「誰にでも寿命がある。人の心臓を使ってまで・・・」と言いながら、老いた自分が延命することの意味を自問自答する。
そんな時、担当医からドナーが見つかったという報せが入るのだが・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
臓器移植は時間との闘いでもあり、物語は登場人物の24時間を描いています。
上映時間が104分というコンパクトさの中に、当事者たち各々の葛藤の風景がつぶさに描かれており、抑えたタッチであるにもかかわらず、感情を十分に刺激します。
それでいて観ている側にも問いがしっかりと投げかけられるのですが、やはり命の問題は重いですね。
これは日本人の良いところなのか悪い所なのか、やっぱりどうしても考えすぎてしまいますし、本人の意思表示がなかったら臓器提供には二の足を踏むのが遺族としては普通の感情でしょう。
だからこそ生前の意思表示は大事ですね。 この映画を観ていると、それはすごく痛感しますねえ。 意思表示カード持ってたけど、どこかに行っちゃったなあ。

移植コーディネーターのトマがシモンの耳にイヤホンを差し込んで波の音を聴かせてあげるシーンがジーンときます。
シメに流れるデヴィッド・ボウイの「5年間」もいいっすね!
        

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「オン・ザ・ミルキー・ロード」

久しぶりのエミール・クストリッツァ監督。 「ウェディング・ベルを鳴らせ!」以来10年ぶりの劇映画です。
この監督さんの映画は動物がたくさん出てくるのがトレードマークですが、本作も、ま~~~出るなんてもんじゃない。えらいことになってます。
予想のつかないハチャメチャな展開も相変わらずですねえ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
隣国と戦争中のある国の、ある村。
コスタは毎日傘をさしてロバに乗りながら、銃弾をかいくぐって兵士たちにミルクを届けている風変りな男。
そのコスタを雇っていいるミルク屋の娘ミレナは村のマドンナ的存在だがコスタに想いを寄せている。
兄のジャガがまもなく戦場から帰ってくるが、ミレナが難民キャンプから見つけ出してきた女性と結婚する予定になっている。
それに併せて自分もコスタとダブル結婚式を挙げるのがミレナの夢だ。
だがそんなミレナの求愛にもコスタはまるでどこ吹く風。
やがて花嫁がミレナの家にやってきた。
コスタは彼女と出会った瞬間に惹かれあう。
休戦協定がしかれて村にしばしの平和が訪れるが、過去に花嫁を愛した多国籍軍の英国将校が花嫁を手に入れようと特殊部隊を送り込んでくる。
村は焼き払われて村人たちは死んでしまうが、運良く生き残ったコスタは花嫁を連れて決死の逃避行を開始する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ユーモアにあふれ、反戦のメッセージも込めながらのラブストーリーが賑々しく繰り広げられます。
とにかく動物! やたらに動物!
この監督さんは動物愛のカタマリなのかというと、そうだとも言えるしそうではないとも言えます。
動物は作中では象徴的なものとして扱われており、有り得ない動きをするものも出てきますし、悲惨な死に方も遠慮なく描かれます。
オープニングから豚が料理のためにさばかれるシーンですからね。 豚の血でタップタプの桶!エミール健在です。
ダンスをするハヤブサ。 ミルクを飲む蛇。 コスタと頭突き相撲するヤギ。 熊にオレンジを口移し。これCGではないそうです。
他にもガチョウ、犬、ニワトリ、ロバ、蜂・・・
極めつけは地雷に吹っ飛ぶ羊の群れ。 羊がボーン!羊がボーン! こんなゲームがあったような。 このマンガみたいなシーンはちょっと笑っちゃいましたね。
なんか無茶しまくってますが、この面白さは異色です。
ラストのビッグスケールの積み石もこれまた意外。
        

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「エイリアン:コヴェナント」

「エイリアン」の前日譚にして「プロメテウス」の続編。
「プロメテウス」では人類を創造した"エンジニア"という異星人が登場。 エイリアンもまたこのエンジニアが創り出した生物兵器だったことが判明。
「エイリアン」のスペースジョッキーの姿がエンジニアの宇宙服だったというのも驚きでした。

「プロメテウス」はタイトルから「エイリアン」のワードが外れていることからもお分かりの通り、従来のモンスター・ホラーからは離れて、「何故そうなったか」を物語ることに重点が置かれていました。
それでも「そこで終わり?」みたいな消化不良は否めず、さらに謎は残りました。
というわけで、「プロメテウス」から10年後という設定の続編はタイトルに「エイリアン」が戻ったように多少原点回帰の色は出ています。
とはいえストーリーラインは「エイリアン」や「プロメテウス」と似通ったもので、そこらへんの新鮮味はないですね。

人類が居住可能な惑星「オリエガ6」に向けて宇宙を航行するコヴェナント号。
15名の乗組員、2000人の入植者、1104体分の胎芽を乗せて目的地の到着まであと7年のところまで来ていた時、ニュートリノ爆発のフレアの影響によりコヴェナント号は甚大な損害を負う。
回復した通信システムが謎の電波を受信。 発信源は現在位置に近い恒星系の第四惑星。
その星が居住可能領域であると判明、しかも2週間で到達できることから、予定を変更して第四惑星へと向かうことに。
そこは地球とほぼ同じ環境で、「宇宙の楽園」と期待されたが実はそこには・・・・という定番のパターン。 まあ、そこはいいでしょう。

グロさもあり、ホラー食も強くなっていますし、ギリシャ神話、聖書、ワーグナーの「ヴァルハラ城への神々の入場」、パーシー・シェリーの詩「オジマンディアス」、フランチェスカの「キリストの降誕」など、そこに隠された意味を知ればなお面白い示唆がちょこちょこ出てきます。

これぞ「エイリアン」というサービスも十分。
あの卵とフェイスハガーは何度見てもキショい。 ビッグボーイも登場!(ステーキ屋さんじゃないよ)

悪くはないけど何かが足りないような。
ざっくりとした説明はあるけど、本作と「プロメテウス」の間にあるストーリーが欠けているのが痛い。
YouTubeにあがってる特別短編映像「プロローグ:ザ・クロッシング」を観たって、あんまり意味はないね。
アンドロイドのデヴィッドが「人間が自分を創ったけど、人間だってエンジニアに創られたもんでしょ? おまえ、俺に何を偉そうにしてんの? おんなじ創造された側のくせしてさ。 いいよ別に。 今度は俺が創造主になるから」ってな暴走を始めたのは分かりますけど。
ラストは救い難い怖さ。 まあ、デヴィッドがウォルターになりすましているのは分かりましたけども。 でもウォルター弱すぎじゃね。
        

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「スイス・アーミー・マン」

ダニエル・ラドクリフが死体の役を演じることで話題のハートフル・アドベンチャー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
無人島で助けを待つハンク(ポール・ダノ)は絶望のあまり、自ら命を断とうとしていた。

もう疲れちったよ、俺。 こんな所で人生終わるとはなあ。
木の枝にロープをどっこいしょっと引っかけて、このまま首をくくってこの世とはオサラバだ。
おっ?波打ち際に誰か倒れてる。 
おい、大丈夫か、アンタ!しっかりしろ!・・・て、死んでるんかい!
なんだよ、死体に用なんかねえよ。 何の役にも立たねえのによ。
それにしても若いな。 何があったか知らんが気の毒だな。 まあそんなことはいいや。
あ~あ、首吊りのやり直しだ。
BOOO~
何の音? あ~、死体からガスが出てんのか。
みっともねえな。 死体のくせに屁こいてんじゃねえ。
死んだ後でも恥さらすなんて、ああはなりたくねえな。
BOO~ BOO~ BOO~ BOO~ BOO~・・・・・
うるっせえなあ。 首も吊れねえじゃねえか。
屁をこいてる反動で死体がヒョコヒョコ動いてやがる。 シュールだけどキショいにもほどがあるぞ。
お~お、屁の力で死体が海に戻って行ってるぞ。 なかなかおもろい光景だ。
・・・・・これだ! そうか、その手があったか。
あの屁の推進力ならジェットスキー代わりになるかも。(ならねえよ普通は)
よ~し!これで無人島から脱出じゃい!

・・・こうしてハンクは屁をこく死体を使って故郷を目指すのでした・・・・で終わる話ではありません。 ここまではまだ映画の序盤中の序盤。
もちろん生還など果たせるはずもなく、あえなく水没してしまったハンクと死体はまた別の島まで流されてしまいます。 本題はここから。

この死体、意外と使える奴です。
*雨水を体内に蓄えられ、胸を押すと水を吐き出す。(飲むんかい)
*死後硬直した腕は斧にもなる。(南斗聖拳か)
*小石を口に詰めてガスを逆噴射すれば銃弾となって狩りにも最適。(もうガスはいいって)
*何よりも、喋り出す。(ええっ!) ゾンビ? それともハンクの妄想の別人格? ここらへんが不明。
*エロ本を見せたら勃起する。 *そんでもってチンコが方位磁石にもなる。「まあ便利!」(便利じゃねえよ)
映画のタイトルはつまり、この死体がスイス・アーミー・ナイフ(十徳ナイフ)のような男だから。「うまいっ!」(うまいじゃねえよ)

死体が喋り出すファンタジックな展開の後半からは、主人公の秘められた深い悩みとその克服のドラマが瑞々しく描かれるのですが、一にも二にも、このトーンの落差についていけるかどうか。 あんまり深く考えてはいかんのですね。 
若くして母親に死なれ、父親から「低能」と蔑まれ、死んでるような青春を送ってきた男が、死んでるけど役に立つ男との不思議な交流を通して再生していく。 愛すべき小心者へのエール。 バカバカしいのにほっこりさせてくれます。
        

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「プラネタリウム」

『And you, what would you do for love?』(あなたは、愛のために何をする?)
ナタリー・ポートマンのディオールのCM、カッコいいですねえ。

1930年代、降霊術を披露して人気を集める姉妹の愛と夢の歪みを描く、ミステリアスかつロマンチックなドラマ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ナチスがヨーロッパで台頭しはじめた1930年代。
姉のローラ(ナタリー・ポートマン)、妹のケイト(リリー=ローズ・デップ)のバーロウ姉妹はアメリカ人のスピリチュアリスト。 二人は憧れのパリのツアーへ向かう。
二人が見せる“ショー”は降霊術。
妹のケイトが自分の体に霊を憑依させて相談者の悩みに答え、そばで姉のローラがサポートとナビゲートを担当している。 ホンモノかインチキかどうかはともかくとして。
パリでも人気を集めた彼女たちにフランス人映画プロデューサーのコルベンがセッションを希望してくる。
不思議な体験をして、いっぺんに2人に惚れ込んだコルベンは、2人の降霊術を映画にすることを思いつく。
妹はプレッシャーからか上手く演じれない。 もともと野心満々だった姉はノリノリで女優の才能を開花していく。
「君たちが来てから人生が変わったよ」と言ってくれるコルベンにローラは惹かれていくが、実はコルベンの興味は降霊術の才能がある妹だけで、ローラは嫉妬の炎を燃え上がらせていく。
コルベンはコルベンであまりにこの姉妹の映画作りにのめり込みすぎたために映画会社からプロデューサーの地位を追われることになる。
やがて起るひとつのアクシデントが、逆に姉妹とコルベンの絆を深めていくが、ヨーロッパに次第に押し寄せるファシズムの波に3人の運命が呑み込まれようとしていた・・・
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バーロウ姉妹は、17世紀にアメリカに実在したフォックス三姉妹をモデルにしています。 けっこう有名な姉妹ですが、のちのち降霊術について、姉の企んだ詐欺だと妹に暴露されています。
一方のコルベンも、実在したプロデューサー、ベルナール・ナタンがモデル。
ニワトリのモビールでおなじみの映画会社「Pathe」の経営者だった人で、不正融資やユダヤ人であることを隠そうとしていたことを咎められて失脚。アウシュヴィッツに送られて亡くなったとされています。

フォックス三姉妹とナタンは年代も違うので、この映画自体もちろん全編フィクションなわけですが、彼らには「見えないものを見せようとして詐欺師呼ばわりされた人物」という共通点があります。
そこに目をつけてひとつの物語にしてあるアイデアはいいのですが、映画としてはヒジョーに退屈でした。
何か起こってるのに何も起ってないような単調なトーンに終始しています。
もう少し、演出面で遊んでほしかったですが、それでも物語そのものにあまりそそられませんでしたね。
回想形式であることを説明した冒頭のシーンも余計ではないかと。
        

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「パーフェクト・レボリューション」

生まれながらにして脳性麻痺による四肢の痙性麻痺を抱える障害者・熊篠慶彦。
障害者の性的幸福追求権を訴えて、様々な活動に取り組んでいる熊篠氏の実体験を基に描くラブストーリー。
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主人公はリリー・フランキー演じるクマ。 重度の障害があり、車椅子生活を送りながらも障害者の性に対する理解を深めてもらうなどの講演や本の執筆活動をしている。
そのクマが出会うのがミツ(清野菜名)という派手で元気ハツラツな風俗嬢。
クマを「クマピー」と呼んで慕い、猛烈にアプローチする彼女には実は精神的な障害がある。
周囲の偏見や、いつ壊れるかもしれないミツの不安定な心など、二人の恋はそれこそ障害だらけ。
だがそれにもめげず、本当の幸せを世界に証明するために、ハードルを少しずつ乗り越えて二人の絆は深まっていく・・・
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「障害者だって恋もするし、セックスもしたい。障害者はただの人間なんです」
これを言いたいドラマだというのは分かります。
また、ハンデを抱えた者同士だって、愛し合って幸せになれることを証明してみせるのだという恋愛ドラマだというのも分かります。
フランスの大ヒット映画「最強のふたり」の男女カップルバージョンという趣きなのでしょうが、それをちょっと意識しすぎた感もありますかね。
リリーさんも菜名嬢も良かったですし、小池栄子もまた凄い存在感がありました。

しかし、物語に多少センセーショナルな刺激を加える意図なのか、あからさまに偏見を露わにする“悪役”的なキャラクターが逆に嘘っぽくなってしまいましたね。 ここがどうにもシラけてしまいました。
今時、「スカッとジャパン」に出てくるような、陰険な言葉を吐く奴はそうそういないと思いますがね。
「障害者が来るような店じゃねえ」みたいなことを言うレストランの客。
「二人が幸せになれるはずがない」と口を揃える親せき連中。
「障害者はもっとかわいそうな感じで」と、お涙頂戴を欲しがるテレビ番組スタッフ。
こういう嫌な思いをしたということを言いたいのも分からんでもないですが、そこよりも、障害者だってヤリてえというテーマにもっと寄せてほしかったというのが個人的な印象。
障害者に対して、どうしてもかしこまって神格化するような目線。 また、そういう風に障害者と接する態度こそが偉いんだと満足する社会の風潮は変えねばなりません。
それこそが「完全なる革命」ではないでしょうか。

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