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他にもこれ観ました  ~7月編(上)
2017年07月23日

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「フィフティ・シェイズ・ダーカー」

なんやかんやと言われながらも世界興収5億ドルを叩きだした前作「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」。
続編はあと2本。 もうすでに3作目の撮影も完了しており、こちらは2018年公開予定。
で、その前に。 第2弾の本作でありますが、観ようか辞めるか迷ったあげくに結局鑑賞。

この映画。 マジメに観なければ意外に楽しめました。
元々設定からしてキワモノですし、イビツな人物が純愛をやろうってんですから、オモローポイントの目白押し。
そういうところをツッコミながら観ればこれはこれで楽しいです。
ハナから腹をくくってたらペラッペラな話も一周回って面白いですよ。

前作製作時に、やいのやいのと口出ししまくった原作者ELジェイムスにキレた前監督は降板し、代わって「パーフェクト・ストレンジャー」のジェームズ・フォーリーが監督に。
脚本は原作者のダンナであるナイアル・レオナルドが「俺にまかせたらんかい」と執筆。
原作は読んでないから知らんけれど、「原作に忠実に」という点に力を入れたからなのか、まるで昭和の昼メロのような痛々しい展開が笑えます。
「どうせ、どう作ったって、おまえら突っ込むんだろ」と開き直ったのでしょうね。 演出と脚本はウケ狙いに走っています。

クリスチャン・グレイの相変わらずの世間ズレを、金持ちへのやっかみ半分でどんどんツッコミましょう。
ギャラリーの写真買占め・・・ カノジョ専用iPhone・・・ カノジョの就職先を買収する気満々・・・
だけどCEOが会議中にLINEに熱中するとはけしからんな。
あれよあれよという間に自我が前に出てくるアナも、なんだかんだでSM趣味に走り出す。

アナの勤める出版社の編集長は、アナにカレシがいると知った途端に態度が変わるクズ。
アナの前で編集長とクリスチャンが鉢合わせした時の火花バチバチの自己紹介。
「私は恋人だ」 「私はボスだ」 モンスターエンジンか、おまえら!

アチラのシーンですか?
まあ可もなく不可もなく。 その時になるとやたらにBGMが入りますが。

呆気に取られたのはヘリの遭難事故のくだり。
よもやの展開。 クリスチャン行方不明。 どうなるのかと思いきや、ものの数分で「心配かけてすまん」と帰宅。
「あなたを失ったかと思ったわ、オヨヨヨ」と泣きつくアナちゃん。
なんじゃいそれ! ヘリの事故は何だったの?
・・・・と、このように、ツッコミどころ満載の衝撃作。
来年の3作目もぜひ観よう。
        

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「おとなの恋の測り方」

ニコール・キッドマンがトム・クルーズと離婚した時の名言。
「これでやっとハイヒールが履けるわ」
10センチと言われていた身長差を、彼女がそこまで気を使っていたかはどうでもいいのだけれど、恋仲でもお互いに気を使う「格差」は由々しき問題。
このフランスのコメディ映画で描かれる「身長差」の格差ラブストーリー。 シンプルなようでなかなか深い。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
弁護士のディアーヌ(ヴィルジニー・エフィラ)は、3年前に夫と離婚した。
だが一応は仕事上欠かせぬパートナーであるため、同じ弁護士事務所で働いている二人は嫌でも顔を合わせるために口論が絶えない。
そんなある日、ケータイを落としたディアーヌの自宅に電話がかかってくる。
「やあ、自宅さん」
ケータイを拾ってくれたどこかの紳士の知的でユーモラスな会話に魅力を感じたディアーヌ。
レストランで待ち合わせし、ウキウキ気分で待っていた彼女のもとに現れたのは、とんでもなくちっちゃいオジサンだった。
(あちゃあ、これはないわ)とは思ったものの、それでも会話に付き合ってたら実に楽しい。
136センチという身長を自らさりげなくネタにしたりして、ポジティブでウィットに富んだ洒落た男の建築家のアレクサンドル(ジャン・デュジャルダン)に、気がつけばディアーヌはすっかり魅了され、以来デートを重ねていく。
しかし、二人が真剣になればなるほど周囲の反応は穏やかでなくなり、それを気にし出すようになった二人は将来への不安が隠しきれなくなっていく。
他人の目、男の価値観・・・、二人はそんな偏見や潜入感を乗り越えることができるのか・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
どうやって撮影したのか、実際には182センチあるジャン・デュジャルダンが136センチの男を演じ、恋人とのほぼ40センチほどの身長差から生まれるコミカルでシニカルなラブストーリー。
身長なんて気にしないなんて言ってても、元夫やディアーヌの母などをはじめとした周囲の視線や偏見は大きな問題となって立ちはだかります。
相手に気を遣う、気を遣わせてしまう間柄はもちろん窮屈で、ここを乗り越えていこうとする二人の愛は「外見の価値観」について考えさせられます。
身長のことを「覚えられやすい個性」だと言い、「他の人生を知らない。いつもこうだからね」と彼なりに受け入れてたアレクサンドルが、ディアーヌへの想いがどんどん真剣になり、気遣わせてる彼女を思いやるようになると本音が漏れます。
「自分や他人に対して嘘をつき、平気なフリをしている。 この身体にはうんざりだ」 アッシはちょっと泣きかけました。
「あなたは首が、私は背中が」 共に痛みを分かち合って乗り越えていく愛が美しすぎます。
そりゃそうと、元嫁と復縁したい元夫とアレクサンドルの卓球対決はどうなったの?
        

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「ハイヒール ~こだわりが生んだおとぎ話」

25分の短編映画。
一応日本映画ですが、監督は「我が心のオルガン」などに出演している韓国俳優のイ・インチョル。

人間の欲望がいよいよ世界を滅ぼそうという所まで来て、欲望を捨てるか滅びるかの選択を迫られた人類は、世界を救うために欲望を捨て、自らアンドロイドになることを選んだ。
永遠の生を受けて時間への執着が無くなると、争いや過剰な経済活動がこの世から消え失せ、地上は美しい自然を取り戻す。
それからさらに2000年経った未来。 一部のアンドロイドにエラーが起きて、再び欲望が芽生えだす。
こだわり・・・ 好奇心・・・ 自由・・・
欲望という人間らしさを取り戻したアンドロイドたちの物語・・・・というバックグラウンドが冒頭、アニメで紹介された後に本筋が始まります。
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菊池凛子が演じる靴職人のkai。
ハイヒール作りへのこだわりがハンパない。
ある日、kaiの店を訪れたYellow(玄理)が自分にぴったりな靴を作りたいとオーダー。
kaiは自分が納得する出来になるまでハイヒールを何度も何度も作り直す。
その間にも、やたらに何でも興味を持つBlue(小島藤子)や、自由に店内をうろつくRed(谷口蘭)などが来店する。
やがて、やっとの思いで完成したハイヒールだったが、再びやってきたYellowが履いてみると片方の足だけサイズが合わない。
次回までには必ず解決すると客に約束したものの、どうしてもうまくいかずに悩むkaiだったが突如その問題が解決するひらめきが訪れる。
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まるで「世にも奇妙な物語」を思わせる語り口。 そしてちょっとゾッとするオチ。
登場人物が4人と少なく、セリフも少ない短編のファンタジーなので、「それだけ?」みたいな感覚で終わるのは否めないですね。
しかし、観終わったその先から色々と考えるのが、映画という欲望にまみれた者の使命。
ただただ受け身で、「それがどうしたの?」で考えることを辞めてはアンドロイドと一緒。 いやそれ以下。
で・・・、この話。 「こだわる」ことって、欲望? そうか。自己満足だもんね。
人間であることを辞めたけど、「欲望」というエラーだけが再出すると、時間に追われてもいないし、死も意識してないのに、一方向にグワーッとなってる様は、じゃあケモノと一緒ですかというとそうではない。
やっぱり人間っぽいのですよな。 人間って大方が「欲望」という成分でできてるのね。
でもここに出てくる自由や好奇心やこだわるといった欲望は決して悪いもんじゃないと思うけど。
        

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「ディストピア パンドラの少女」

ゾンビ映画の大家ジョージ・A・ロメロが亡くなった。 77歳。
ご冥福をお祈りします。
さて、こちらのゾンビ映画ですが・・・
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真菌による感染症のパンデミックが起き、人間が生きた肉を食らう欲望に取りつかれる「ハングリーズ」と化してしまう。
この奇病が世界中に蔓延し、人類が絶滅の危機に瀕しているという近未来。
「ハングリーズ」になってしまうと思考能力が無くなるのだが、感染しているにも関わらず正常な思考能力と感情を持っている子供たちが存在する。
「セカンドチルドレン(二番目の子供たち)」と呼ばれる十数人の子供らは軍の施設に隔離されて、人類を救うためのワクチン開発の実験に利用されようとしていた。
子供たちも全く正常という訳ではない。 常に人肉への欲求は少なからずあり、ちょっとしたきっかけで暴走する危険もはらんでいる。
故に一人ずつ独房に収監され、実験の一環として授業を受ける日々を送っている。
教師のジャスティノー(ジェマ・アータートン)は軍のやり方に反感を覚えながら、毎日自分の授業を楽しみにしている子供たちを愛おしく感じていた。
子供たちの中で特に高い知能を持ち、相手を思いやる優しい心を持ったメラニー(セニア・ナニュア)は、ジャスティノーを慕っていたが、科学者のコールドウェル博士(グレン・クローズ)はメラニーこそが人類の救世主となる可能性を秘めていると確信する。
ある日、安全であったはずの施設がハングリーズに突破され、ジャスティノーとメラニー、コールドウェル博士、パークス軍曹(パディ・コンシダイン)らは脱出して本部の基地を目指すことに。
果たしてメラニーは人類の希望となりうるのか、それとも開けてはならない箱を開けてしまうパンドラなのか・・・・
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凄い形相で追いかけてくるゾンビの群れの恐ろしい事・・・
どれくらいの人類が生き残ってるかは定かではないのですが、その絶望感・終末感の描写たるやなかなか恐いです。
それでも、「ワールド・ウォーZ」や「バイオハザード」っぽい既視感バリバリな作風は、ゾンビ映画の限界かなとも思います。
しっかりと作りこまれているし、先の読めない展開は受けますが、ラストはねえ・・・。 先生、食事とかはどうすんの?
        

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「ヒトラーへの285枚の葉書」

"言いたいことも言えないこんな世の中じゃPOISON"でして、昔の日本もドイツもそうでしたから、それを思えば世の中は良くなりました。 SNSの炎上なんざ可愛いもんです。
ナチス政権下のドイツにおいて、ヒトラー批判を綴ったポストカードを街中にばらまいて静かなる抵抗運動を繰り広げた一組の夫婦。
オットー&エリーゼ・ハンぺル夫妻の反ナチの勇気ある行動は今も語り継がれています。
ヒトラーをとことんディスりまくった葉書は285枚。 逮捕されて処刑されるまで実に2年間もバレずに独裁政権を断罪し続けた、このハンぺル夫妻の逸話を基にしたハンス・ファラダの小説「ベルリンに一人死す」を映画化。
ごく平凡な夫婦がヒトラーに立ち向かった驚くべき実話の衝撃作です。
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軍需工場に勤めるオットー(ブレンダン・グリーソン)と主婦のアンナ(エマ・トンプソン)のクヴァンゲル夫妻。
二人は知識人でもなければ特権階級の人間でもない。 普通の労働階級の普通の夫婦である。
彼らのもとに息子のハンスが戦死したという報せが届く。
アンナは「あなたと戦争と総統のせいよ!」と泣きながら夫に怒りをぶちまけ、オットーもまた募金を拒否するなど静かに怒りを燃やしていた。
やがて夫婦はペンを手に決意を行動に移す。
ヒトラーを批判するメッセージを書いた葉書を公共の場所の至る所に置いていく。 来る日も来る日も。
「総統は私の息子を殺した。あなたの息子も殺されるだろう」
「ヒトラー政権では暴力が正義に勝つ。加担するな。戦争で労働者は殺される」
「自分を信じろ。ヒトラーを信じるな。このカードを次に回せ」
「恐怖が君を支配する。ヒトラーを殺せ。ナチに反対する者は戦争マシーンの砂になれ」


捜査に乗り出したゲシュタポのエッシャリヒ警部(ダニエル・ブリュール)だが、犯人の特定にてこずり、誤認逮捕した男を釈放したことを大佐にとがめられた末に屈辱的な仕打ちを受ける。
結局釈放した無実の男を射殺するしかなかったエッシャリヒは虚無感に襲われるも、尚も執念で犯人の手掛かりを追う。
やがてオットーの些細なミスから捜査は工場にまでおよび・・・
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285枚の葉書のうち、ゲシュタポに通報されなかったのは18枚のみ。
267枚の葉書がバカ正直にも届けられて回収されています。
それもしょうがない時代とはいえ、虚しいものです。 行動を起こした意義はあるんだろうけど。

保身や欺瞞が渦巻いていた時代の、理不尽を象徴するかのような描写も多々。
少々サスペンス寄りながら、一歩引いた視点で事の流れを捉えている半面、ドラマの部分で盛り上がりに欠けるのは難点。
主人公夫婦がドイツ人俳優でない点は気にならないといえば嘘になりますが、ネームヴァリューがある分の安心感はありますね。
エマ・トンプソンのうまいこと!
        

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「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」

前作の「生命の泉」はスピンオフ的ストーリーでしたが、今回は初期の3部作との関連性も増しての原点回帰。
だもんで、「パイカリ」観るのはこれが初めてという方は初期作を観ていないと不利です。
少なくとも「デッドマンズ・チェスト」あたりから観ないとね。

デイヴィ・ジョーンズとの戦いの末に、フライング・ダッチマン号の船長となって、10年に一度しか陸に上がれない呪いを背負うことになったウィル・ターナー(オーランド・ブルーム)。
その息子のヘンリー(ブレントン・スウェイツ)はたくましい青年に成長し、父親の呪いを解くために伝説の秘宝「ポセイドンの槍」を探しています。 これまで金貨や人形など呪いのアイテムが出てきたシリーズも遂に、すべての呪いが解けるアイテムまで登場。 そりゃ海賊王になりたがる奴が多い訳ですな。

さて一方のジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)。
銀行の金庫強奪に失敗し、仲間にも見捨てられた彼は一文なしに。
ラム酒飲みたさに、「北を指さないコンパス」を手放すという、相変わらずのノラ者ですが、これが災いを呼ぶことに。
「北を指さないコンパス」は、持ち主が望んでいるものへと導いてくれるのですが、持ち主に裏切られると、持ち主にとって最大の恐怖を解き放つという力を秘めていました。
可愛さ余って憎さ100倍。 昨日の亭主は明日の敵。 まさに松居一代級の怨念を持つコンパス、恐るべし。

そうして解き放たれたのが、かつて多くの海賊を狩ってきた軍人であり、若き頃のジャック・スパロウにはめられ、死者でもなく生者でもない存在として、魔の三角海域に幽閉されていたサラザール(ハビエル・バルテム)。
とんでもないババを引いたジャックは、ヘンリーが探す「ポセイドンの槍」が自分も必要になってくる。 死神サラザールに立ち向かうために。
サラザールの復活はキャプテン・バルボッサ(ジェフリー・ラッシュ)にとっても穏やかでないこと。 彼もまたさらなる海の力を手に入れるために「ポセイドンの槍」を狙い、奇しくもジャックらと行動を共にするのですが・・・・

サービス精神旺盛な本シリーズの売りは今回も抜かりなし。
猛暑もスカッと吹き飛ばすアトラクション色コテコテのアクションシーンの数々が楽しいのなんの。
そしてストーリーも、キャラクターのバックグラウンドに一歩踏み込んだ因縁話の線を色濃く出しているのが魅力あり。
ジャック・スパロウが三角帽、サーベルやコンパスを持つことになる経緯も描かれ、バルボッサと意外な関係を持つキャラも登場。
そして何より、ウィルとエリザベス(キーラ・ナイトレイ)のシリーズ復帰は嬉しい限り。
アフターエンドロールにチラッとだけ出てきたデイヴィ・ジョーンズですが、これは「ポセイドンの槍」の影響?それともジャックがコンパスを手放した時からすでに?
なんにせよ、次回作で再びキモかっこいいタコオヤジに会えるのは楽しみ。
        

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「ジョン・ウィック:チャプター2」

ラーメン大好きキアヌさん。
さて、新作プロモーションの来日で、ラーメン大好きキアヌさんは今回どこのラーメン屋に出没するのかと、早くもファンは色々と憶測し、あたりを付けたラーメン屋で張り込む者も現れる事態になっていたという。
6月11日に来日したラーメン大好きキアヌさんは、まずは意表をついて寿司屋に飛び込み、ハマチ中心のネタに舌鼓をポンポン鳴らし倒した後、デザートに抹茶アイスをたしなんだという。
ラーメンは来日してから3日後の14日。
赤坂の『九州じゃんがら』で「ごぼんしゃん」の全部のせをビールと共に召し上がったという。
そのあと、ラーメン大好きキアヌさんはなんとサテンで茶をシバいたらしい。
そういう所に行ってみたかったそうだ。
注文したのはアイスカフェオーレとチーズケーキ。 女子か!
以上、ラーメン大好きキアヌさんは意外にもスイーツもイケるというお話でした。 おしまい。
えっ?映画? そうでした。
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2014年にスマッシュヒットを飛ばし、キアヌ・リーブス完全復活をアピールしたアクション映画「ジョン・ウィック」。
愛犬を殺した上に愛車を強奪しやがったマフィアのドラ息子に復讐するために組織ごと壊滅させたスゴ腕の元殺し屋ジョン・ウィック。
続編は前作の物語の5日後から始まる。
かつてジョンが引退する条件として課せられた仕事を手助けしたイタリアンマフィアの大物サンティーノが借りを返してもらおうと仕事を依頼してくる。
自分を差し置いて組織のトップになった姉を殺してくれと。
殺し屋の業界の「誓印」という鉄のルール上、引き受けたジョン。
アッサリと仕事を終えたと思いきや、サンティーノは手のひらを返して「姉殺しの復讐だ」と眠たいことをほざき、ジョンに賞金をかけてニューヨーク中の殺し屋に狙わせるのである。
何もかもがサンティーノの罠だったのだ。
追いつめられたジョンは腹をくくって壮絶な闘いに身を投じていく・・・・
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いやあ、相も変わらずスゲェよ、ガンファイト。
銃+格闘技で「ガン・フー」というのだそうで。
銃がめったらやったら火を噴きまくり、正確無比に次から次へと敵を撃ち殺していくジョン。
だいたいは一人につき2発ブチ込む描写のリアリティもさることながら、観ているこちらの肩がこるほどに動きが途切れないアクションはスケールアップして、転がる死体の数もハンパじゃありません。
キャラクターが多く、話も少々こねくり回してる感は無きにしも非ずですが、まあ楽しめるアクション映画でしょう。
どうやら3作目もありそうです。
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ありがとう、トニ・エルドマン
2017年07月18日

T0021723p.jpgUltra-Father_19 s z
「はぁ~ (ため息)」
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「おやおや、ウルトラのオヤっさんやおまへんか。 ご無沙汰しております」
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「これはこれはヒッポリト星人さん。 毎日毎日暑いですなぁ」
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「さっき、ため息ついてましたけど、どないしはりました?」
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「いやあ、つい最近ね。父と娘の親子愛を描いた映画を観ましてね。 私もいろいろと考えさせられましてね」   
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「ほほぉ、なるほど。 父と娘の関係ってちょっと特別ですさかいね。 いろんなドラマもできるでしょうよ」
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「父親って、娘のことになったら、ちょっとアホになるところがあるでしょ?」
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「まあ確かにね。 子供が生まれる前は『俺は男の子が欲しい』とか言うてても、女の子が生まれたら、溺愛ぶりが異常ですもんな」
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「母親にとっての息子という存在も特別なら、父親にとっての娘というのもまた同じように愛情の質が変わりますからね」
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「仲良くなり過ぎて娘のファザコンが度を過ぎるのも困りもんですけど、逆にサッと父親離れされるのも寂しいですわな」
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「そこですよ。 蝶よ花よと育てて一緒に風呂も入ったのに、年頃になったら『キモい』とか言われるんですよ。 お風呂はまだしも、選択物は別にされるし、何かと言えばウザいだの臭いだの。 男親って悲しいじゃありませんか」
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「そこにきて、カレシとかができようもんなら、たまったもんやないですな」
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「そりゃ娘の幸せが第一です。 第一ですけども、それを願うあまりに父親ってのは愛情の伝え方が不器用になってしまうんです。 父親って大変ですね」
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「さっきから父と娘の関係について熱く語っとるけど・・・一言いわせてもろてもええかな?」
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「なんでしょう?」
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「おまえ・・・・娘おらんやんけ!」
Ultra-Father_19 s ss
「ええっ!」

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

あまりに仕事人間すぎる娘を心配した父親が取るキテレツな行動。
からみ辛い父親がうざい娘。 おかまいなしにつきまとう父親。
一風変わった父娘愛のユニークかつ感動的なドラマを描き、第89回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされるなど多くの賞を獲得したドイツ映画。
監督は「恋愛社会学のススメ」のマーレン・アデ。

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ヴィンフリート・コンラーディ(ペーター・ジモニシェック)
元音楽教師。 妻とは円満離婚し、老犬のヴィリーとアーヘンの一軒家で暮らしている。
メイクをして人をビックリさせるなどの悪ふざけが好きなコドモジジイ。


なんだよ。 コドモジジイで悪かったな。
幾つになったって人生楽しくやりゃあいいじゃねえか。

♪ ピンポ~ン
誰だ、このクソ忙しい時に。 いや、ヒマだけどね。
なんだ、宅配便か。 ご苦労さんだね。 ちょっとだけ待ってくれよ。
おい、弟。 おまえに小包だってよ。

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ハイ、弟で~す。
・・・・なんか言いたそうだね。 まあ空気を読みたまえよ。
この俺に届け物ってか。 分かってるよ。 中身なんだと思う? 爆弾よ、爆弾。
おにぎりじゃねえからな。 マジで爆弾。
そうか、届いたか・・・。 これから信管外さなきゃなんねえんだよな。
俺? 俺っち、爆弾魔。 兄貴からそろそろ辞めろって言われてるけどね。
え?サイン? ハイハイ、ここね。
ねえねえ、驚いた? さっきの兄貴は俺だから。 俺、今変装してんだけどね。
分かってた? そりゃ分かるわね。
バナナ食う?

ケッ。 ノリの悪い奴だぜ。 クスリともウケやしねえ。
変なメイクして、それを見た人のリアクションを見るのは楽しいもんだ。
パーティーとかそんな時にやったってクソつまらん。
“今それする?”みたいな時にやるから面白いんだ。
時々、老人ホームへ行って副業するんだよ。
ビックリさせて一人“片付けたら”50ユーロもらえるんだぜ。 嘘だよ。


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娘のイネスがやってきた。
彼女は今、ルーマニアのブカレストで仕事をしている。
コンサルタント会社で勤めていて、そこそこいい所まで来ているらしい。
そりゃそうだ。 あんだけ働いてりゃあな。

うちにやって来たってのは、実はこの子の誕生日を祝うためだ。
それも前祝いだ。 なかなかドイツに里帰りできないからな。
俺のおふくろをはじめ親戚連中もみんな集まってる。
それなのにイネスと来たら、何度も中座しては外に出てスマホで喋ってる。
自分が主役の誕生パーティーだぞ。 仕事の電話ばっかりしてやがる。
石油会社が相手の難しい仕事だとは言ってたが・・・「しつけをまちがえたな」
冗談も通じないしな、この子は。


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ヴィリーが死んだ。
もう随分といい歳だったからな。
前の晩は、なぜか犬小屋の中で寝たがらないから不思議に思ってたんだが。

うちではピアノ教室もしていたが、たった一人の生徒も来なくなった。
この家の中はいよいよ俺一人になった。
おふくろももう、そう長くはない。

すると、どうにも娘のことが気になってしょうがなくなった。
あの子は大丈夫だろうか。
今の会社でまあまあ成功はするだろう。
だけど、何か大切なものに目を向けることのない、“それでいいのか?”というような人生で終わってしまうように思えてならない。
あの子は強い子だ。 本当に今まで頑張ってきたと思う。
だけど、その反面、必ずや経験するであろう挫折に耐えれるだろうか?
親バカだと分かっていても、ウズウズする気持ちが抑えられん。
とにかく、様子だけでも見に行こう。


Ultra-Father_19 s ss
「分かる。 分かるぞ、その気持ち」
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「いや、分からんでしょ。 娘おらんねんから」 
Ultra-Father_19 s ss
「分かりますよ。 タロウを女の子に置き換えてみたら」
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「気色悪いこと言うな」

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娘のことが心配になったヴィンフリートはブカレストまでひとっ飛び。
イネスの家まで行くのではなく、何のアポもなく、まずは勤め先に出現する。
それも、声をかけることなく、グラサンをかけて、まるっきり「通行人A」に成りきって職場のロビーをうろつくのである。 思いっきり娘の至近距離で。

イネスもさすがに気づき、(うちのオトン、なにやっとんねん!)とドンびく。
元来、冗談のセンスがイマイチ分からない彼女にこんなサプライズは通用しない。
オヤジ、ついに脳に来たかとマジメに戦慄するしかない。

「来るんなら来るって連絡ぐらいしてよ」
「驚いたか? 遊びに来ちゃったよ」

夕方にはアメリカ大使館で財界人を交えたレセプションがある。
例の石油会社の取締役も奥さん同伴で来るので、イネスにとっては接待にかこつけたビジネスチャンスなのだ。
だが、急に来て宿泊先も決めていない父を放ったらかしにすることもできないので、やむなく父をレセプションに同席させることにする。

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こいつ、必死だなあ。
美味しい酒やツマミもあるのに、もっと楽しめばいいじゃないか。
そりゃ接待は大事なんだろうが。
さっきから難しい言葉ばっかりで喋ってるな。 何が楽しい?
どうやら、顧客の石油会社はアウトソーシングか内製化かの選択で迷ってるらしいな。
どうでもいいが、己の会社のことを余所者にお悩み相談しなきゃ決められんのなら、いっそのこと社長も外注したらどうだ?
まあ、そういう腑抜けの経営者ばっかりだから娘の会社も儲かるんだけどな。

娘が何か余計なことを言ったのか、取り引き先のオッサンはちょっとへそを曲げやがった。
子供か、おまえは。
でも、奥さんとショッピングの約束をしたんなら、挽回のチャンスはあるさ。

娘のカタブツな面は異国で働くようになってから一段と強くなったような気がする。
それに、物事の価値を損得だけで決めてるような節もあるのは職業柄か?
自分の会社が得意客になってるショッピングモールの店員に対する女王様みたいな態度はなんだ?
ひっぱたいてやろうかと思ったが、その代わり、「おまえ、ここにいて幸せか?」と聞いてやった。


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奥さんを接待して家に帰ってきたら、また夜も出かけて顧客の夫婦の買い物を案内するのだと言いながら、娘はパソコンとにらめっこをし出した。
御苦労だな。 しんどくないか? しんどいだろ。
夜出かける前に「ちょっとひと眠りするわ」と言うのでそっとしておいた。
本当にそっとしておいたら、そのまま朝になった。
いいかげん起こしたら、時計を見た娘は暴れて泣きだした。
いやあ、あまり気持ち良さそうに寝てたから・・・。
「なんで起こしてくれなかったの! 着信が4回も入っているわ! どうしよう、顧客との約束をすっぽかしちゃったわ!」

なんだか済まない事をしたなあ。
俺もそろそろ帰ることにしよう。 娘のことは気がかりだが。 「心配しないで」
しかし、やっぱり放っとけないなあ。 どうするべきか・・・。


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「オッサン、何をしに来たのやら」
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「いやいや、来た甲斐があるというものだ。 仕事に精を出すのはけっこうだが、この娘、少々ベクトルがおかしくなってる。 それをこの父親が確認できただけでも収穫だ」 
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「でも帰ってしもたけどな」
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「この親父がそのまま大人しく帰ると思うかね?」

maxresdefault o
とあるバーで女子会をしていたイネスの前に出現した、原始人が服を着たような男。
「お嬢さんがた。 シャンパンでもいかがかな?」
ダッさいスーツ、ボサボサのロン毛カツラ、すきっ歯の入れ歯。
イネスは心の中で一発正解を出した。(おまえ、オトンやないかい)

「はじめまして。 トニ・エルドマンです」
イネスは心の中で北斗百烈拳のごとく突っ込んだ。(どこから取ってきた名前やねん。はじめましてやあるかい。帰ったんちゃうんかい。ここで何しとんねん)
「私は人生についてのコンサルティング・コーチををしています」(あんたはただの隠居やろ)
「イオン・ティリアック(70年代に活躍したルーマニアのテニス選手)は私の顧客でしてね。 これから彼と会う約束があるんですよ」(こわいこわい、このオトン何言うとんねん)

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何度も言うが私はトニ・エルドマンだ。
ヴィンフリートなんちゃらとかいう名前ではない。
人生コンサルタントにして、ドイツ大使でもある。
私もいろいろと忙しい身なのだが、少々気になる御婦人がいる。
仕事仕事で一杯一杯になっていて、大事なことが見えていないようだ。
グローバリズムの流れに沿った会社の方針が、自分がやりたい仕事の本心とはズレていることに戸惑いだしている。
香港に栄転できるまでの辛抱だと思ってるのだろうが、果たしてそこまでメンタルがもつかどうかが心配だ。

上司のやり方に反抗しだしたり、同僚と一緒にコカインをスースーやってハメを外しだしたのは傾向としてはいいが、そっちの方向へ行かれると困る。
自分ときっちりと向き合って、いろいろと見つめ直してほしい。
そして成りたかった本当の自分や、本当にやりたかったことをしてほしいのだ。


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「パパったら異常よ!」
そうかもしれんが、おまえこそおかしいぞ。
いや、そろそろ気づいているはずだ。
何かが違うんだと。
ともあれ、アブナイ遊びをしていたオマエは逮捕だ。 コカインなんぞ10年早い。 いや10年経ってもやってはいかん。
そんな悪い子はトニ・エルドマンが許さん。

どうだ、手錠をはめられた気分は。
冗談だよ、そんなにキレなくたって。 おもちゃの手錠なんだし、こんなのはすぐ鍵で・・・あれ?
悪いニュースだ、お嬢さん。 手錠の鍵が一人で歩いてどこかに行ったらしい。
今から仕事? 困ったなあ、これは。
しょうがない、とりあえず出かけよう。 
 
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おまえはいつぞや聞いたな。
「パパにとって生きる意味はなに?」
それはな。 おまえだよ。
おまえが幸せになってくれることが、私の生きている意味だ。

では、おまえにとって生きる意味はなんだ?
おまえは人間なのか?
おまえは元気だと言っているが本当にそうなのか?

手錠を業者に外してもらって、得意先の油田を視察しに行った。
一人の作業員がアッサリとクビにされてるところに出くわした。
代わりはいくらでもいると思ってる合理化主義の会社の人間は頭の中まで単純になっていくんだな。
どいつもこいつも救い難い単細胞だ。 人ひとりの情にまで神経が及ばんのだろう。
こんな奴らが世界を回しているのか。 そりゃ景気も良くなりゃあせんわ。
いいかイネス。 おまえはこういう奴らに手を貸しているんだぞ。 よく見ておけ。

おっと、このトニ・エルドマン、野暮用を思い出したぞ。
パーティーで出会った御婦人にイースターエッグの色塗りを教わる約束だった。
今から行こう。 

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いやあ、すっかり御婦人に世話になってしまったな。
お礼に歌をプレゼントしようじゃないか。
イネス、おまえがなにか歌え。
いや俺はダメだ。 俺が歌ったら環境に悪い。 生態系に影響が出る。

俺がオルガンを弾こう。
おまえの十八番はこれだろ?
ホイットニー・ヒューストンの
「THE GREATEST LOVE OF ALL」だ。

ずっと前に私は決めた もう誰かの陰には隠れないと
失敗しようと成功しようと
私は自分を信じて生きるわ
たとえ私から何かを取り上げられようとも
私の尊厳までは奪えない
だって、今の私の中には何よりも素晴らしい愛があるのだから
私は素晴らしい愛を自分の中に見つけたわ
最も素晴らしい愛を手にするのは簡単よ
自分自身を愛せるようになること
それがこの世で最も素晴らしい愛なのよ
そして、あなたが夢見てきた場所が孤独な場所になってしまっても
愛があなたを強くさせてくれるわ


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「なんて素晴らしい歌なんだ。 『ウルトラの母のバラード』に匹敵する名曲だ」
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「おお、そういえばペギー葉山さんがこの春に亡くなられましたな。 ご冥福お祈り申し上げます」
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「緑のおばさんのシーンが忘れられんなあ」
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「ありがとう、ペギーさん」
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「で?何の話だっけ?」
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「イネスが歌ったホイットニー・ヒューストン」
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「そうだった。 自分を愛することがこの世で最も素晴らしい愛なのだというメッセージの歌を熱唱するイネスの姿が感動的だ」
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「自分を信じて、自分を愛して。 強く生きていくには最も大切なことでおますな」
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「この時からもう彼女はたくさんのことに気がついたはずだ。 自分の生き方を。 この世界の見方と自身への見方をもう一度考え直そうと」

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イネスは会社のスタッフとの交流を兼ねた自分の誕生パーティーを自宅で催す。
しかし、ドレスのファスナーがうまく上げれない・・・ 
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「これは何をしとるんかいの?・・・ああ、ドレスのファスナーをフォークを使って上げようと。 こりゃまたフォークのうまい使い方」
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「いやいや、これできるか? ヘタしたら自分の背中をブスッと刺してしまうぞ」
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「ファスナーの引き手の穴に紐でも通せば簡単でっけどな。 いや。このシーンはそういうことではなくて」
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「その通り。 このキッチキチのドレスは、彼女を縛り付けて窮屈にしていた環境を表している。 自分一人では着れない服こそが、働いてきた世界が自分一人ではどうにもならなかったことをようやく悟ることにつながるのだ」
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「で、その窮屈なものから自分を一旦解放してみて・・・って、ホンマに脱ぐんかい!」
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「これはな、自分をさらけ出して、尚且つそれまであまり目を配らなかった他人のこともちゃんと見ようという意思が出たものだ。 確かに極端すぎるが、そこまでして彼女はがんじがらめになっていた世界から脱皮しようとするのだ」
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「確かにここまでふっきったら何かを悟るでしょうな」
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「『私、お役に立ててます?』って健気に聞く秘書のアンカちゃんのことにも、イネスはようやく心を配ることができる。 自分をハレモノに触るかのように接していた上司も本当は一所懸命サポートしてくれていた。 仕事も人生も窮屈だけど“自分一人では着れない服”なんだ。」
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「その上司のおじさんが最初に訪ねてきた時、イネスがスッポンポンだったから面食らって帰ったのかと思ったら、『一杯飲んできた』と数分後にスッポンポンで再訪問するシーンが爆笑だったけど、オッサン、いいとこあるやないけ。 おっ!なんか毛むくじゃらのバケモンが現れたで!」
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「オオッ!これは! 『ウルトラマン』の第30話に登場した伝説怪獣ウーだな! よおし、今やっつけてやるぞ!」
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「なんと頼もしい。 さすがウルトラの父」
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「まずはゾフィーとセブン。 おまえたち二人がかりで行け!」
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「いや、おまえが行かへんのかい!」
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「こりゃ失敬。 と言うよりもコイツはウーではない。 クケリという名の精霊だ」

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 【クケリ Kukeri】 
ブルガリアで毎年1月~3月に行われる祭りの際に、街中を練り歩く、日本の「なまはげ」に相当する厄除けの精霊。
何世紀も続いている奇祭で、クケリのコスチュームに身を包んだ人々が家を訪れ、五穀豊穣、子孫繁栄を祈ってくれる。
ビジュアルはシュールだが、幸せを運ぶものの象徴として親しまれている。

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「へえ~。 頭が重たそうだなあ。 こんなのをかぶってイネスのところにやってくる人物と言えば・・・」
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「もちろん一人だけだ。 ヴィンフリート、いや、トニ・エルドマンだ」

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のそっと現れたかと思うと、部屋を少しうろついた後、のそっと部屋を出ていったクケリを追いかけたイネス
「パパ!」
何も言葉はいらない。 ただ抱き合うだけでこの親子の心はひとつになっていた。


祖母が亡くなり、葬儀を終えたヴィンフリートイネス
イネスは結局会社を辞めて転職。 シンガポールへ行くという。
二人で祖母の遺品を眺めながらヴィンフリートは静かに語り出す。
「みんな成果ばかりを気にする。 義務に追われてるうちに人生は終わってしまう」

イネスが小さい頃に自転車の練習をしていた姿や、バス停まで迎えに行った時のことを最近はよく思い出すヴィンフリート
「あとで大切さが分かる。 でもその瞬間は分からない」

娘のことを一途に想い、人間解放へと導いた父。
しかしそれは同時に、娘の真の自立と共に、自分自身が子離れしなければならない時が遂に訪れたのだということを父は受け入れようとしていた。
我が子がいよいよ親元から巣立つ、その一抹の寂しさを感じながらも、娘からの感謝の心の声が胸に響いてくる・・・・・
「ありがとう、トニ・エルドマン」
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「ええ話や。 うちに帰ったら、さっそくヒッポリト特製のトニ・エルドマンのブロンズ像を作って拝んだるで」
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「少々常軌を逸した親バカに映るかもしれないが、それだけでなくグローバル社会への問題にもさりげなく目配せしているところが深い」

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「でも、この親父さん、特に何かした? 何かズバッと鋭い名言を吐くとか、仕事に対してナイスなアドバイスを送るとか」
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「いや、そうではない。 ヴィンフリートはただ単に寂しかっただけだ。 父親は昔からあんな風で、娘が大きくなるまでは共に笑いの絶えない日々を過ごしてきたのだろう。 しかし、いつのまにやら娘は朝から晩まで難しい顔をして、イライラと悩みだけ抱えてるような仕事人間になってしまっていた」
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「昔の娘に戻ってほしかったんやなあ」

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「エルドマンがルーマニアの現地の人に『ユーモアを失うな』と言う。 人生は何かと難しいことだらけだが、ユーモアの心を失わなければ自分に自信も持てるし自分を愛することにもつながるのだ」

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「ユーモアを失ってほしくないメッセージとして、奇抜な格好で娘の日常に割り込んできたっちゅうことやな」
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「あんなオジャマ虫のようなキャラクターで場を壊すことにより、娘を一旦クールダウンさせ、客観的な目線を与えたのだ。 一度自分の周りや足元を見てみろと。 そして彼はかつての娘を取り戻したのだ」
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「ホイットニー・ヒューストン、裸のパーティー、クケリなど、思いがけない角度から感動のツボを突いてくるのぉ。 まさにGREATEST LOVE OF ALLに溢れた人情ドラマや」
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「いやあ、もう一回、娘と観てみたい映画だね」

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「だから、おまえに娘おらんて!」
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「おっ?ちょっと待ってくれ。 女房からLINEが来たぞ」
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はよ帰ってきてトイレと風呂の掃除せんかい、ボケ!

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「どうかしはりましたかな? そらそうと、おたくの奥さんは松居一代みたいになってまへんやろな、ワッハッハー」
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「えっ? ああ、うちは円満ですよ~ハハハハ。 ちょっと用事ができたんで失礼させてもらいます~」
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「・・・・どうやら、“恐ろしい事が起きた”ようやな」


「賢人のお言葉」
 
「気が滅入るだって? きみの生活にはユーモアが足りないのかも」
  スヌーピー 
(チャールズ・M・シュルツの漫画より)  

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パトリオット・デイ
2017年07月14日

T0021843p.jpg 昔と比べたら、テロのニュースを見聞きする頻度が明らかに上がっている。
それだけ、いつでもどこでもテロに遭ってもおかしくない状況ということなのだろうが、それでも我々日本人は まだピンとは来ない。
そもそも、日本という国を標的にするほど、テロリストから相手にされてないんじゃないかという、妙な感覚で気を抜いているのも事実である。

テロ云々は別として、日本国内での爆弾による事件とか銃乱射事件というものが、極わずかであるのも、テロに対するリアリティが希薄になる要因の様に思う。
でも、もうそろそろ、いつかは日本でも起きるのではないかという危惧が、以前よりは頭の中にチラつくようにもなった人も少なくはないだろう。

ただし、「自分の行く所に限って」と深く考えないようにしてしまうのも、日本人の感覚として致し方ないのかも知れないが、少なくとも外国に行く時は、遺書でも残しておくぐらいの覚悟はして出かけた方がいい。
そういう時代なのだ、今は。


ボストンマラソン
アメリカの独立戦争開戦の4月19日を「愛国者の日(パトリオット・デイ)」とし、それを記念して1897年に第1回が行われ、昨年で120回目を迎えた歴史あるマラソン大会である。
毎年4月の第三月曜日に行われ、マサチューセッツ州の8つの町を走り抜ける大会で、日本人では瀬古利彦(2回)など計7人の男子が優勝している。

33キロ付近の『心臓破りの丘』は有名だが、その割に好時計が出る。
しかし、コース条件のいくつかが国際陸連の規定に達していないために、最高タイムを出しても「世界記録」には認定されないのだそうだ。

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2013年4月15日。
117回目の開催となったボストンマラソンは、かつてない大惨事となった。
午後2時45分頃。
ボイルストン・ストリートのゴール付近で爆発が起き、その12秒後にゴールから100メートルほど向こうでも爆発が起きる。
その際、沿道で大会を観戦していた3人が死亡。 ランナーを含む183人が重軽傷を負った。

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爆発物は圧力鍋に釘などの金属片を詰めて殺傷力を高めたIED(簡易手製爆弾)。
トップランナーは2時間前に大勢がゴールしていたが、スタートから4時間9分が経過していた時間帯は毎回平均して、市民ランナーが大挙フィニッシュする時間帯であり、そこを狙われたというのも怖ろしい話である。

日本でも大きく報道されたが、事件発生時の生々しい映像には、淡々とマラソンを続けているランナーもいた様子が印象深い。
それほど、警察も多少の混乱はあったのだろう。
マラソンの中止も即時という訳にはいかず、事件を知らない後方のランナーは現場に近づくに連れ、何があったのかと不安になりながらも走っていた。

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現場はあちこちで悲鳴やうめき声であふれ、爆発で吹き飛んだ肉体の一部が所々に転がっているなど、凄惨を極めた。
それでも、警官をはじめ、無事に済んだ一般の人々が負傷者を助けようとすぐさま動き、「自分に今できること」に必死になっているニュース映像が独特の感慨をもたらした。

容疑者はチェチェン移民の兄弟、タメルラン・ツァルナエフ(26歳)とジョハル・ツァルナエフ(19歳)。
4月19日。 兄のタメルランは警察との銃撃戦の末に死亡し、弟のジョハルは同日の夜に民家の裏庭に隠れていたところを逮捕された。
事件発生からわずか4日後。 それも奇しくも「パトリオット・デイ」での解決にボストン市民は大いに沸いた。

一般市民からの情報提供が多数寄せられたことがスピード解決につながったことは警察関係者も認めており、憎むべきテロに対してボストン市民が一丸となって協力した「ボストン ストロング」のスピリットは全米のみならず世界中に共感をもたらした。


あの事件から4年。
解決までの4日間に何が起きていたのか。
警察は、市民は、犯人はどう行動したのか。
「ローン・サバイバー」、「バーニング・オーシャン」の監督ピーター・バーグとマーク・ウォールバーグが3たびタッグを組んで描かれる、苦難と団結に揺れたボストンの知られざる4日間の感動の実話。

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2013年4月15日の朝。
ボストン警察のトミー・サンダース(マーク・ウォールバーグ)の気分はすぐれなかった。
彼は殺人課の私服刑事であるが、この日は着たくもない制服を着せられて、ボストンマラソンの警備に駆り出されていた。

カッとなるとつい、手ではなく足の方が先に出る。
仕事はできる男だが、上司と揉めるとその足クセの悪さが出て、何かと物を蹴飛ばす態度のペナルティとして、彼は久しぶりの制服に袖を通しているのだった。
前日の晩も、ある手配犯の家に押し入る際、ドアを蹴破ったら打ちどころが悪かった。
気分はもちろんだが、ゆうべからズキズキする膝の痛みは全く治らない。
最悪の気分でトミーは4月15日を迎えたのだった。

趣味は野球カードのコレクション。
日々の激務も妻のキャロル(ミシェル・モナハン)の笑顔が癒してくれる。
一年に一度のイベントがあるこの日は、せっかくだからキャロルにもマラソンの見物を楽しんでもらおうと、トミーは自分の持ち場に近いゴール付近に妻を呼んでいた。

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マーク・ウォールバーグが演じるトミー・サンダースに特定のモデルはなく、数人の実在の警官を混ぜ合わせた人物で、妻のキャロルも架空の人物である。
これは現場に携わった実際のボストンの警官たちの想いや行動をひとくくりに体現したキャラクターであり、キャロルも警官たちを支えた家族の象徴というキャラと解釈していただきたい。

午後2時45分。
ゴール付近で二度の爆発が起こり、一瞬にして街は地獄絵図と化す。
至る所に血だらけの人が倒れており、大人も子供も泣き叫び右往左往していた。
どうにか無線で指示を送りながら、トミーキャロルを探す。

幸いなことに妻は無事だった。
妻を帰宅させたトミーは、FBIの指示のもと、病院に搬送された負傷者への聞き込みを一晩中続けた。
ヘトヘトになって翌朝に帰宅すると、親戚連中から質問攻めに遭う。
そんな喧騒を強引にさえぎって妻と抱擁したトミーは、今までこらえていたものが溢れだすのを抑えられなかった。
「おまえを呼んだ俺をうらまないでくれ・・・」
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映画は、トミーの行動を中心に、FBI、地元警察、被害者、犯人など、様々な人物の4日間が並行して描かれる。
ここでは「捜査の推移」・「犯人の行動」・「被害者のドラマ」と大まかに分けて語っていこう。

やがて見えてくるはずだ。
この物語が警察の追跡アクションなどという単純なものではなく、愛が支える人々の強い心を讃えた感動の記録であることを。


★ 【ボストンの4日間・・・捜査】
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FBIボストン支部特別補佐官リック・デローリエ(ケヴィン・ベーコン)。
現場に足を踏み入れ、想像以上の凄惨さに愕然としながらも、デローリエは悪魔を追い詰めるための目を凝らす。

爆発付近の現場に飛び散った金属片からテロと断定せざるを得ない。
パトリック州知事(マイケル・ビーチ)やデイヴィス警視総監(ジョン・グッドマン)はイキり立つ。 そりゃそうだろう。 これがテロでなくてなんだと。

デローリエは色んな意味でクールだった。
「テロ」という言葉は予想してる以上に重いのだ。
テロが起きたと大騒ぎするだけで株価にも影響が出るし、容疑者も断定されないうちに大衆がイスラム教徒のせいにしだすと、また余計な軋轢を生む。
とは言っても、これがどこぞの頭のおかしな奴が短絡的に行った一犯罪などではないことも明らかだった。
用意周到に計画が練られ、強い憎悪を剥き出しにして、一人でも多くの人を殺そうという意思が現場に残っていた。
最終的にデローリエもテロと断定するまでには、さほどの時間は要しなかった。

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ボストンにやって来る客船すべての停泊港であるブラックファルコン・クルーズ・ターミナルの空き倉庫に捜査本部が設置される。
床がラインで区画され、実寸の現場のマップが作られる。
ところどころに並べられた紙袋。 それは被害者の遺留品。 異様な光景である。
その時、どこに誰がいたかが可能な限り再現されていた。

とにかくまずは情報が必要だった。
現場の通りにある街頭の監視カメラや、店舗先の防犯カメラの映像は十分すぎるほどあった。
しかし、その映像の中から怪しい人物を絞り込むには、やはり目撃情報がまずは取っ掛かりとなるはずだが、市民から寄せられた大量のメールで回線はアッという間にパンクした。

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4月16日。 
単独犯の可能性は低いとデローリエは踏んでいた。
そのうち、ビデオを食い入るようにチェックしていた捜査員の一人が、不審な動きをしている人物を特定する。
爆発の5分前、マラソンには脇目もふらず、ゴール地点から逆方向へと歩いていく「白い帽子の男」。
それは一瞬だけだった。 その後の足取りは?
複数場所のカメラの映像はたっぷりとあるが、「白い帽子の男」は次にどのカメラに映っているのか。

そこで付近のことに詳しいトミーが協力を求められる。
トミーは完璧に「白い帽子の男」の行動を予測し、足取りを確定。
「白い帽子の男」が映っているカメラの映像がどんどん発見されていく。
やがて、もうひとり。 サングラスをかけた「黒い帽子の男」の存在も浮上する。

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二人の男の画像は鮮明だが、当初は要注意人物のリストには見当たらない人物だった。
写真を公開すべきだとデイヴィス警視総監は迫り、トミーも同意見だった。
だが、ここでもデローリエは慎重を期す。
「もし無実でイスラム教徒だったら大変なことになる」

しかし、事件から3日後の4月18日。
その写真がマスコミに流出した。
街ではそろそろデマも流れだしている。
危険な状態だと判断したデローリエはメディアが報じる前に、写真の公開に踏み切った。

このことが幸か不幸か、事件は急展開を迎える。
捜査の進展の早さに焦った容疑者が新たな動きを見せたのである。
マサチューセッツ工科大学の学内警察の警官を射殺して銃を奪い、その後、中国移民の青年を車ごと拉致して逃走。
人質になっていた青年はガソリンスタンドでスキをついて逃げ、「マラソンの事件の犯人だと名乗っている男たちが今度はニューヨークでテロを行う気だ」と通報してきたのだ。

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日付は4月19日になっていた。
ボストンの西に隣接している街ウォータータウン。
手配中の車を発見した警察と、二人の容疑者との激しい銃撃戦が繰り広げられ、閑静なローレルストリートは戦場さながらの様相を呈していく。
容疑者は銃だけでなくパイプ爆弾も大量に所持しており、警官たちは思わぬ苦戦を強いられる。

ウォータータウン署の巡査部長、ジェフ・ピュジリーズ(J・K・シモンズ)。
34年間、この街の治安を見守ってきた大ベテランの警官は、出勤前に近所のダンキンドーナツに寄って、奥さんのためにコーヒーを買うのが日課の優しい男である。
警察無線を聴いて駆けつけたピュジリーズは、容疑者たちの裏手に回って応戦。
見事、容疑者の一人を負傷させたが、その男はもう一人の容疑者の乗る車に轢かれて間もlなく死亡した。

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死んだ容疑者の指紋から割り出されたタメルラン・ツァルナエフという人物は結局要注意人物としてリストアップされていたことが判明。
逃走中のもう一人の容疑者は弟のジョハル・ツァルナエフ
タメルランの妻キャサリン・ラッセルも共謀の容疑で拘束された。

4月19日のパトリオット・デイはまもなく夕暮れを迎えようとしていた頃、ウォータータウンの一件の民家から通報が入る。
裏庭に置いてあるボートに誰かが隠れているような気配がするのだと。
駆け付けた警官隊がボートを包囲。 外ではトミーもことの成行きを見守っていた。
威嚇射撃の後、ジョハル・ツァルナエフがボートから姿を現して投降した。

こうして、トミー・サンダースにとって最も忘れ難い4日間は終わった。


★ 【ボストンの4日間・・・兄弟】
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テロを実行した兄弟。 こちらは実際の写真。
左が弟のジョハル・ツァルナエフ。 右が兄のタメルラン・ツァルナエフ

2人とも2002年ごろにチェチェンから難民としてアメリカに移民してきた。
当時兄は15歳、弟は8歳だった。
共にアメリカでの永住権を取得している。

兄のタメルランはコミュニティ・カレッジに在籍し、ボクサーになることを目指していたが中退している。
移民してきた時が微妙な年齢で、言葉の面で苦労したのか友人はほとんどいなかった。
その挫折がイスラム過激主義に傾倒していくきっかけだったとも言われている。
2009年には女性を殴って逮捕されており、その時からFBIが彼をマークしていた。
2010年にアメリカ人女性のキャサリン・ラッセルと結婚し、女児をもうけている。

弟のジョハルは兄とは対照的に社交的で友人も多かった。
マサチューセッツ・ダートマス大学で口腔学を学ぶ医者志望の青年はクラスメイトからも「明るくて面白いやつ」と評されたが、兄と一緒にいる時は一転して大人しくしていたという。

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4月19日の朝。
自宅で淡々と準備を行う兄弟の姿は、ピリピリと緊張する訳でもなく、もちろん明るくリラックスしている風でもない。
通勤前のサラリーマンのように全くのフラットなのだ。
兄の妻も、娘を抱っこしながら、二人が圧力鍋をリュックに詰めているところを無表情で見守っている。

彼らの覚悟は相当なレベルである。
一つの物事に本気で人生を賭けたら、人間はここまで達観できるということか。
失敗するかもなどという不安は微塵も見せないし、自分たちのやることがどれほど怖ろしい事かは理解してても、それをやって当然、やらなければならないという義務感が最高度のレベルにある。

テロの実行後、帰宅して観たニュースで、死者の数が思ったほどではなかったのか、弟が言い放つ言葉は寒気がする。
「もっと上の位置で爆発させればよかった」
本当に人間なのか、おまえは。

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事件からわずか3日後で、自分たちの当日の行動が特定され、写真まで公開されたことに兄弟は驚く。
身元までは判明してないらしいが、そこまで分かるのも時間の問題だろう。
もう少し、ほとぼりが冷めてから次回はニューヨークでテロを起こす計画だったが、こうなれば捕まる前に一日でも早く実行に移そうと兄弟は動く。

しかし、その焦りが逆に行き当たりバッタリな行動にならざるを得なくなる結果となる。
マサチューセッツ工科大学の構内で巡回していたパトカーを襲い、警官から銃を奪おうとするが、予想以上の抵抗に遭ってやむなく射殺。
その直後に、停まっていたベンツのSUVに押し掛けて、乗ってるアジア人風の青年に銃を突きつける。
青年も乗せたまま車を奪った兄弟は西を目指す。

ボストンマラソンのテロ事件が自分たちの仕業であることや、これからニューヨークでもテロを起こすことをタメルランは青年に向かって吹聴する。
「車はあげるから解放してくれ」と縮こまっているアジア人はどうせ逃げる勇気もないだろうと彼らはタカをくくっていた。
ガソリンスタンドで給油する間、ジョハルに買い物をさせて待っていたタメルランはすっかり油断していた。
一瞬のすきを突いて逃げた青年に店に駆け込まれては、それ以上深追いはできない。

「おまえがグズグズ買い物をしてるからだ!」
「兄貴がちゃんと見張ってないからだろ!」
人生が思い通りに行かないのは、チェチェンに住んでたガキの時代から分かっているはずなのに、兄弟同士でつまらない罵り合いをしながらタメルランは自分たちが少しづつ追いつめられているのを覚悟するのだった。

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ウォータータウンで警察との銃撃戦となる。
後先のことは考えてはいられない。
ありったけの爆弾を使い切ってでも逃げ延びるつもりである半面、タメルランはその時が来たらと腹をくくっていた。

一人の警官と撃ち合って負傷したタメルランは弟を逃がす。
組み伏せられたていたタメルランだが、弟の乗った車が警官たちに向かって突入しようとした際に轢かれてしまい、そのまま死亡した。

そして弟のジョハルも車を捨て、ある民家の裏庭のボートに身を潜めていたのだが・・・

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タメルラン・ツァルナエフの妻、キャサリン・ラッセル(メリッサ・ブノワ)。
ロードアイランド出身のアメリカ人である。

ボストンのサフォーク大学在学中に、タメルランと2010年に結婚。 妊娠したことで大学を中退している。
その際にイスラム教に改宗し、ヒジャブをまとうようになった。
映画では明らかに夫と義弟がテロを起こしたことを確実に感知しているが、実際の彼女は「全く知らなかった」と証言し、「捜査にも協力する」と述べている。

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なんと「権利通告なし」で当局に連行されたキャサリンを取り調べる「謎の女」。
一応「ヴェロニカ」という役名は付いている。

FBIでもCIAでもない。 突然やってきて、「私にまかせなさい」と言わんばかりに振る舞っても、デローリエをはじめ誰も何も言えない。
キャサリンと正対し、「爆弾は他にもあるのか」という尋問を執拗に繰り返すが、キャサリンも頑として答えない。
「質問に答えること。 それ以外は許さない」
キャサリンが弁護士を要求しても、「あなたにその権利はない」などと、この謎のオバチャンは恐い事を言い出すのだ。

「あなたの娘はいつか知るわ。親がモンスターであることを」
「シリアではもっとたくさんの人が死んでるわ。 貧困に苦しんでる子供たちの苦しみなどあなたには分からないでしょうね」
尋問官もある意味すごいモンスターであるが、キャサリン腹のくくり方も相当だ。

尋問官はヒジャブをまとっているが、実はこれはポーズで、彼女はイスラムとは無関係。
“おまえたちのやったことは同門の人間でも許さない”という意思を見せて揺さぶったつもりなのだろうか。
取調室を出た途端、彼女はヒジャブを脱ぎ捨てる。

2008年にオバマ大統領がテロ対策の一つとして新設した「HIG」(重要拘束者尋問グル―プ)。
正体がはっきりしないままで終わる謎の女はおそらく、「HIG」からの刺客。
目的のためには人権さえも無視するやり方は本当だろうか。
キャサリンは最後まで質問に答えなかったが、尋問官はこのやり取りだけで、背後に大きな組織が関与はしていないと確信する。


★ 【ボストンの4日間・・・愛は勝つ】
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ボストンマラソンの爆弾テロでは2人の女性と男の子一人が亡くなっている。
マサチューセッツ州のレストラン経営者クリスティー・キャンベルさん(29歳)。
ボストン大学大学院の中国人留学生ルー・リンチーさん(23歳)。
家族と5人で観戦に来ていたマーティン・リチャード君(8歳)。

映画では名前は出てこないが、8歳の男の子が犠牲となって、現場に横たわる遺体に白いシーツをかぶせられるのだが、すぐに動かすことができずに、なんと4時間もそのままにされる。
遺体に残った破片も重要な証拠であるために、おいそれと遺体を移動させることができないのだ。
こんなことがあったなんて、傷ましいにもほどがある。

シーツがかぶせられた小さな亡骸を見守るために、一人の警官がそばでじっとたたずむ姿がたまらない。
この警官のおじさんの心中いかばかりかと察する。
彼がそばにいてくれたからマーティン君の魂は寂しい思いをしなくて済んだと思いたい。
やっと遺体が運び出される時、警官が敬礼をするシーンに胸が熱い。

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マサチューセッツ工科大学の学内警備警官ショーン・コリアー巡査(ジェイク・ピッキング)。
彼も事件の犠牲者である。 享年26歳。

前から気になっていたアジア人の女学生に声をかけて、コンサートに行く約束をしたばかりだった。
構内をパトカーで巡回中、ジョハル・ツァルナエフが襲いかかり銃を奪おうとする。
コリアー巡査は最期の最期まで抵抗し、もみ合った末にジョハルに射殺される。

サマービルの警察官になることを目指していた彼の、最期まで正義の心で立ち向かった勇気を讃える声は多い。

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事件解決の隠れたヒーロー、ダン・マン(ジミー・O・ヤン)。
中国からの移民の彼は、ベンツの黒のSUVを購入したばかりで、15日の朝は中国にいる両親にビデオチャットで車を自慢していた。

4月18日の夜9時過ぎ。
ツァルナエフ兄弟に銃で脅され、人質になったまま車を乗っ取られる。
9.11についてどう思うかとか聞かれたり、ボストンマラソンのテロは俺たちがやった、これからニューヨークへ行って同じことをするなどとと、二人の男たちがベラベラと激ヤバなことを言っている。
さぞや生きた心地はしなかっただろう。

買ったばかりのピカピカの高級車なのに、「車はあげるから解放してくれ」は本音だろう。
だが、顔を見ている以上は絶対自分がこのまま帰されるはずがないという危機は承知していた。
冷静に大胆に。 よくぞ逃げたと思うが、うっかりしていたタメルランの兄のボンクラさが幸いしたと言えよう。

ダン・マンとは対照的なのが、大学のジョハルのルームメイトたち。
ジョハルが爆弾を作っているのでは?と思わせる物を発見しても通報せず、彼らは後に捜査妨害で逮捕されている。
バカどもめ。

無題 c 
183人の負傷者のうち、手足の切断を余儀なくされた重傷者は少なくとも10人いると言われている。

パトリック・ダウンズ(クリストファー・オシー)とジェシカ・ケンスキー(レイチェル・ブロズナハン)は事件の7ヶ月前に結婚したばかりだった。
ボストン・レッドソックスの発音について、「レッドソークスだよ」 「いや、ソックスでしょ」という微笑ましい問答をしてマラソン観戦に出かけ、二人は悲劇に巻き込まれる。 ちなみにコテコテのボストン人は「ソークス」と発音するのだそうな。

病院に運び込まれた二人は共に足のケガの状態がひどく、やむなく切断の措置が取られる。
命は助かったが、意識を失っている間にともに左足を失った夫婦は、目を覚ました時、足のことよりも、愛する人を失わなかったことに安堵して互いに微笑みあった。

それから一年後、二人はボストンマラソンのハンドサイクル部門に出場して完走。
この映画の製作中の2016年にはパトリックさんは義足でボストンマラソンに出場し、見事完走する。
3年前に怖ろしい体験をした場所で、妻のジェシカさんが夫を出迎えて抱き合う実際の映像がラストに出てくる。
この不屈の夫婦の姿こそ、愛が悪に勝った瞬間である。
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まるでハリウッド版「踊る大捜査線」のようなクライムサスペンスの語り口と並行し、警官や市民がいかに強い心でこのテロの脅威に向き合ったかが描かれる。
容疑者確保に全力を挙げた捜査機関の人々。 惜しみなく情報を提供した市民の協力。 その他にも亡くなった人も手足を失った人もみんながヒーローであると映画は讃えている。

物語から強いメッセージとして感じ取れるのは、私たち一人一人に「愛」というパワーがあるということだ。
爆弾で世界を変えれると思っている奴らがこの世には多くいる。
それで何が変わったかを振り返ることもしない癖にだ。
私たちは、人々からかけがえのないものを奪う悪魔と一緒の目線に降りてはならない。
私たちに爆弾というパワーは必要ない。 「愛」という武器をハートの中にすでに持っているからだ。

大国の親方は一口に「テロとの戦い」と言う。 彼らは彼らだ。 今さら、とやかくは言わない。
最初に書いたことと少々矛盾するかもしれないが、私たちにできる戦いは、「恐れない」ということではないか。
爆弾の1個や2個ぐらいで「おまえたちには何かを変えれる力など、これっぽっちもないぞ」ということを見せつけてやるのが、私たちのする「テロとの戦い」だとこの頃は強く思う。
 
難しい理想論なのは承知の上。 死んでしまえばそれまでだしね。 戦いだもの。
だが、大切な人を失ったり、手足がなくなろうとも、またそれらに苦しむ人たちと共に、私たちは支え合い、励まし合い、何があろうとこの世界は素晴しいのだと誇れる心で立ち続けるのだ。
少なくともテロリストに対して「もう勘弁して下さい」と許しを乞うたり、彼らの主張に耳を貸すことなど言語道断。
「テロなんかありましたっけ?」と、とぼけてみせるぐらい完無視してやればいい。
人を傷つけるよりも、私たちは愛で世界を変えて見せよう。
テロに屈しない強き心と愛。 平和を愛する者なら誰にもあるパワーだ。

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クライマックスでトミーが絞り出すように語るセリフが印象深い。

目の中に善と悪の戦いが宿っている
悪魔に打ち勝つ唯一の武器が愛です
悪魔は愛を奪えない
愛の力で戦うんです そうすれば負けない



無題 b 
当時まだ現役だったボストン・レッドソックスの“ビッグ・パピ”ことデヴィッド・オルティスが、フェンウェイ・パークでの追悼セレモニーでスピーチして市民を鼓舞した映像も登場。 放送禁止用語入りで。 字幕ではどうだったかね?
“fucking”というワードはこの場合、あえて「クソ素晴らしい」という表現でいいのでは。

「俺たちのクソ素晴らしい街だ。 でも誰にも自由は奪えやしないぜ。 これからも強くあれ!」

なんだか、ボストンが好きになりそうだ。

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これは「LIFE誌」の表紙にもなった実際の写真。
3歳のレオ・ウールフェンデン君は、お父さんのスティーヴ・ウールフェンデンさんと観戦に来ていた。
マラソンに出場していたお母さんのアンバーさんを応援していたのだ。
死傷者が多数出た場所にいたにもかかわらず、いたいけな坊やは頭のかすり傷で済んだ。
だが、事件発生直後の混乱により、警官に保護されたレオ君は、大怪我を負って病院に搬送されたお父さんと離れ離れになってしまう。

スティーヴさんは左足を失った。 だが自分の足のことよりも、行方の分からなくなった息子が気が気でならない。
負傷者に聴き込みに来ていたトミー「息子を探してくれ」と頼む。
そして4月19日の再会のシーンで、これ以上ないレオ君の笑みに私たちは救われる。


今回の「賢人のお言葉」は、レオ君のお父さんのコメントを拝借しよう。
 「私は未来が明るいと楽観しているよ。 息子のレオが大人になり、この世界を好奇心とユーモアでもって見てくれるよう望んでいる」
 スティーヴ・ウールフェンデン

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他にもこれ観ました  ~6月編(下)
2017年07月09日

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「20センチュリー・ウーマン」

「人生はビギナーズ」のマイク・ミルズ監督の最新作は、これまた蒸し暑さを忘れるような傑作。
1979年夏のサンタバーバラを舞台に、大恐慌時代生まれの母親と、その息子、そして2人の女性が織りなす家族ドラマ。


ドロシア(アネット・ベニング)
1924年生まれ。 15歳の一人息子がいるシングルマザー。
自立心旺盛で自分の失敗を認めない大恐慌世代らしき強い女性。
毎朝息子と一緒に株価チェック。 「他のタバコより健康的」という理由でセーラムを大量に吸いまくる。

ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)
ドロシアの一人息子、15歳。 1964年生まれのいわゆる"ジェネレーションX"。
母親に反発するかのようにパンクロックを聴き、ライブハウスにもよく顔を出す。


アビー(グレタ・ガーウィグ)
1955年生まれの24歳。
ニューヨークで写真家を目指していたが、子宮頸がんを患い、サンタバーバラに戻ってきてドロシアの家で間借り中。
日々の出来事を日記代わりに撮影するのが趣味。


ジュリー(エル・ファニング)
ジェイミーとは2つ年上の幼なじみで近所に住んでいる。
ヘビースモーカーで、ドラッグやセックスの経験も豊富。
家族に馴染めず、夜な夜なジェイミーの部屋に転がり込むが、彼とは絶対セックスはしない。

ウィリアム(ビリー・クラダップ)
元ヒッピーで年齢不詳の便利屋兼居候。
車も家も修理する、DIYなら任せろのオヤジだが、80年代を目前にして自分の進むべき道が分からない。

ドロシアは最近、息子のことがよく分からない。
反抗期なのか昔のようには接してくれないし、演奏が下手なパンクロックを聴いてるし、友だちと「気絶ごっこ」をして死にかけるし、どうも将来のことが心配だ。
そこでドロシアは、アビーとジュリーに息子の助けになってやってほしいと依頼するのだが・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
自分の人生に何ひとつ失敗はないと自負しつつも、反抗期の盛りになってきた息子との距離が開いていくに連れ、むくむくとわき上がる孤独感と、息子には自分の様になってほしくないという敗北感に苛まれながら、自分なりの子離れに奮闘するオカン。
この、かっこかわいいヒロイン役を演じるアネット・ベニングの一世一代の名演はニュース物。 彼女を観てるだけで感動できます。
グレタ・ガーウィグもエルファニ嬢も非常に難しい役をこなしていますが、それ以上にベニングの凄さが一枚上。
劇中、大層な出来事は起こりませんので、どこが面白いかという説明が難しいのですが、そこかしこにモンタージュでブッ込まれる、オフビートなカルチャーのショットがツボに来ますね。
燃えるフォード・ギャラクシー・・・、ジミー・カーター・・・、ザ・レインコーツ・・・、妊娠検査薬・・・、つがいの鳥・・・
音楽の使い方もうまい。 ところどころハッとする美しい映像や、しみじみとさせられる人間描写がとにかく巧み。
アビーが男たちに「「生理って言ってみて」とフリまくるシーンが気に入りました。

        

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「怪物はささやく」

イギリスの児童文学の最高賞であるカーネギー賞を受賞したファンタジー小説の映画化。
監督は「インポッシブル」のJ.A.バヨナ。
予告編とか観てても「BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」っぽいようで、これは危険なにおいがすると思ってましたが・・・・・
いやあ・・・泣いちゃいましたねえ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
真夜中の12時7分。
コナー少年が病気の母と暮らしている家の窓から見える丘の上の木が動き出したかと思うと、それは巨大な怪物となって少年のもとにやってくる。
怪物はコナーに言う。
「3つの物語を聞かせるから、おまえが4つ目を話せ。 その物語こそ、おまえが隠している真実だ」
そして次の夜、そのまた次の夜と、12時7分に現れては物語を語り出す怪物。
◆ ある王国の王子と、魔女ではないかと噂された王妃の物語・・・
◆ 時代遅れの調薬師と彼を廃業に追い込んだ牧師の物語・・・
◆ 誰からも存在を認められずに透明人間として扱われた男の物語・・・
それらの物語は、必ずしも物事が単純ではなく矛盾に満ちているものであることが語られていた。
意外な結末だらけの物語に納得できないコナー。 しかも3つ目の物語は彼自身の物語でもあった。
やがて来る、コナーが語らねばならない真実の物語とは・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この映画を観た時はまだ市川海老蔵夫人の麻央さんはまだ御存命だった。
こうして感想文を書いている今は、亡くなられて2週間経つのだが、この映画を思い起こすと、どうしても残された2人のお子さんのことが頭をよぎる。
親が子より先に逝くのはだいたい普通だけど、まだ幼い子が親の死を経験するという傷ましさは筆舌に尽くし難い。
歌舞伎の稽古に励む勸玄君の胸中と、この映画で描かれていた主人公の葛藤とはまた違うけれども、病に苦しむ親を前に何もしてやれない辛さにもがくコナー少年の物語がまた、さらにじんわりと染みてくる。
少年にとっての"怪物"の出現は何を意味するのか。 どうして時間が12時7分なのか。 その真実が明かされ、少年が素直な気持ちですべてを受け入れた時の感動に加えて、さらにラストでもう一仕掛け。
「ファンタジー」というジャンルにくくるにはもったいない力作です。

        

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「逆行」

キーファー・サザーランドにはロッシフという腹違いの弟がいますが、彼も俳優をやってまして細々と頑張っています。
そのロッシフ・サザーランドがなかなかいい仕事をしました。 それがこの映画。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
東南アジアのラオスでNGOの医療活動に励むアメリカ人医師のジョン・レイク。
医師としての責任感に熱くなりすぎる面があるジョンを心配した上司は、強引に2週間の休暇を取らせる。
渋々休暇を受け入れたジョンはリゾート地のコーン島へ行き、その夜、バーで一杯飲んでいた。
オーストラリア人らしい白人の客がやたら浮かれていてうるさいぐらいだった。
けっこう酔っぱらったジョンは、帰り道の途中で、さっきのオーストラリア人が若い女を暴行している現場に出くわす。
「何をしたんだ!」と加害者の男に詰め寄るも、逆に一発殴られたジョンはついカッとなってしまった。
気がつけば男は川辺でぐったりと倒れたまま死んでいた。 被害者の女性はジョンのことを暴行魔と勘違いして走り去っていった。
人を死なせてしまったという事実に恐怖したジョンは、一刻も早くホテルから立ち去ろうとするが、警察の動きも速い。 死んだ男はオーストラリアの議員の息子であり、その分、警察は躍起になっているのだった。。
顔にアザができているし、こぶしにもケガを負っている。 事情を聴かれてもうまい言い訳ができないジョンにかけられた疑いが強まり、たまらず逃亡した彼は島から脱出する。
国際指名手配されたジョンは、とにかく犯人を挙げたいラオス警察の追跡から身を潜めながら、隣国のタイを経由してアメリカに帰国することを目論むのだが・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アクションというほどではないですが、勝手が違う異国での逃亡劇はなかなか手に汗握ります。
それでも、言葉が通じない異国で裁かれる恐怖は分かるけれども、やってしまったことは事実。
やっぱりアタフタと逃げ隠れする主人公のカッコ悪さと往生際の悪さがどうにも受け付けません。 いや、映画としては面白い作品なんですがね。
「がんばれ!逃げ切れ!」と応援しながら観る観客はいないでしょう。 「おまえ、本当にそれでいいのか?」と誰もが問いかけるはずです。
この「逆行」する男が遂に逃げ切れる寸前まで行くのですが、新聞に載ったある衝撃の記事を見て、彼は再び「逆行」するのです。
このラストはある意味救われますね。 そんな正義感が残ってたんなら、最初っから自首せえよとは思いますが。
        

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「ラプチャー ―破裂―」

人には「嫌いなもの」というのがあります。
高所、閉所、先端、食べ物、動物・・・・
この「嫌いなもの」を無抵抗の状態でとことんまで与えられたら人間はどうなるか?
遺伝子コードが破裂するんだそうです。 
ハァ? つまりどうなるかというとですね・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
シングルマザーのレネー(ノオミ・ラパス)はとにかく蜘蛛が嫌い。
洗面所に蜘蛛が出ただけで絶叫し、12歳の息子に追い払ってもらうまで何もできない。
そんな彼女を何者かが尾けていた。 あらかじめ車のタイヤがパンクするように仕掛けられており、レネーが息子を別れた夫のもとへと預けた帰りに車がパンク。
修理しようとするレネーに、男たちが近づいて手助けを装いながら突然彼女を拉致する。
気がつくと、どこかの施設の中で、レネーはストレッチャーに拘束されていた。
部屋に怪しい男女が入れ替わり立ち替わり・・・
どうやら他にも何人かが拉致されており、被験者の「嫌いなもの」を使った実験が行われてるらしい。
やがて実験者たちが驚愕の正体を見せ始め、レネーには蜘蛛攻めが待ち受ける。
やがてレネーの身体に変化が・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
早い話が「宇宙人の侵略」もの。
この映画によると、「G10-12X」という遺伝子コードを持つ人間がまれにいるらしい。
ある薬を投与した上で、「嫌いなもの」で攻め倒すと、遺伝子コードが「破裂」し、その人間は新しい生命体に生まれ変わる。
そんなアホなぁ。
蜘蛛嫌いの人にはともかくも、想像してたほどのグロさは皆無で拍子抜け。 ツッコミどころも多いです。
一体何が起こっているのか、この先どうなるのかの興味はグイグイ来ますが。
ノオミ・ラパスをはじめ、「ファンタスティック・フォー」のザ・シング役でおなじみのマイケル・チクリス、マイク・リー作品の常連のレスリー・マンヴィルなど、キャスティングは低予算映画とは思えないほどの気合。
        

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「22年目の告白 - 私が殺人犯です -」

1995年に東京で起きた連続絞殺事件。
5人の命が奪われたこの事件は警察の必死の捜査にもかかわらず、2010年に時効が成立してしまう。
それから7年後。
「はじめまして。 私が殺人犯です」
突然、マスコミの前に姿を現した男、曾根崎雅人(藤原竜也)。
22年前に日本を震撼させた凶悪事件の犯人であることを自ら告白し、一躍時の人となる曾根崎。
告白本はベストセラーとなり、曾根崎は人気タレントのようにメディアでも引っ張りだこ。
テレビカメラを引き連れ、遺族の前に現れて謝罪をするという、パフォーマンスとも受け取れる行為はどんどんエスカレートしていく。
日本中で罵声と歓声が入り乱れる異様な空気の中、そんな光景を苦々しい思いで見つめる刑事の牧村(伊藤英明)。
22年前にあと一歩のところで犯人を取り逃がしてしまったばかりか、先輩刑事を犯人の罠で亡くしていた彼の心には今も深い傷が残っていた。
この手で仇を討とうという被害者遺族に命を狙われる事態が起きても尚、メディアに出ようとする曾根崎の真意は何なのか。
やがて曾根崎は、事件を長年追ってきたというジャーナリストの仙堂(仲村トオル)が司会をする報道番組に出演するが、そこで意外な事実が明らかになり、終わったはずの事件は予想外の展開を見せ始める。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
御存じの通り、本作は2012年の韓国映画「殺人の告白」のリメイク。
よって、アッシも含めてオリジナルを観ている人は、藤原竜也が演じる曾根崎の正体がすでに分かっていながら観てるのですが、それでもなかなかよくできてまして、センセーショナルな演出がうまいですね。
やっぱり「時効」の問題は誰しも色々考えますし。
まるまるリメイクという訳ではなく、日本ならではの「決定的証拠」には「なるほど」と膝を打ちます。
        

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「キング・アーサー」

こんにちわ、アーサーです。
ワイの映画、観てもらいました?
えっ?おもろない? そうでっか。そら、すんまへんな。
もちろんワイも自分の映画やから観ましたよ。
どうなんやろなあ。 手前味噌ですけど、自分的にはね、そんな悪ないんちゃう?って思いまんねん。
そんでも、おもろない言う人の気持ちも分かりますわ。

いや実はワイも色々と思う所はありまっせ。
今からガイ・リッチーの家行って、刀振り回したろかなって考えましたもん。
オッサン、いらんことし過ぎやねん。
例によって例のごとく、時間軸ガチャガチャいじくったり、やたらにスローモーションにしたり、音楽も主張しすぎやしな。
これぞ「リッチー印」やなって許したってもええけど、やってええ題材とそうでない題材を区別せなあかんぞ。
確かにストーリーが取り立てて魅力あるもんとちゃうわな。 そこをごまかすために色々とやってんのかも知れんけど。

ジュード・ロウ以外の役者が残念ながら華があらへんな。
ワイを演じたチャーリー・ハナムも、なんかなあ・・・。 名前はハナムやのに華ないっちゅうのはな。 今うまいこと言うてしもうたぞ。 うまないか。 別にええわ。
出てくる人物みんなおんなじ見えるやろ? ヒゲ男子の割合ナンボほどやねん!って思ったわな。
イスラム圏の国が製作した映画か?ちゃうわな。 ヒゲ剃らんかい。 なぁ、監督もそう思うやろ?・・・おまえもヒゲかい!
そう言えばベッカムがカメオ出演しとったのぉ。 演技のことは言うたるな。 そこはしゃあないわ。 嫁ハンの歌唱力よりはマシやぞ。
なぁ、ベッカム君・・・・って、おまえもヒゲはやしとんのかい!

6部作の構想? マジで言うとんのか。
でも、あの興行成績ではスタジオがGOサイン出さんやろな。

        

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「アイム・ノット・シリアルキラー」

殺人鬼のいるところ、殺人鬼が寄ってくる。
「類は友を呼ぶ」というのでしょうか、そんなお話のホラー映画であります。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アメリカはノースカロライナの田舎町クレイトン。
そこで葬儀屋を営む母親と暮らす青年ジョン・クリーバー(マックス・レコーズ)は少々難しい性格である。
かかりつけのセラピストからシリアルキラーの兆候があることを指摘され、自身もそれを認識し、学校のいじめっ子をいつ殺してもおかしくない心理状況に戸惑っていた。
そんなある日、クレイトンの町で凄惨な殺人事件が連続して起こる。
被害者はまるでケモノに襲われたかのようにボロボロで、腎臓がない、あるいは肺がないなど、それぞれ肉体の一部分が必ず欠損していた。
そして不思議なことに、死体の近くにはオイルの様な黒いドロドロした液体の溜まりができていた。
やがてジョンは一連の殺人が向かいの家に住む老人、ビル・クローリー(クリストファー・ロイド)の仕業だと偶然知ってしまう。
人を切り刻んでみたい欲求がもたげつつあるジョンは、殺人鬼のお向いさんに興味を惹かれてこっそり監視を始めるのだが、この老人は驚くべき正体を隠していた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
シチュエーションは面白そうで、途中まではゾクゾクさせてくれます。
しかし、殺人鬼らしい当の老人の正体が、どうも変な方向にあると感じてくると「この映画、大丈夫か?」と心配になってきます。
まさかこの老人、人目を忍んで、デロリアンに乗ってバック・トゥしちゃってんじゃなかろうか。
いや、そんなオチならまだ良かったかも。 良かぁないか。
トンデモなオチとまでは言いませんが、「なんじゃこれ?」な気持ちから立ち直るのに時間を要してしまいました。
        

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「セールスマン」

「別離」、「ある過去の行方」でおなじみ、イランの名匠アスガー・ファルハディ監督の最新作はアカデミー賞外国語映画賞受賞作。
近代化が進むテヘランを舞台に、ある夫婦に降りかかった事件をきっかけに、人間関係のずれが露わになり、やがて思いがけない展開を見せていく心理サスペンス。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
テヘランで暮らす国語教師のエマッドとその妻ラナ。
二人とも地元の小さな劇団に参加しており、アーサー・ミラー原作の「セールスマンの死」の舞台上演を間近に控えての稽古に余念がない。
隣りの土地で強引な建築工事が進められていた結果、エマッドらが住んでいる古いアパートが倒壊の危機にさらされる。
劇団仲間が紹介してくれた物件に移り住んだものの、前の住人の女性の私物がまだ残されている状態に夫妻は戸惑う。
ほどなくして、舞台初日の日を迎えた夜、アパートでラナが侵入者に襲われてケガをする事件が起きる。
隣人によると、前の住人の女性は"ふしだらな商売"を営み、何人もの男を連れ込んでいたと言う。
侵入者は、まだ女が住んでると思い込んでいた"ふしだらな客"ではないか。
この事件のショックでラナはめっきり口数が減り、エマッドは犯人探しに躍起になっていく。
徐々に犯人像に近づき、エマッドはラナに「一緒に警察に行こう」と言うが、「表沙汰にしたくない」とラナがそれを拒む。
夫妻の溝が深まっていく中、エマッドは執念で犯人と思われる男を突き止めるのだが・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アスガー・ファルハディはこういった日常のボタンのかけ違えのようなサスペンスを語るのが相変わらず抜群にうまいですね。
取り分け本作では主人公の国語教師の人物描写と、混乱していく感情のドラマの書き込みが丁寧で巧妙。
人間関係とは人それぞれで複雑。
その場その時によって、言いすぎ、やり過ぎ、言葉足らず、配慮不足など、様々な手違いが生じ、不可抗力のドラマが生まれるのですが、この映画はイランというお国の事情も重ねて、心理のすれ違いを静かに残酷に見せつけます。
「セールスマンの死」を合わせ鏡にして、封建的な価値観に縛られて近代化の波についていけないイスラム社会のタブーを浮かび上がらせているのも唸らされます。
国語教師が陥っていく憎悪のカオスが一人の行商人(セールスマン)を死に追いやってしまう、
スリリングな迷路のような映画です。

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LOGAN/ローガン
2017年07月03日

T0021485p.jpgX まだ21世紀ではなかった90年代にアニメの「X-メン」がテレビで放映されていた。

最初の回から観てはいなかったので、世界観がいまいち呑み込めないまま観ていたが、それでもなんとなく面白かったのだ。
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中でも、勝手気ままで粗暴に振る舞うウルヴァリンというキャラクターは、およそヒーロー像に似つかわしくないにもかかわらず、不思議な魅力があってインパクトはピカイチだった。

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その「X-メン」が「ユージュアル・サスぺクツ」のブライアン・シンガー監督で映画化というニュースが飛び込み、「ウルヴァリン役は誰なのだ?」とアッシだけでなく多くの人が思っただろう。
その直後にワンカットのヴィジュアルが公開され、それがヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンだった。
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「ヒュー・ジャックマンって誰?」と思う反面、「なかなかカッコいいじゃないか」という印象。
映画を鑑賞したあとも、「よく見つけたな」と、このナイスガイな役者のキャスティングに感心しきり。
ヒュー・ジャックマンのウルヴァリンはサイコーの一言だった。
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ヒュー・ジャックマンの役者人生を大きく変え、実に十数年以上に渡って我々映画ファンをシビレさせたヒーロー・キャラクター、ウルヴァリン
ヒュー・ジャックマンといえばウルヴァリン。 ウルヴァリンといえばヒュー・ジャックマン。
そんなアメコミ・ムービーのカリスマが遂に終焉の時を迎える。

ヒュー・ジャックマンも役者として次の段階へと進む時が来た。
肉体的にはまだまだいけそうな気がするが、「X-MEN」シリーズ自体、「アポカリプス」で一旦区切りを付けているし、もうここらへんを潮時とするのもベストの選択だ。
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マグニートー率いるブラザーフッドと死闘を繰り広げ、想いを寄せたジーン・グレイを手にかけたことに苦しみ、一時は日本の土を踏んでシルバー・サムライとも戦ったウルヴァリン
周囲に流されることなく、常に己を貫き、弱き者のそばに寄り添って悪に立ち向かっていたウルヴァリンの長い旅がようやく終わりを告げる。


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ウルヴァリンことローガン(ヒュー・ジャックマン)。
本名はジェームズ・ハウレット
"ローガン"という名は、彼の父親の姓名。 ただし母親の不倫相手の名前であり、つまり彼は不義の子である。
幼くしてその事実を知り、家を捨てた彼は一時期「ジミー・ローガン」と名乗っていた。

「X-MEN」の第一作に登場した際は記憶喪失状態で、身につけていたドッグタグに刻まれたネームが「ローガン」だったために、以来彼は通名としてこの名を使っている。


【結末に触れております】
時は2029年。 東京五輪から9年後・・・という以外、世界は取り立てて激変していない。
いや、ひとつ大きく変わったのは、かつて数百万人いたというミュータントのほとんどが死に絶えたということ。
なんやかんやあったのである。
元々長くは生きられない身体というリスクを負っていた者や、人間によるミュータント狩り、あるいはミュータント同士の争いなど、とにかくなんやかんやあって、ミュータントは地上から姿を消しつつあるのだ。

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ローガンの肉体も劇的に変化していた。
仮に爆弾で身体が粉々にふっ飛ばされようとも、細胞一つあれば元通りに復活するほどの驚異的なヒーリング・ファクター能力を持っていたローガンだが、今や劣化の一途。

彼の骨格を形成しているアダマンチウム合金に含まれている毒が体を蝕み、治癒能力が急速に衰えていた。
ちょっとした傷もなかなか治らない。
筋肉も落ちてきてシワも増えた。
こぶしからアダマンチウムの爪が飛び出す時は、しょせん皮膚を突き破っているので元々は痛かったのだが、さほど気になるほどではなかった昔と比べて、今は耐えがたい激痛に襲われる。

もはや肉体は人間に近づいているローガンだが、完全無欠の強靭さを誇った"ウルヴァリン"としての肉体は死につつあった。
 
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ローガンは現在、リムジン送迎サービスの運転手として生計を立てている。
セレブのお出迎え、接待ビジネス、女子会のリムジン・パーティー・・・
けっこう忙しいようである。

車はクライスラー300。 70インチのタイプだろうか。 型は2024年だという。
唯一の飯のタネ。 傷をつけられたらたまったもんではない。

ある夜、数人のチンピラが、ローガンのクライスラーのタイヤをパクろうとする。
オーナーが誰かを知らなかったのはチンピラ君たちには不運だった。

まだこの時点ではローガンはショットガンでズドンとやられても、時間はかかるがどうにか復活する。
チンピラ相手に素手で対処しようとするが、そこら辺はもう無理だった。 いかんせん体力は初老レベル。
袋叩きにされてても車さえ傷がつかなければ穏便に済ませれたかもしれない。
しかし、車に銃で穴をあけようが、ヒゲヅラのジジイをボコろうが、たかがタイヤに必死になるチンピラ君たちは知らぬがホトケ。 数分後にはマジでホトケサマになってしまうのだった。

やせても枯れても武士は武士。
バイオレンスの血が湧いたローガンにかかれば、そこらのパンピーの首や腕などチョンチョンと飛ばされる。
こんな死屍累々のスプラッタ・アクションから映画は幕を開ける。

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ローガンの現在の住まいはメキシコ国境近くの廃工場。
そこに帰れば、命がけの介護生活が待っている。
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かつて正義のミュータント・チーム「X‐MEN」の信頼厚きリーダーであったプロフェッサーXことチャールズ・エグゼビア(パトリック・スチュワート)。
彼もまた、すっかり老いぼれてしまいアルツハイマー病を患っている。
自ら精神状態をコントロールできないチャールズは、悪夢を見たりするなど、なんらかのきっかけで興奮状態なるとメンタルブラストの能力がマックスで放出される。
手加減もクソもない能力の垂れ流しなので、そこそこの半径内にいる者は身体を動かすことができなくなり、呼吸困難さえも伴うほどのマヒ状態に陥ってしまうのだ。

一年前に彼は自宅があるウェストチェスターで発作を起こして、多くの市民とミュータントを犠牲にしてしまっており、彼は未だにその事件を悔やんでいる。

現在のチャールズは巨大なタンクの中で隔離されており、強烈な安定剤を投与されながら、ほとんど寝たきりの生活を送っている。
薬の服用を怠ったり、タイミング一つの悪さによっては、ローガンは命を危険にさらすほどの介護生活を強いられているのだ。

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同居人のサンシーカーことキャリバン(スティーヴン・マーチャント)。
「X-MEN:アポカリプス」にも登場した闇商人はミュータントを匂いで察知するという能力を持つ、「ミュータントを探せるミュータント」。
えっ?じゃあ自分の匂いは? それは気にしないのか。 いいのか別に。

顔色が劇的に悪いが、太陽光線に当たると大ヤケドを負うほどのギャオス体質なのでこんなゾンビ・ヴィジュアルになっている。
外に出る時はもちろん完全防備。
「キャプテン・ハーロック」などに登場するキャラ、トチローを思わせるようなオメカシがなんだか微笑ましい。

ローガンがお勤め中は代わってチャールズの介護をしているが、油断をしてドツボを踏んだことが何回かある。

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ある日、ローガンガブリエラという見知らぬ女性から妙な依頼を持ちかけられるところから物語が動き出す。
ガブリエラローラという少女をかくまって、ノースダコタまで送り届けてほしいという。
面倒なことには関わりたくないローガンは一旦拒否するが、後日ガブリエラが何者かに殺害される。

彼女は巨大企業アルカリ・トランジェン社の研究施設で働いていた看護師で、施設では怖ろしい実験が行われていた。
遺伝子学者ザンダー・ライス博士の指揮のもと、ミュータントのDNAから生まれた子供を兵器利用する実験が進められていたが、子供たちの反乱によってプロジェクトは頓挫。
多くの子供たちが殺され、何人かはノースダコタに逃げのびたらしいのだ。

そして彼女がかくまっていた少女ローラはローガンのDNAを受け継ぐミュータントだった。
ガブリエラが遺した動画には「ローラはあなたの子よ」というメッセージが語られていた。

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アルカリ・トランジェン社の警備責任者ドナルド・ピアース(ボイド・ホルブルック)。
施設から逃走したミュータントの子供たちの捕獲に執念を燃やす冷酷無比な追跡者である。

どういう経緯かは不明だが、右手がターミネーター・ハンドのようにメカってる。
これで何ができるという訳ではないのだが、身体能力そのものはズバ抜けて高い。

ローガンの素性を知り抜いており、彼がローラをかくまっていることを察知したピアースは傭兵軍団を率いて襲撃を開始する。
映画はこのピアースの追跡からの逃避行を余儀なくされるローガンチャールズローラの3人の疑似家族によるロードムービーという趣きへとなだれ込んでいく。

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ローラ・キニー(ダフネ・キーン)。 年齢は11歳。
トランジェン社の実験により、ローガンのDNAを受け継いで生まれてきた「X-23」。
もちろん、こぶしからアダマンチウムの爪は飛び出すし、ヒーリング・ファクター能力も備えている“女ウルヴァリン”。
殺気を感知する習性にも優れていて、戦闘のセンスもピカイチ。

舌をチラッと出して「オッケー」とかます本家のローラちゃんとは違い、画期的なまでに愛想が悪く、大人でもチビりそうなヤンキー目つきを飛ばしてくるローラちゃんである。
最初はムッツリとしてキャラを守っていたが、スペイン語を話しだしたのを皮切りに、実は英語もOKというバイリンガルを発揮。
ただし、欲しい物にはすぐ手を出すという我慢知らずで、著しい社会常識の欠如が見られる。

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ローガンのもとでかくまわれて、廃工場に身を潜めていたローラだが、居場所を突き止めたピアースと傭兵軍団の面々がお迎えに上がる。
もちろん大人しく連れていかれるはずもないローラの容赦ない殺戮パレードが始まる。
小娘とナメてかかった野郎どもなど瞬きする間もなく瞬殺。

まずは一人の兵士のガン首をぶった切ってポイと放り投げ、ピアースに御挨拶。
少女が凄まじい形相で敵を斬!斬!斬!と斬り殺していく、まさに映倫がアワ吹いてキレるほどの過激な絵が連打される。
血しぶきドッピュー! R指定上等のスローター・ガールに、目の前で見ていたローガンも「なんじゃ、こいつ?」とぶったまげる。

クライスラーにローガンチャールズローラが相乗りし、一路ノースダコタを目指すことになるのだが、ローガンは自分が何者であるかを見つめ、残された人生に為すべきものを見出していくのである。

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チャールズが早くから複数のミュータントとテレパスで交信をしていたことを訴えていた。
「彼らは君を求めてる」
当初は認知症の妄想だろうと取り合わなかったローガンだが、自分と同じ能力を持つ少女の出現は彼の心に大きな波紋を投げかける。

チャールズローガンに対し、ミュータントの最後の希望であるローラを守ることを託す。
「君にはまだ時間がある」


そもそもミュータントの出現はこの世界に何をもたらして何を奪っていったのだろうか。
"人間を超越した能力"は結局戦争の道具にしか扱われず、ミュータントの存在意義は"破壊"以外の意味が見つからなかった。
そんなミュータントが絶滅の時を迎えているのはもはや摂理なのか。

ドナルド・ピアースはミュータントを「神の計画、神の過ち」と評した。
ミュータントは罪深き生き物なのか。 だが。
たとえ神の手によるしくじりであっても、この世に生を受けてきた者たちがこれから生き方を決めていくことは、何者であろうと干渉はできない。

ローガンウルヴァリンとして、チャールズプロフェッサーXとして、人類を守り人類に愛された半面、人類を傷つけて憎まれてきた。
ミュータントとしての生き方の答えはまだ出ていない。
それをローガンは見つけなければならないのだ。
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ローラローガン「死に場所を求めている」という。
肉体の黄昏が迫るローガンローラの言うとおり、いかにその生を終えるかを模索していた。
それと同時に、X-MENとして戦いに明け暮れていた時代には叶わなかったことを欲してもいる。
それが「普通の人間としての生き方」である。

ローガンという人物はそう易々と他者を受け入れるというイメージがない。
むしろ他人が嫌いだ。
そんな彼がリムジンの送迎ドライバーという、他者と交わっておもてなしをするという職に就いているのは、映画が始まった時、かなりの違和感を覚えた人も多いはずだ。
たとえわずかな時間でも、車という狭い空間の中で他人を気遣う商売をするなど、ローガンには似つかわしくない。
その理由が徐々に見えてくる。

「家族」という温もりが欲しかったという、ありがちで甘っちょろいことは言いたくないが、少なくとも彼は、たくさんの人と触れ合い(金持ちばかりだが)、人間であるなら当たり前の喜びをすぐそばで感じたかったのだ。
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ローガンの正確な生年は不明だが、実年齢は170歳を超えている。
その170年以上もの間、幼くして家族を捨て、二つの世界大戦にも従軍し、血にまみれた人生を送ってきた。
シルバーフォックスという同じミュータントの女性と恋仲であった時もあるが、ミュータントゆえの悲劇に見舞われることになる。

父親、母親、兄弟、恋人、友人・・・
何ひとつローガンの人生に温かい思い出はない。
それどころか彼は誰かを殺める人生に終始してきた。
生みの父トーマスを・・・ 実の兄ビクターを・・・ ジーン・グレイを・・・


ノースダコタを目指す道中で一行は農業を営むマンソン一家の世話になる。
立ち退きを迫る権力者の嫌がらせにも立ち向かい、必死に家族を守ろうとしている父親がいる。
そんな主を信頼する妻と息子がいる。
それでも明るく前向きに生きている家族の姿がそこにあった。

チャールズ「私にはもったいない」としみじみつぶやく。
多くの屍をこしらえてきたローガンも、大切な誰かを守ることに生きる重みを痛感する。

しかし、ローガンらを追跡してきたピアースとその部隊によって、マンソン一家に惨い悲劇が降りかかることになる。
そしてチャールズも、トランジェン社が生みだしたミュータント「X-24」によって殺されてしまう。

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この映画の中で、印象的に引用される1953年の西部劇の名作「シェーン」。
監督ジョージ・スティーブンス。
アラン・ラッド演じる孤高のガンマン、シェーンが悪徳牧畜業者に苦しめられている農民を助け、ジョーイ少年と友情を育む物語で、「シェーン!カムバーック!」の呼び声がこだまするラストは名シーンである。

この映画をローラチャールズが観るシーンがある。
殺し屋たちを一網打尽にしたシェーンは、家に帰って傷の手当てをというジョーイ少年に語る。
「人の生き方は決まっている。 変えることはできない。 人を殺した者は元には戻れないんだ。 だから家に帰ってママに伝えてくれ。 "谷から銃は消えた"と。」
このセリフが本作のラストでローラの口から語られて、ローガンが最後まで貫いた生きざまに投射されるのである。

それほどにローガンが背負ってきた物はあまりに重い。
そして"人殺し"の彼は、その変えようのない生き方で以て「谷から銃を消す」責任を全うするのだ。

 
・・・・・・ちょっと重たい話ばかりなので、ここでブレイクタイム。

旅の途中でコンビニに立ち寄った一行。
馬のコイン遊具に妙に食いつくローラ。 なんだかんだでガキンチョである。
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「あれ?もう停まったじゃんかよ。 動け!この野郎!」
「イテテテ。 すいません、叩かないでくださいな」
「こっちはお金入れたんだぞ! もう終わりかよ、ふざけんじゃねー!」
「そんなこと言われても・・・」
「このハゲーーーッ! 違うだろー! バカかオマエはー!」
「いや私、ハゲじゃなくて馬ですから」
「私に恥をかかせるなー!」
「それ、流行ってるらしいですな」
「うん、一回言ってみたかったの」


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「いいわね、このグラサン。 私ったら何でも似合っちゃう、罪な女。ムフッ」
「お嬢ちゃん。 ねえ、ちょっとそこのお嬢ちゃん」
「ハイ、さっそく読モのスカウト。 あいにく私はもっと上を目指す罪な女。ムフッ」
「いやいや、おめえよ。 栓をあけたそのコーラとフタをめくったポテチの金、払えんだろうな?」
「はっ!ダメウーマン」
「ウーマンじゃねえよ、俺」
「私が今、財布にどれだけ持ってるか知ってんの?」
「まさか」
「35億」
「やっぱり」
「嘘よ」
「流行ってるからって"35億"を乱用するんじゃないよ」
「一回言ってみたかったのよ」



本題に戻るよ。

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ノースダコタにあるとローラが信じた「エデン」という場所に辿り着く。
そこではトランジェン社の施設から逃げのびた子供たちが身を寄せ合っていた。
ローラをはじめ子供たちはカナダの国境を越えようとするが、ピアースたちに見つかり森の中で追いつめられていく。

子供たちが施設から持ち出した「ウェポンX」に用いる強化用の血清を託されたローガン
少しづつ投与すれば身体の衰えの進行は抑えられる。
だがローガンピアースやX-24と戦って子供たちを救うために、治癒能力が低下する逆効果のリスクを払ってまで血清を全量投与するのだった。

死に場所を見つけたり。
今一度ウルヴァリンとして甦るローガン
最期の「X-MEN魂」がきらめきを放つ。

「自分が何者かを忘れないために」ローガンが自殺用に持ち続けていたアダマンチウム弾は、ローラの手でX-24の頭をぶち抜いた。
しかし、ローガンが負った傷はもはや瀕死の深手だった。
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ようやく重荷を下ろす時がやってきた。
死のうと思えばアダマンチウム弾を使えばいつでも終わりにすることができたが、幸いなことにミュータントとして死ぬのではなく、ローガンが人間として死ねる至福の時が訪れるのだ。

「こういう感じなのか・・・・」

ローガンが望んだ、人間であるという実感。
最後まで守り抜くことができた愛すべき"我が子"に手を握られ、これが家族であり、これが親子であるという人間の愛の温もりに包まれながらローガンの長い長い旅が終わる。

涙を流しながら「パパ・・・」と呼びかけるローラの声はもう届かなかった。

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ローガンの眠る積み石の墓に立てられた木の十字架。
それをローラが斜めに傾ける。
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"父"の背負ってきた人生にリスペクトを捧げ、それを受け継ぐ意思を示すウルヴァリンの"娘"。
たった2本の木の枝で組まれた墓標のラストシーンに、サブイボが止まらない!


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ローガンの最後を飾るにふさわしい、アメコミ映画の概念を覆すといっても過言ではない傑作。
カリスマ的とも言えるヒーロー・キャラクターをここできっぱり終わりにする覚悟はしっかり見える。
なんせ、マーベル・ムービーなのに、スタン・リーがおちゃらけて出てこないんだもの。

英雄と人殺しの紙一重の葛藤にまで踏み込み、西部劇のテイストとロードムービーのアプローチが、いかにもローガンというキャラにピッタリとハマり、その語り口にグイグイ引っ張られていく。
さすが「3時10分、決断のとき」でスリリングな西部劇を鮮やかに復活させたジェームズ・マンゴールドだ。

アメコミ映画にしては珍しく、R指定のレイティングだが「デッドプール」とはまた趣きが違う。
ローガンの武器は、敵に対して遠隔で効くものではなく、刃物というある意味アナログ。
よって、接近の肉弾戦というフィジカル全開の中で、本来ならば流血や人体破壊描写はもっと力が入れられていてもおかしくはない。

しかし、低年齢層の客も考慮して、遠慮がちだった「刃物で殺す」という描写は本作で自由を得て、リアルなスプラッタとして表現されている。
これこそが、ローガンのやってきたことなのだという現実を我々に見せているのである。
一人のサムライの人生をしっかりと語り切るには、お子様への配慮など無用。

いさぎよいフィナーレ。 最後までカッコ良かったウルヴァリン
これほどの感動が待っていようとは。
ありがとう、ローガン。 ありがとう、ヒュー・ジャックマン。

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この人も忘れてはならない。
プロフェッサーXことチャールズ・フランシス・エグゼビア

彼もローガン以上に老いくたびれてしまい、不遇な晩年だった。
最期に無残な死を遂げるが、マンソン家での一家団欒の一夜は彼にとって何物にも代えがたい時間だったろう。
まるで父親のようにローガンを導いていった牽引力と懐の深さは、やっぱりプロフェッサーX

演じたパトリック・スチュワートは最初の「X-MEN」の時はまだ50代だったが気がつけばもう77である。 早いもんじゃのぉ。
この人はやっぱり、あの低くて柔らかみも含んだ声がよかった。

さらばXの父。
ありがとう、プロフェッサーX。 ありがとう、パトリック・スチュワート。


「賢人のお言葉」
 
「このところずっと、私は生き方を学んでいるつもりだったが、最初からずっと、死に方を学んでいたのだ」
 レオナルド・ダ・ヴィンチ

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映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ
2017年06月28日

320_20170625013708096.jpg詩集本は読んだことがない・・・
詩とはあまりチャンネルが合わない・・・

今をときめく詩人・・・最果タヒ・・・
「さいはて・たひ」と読む・・・

神戸が生んだポエット最果タヒ・・・

そんな彼女の新しい詩集・・・
「夜空はいつでも最高密度の青色だ」・・・ 映画化・・・
詩を映画化・・・ 珍しい・・・

本屋で手に取ってみた・・・
ちょっとだけページを繰って・・・
棚に戻す・・・
やっぱり詩は詩・・・

でも映画は観てみたい・・・
なんたって石井裕也・・・ 「川の底からこんにちわ」・・・ 「舟を編む」・・・ 「ぼくたちの家族」・・・ 満島ひかりの元ダンナ・・・
池松荘亮も好きな俳優だ・・・
石橋静河・・・ 彼女は誰・・・
石橋凌の次女・・・ ぉぉぉARB・・・ 労働者のロックの血を引くミューズ・・・

映画を観た・・・
なんか・・・ 良かった・・・

毎日がしんどい人ばかりが出てくる・・・
それでも優しい話だ・・・
何かがみなぎってる・・・
最高密度の108分・・・

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美香(石橋静河)
東京で一人暮らし・・・
看護師・・・
たくさんの人の死を毎日のように見ている・・・
夜はガールズバーでバイト・・・
愛想笑い・・・
田舎の実家には父と高校生の妹・・・
母親が死んだのはもう昔・・・

色んな物があふれてて賑やかなこの都会が彼女をより孤独にする・・・
誰もが夢中になってる物が嘘臭い・・・
恋愛なんて必要ない・・・ 誰かに押しつけられるように人を容易く愛せない・・・
「やれるかやれないか」という目でしか女は見られない・・・
そんな恋愛に期待しない・・・
恋する女ほど醜いものはない・・・
どんなに愛しても愛されても人は死ぬ・・・
いつでもどこでも死は転がっている・・・
そんなことに人は気づかないフリをする・・・
今日も東京の街では嘘臭い言葉が吐き出されて溢れている・・・
東京には美香の心の居場所がない・・・ 

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慎二(池松荘亮)
建築現場を転々とする日雇い労働者・・・
ボロいアパートに一人暮らし・・・
家賃65000円・・・
光熱費・・・ メシ・・・ ケータイ・・・ 
生きていくには金がいる・・・
東京はしんどい・・・
でも東京だから生きていける・・・

不安になると饒舌になる・・・
どうでもいいたわ言が次から次へと、口を衝いて出て止まらなくなる・・・
同僚の1・智之さん(松田龍平)に「おまえ、うるせえ、だまれ」と怒られる・・・
同僚の2・中年の岩下さん(田中哲司)は痛めた腰が辛そうだ・・・
同僚の3・出稼ぎフィリピン人で社員のアンドレス(ポール・マグサリン)が妻と子供の写真を見せてくれる・・・

アパートに帰る・・・
隣りの部屋の独り暮らしの爺さんの顔を見に行く・・・
爺さんはエアコンを買う金もないと笑う・・・
そしていつも缶に入ったお菓子を慎二に差し出す・・・

慎二は左目がほとんど見えない・・・
世界を半分だけ見ている・・・
もう片方も見えたとしてもこの世界にどうしても見なければならないものはない・・・


ph a 
ガールズバーに行く慎二・・・ 智之さんのおごり・・・
美香慎二、初めての出会い・・・

美香のケータイ番号を聞きたがる智之さん・・・
愛想笑いの美香・・・
横でまた慎二は取り憑かれたようにしゃべりまくる・・・
智之さんがまた叱り飛ばす・・・

下を向いたままの岩下さん・・・ 最近コンビニの店員の女の子に一目ぼれした・・・
岩下さんはコンビニちゃんにデートを申し込む予定・・・

店が終わる・・・
深夜の渋谷の雑踏・・・
慎二美香が偶然出くわす・・・
image0.jpg 
「東京には100万人もいるのにどうでもいい奇跡だね」
二人で東京の夜空を見上げる・・・
ビルの隙間から覗く月の光がやけに青白い・・・

「嫌な予感がするよ」  「わかる」


ph b
 
智之さんが死んだ・・・
現場で急に倒れてそのまんま・・・

美香が葬儀に来る・・・
智之さんとケータイ番号を交換してその後はどうかは知らない・・・
脳梗塞・・・
原因は首元にあった古傷・・・
「それだけで人が死ぬってすごくない?」

「俺にできることがあったら言ってくれ」
「死ねばいいのに」

会社の社長も来た・・・
「仕事中に死ぬなって、みんなに言っとけ」
都会の底で生きる者には死ぬ場所も時も選べない・・・
それでも必要とされているから・・・
死んで何も言われなかった時・・・ それは必要とされなくなった時・・・


ph1 c 
美香つかの間の帰省・・・
彼氏の自転車の後ろに乗ってはしゃぐ妹を見た・・・
何がそんなに楽しいのよアンタは・・・
恋愛サイコーですか・・・ 青春サイコーですか・・・
東京の大学を受験するのだと妹の目がきらきらする・・・
一杯買い物したい・・・ スカイツリーに上りたい・・・
お好きになさって・・・ どうぞご勝手に・・・

「大学までは行かせてやらんとな」
無職の父親は無責任に言う・・・
一丁前なことは働いてから言って・・・

母が死んでから父はこうなった・・・
「自殺なら自殺って言ってよ」
父は何も言おうとしない・・・
自分が捨てられたような母の死・・・

記憶の中の母はいつもにこにこと微笑んでいる・・・
でも捨てられたのだ・・・ 愛されてなかったのだと美香は思う・・・
そう思う自分を嫌悪する・・・


ph0 d
現場でケガをした慎二は病院へ・・・
美香がいた・・・

「また会えないか」
「まあ、メールアドレスなら教えてもいいけど」


隣りの爺さんが死んでいた・・・
蒸し暑い部屋の中・・・ 
たった一人で誰にも何も言わずに・・・
自分はここにいると知らせるかのように骸から臭気を漂わせていた・・・

智之さん・・・ 隣りの爺さん・・・
死がやたらに慎二の前に転がり出てくる・・・
メッセージを削除するみたいにカンタンに命は消える・・・

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岩下さんの腰はもうダメだった・・・
仕事は辞めた・・・
コンビニちゃんにもふられた・・・

でも岩下さんは絶望しない・・・
死は岩下さんに近づけない・・・
「まだまだ生きてやんよ」
岩下さんは前を向く・・・
「ざまあみろ」
岩下さんが歩きだす・・・
ズボンのチャックは全開だ・・・

アンドレスはフィリピンに帰る決心をした・・・

hqdefault_201706262339514fc.jpg 
美香・・・ 慎二・・・
どこへ行けばいいのか・・・ どこで止まればいいのか分からない・・・
埋めれない苛立ちだけが募る・・・
当てのない居場所を求めながら美香慎二の距離は縮まったり遠ざかったりを繰り返す・・・

「ねえ、何であの時、私たち笑ったんだろう、お通屋の後」
「わからない」
「ねえ、放射能ってどれぐらい漏れてると思う」
「知らない」
「ねえ、恋愛する人間が凡庸になるって本当かな」

「知らない」

美香慎二はデートをした・・・
デートというのだろうか・・・
なんとなく・・・ ただなんとなく二人は歩く・・・
慎二が髪飾りを買ってプレゼントする・・・ 1200円・・・

「似合ってないけど、ありがとう」  本当に似合っていない・・・
「ありがとう」
「そんなに何回も言わなくていい。 1200円なんだから」
「でもほんと、ありがとう」


二人の距離の間にもささやかな何かが飾られた・・・
そんな二人は決して凡庸ではない・・・

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コミュニケーションが広がったと人はいう・・・
でも街は液晶画面に目を落として世界をその両目で見ていない人ばかり・・・
せっかく外に出ても液晶の中の世界から出てこないのに・・・
まがい物のつながりを人はコミュニケーションと呼ぶ・・・

地震が当たり前になった・・・
北朝鮮のミサイルも驚かなくなった・・・
世界のどこかでテロがあっても「またか」と思う・・・
人が大勢死んでも「またか」と思う・・・
人知れず孤独な老人が死ぬ・・・
少年少女が自ら命を絶つ・・・
野良犬や野良猫が処分される・・・

死は世界に当たり前にある・・・
誰かを愛する暇もなく・・・ 誰かに愛される前に死が全部を奪う・・・
それでも社会はいつもと同じように動く・・・
人は「死」という現実から目をそらして今日もまがい物の夢と希望に逃避する・・・

でも生きていくんだ・・・
誰かを愛する限り・・・ 誰かに愛される限り・・・
まやかしだらけの世界でも・・・
愛してる・・・ 生きている・・・
それだけで居場所は生まれる・・・
そして・・・
踏んづけて乗り越えた「死」に「ざまあみろ」と言ってやるんだ・・・

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「半分しか見えないんでしょ」
「うん」
「でも・・・・・半分見えれば上出来なんじゃない? 普通半分も見えないから」

「私は捨てられたんだよ」
「そっか・・・・・まあ、俺にまかせろ」
「何をまかすのよ」

「イヤなことは俺が全部半分にしてやる。 こんな目で生まれてきてよかったって、今初めて思ってるよ」

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ストリートミュージシャンが東京の街角で「東京」を歌う・・・
美香慎二は彼女によく出会う・・・
「また歌ってるよ。 あの人、絶対売れないだろうな」

ワキ汗かいて 気にして わたし 生きてる
目をそらして いつもの作り笑顔
みんな同じでしょ ここは東京
でも 頑張れ Ah 頑張れ Ah


東京・・・
たくさんの人がやってくる・・・
窮屈でもそこで生きていきたい人であふれてる・・・
そんな最高密度の巨大な群集の中から美香慎二が出会った奇跡・・・
月の光が青いというのまた奇跡・・・
二人の頭上にある夜空はいつでも・・・
最高密度の青色だ・・・
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「賢人のお言葉」
 
「逆境もよし、順境もよし。 要はその与えられた境涯を素直に生き抜くことである」
 松下幸之助

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メッセージ
2017年06月24日

T0021391p.jpg髑髏島のキングコング見物から帰ってきた大富豪の娘っ子、岡根もち代と執事の爺や。
あれからおよそ2ヶ月。

その日の朝、もち代はテレビのニュース番組に映し出された映像に、生理が止まるほどの衝撃を受けていた。

 爺やぁ! 爺や~っ! 早く来てー!
 どうかなされましたか、お嬢様。
 爺や、大変よ。 大変なのよ!
 またオネショでございますか。 さっそくシーツの交換を。
 ちがうわよ! 失礼なこと言わないで。
 申し訳ございません。 オネショの方はすっかり治ったんでございましたっけ?
 もうチョイってとこかしら。
 おやまあ。
 オネショの一つや二つでうろたえるもんじゃないわよ、爺や。
 少しはうろたえてくださいよ、お嬢様。 
 そんなことより爺や。 テレビをご覧なさいよ。
 さすがに4KのHDRテレビはきれいに映りますなあ。
 そういうことじゃなくて! ニュースよ!ニュースを観ろっつってんの!

無題
 おおっ、これは!
 柿の種よ! これほどでかい柿の種は見たことないわ!
 いや、ちがいますよお嬢様。
 これって、もしかしたら亀田製菓の新商品かしら? でもこんな柿の種、ゴジラでも食べ切れないわよ。
 お嬢様、気をしっかりとお持ちくださいませ。
 ダメねぇ、爺や。 私がボケをかましたら、スパッとツッコミを入れなきゃ。 こっちがシンプルに恥ずかしいじゃないの。
 疲れますなぁ、お嬢様のお相手は。
 それにしてもこれって、やっぱりUFOってことでいいのよね?
 でしょうな。 "未確認飛行物体"という理屈ではなく、"異星人の乗り物"という定義でよろしいかと。
 侵略かしら?観光かしら?
 う ~む、ニュースでは、何のアクションもないと言ってますな。 世界各地に12隻も同時にアポなしで出現するというのは、あまり穏やかな事態ではございませんな。

ArrivalShip.jpg 
 そうよね。 やっぱり侵略よね。 どうしましょ、爺や。 ウィル・スミスを呼ぶ? 彼なら素手でエイリアンを倒せるわよ。
 ウィル・スミスは呼んでも来ないでしょうな。
 なんでよ。 100万ドルの札束で頬を叩いておやりなさいよ。
 悲しいことをおっしゃらないで下さい。
 冗談よ、爺や。 じゃあ、シガニー・ウィーバーはダメかしら? 彼女も相当強いわよ。
 あの方はもういい歳ですからなぁ。
 じゃあ、どうすんのよ。
 どうも、しようがありませんよ。 ここは事態の推移を見守らねば。
 ゆうちょうなことを言ってたら手遅れになるわよ。 「インデペンデンス・デイ」でもそうだったでしょ。 最初はジーッとしてると思ったら、突然ピカーッとやってドカーンなんだから。
 12ヶ国の政府首脳が話し合ってますが、意見も分かれてるようですな。 お互いが協力し合おうという感じも見受けられない。 実に嘆かわしい。
 友好的なエイリアンだったらいいのになあ。
 こうしてここでやきもきしててもしょうがありませんな。 お嬢様、直接現地まで行って、この目で確かめることにいたしましょう。
 さすが爺や。 決断が早いわね。 日本では北海道に出現してるわよ。

 お嬢様、ここはせっかくですからアメリカまで行きましょう。 確かモンタナでしたな。 さっそく自家用機の手配を。

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 直に見たらなんだかシュールだわ。
 どうやって浮遊してるのか、実に不思議でありますな。
 これが横になってるんなら、よくあるUFOだけどね。
 直立型のUFOは目撃例も非常にごくわずかで珍しいタイプなんですよ。
 本当にジッとしたまんまね。 ますます不気味だわ。
 どうにかコンタクトが取れればいいのですがね。
 爺や、シンセサイザーはないかしら。 ♪レミドドソ~♪を弾いてみるのよ。
 ああ、「未知との遭遇」でございますね。 そうはうまくいかんでしょう。 あいにくシンセサイザーも持ってきておりませんし。
 坂本龍一とか呼びなさいよ。 喜多郎でもいいわ。 なんだったらスティーヴィー・ワンダーでもいいし。
 奏者は関係ないでしょう。
 こうなったら自分でハミングするしかないわね。 よ~し、この私の美声で。
 お嬢様、あまり騒がない方が・・・。 あっ、軍の兵士の方が恐い顔で来られましたよ。 「静かにしろ」と申しております。
 うるさいわねえ、いくら欲しいのよ。 爺や、1千万ドルの札束で頬を叩いておやりなさい。

 だから、そういうようなことをおっしゃらないでください。

358130_002.jpg  
 この二人はどなたかしら?
 女性の方は言語学者のルイーズ・バンクス(エミリー・ブラント)。 男性はイアン・ドネリー(ジェレミー・レナー)、物理学者です。
 政府から協力を依頼されたのね。 でも、言語学者が来てるってことは、異星人と接触するってこと?
 そのようですな。 今しがた聞いたところによると、あの宇宙船は18時間ごとに底の扉が開くのだそうですよ。 そして112分経ったら閉まります。 次に開くのがまた18時間後という風に。
 その112分を利用して中に入ってコンタクトを試みようという訳?
 そのようでございますね。
 これは興味深いわね。 で?私たちも一緒に行っていいのかしら?
 もちろんですよ。
 よく許可がもらえたわね。
 軍のお偉いさんのツラを1億ドルの札束でひっぱたいてやりましたからな。
 なんてことを!
 ちょいと出過ぎたマネでございましたかな?
 爺や、でかしたわ。 今度のボーナスは1兆円よ。

 ありがとうございます。

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 昇降機で入口まで行って、中に入ったら重力が変なことになってるわね。 宇宙船は立ったまんまなのに。
 我々は今、背中が地面と平行になったまま立っているということですからな。
 それでも浮いてるとかそんな感じもないわね。 これが普通の状態みたいよね。
 それにしても殺風景にもほどがありますなあ。
 内壁とかメッチャ触りたいわ~。 爺や、宇宙服脱いでもいいかしら?
 無茶はおやめ下さい、お嬢様。 空気の状態も把握できてないんですから。
 でも、持ち込んだ鳥かごの中の小鳥は大丈夫みたいよ。
 いやあ、そうは申されてもですね。 人間だけに有害なガスが発生してるかも知れませんしな。
 爺や、先にヘルメット取ってみてよ。 そしたらボーナスは倍の2兆円。 さあ、どうする?
 お嬢様。 今年は爺やはボーナスは要りませぬ。
 つまんないわね。


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 まさかこれは罠で、私たち、エイリアンに捕まえられてあっちこっち実験されるってことはないでしょうね。
 もう入ってしまいましたから、今さら思い悩んでも致し方ありませぬよ。
 エイリアン相手じゃ札束積んでもダメでしょうし。
 そうでしょうな。
 言語学者のおねえさんが穏便にコンタクトを取ってくれたらいいんだけど。
 すべては相手の出方次第でしょう。 112分しか時間がありませんからな。 一回ではおそらく全部は分からないと思いますが。
 向こう側は透明の壁の仕切りがあるわね。


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 おいでなさいましたな。
 じ、爺や、これは・・・。 ゲソでゲソ! 「侵略! イカ娘」でゲソ!
 よくそんな漫画を御存じですな。
 想像してたのと違うわ。 「未知との遭遇」とか「X-ファイル」に出てきたグレイ・タイプかと思ったのに。
 こりゃまた随分オーソドックスなビジュアルですな。 子供の頃に見た「なぜなに学習図鑑」に似たような宇宙人の絵が載ってましたぞ。
 むしろタコ寄りかしら? でも7本足ね。
 そんな訳で、こちらでは「へプタポッド」と名付けたようですね。 ギリシャ語で「7本脚」という意味だそうで。
 もったいつけた登場の仕方するわね~。 ハッキリ姿を見せなさいよ。
 多分、半分以上は上のモヤで隠れてるんでしょうな。


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 あら? 彼女の今の気持かしら? 「不満」って書いてるわよ、爺や。
 ワーハッハッハ。 お嬢様のボケは面白い。 あれは「ヒューマン(人間)」でんがな~・・・って、こういうツッコミでよろしいですかな?
 オホホホホ。 その調子よ爺や。 もちろんワザと言ったのよ~、オホホホ。(あっぶねえ・・・)
 まずは自己紹介で御機嫌を伺うというところでございますな。
 ヒューマンで伝わるもんかしらねえ?
 コミュニケーションを取りたいという意思を示すことが大事なのでございますよ。
 相手がどこまで私たちの予備知識を持っているかも重要ね。


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 スミを吐いたわよ! イカタコ系は地球外生物でも同じなのね。
 これはおそらく彼らにとっての文字でしょうな。
 飲食店のロゴにありがちなマルにしか見えないわ。
 これは、いわゆる表意文字というやつですな。
 ヒョウイ? 文字にキツネが憑いたりするの?
 その憑依ではございませんよ。
 分かったわ。 南斗五車星のメンバーの一人ね。
 それは風のヒューイですな。 本日のお嬢様はボケがキレッキレでございますな、と言いたいところですが「北斗の拳」を知らない人には分かりませんぞ。
 そんなの気にしてたらボケれないわよ。 で、表意文字って?

 文字一つ一つが意味を持っているという文字体系のことでございますよ。 漢字も表意文字のひとつでございますね。

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 まあ、一日目はこんなもんかしらね。
 たいした成果はございませんでしたが、次の機会に期待ですな。
 ルイーズさんも大変ね。 異星人の言葉を解明しなきゃならないなんて、これは骨が折れるわよ。
 しかし、地球人と同じように「文字」という意思伝達の概念があると分かっただけでも大きな手掛かりでございますぞ。 あの円の形の文字のパターンをどう解析するかですな。
 とにかく敵意なのか友好なのか、どっち側なのかだけでも知りたいわね。
 各国もその判断に苦慮されとるようですな。 侵略ということになったら早く手を打たないといけませんからな。
 思うんだけどさぁ。 急に違う星の文明にわざわざ接触しに来て、「友だちになって下さーい」は無理があるんじゃない?
 そもそもですな。 概念のことを言い出すとキリがございませんが、どこまで我々の感覚に近いかが今のところは分かっておりませんからな。
 愛情とか憎しみとか? 争うとか、仲良くなろうとかの概念が彼らにあるかどうか?
 少なくとも違う星の生命体の存在を認識してコンタクトを取ってきたのには、「目的」という概念があるからでしょう。
 哲学だわねえ・・・。
 グズグズできないようですな。 もう中国が戦争の準備を進めてますよ。
 面積の割にフトコロの小さい国ねえ。  人民元の空売りでもしてやろうかしら。 爺や、資金の準備を。

 冷静になって下さい、お嬢様。 まずは18時間後の再コンタクトです。

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 この2体のエイリアンに対してドネリー博士は「アボット」と「コステロ」という名前を付けましたな。
 アボガドとカステラですって? なんて妙な食べ合わせかしら。
 絶好調でございますね、お嬢様。 爺やは感激しますぞ。
 何でも擬人名を付けたがるわね、西洋人は。
 アボットとコステロは40年代に活躍したアメリカのお笑いコンビですね。 
 どっちも男性だってどうして言えんのよ。 どっちがアボットでどっちがコステロなの? 昨日とは立ち位置が入れ替わってたらどうすんのよ。
 どうでもいいじゃありませんか。 それよりも、ようやくこの言語が解明されてきたようですよ。
 マジで?
 「武器を提供する」だそうですよ。
 突然のRPG的展開だわ。 武器というワードが出てきたのは穏やかじゃないわね。
 「提供する」というのが引っかかりますなあ。 彼らは味方という事でしょうか? 別の外敵が攻めてくると知らせてくれてるのでしょうかね?
 ボーッとしてちゃダメな状況だけは分かったけどね。
 この情報に中国が過剰反応を示しましたな。 「提供」を「使用」という風に解釈したようで、中国の行動にロシアやパキスタンなども追随しているようですぞ。

 武器を使用したいのはどっちの方よ、まったく。 異星人よりも中国人とまず話し合わないといけないなんて情けないわよ地球人として。
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 ビビった兵士が宇宙船に爆弾を仕掛けるバカをやらかして、アボットが死にかけているらしいですな。
 恥ね。 チキン野郎に限って武器で一線を越えるケースの典型だわ。 
 こちらでも避難する準備が始まってしまいしたな。 我々もそろそろ引き揚げますかな。
 爺や、私の我がままを聞いてちょうだい。 あと少しだけ経緯を見届けたいわ。
 承知いたしました。 「武器」というのはどうやら彼らにとっては「ツール」であることも意味しておるようですな。
 ますます抽象的ね。 でも人類に何か手を貸そうとしていることだけは強く感じるわ。
 イアンが表意文字にやたらに「0.083」という数字が使用されているのを突き止めました。 これは12分の1の数字です。
 要するに12ヶ国がひとつになれというメッセージかもね。
 ルイーズ女史がどうやら答えに近づきつつあるようでございますね。 お嬢様、爺やにもう少し時間をいただけますかな。 しかと情報を収集してまいりましょう。

 頼んだわよ。 
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 ただいま戻りました。
 早くね!?
 爺やの仕事の早さは福屋工務店なみですからな。
 何か分かった?
 大方のことは。 お嬢様、3000年後の地球はどうなってると思いますかな?
 想像つかないわね。 天体の寿命はともかく、人類はもういないでしょう。
 ご安心ください。 ピンピンしてますよ。 3000年経っても地球は現在と同じ座標軸にあるのです。 そして人類はへプタポッドの危機を救うことになります。 それが3000年後なのです。
 え?私たちが? よその惑星を救うの? そんな技術持ってないわよ。 ・・・そうか、3000年後はそれぐらいの文明になってるってことね。 イヤちょっと待って。 なんでそんなことがへプタポッドに分かるのよ。 人類に期待しすぎじゃない?
 それがですね、お嬢様。 へプタポッドの時間の概念に過去とか未来などというのはないのです。 彼らの文字がすべて円環で表現されるように、非直線的な時間軸で生きているのがへプタポッドなのですよ。
 3000年後に地球人が自分たちを救ってくれる未来が彼らには見えているのね。
 というよりも、未来だの過去だのとは無関係の、時制を取っ払った現実認識をしているのです。 過去も未来もすべて並列に知覚しており、結果が過程の積み重ねではなく、過程にはすべてその一瞬一瞬に意味があるのです。 結果も過程も同じ意味の中で存在しているのですよ。

 難しいわねえ。

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 ルイーズ・バンクス博士から身の上話をお伺いしてまいりました。
 そんなことまで?
 彼女は学者の夫と離婚していまして、ハンナという一人娘がいたんですが、なんと若くしてガンで亡くなられています。
 それは気の毒ね。
 しかしですね、お嬢様。 彼女はまだ未婚です。
 ハァ? 彼女が嘘をついてるの?
 娘や夫の思い出は、これから彼女の人生に起きる出来事なのです。 ルイーズはへプタポッドとの交流によって、未来も過去も超越した人生の経年を体験し、へプタポッド特有の現実認識能力を身につけたのです。
 未来を予知できるってことじゃなくて?
 微妙に違います。 未来は過去であって、過去は未来でもある。 すべて決まっているのです。 過去があるから未来ができたのではなく、人間の人生は何事も"結果"の集大成なのだということです。
 そう言われてもね・・・。
 私たちの人生の物語はどこかに向かっているのではなく、すでに到着(Arrival)しており、その場所でいかに満たされた想いの"文字"を埋めていくかが大切なんですよ。

358130_001.jpg
 すると彼女はこの先の人生を受け入れてるのね。
 彼女の夫となるのは、今彼女と一緒にプロジェクトに取り汲んでいる物理学者のイアンです。
 やっぱり。
 「一番の出会いは彼ら(へプタポッド)じゃない。 君だ」とプロポーズするようですね。
 まあ、けっこうだこと。 でも、いずれ彼とは離婚することを知っている・・・。
 そういうことですね。
 生まれてくる娘さんが病気で早世することを知ってて彼女は出産するの?

 それが彼女の人生だからです。 愛しい娘さんと過ごした"記憶"も彼女にとっては重要なのです。 娘を失う後悔よりも、わずかな時であっても娘を産んで共に過ごす素晴らしい時間の方を受け入れて選択するのです。

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 ところで、宇宙船への総攻撃は回避されたのかしら?
 ルイーズが中国軍のシャン将軍とケータイで話をしてカタがついたようですね。
 中国の軍の将軍がアメリカの学者さんとケータイ一本で話したぐらいで終わったの。 また意外にアッサリした形ね。
 ルイーズは1年後にシャン将軍と出会ってケータイ番号と亡くなった奥さんの最期の言葉を聞いていた記憶があったからです。
 奥さんの辞世の言葉で将軍が思いとどまったのね。

 不思議なループ構造ですが、へプタポッドとの和平が築かれてるのは明白なので、その時間の円環上にあるシャン将軍との関わりの記憶があるのも必然。 遡れば、ルイーズがへプタポッドと出会うのもすべて決定づけられていた円環上の到達点の一つなのです。

Arrival-Vfx-Breakdown-4.jpg 
 まあ、何はともあれ大ごとにならなくて良かったわね。
 宇宙船も雲のように消え去っていきましたな。
 爺やとはこの先何があろうと、一緒に過ごす時間は大切にしたいわ。
 そのお言葉だけで爺やは幸せ者でございますよ。
 何年後かしらね。 爺やが餅をのどに詰まらせて昇天する未来が見えるわ。
 おおっ!お嬢様にもそんな現実認識能力が! で?それはまことでございまか?
 いや・・・ちがうわね。 若いメイドと床の中で張り切ってる途中で心臓に来てしまったような光景が見えるわ。
 男の憧れでございますよ。 そうでございますか。 腹上死だと決まってるのなら、遠慮なくメイドたちをとっかえひっかえして楽しみましょうかな。
 爺や。
 ハイ?
 おまえ、クビ。

 へ?

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ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が「一度撮りたかったSF」はテッド・チャンのベストセラー「あなたの人生の物語」の映画化で、アカデミー賞でも8部門にノミネート。


意外に難しい映画でしたねえ。
100%理解された方はいらっしゃるんでしょうか?
アッシは半分ぐらいしか分かりませんでしたよ。 "変分原理"とか言われてもねえ。
だけども不思議な体験を味わえた上に、人生観について色んな事を考えさせられますね。

アクションなどのエンタメ要素を排した「第三種接近遭遇」物の映画としては出色の作品ではないでしょうか。
こういった未知の存在との触れ合いは知的好奇心がMAXに跳ねるばかりか、いずれこういう体験ができる未来が訪れやしないかという希望も膨れて大いに楽しめます。

しかし、ヒロインのルイーズが冒頭から辿っている愛娘の悲しい記憶が、実は未来のものであることが判明するところから、この映画のアクロバティックな仕掛けが、本作を観ている我々に深い学問を投げかけてくることにも気づきます。
もちろんそれこそがなかなか難しすぎて一筋縄でいくものではないのですが。 

私たちは少なくとも自分が死ぬという未来を知っていますし、ある程度はそれを受け入れています。
しかし、「死」が最期ではなくて、人生の輪の上に幾つもある着地点のひとつに過ぎないのならば、私たちの人生には無駄なことはひとつとしてないのです。
時間の流れに縛られることが無意味なのだと悟っても、そうはいかない生活を送ってはいますが、有意義な人生のヒントがほんの少し見えたような気がする映画でした。
・・・ちょっと大げさですかね。


「賢人のお言葉」
 
「若い頃、僕の時間は未来に向けて無限にあるように思えた。 今、僕は終末の時間から逆算する。 すると、人も風景も、そう、何もかもが違って見える。 僕は、疾走する」
 蜷川幸雄

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