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他にもこれ観ました  ~6月編(上)
2018年06月23日

いやあ、ビックリしたなあ。
久々にガチの地震きたな。 会社に来た途端ですぜ。

帰りはどうするよ、これ。 電車動いてねえし。
まあ、歩いたって1時間半ぐらいだし、これもいい経験だ。

てなわけで、テクテク歩いて帰宅。

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「あ~ら、アナタお帰りなさい」
「誰だ、オマエ。 ここで何をしとる」
「ホーホッホ。 お風呂になさいます? お食事になさいます? それとも屁ぇこいて寝ます?」
「今すぐ出て行け。 警察を呼ぶぞ」
「ホーホッホ。 今夜も子作りに励みましょうね」
「そこをどけ。 アッシは今からブログを書くのだ」
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「マジメか!」
「マジメじゃ!」
「ケッ!つまんねえの」
「まずは『デッドプール2』の感想だ」
「おっ、どれどれ」


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「デッドプール2」

ヒーロー映画とは一線を画したと言うより、もはやヒーロー映画の枠からハミ出ている。
カルチャーギャグの応酬から、シモもグロも全開と相変わらずのテンションで押しまくる放蕩劇画である。
今回はいきなりヒロインが死ぬという「ありゃま」な展開と、「007 スカイフォール」をパロッたオープニングタイトルからスタート。
「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」や「アナ雪」のディスりをはじめ、映画やセレブいじりの小ネタは事欠かず。
「X-MEN」の世界観を共有しながらも、X-MEN感はほぼゼロ。
それだけに期待にたがわぬオチャラケを発揮してくれて、実に楽しい限り。
魅力的なキャラクターも増量。
特に敵役のケーブルがかなり強く、そして意外に泣かせてくれる。

最後の掟やぶりの「時間戻し」をエンドタイトルの時に有効活用する離れ業には拍手。
「グリーンランタン」のことを一番触れられたくないであろう本人がこれをやってくれると、こっちも救われる。
続編とて、その勢いは全く廃れていない。

カメオもわんさか。 一瞬だけ映るブラッド・ピットが特におもろい。

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「俺ちゃんってさ、けっこういいとこあんだよね」
「意外に子供には優しいんだな」
「世の中、しつけと虐待の違いが分からんクソボケがあとをたたんからな。 そういう奴は俺ちゃんが直々にブチ殺してくれる」
「さすがはR15指定ヒーローだ」
        


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「ゲティ家の身代金」

1973年にローマで起こった「ジャン・ポール・ゲティ三世誘拐事件」の顛末をリドリー・スコットが映画化した実録サスペンス。

総資産額が約5億ドルとも言われたアメリカ人石油王ジャン・ポール・ゲティ。
彼の17歳の孫息子ジャン・ポール・ゲティ三世がローマで誘拐されてしまう。
犯人から要求してきた身代金は1700万ドル。 当時のレートで言えば50億円。
紀州のドンファンは「1億円ぐらい、ただの紙切れ」と言ったが、ゲティの爺さんにとっては50億円ぐらい陰毛一本程度の価値しかない。
だから少年の母親ゲイルは義父が身代金をスンナリ払ってくれると期待していた。
しかしゲティの爺さんは、さも当たり前のようにカネを払うのを拒否。
超がつく大金持ちのジジイは超がつく銭ゲバだったのだ。
「ここでカネを払ったら14人いる孫たちが狙われちまうわいな」という御仁の言い分も分からないではないが。

ヤクに溺れた夫(ゲティ家の長男)とは離婚しているゲイルはゲティ家とは切れているとはいえ、孫を助けようとしない義父を説得するための対決を強いられることになる。
これは犯人側にとっても同じ。 カネなどいくらでも持ってる大富豪が黙って身代金を払うだろうと思っていたら、完全にアテが外れた彼らも守銭奴ジジイを動かそうと過激な行動に出ることになる。
このパワーバランスの歪みが面白い話であるが、カネを払おうとしないゲティが実は何を恐れているのかが徐々に透けてくるところも見もの。

「資産が数えられるようなら本当の富豪ではない」
「カネなど空気と一緒だ。 いくらでもある」

クーッ! 1回言ってみたいセリフだ。

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「ふん。金持ちなんぞロクな奴ぁいねよ。 男の価値はな、アソコのでかさて決まるんだぜベイベー」
「悪かったな、つまようじで」
「金持ちにとってのお金に対する考え方ってのはおもしれえな。 金持ちは一種の才能だ。 ああいう奴だからこそ金持ちになるんだな」
「誘拐犯よりある意味モンスターだった男の虚無的人生を観て、「お金とは」を学ぶ映画だ」



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「犬ヶ島」

ウェス・アンダーソン監督によるストップモーションアニメ。
近未来の日本を舞台に描くファンタジーであるが、この監督、そんなに日本のことが好きだったのか。

大昔、犬と犬嫌いの小林一族が戦争をし、敗れた犬は服従を余儀なくされてペット化し千年が過ぎた。
時は今から20年後。
ドッグ病が流行するウニ県メガ崎市では、人間への感染を恐れた小林市長がすべての犬を“犬ヶ島”に追放する。
ある時、12歳の少年がたった一人で小型飛行機に乗り込み、犬ヶ島に降り立った。
愛犬であり親友であるスポッツを救うためにやってきたその少年は市長の養子で孤児のアタリ。
島で出会った勇敢で心優しい5匹の犬たちを新たに相棒とし、スポッツの探索を始めたアタリは犬たちと特別な友情で結ばれていく。
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「ハァ? なんだって? よく分からん話だな」
「まあ、SFと思ってもらっても差しつかえないね」
「なぜパペットだ? なぜ日本だ? なぜ犬だ? 何かのメタファーか?」
「いや、そんなに難しくはない。 世界には「支配と被支配」や排他的な関係の構図はあるからね。 実際のところ、ストーリーは大したことはないよ。 でも世界観の表現とか独特の映像がシブすぎるんだよね。 これはなかなか凄いよ」
「だからオメエよ、そういうことだよ。 映像が凄すぎて話が入ってきませんでしたってなパターンだ。 俺ちゃんだってよ、「カンブリア宮殿」観てたら小池栄子の胸ばっかり気を取られて話が入ってこねえもんよ」
「やかましい」
        


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「ファントム・スレッド」

本年度アカデミー賞で6部門にノミネートされたポール・トーマス・アンダーソン監督の最新作。
1950年代のロンドンを舞台に描く、大物の仕立て屋と、彼がモデルとして見出した一人の女性との危険な恋の物語。

高級婦人服の仕立て屋として英国を代表する存在であるレイノルズ・ウッドコック(ダニエル・デイ=ルイス)。
とにかく彼は完璧主義者。 というか神経質。
自分のペースを乱されるのをことの他嫌う。
バターが嫌い。 サプライズも嫌い。
人の食事中のナイフやフォークを使う時の雑音にイラつく。

それほどクセが凄いレイノルズは、レストランのウエイトレスをしていたアルマ(ヴィッキー・クリープス)を最適のモデルとして見染めて口説き落とし同居するようになる。
二人は互いに惹かれ合うが、レイノルズの気難しさは尋常ではない。
しかし、何かと文句を言われようとレイノルズを自分のものにしたいアルマは気にしない。
そして遂に激しいケンカへと発展するが、このアルマという女性もクセの凄さではレイノルズよりも異常なものを持っていた。
アルマの恐ろしい策略に翻弄されながらも、レイノルズは次第に彼女にのめり込んでいく。

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「変わり者の同士の男女の恋バナか?」 
「男も面倒くさい奴だが、女はもっとタチが悪い。 男の心を繋ぎ止めておくために毒キノコ使って死にかけの目に遭わせる。 何も知らずに看病してもらった男は「やっぱ君が必要だ」と泣きつく」
「ワーハッハッハ」 「笑うところじゃない」
「『白い肌の異常な夜』じゃねえか。 女が男に一服盛るのは昔からの定番だな」
「しかも2回やるんだよね。ダニエル・デイ=ルイスが洗面器持って便器に座ってる姿が可笑しくもあり、哀しくもあり」
        


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「ビューティフル・デイ」

昨年のカンヌ国際映画祭で脚本賞と男優賞を受賞したハードボイルド・サスペンス。
監督は「少年は残酷な弓を射る」のリン・ラムジー。

退役軍人のジョー(ホアキン・フェニックス)は人捜しのプロ。
それも犯罪がらみの行方不明者専門であるため、体を張らねばならない、ヤバい仕事である。
ある日彼は仲介人のマクリアリーから、誘拐された上院議員の娘の救出の仕事を依頼される。
選挙中のため、議員は事を公にしたくないらしいがジョーは躊躇することなく仕事を引き受けた。
娘の名はニーナ。 売春宿で働かされているという情報をつかんだジョーは金づちを手に強行突破。
見張りの人間たちを片っ端から撲殺したジョーは最上階にいたニーナを救出。
だがニーナは何故か人形のようにリアクションが薄い。
議員との待ち合わせ場所であるモーテルへ行くが、テレビでは議員が自殺したというニュースが流れていた。
その直後、部屋に乱入してきた警官たちによってニーナを連れ去られてしまったジョーはこの仕事の裏に不穏なものを感じる。
マクリアリーは殺され、ジョーの自宅では母親まで無惨な姿となっていた。
父親の出世のために州知事への“貢ぎ物”にされていたニーナ。
母親を湖に葬ったジョーはニーナを救うために知事の邸宅へ単身乗り込んでいく。

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「ホアキン・フェニックスは劣化してるのか、役作りなのか分からんな」
「両方だろうね。 でもここでのホアキンの存在感は素晴らしい。 ダークで暴力的な映画だけど、トラウマを抱えて自殺願望もある男が静かに葛藤と抗う姿をホアキンが見事に体現しているよ」
「フン。 DCユニバースの根暗ヒーローか? 男がメソメソするんじゃねえ。 ケーブルもそんな奴だったが」
「セリフの多い映画ではないが、ノイズに近い音楽とか、緊張感を強いるカメラワークなど、とにかく“刺さる”ね。 この監督さんのアプローチは面白い」
「俺ちゃん的にはヒッチコックの『サイコ』のモノマネがツボだ。 ところであのシャワーシーンのBGMを口で表現する時、なんて言う?」
「キーキーキーだろ。 いや、ヒィーヒィーヒィーかな?」
「いやいや、ヒャンヒャンヒャンだろ。 それか、キュッキュッキュッ。 違うか、これだと拭き掃除だな」
「どっちゃでもええわい」
        


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「いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち」

実はこれ、イタリアで2014年に大ヒットした風刺コメディー「いつだってやめられる 7人の危ない教授たち」の続編。

博士号を取得したからといって、それを生かせる場や仕事がないという現実問題は日本をはじめ世界中で珍しくない。
イタリアでも経済危機によって大学の研究費は削減され、研究者は給料が減らされるか、解雇される者も続出した
そんな時代背景の中、生活のために合法ドラッグ製造に手を出した7人の研究者たちはあえなく逮捕されてしまう憂き目に遭う。 これが前作。

そして続編の今回は、ドラッグ製造の罪で服役していた研究者たちが前科の抹消と引き換えに警察に協力させられることに。
それも合法ドラッグの摘発という冗談のような任務である。
法の網の外にあるドラッグ30種を見つければ彼らの前科は抹消される。
神経生物学者のズィンニはさっそく元のメンバーを招集し、イタリアに見切りをつけて外国で研究職に就いていた3人の新メンバーも加わった。
考古学者、計算科学者、経済学者、文化人類学者、解釈論的記号学者、解剖学者、メカトロニクス工学者、ラテン碑銘学者、教会法学者。
才能がありながらチャンスに恵まれない者たちで結成された「研究員ギャング」。
互いに自身のスキルを発揮しながら協力し合い、時にはプライドがぶつかって、いがみ合いながらも任務達成に向けて奔走する10人だったが・・・・

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「ガリ勉のアベンジャーズだな。 俺ちゃんは誘われても無駄だ。 殺しと盗みの大学が無いんだから博士号もない。 かわいそうな俺ちゃんだ」
「イタリアのコメディでガツンときた作品はおそらくこれが初めてかも。 イタコメは社会問題とか辛辣なメッセージを入れたがるところがあるから、変にシリアスなオチになってしまったりする映画も多いんだけど、これは予想以上にドタバタ映画」
「俺ちゃんに言わせればだな。 博学イコール優れた人間性じゃねえ。 勉強ばっかりやってた奴は周囲とのバランスの取り方を知らねえから、何をさせても加減も知らねえし、いざって時に自分をコントロールできねえのよ。 "いつだってやめられる"ことが辞められねえアホなのさ」
「列車のシーンは最高。 列車に飛び移ったバルトロメオがよろけて反対側へ消えていくところは劇場内大爆笑」


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「いやあ、いいヒマつぶしになったぜ」
「知らんまに一人増えてるじゃないか」
「お邪魔してます」
「お邪魔するな。 二人とも帰れ」
「もうちょっといいじゃねえか。 日本対セネガル戦を観ようぜ。 マネ、がんばれー」
「セネガルを応援してんなら尚更帰れ」
「日本も俺ちゃんを監督にしろよ。 "俺ちゃんJAPAN"はハンパねえぜ。 ワンプレー目から相手を潰すように選手に指示するからな、ケッケッケ」
「おまえ、まだその話題を引っ張ってんのか。 『バイキング』みたいだな」
「アホのひとつ覚えのカステレビと一緒にすんじゃねえ。  おい相棒、オメエもなんか言え」
「お邪魔してます」
「こいつもアホのひとつ覚えだな」
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レディ・バード
2018年06月18日

T0022770p.jpgどことなくマリア・シャラポワに似てる女優グレタ・ガーウィグ。
脚本も書ける才媛である彼女だが、遂に監督までやってしまった。
しかもアカデミー賞にまでノミネートされた。

女性で監督賞候補になったのは、リナ・ウェルトミューラー、ジェーン・カンピオン、ソフィア・コッポラ、キャスリン・ビグロー以来史上5人目。 なにげにエグいことになっているではないか。


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2014年の「フランシス・ハ」で「おっ?」と思わせて以来、あれよあれよと露出が増えて今やグイグイきているグレタ・ガーウィグ。
それも監督デビュー作がヤンヤヤンヤの大評判。

グレタ・ガーウィグが世界に羽ばたく入魂の処女作は、自らをレディ・バードと名乗る17歳の少女クリスティンの高校最後の一年間をみずみずしく描いた、ガーウィグの自伝的青春バイオグラフィーである。

17歳のヒロインを演じるのは24歳のシアーシャ・ローナンだが、うらやましいほどの違和感ゼロ。
この若さですでに3度のオスカーノミネートを誇る実力派。 ここでもまばゆいばかりの輝きを放つキラキラのシアーシャを堪能されたし。
ヒロインの母親を演じるのは「トイ・ストーリー」シリーズのアンディのママの声でおなじみ、ローリー・メトカーフ。


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ウチの名前はレディ・バード。 17歳の高校生やねん。
人は皆、ウチのことをクリスティン・マクファーレンと呼びよる。 うん。間違ってへんけどな。 本名なんかどうでもええねん。
そんなF1レーサーみたい名前ちゃうねん、ウチは。
誰がなんと言おうとウチの名前はレディ・バードや。

あれや、あれ。 レディー・ガガみたいなもんや。
レディー・ガガのことをステファニー・なんとかって呼ぶような人なんかおらんやろ? それみたいなもんや。

ウチのオトンオカンと養子の兄のミゲルとそのカノジョとの5人家族。
カリフォルニアのサクラメントに住んでるねん。
サクラメントやで。 ビミョーやろ。
カリフォルニア言うたらLAかシスコやわなフツー。

なんちゅうかな。 東京で言うたら八王子か町田やな。 大阪で言うたら茨木か八尾みたいなもんやな、サクラメントってとこは。
そらまあ、田舎っちゅうほどやないよ。 ないけども。 ウチの青春はそこにはないんや。 もっとグレートな街がウチを呼んでるんや。
ニューヨークやな。 ニューヨークに行ったるで福留さん。
大学行く時はニューヨークのごっつい大学に行くって決めてるんや。

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今は2002年。 数字の並びだけがおもろい年や。
もうじき日韓ワールドカップやな。 いや、そんなことよりも。
今日はウチのオカンと大学の見学や。
だからぁ。 ウチは地元の大学になんか行かへんちゅうてんねん。

オカンはホンマおもろいな。 車の中でカセットブック聴いておもろいか?
スタインベックの「怒りの葡萄」やで。 そら、ええ話やけども。 ウチも思わず感動したわ。
でもな、オカン。 あれか? 「怒りの葡萄」で「カリフォルニアってええとこやで!」って言いたいんか? ちゃんちゃら爆笑やな。

州立大学やったら、そらお金もそんなかからへんけどな。
ウチはニューヨークへ行く言うたら行くねや。
ミゲルが公立校へ行って刺された? 知らんがな。 州立にもナイフ持っとる奴なんぼでもおるわ。

ああもう、うるさいわ。 カネカネカネって。 オカンと大学の話になったらケンカになるわ。
うっとおしいねん! よっしゃ、走ってる車から飛び降りたるわい!
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「ホギャア~ッ!」
これが車の助手席から娘が飛び降りた時の母親の顔や。
こんなおもろい顔になるねんな。 これオカズにメシ何杯でも食えるで。

でも車から飛び降りるなんて、みんなマネしたらあかんで。 アタマ打ったら終わりやからな。
ウチは幸い腕の骨一本で済みました。
ピンク色のギプスに「オカンくたばれ」って書いたったわ。

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親友のジュリーとは何でも話せる仲や。 オナニーの話ばっかりやけどな。
日焼けマシンが欲しいんやて。
いや、まず先に痩せようや。 小麦色の肌はそのあとや。

高校生活もあと1年や。
ウチの学校は神学校やねんけど、正直どうでもええわ。
テキトーに歌唄って、テキトーにムニャムニャ唱えて、「聖体」とかいう味のないパン食うて卒業ってとこやな。

大学入試は内申書をバカにでけん。
ウチも生徒会長に立候補や。 どうせアカンけどな。

シスターが演劇でもやったらどうかしらなんて言う。
演劇か・・・ なるほど、ウチがニューヨークに行った時、スカウトされてブロードウェイの舞台に立つことも十分有り得るわな。 備えとしてちょっとは芝居のイロハをかじっといても損はないな。
ええやん、ええやん。 ウチは女優やで。 ヒヒッ。想像するとおもろいわ。

 ジュリーと一緒にさっそく演劇コースに行ってみた。 
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顧問のラヴィアッチ神父「みんなで泣く演技の練習をしよう。 誰が一番早く泣けるかな?」
おもろい。受けて立ったろうやないか。
嘘泣きはウチのオハコやで。

よーい、スタート!
ウウッウウッ・・・グスッグスッ・・ はやっ!誰や!? 神父さんかい! しかもガチて泣いてるやん!
はぁ・・・息子さんが。 薬物で。 お亡くなりに。 そりゃまた・・・


それよりも、ええ男見つけたで。 演劇コースも捨てたもんやないな。
ダニーって言うんか。 ウチのタイプやわあ。
なんと後日、ミゲルが働いてるスーパーでバッタリ。 運命や、これは運命やで。
 「ハ~イ、偶然ね」 「誰やオマエ」 そりゃそうよね。 ウチが一方的に知ってるだけやし。
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同じ演劇コースにいることを教えて、ようやく分かってくれた彼は、スーパーに来て整髪剤や何やらを買いに来たらしい。
「ジム・モリソンみたいな髪型にしたいんや」
「ええやんか」(誰や、ジム・モリソンて?エグザイルの新メンか? そうや、ミゲルに聞いたろ)

「おいミゲル。ジム・モリソンて誰やねん。 ちゃっちゃと教えたらんかい」

「知らんのかいな。 ドアーズのヴォーカルやないけ」
「ケッ!知っとるわい。 あんたが知ってるか試しただけじゃ、ボケナス」(なんや、バンドのアンチャンけ)

無題 mmm
これを機会にウチはダニーと仲良くなった。 いや、まだ恋人とか、そういうとこまでは。
実はウチはまだバージンや。 関西の名物リポーターやない。 それはタージンや。
処女や処女。 未通の女やで。
やっぱニューヨークに行くまでには卒業しときたいさかいな。
ダニーが最初の相手なら言うことなしや。

みんなで一生懸命練習した芝居も発表会でバッチリ決まったで。
せやけどな。 恋の終わりは突然や。
その打ち上げのパーティーで、うちはエグいもんを見てしもうたんや。
オシッコがしたかったけど女子トイレが満員やったから、「ええい、かまへんわ」と、男子トイレに入ったったんや。
そしたらダニーが男の子とブッチューしとったわ。
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ええねん。 人の生き方とか愛の形はそれぞれや。
でも、ダニーはどんな気持ちでウチと付き合っとったんや。 よう分からんわ。
まあ、彼はウチのオカンにもウケがイマイチやったしな。

ウチらの家が「線路向こう(スラム)」にあることを、ウチはジョークのつもりで言うたんやけどな。
感謝祭で家に呼んだ時、「本当に線路向こうに(家が)あるんですね」ってヘラヘラしながらオカンに言うんやからな。
ウチ、オカンにメッチャ怒られたわ。

どうでもええわ。 さっさと新しい恋のアドベンチャーを始めたるで。
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見てみぃ、どこのジャニタレかと思うたやろ。
ウチの男を選ぶセンスはヤバすぎるで。
全身からサワヤカ・ビームが出まくっとるやんか。
カイルっていうんやけどな。 ミュージシャンの卵やな。

クラスにおるジェナっていう女の子の知り合いやねんな。
制服のスカートを思いっきりミニにしてシスターから怒られてても、どこ吹く風のオトコマエの女子や。
こういう子に憧れんねん。
ジェナと仲良くなって、ウチはカイルとも付き合うようになった。 演劇はもうええわ。 ジュリーとも最近疎遠やけどな。

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バージンを捧げるのはカイルしかおらん。
彼も「僕は童貞なんやねん」と言う。 ピッタリや。 二人で一緒に青春の思い出を築くんや。

夢にまで見たセックスという経験。
まあ、こんなもんか。 
このあと、カイルは信じられんことをほざきよった。
初めてとちゃうんやと。 童貞やなかったんやと。 ウチは何人目かの相手やと。
なんじゃそれ。 なんで自分が童貞なんてしょうもない嘘つくねん。
信じたウチもアホやけどな。
そんなこと気にするな? 嘘つき相手に処女を捨てたことは一生の恥や。


それにしても人生ってもんは色々と起こるわ。
ジュリーと喧嘩した。 最近は付き合いもなかったし、演劇のことも放ったらかしにしたし。
ウチかってな、色々あんねん。 進学のこととか、カレシのこととか。 あんたとツルんでばっかりという訳にはいかへんわ。

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バイト先のコーヒーショップでダニーとバッタリ会った。 ってか会いに来たんやな。
まさか復縁を迫られるんかと思うたけど、ウチにはちゃんと話しときたかったみたいやな。

「だんだんひどくなってる。 親にもどう打ち明けていいか分からない」 
自分がゲイであることに目覚めて、ひとしきり悩んでたんやな。 色んな人に色んな悩みがあるわ。
自分の気持ちに正直に生きられへんってのは、そら辛いわな。
自分のことを卑下せんでもええよ。 きっと、みんな分かってくれる。 ウチがその一人や。
「大丈夫。 大丈夫やでダニー」

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ジェナと仲良くなりたいために、ウチもしょうもない嘘をついとったわ。 カイルのことをとやかくは言われへんわ。
ジェナってお金持ちの子やねんな。 ウチもちょっと引け目があったんやろな。
住所を聞かれた時、ダニーのお祖母ちゃんの家の住所を言うたんや。 表通りにあるきれいなでっかい家や。
ウチの家の3倍はある、お城みたいな家や。

つまらん嘘はすぐばれるわ。
ジェナがその家に行ってしもた。 おりもせんうちを訪ねて。
その家の人にメッチャ怒られたらしいわ。 そらそやな。
ウチも嘘つきのしょうもない女や。

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オカンとは相変わらず、大学のことになったらぶつかってばっかりや。
口を開いたら「うちはお金がないお金がない」の繰り返し

オトンが失業した。
前からかかってる鬱病の調子が良くないんやろか。
だからというてウチはあきらめへんで。 目指すはあくまで東海岸の大学や。

オカンが勧めるのはカリフォルニア大のデービス校。 チャリで行けるとこやんけ。
しかも農業学校やないかい。 なんでうちが畑耕して牛の乳もんで喜ばなあかんのや。

オカンはキレた。 「あんたを育てるのにいくらかかったと思うてんの!」
言うたな。 それは子供に一番言うたらあかんことやで。
「じゃあ教えて。 いくら? 働きだしたら耳揃えて返したるわ!」

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それでもな、カイルの嘘に傷ついたウチを車で送ってくれて、何も言わずに抱きしめてくれて一緒に泣いてくれたのは嬉しかったわ。
ウチを怒る理由をいちいち探してんのかと思うほど、うっとおしいこともあるけど、オトン「それがママの愛」って言う。
家のお金のこととか、オトンのことやウチのことなど、考えたら心配事だらけやもんな。

でもな、逆に言うたら、心配せんで欲しい、ウチのことを信用してほしいねん。
がんばれって背中を押してほしいねん。

プロムのドレスを買いについてきてくれたオカンやけど、何を試着しても褒めてくれん。
「なんで褒めてくれないの。 私のこと好き?」
「愛してるわよ。 ママはあなたに最高の状態になってほしいの」
・・・そうか・・・。その言葉で十分やで。 なら、ウチも言うわ。 オカンに育ててもらった娘やさかいな。
「今が最高の私だったら?」

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その夜、カイルやジェナたちとプロムに行くために車に同乗した。
だけど、どこかに電話してたカイルがプロムの会場に行くのは辞めて友だちの家に行くことになった。

カーラジオからデイヴ・マシューズ・バンドの「Crash Into Me」が流れてた。
カイル「だっさい歌やで。 俺この歌きらいやな」と言った。
そやな。 今まであんたとツルんでたウチはホンマにだっさいわ。
「Crash Into Me」はウチとジュリーの大事な歌や。
ウチにとって高校生活最後の大事な夜を共に過ごす相手はあんたらやない。

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好きなものや楽しいこと悲しいことをいつでも共有できる友だちってなかなかできるもんやない。
人生の一番の宝や。
そんな宝のような友だちがそばにいたのに気がつかんかったウチはホンマにアホやったな。
許してな、ジュリー。 プロムで一緒に踊ってもらえるやろか。
ジュリーという友だちがいたウチの青春。 あんたという存在がウチを最高の自分にしてくれたんや。
来年からサクラメントの街にウチはおらんけど、心はずっとジュリーと共にあるで。

そう。 実は幾つか受けてた東海岸の大学の一校から「補欠合格」の通知をもらったんや。
ウチは今、サクラメントが大好きや。 ここで生まれ育ったことを誇りにウチは翔ぶで。 
雛鳥やったレディ・バードが巣から翔び立つ時が来たんや。

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ニューヨークの大学に行くことを別に黙ってた訳やないけど、ちょっと言いそびれてただけやねん。
ダニーの口から聞いてしもうたオカンはいっぺんにふくれてもうた。
全然、口もきいてくれへん。

そうしてるうちに、いよいよニューヨークへ旅立つ時が来た。
空港へ送ってもらう車中でも相変わらずオカンはムッツリや。
このままお別れとは本望やないけどもしゃあないわ。

いずれ必ず成長したウチの姿を見せるさかいに。
マクファーレン家の誇り高き娘として。
ウチの名は、クリスティン・マクファーレン。

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ニューヨーク→サクラメント→ニューヨークという舞台で物語が動いた「フランシス・ハ」。
一方でサクラメント→ニューヨークへと動くヒロインの物語である「レディ・バード」は、あたかも「フランシス・ハ」の“エピソード1”的でもあり地続きのような作品で、監督の故郷でもあるサクラメントへの郷愁がたっぷり。

それと同時に自分の将来の分岐点に立つティーンエイジャーの「あるある談」や情景描写だけに留まらないのが本作の秀逸なところ。
その世代の子を持った者の親心もリアルな視点を加えて、温かい親子愛のストーリーに仕立てあげた他、見栄の張り合いと、喜怒哀楽のシェアで彩られた多感な世代の友情物語もつぶさに描かれている。

時代設定は2002年だが、もうひと昔の青春ロマンチック映画のヒロインは政治批判を避け、他人の価値観を批判しない代わりに恋愛には割と粘着質で、恋さえ成就すれば万々歳で済ませるキャラクターが多かった。
この映画のクリスティンのような、好きなものはもちろん、嫌いなものも嫌いとハッキリ言って、テコでも動かぬ価値観だけで人生のアクセルを踏むヒロインは珍しい。
議論が通じないというか、議論を拒否するほど、自身のプライオリティは絶対なのだ。
冒頭で母親と口論して車からエスケープしてしまうシーンだけで彼女のキャラが分かる。

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自分のことを「レディ・バードと呼んで」と言うところからすでにイタくて、大人に何かと突っかかる姿勢や、自分一人で生きてきたような感覚を覗かせる点も若気の至りとはいえ反感を覚える部分もあるけれど、「いや待てよ、自分の若い頃はどうだった?」と振り返れば、なるほどリアルなキャラクターかもしれない。

さしたる理由もない都会志向をはじめ、シスターの車へのイタズラや、中絶反対の講演で学校にやってきて一説ぶっている女性講演者への暴言にみられるコンサバティズムへの拒絶反応。
それに対して、音楽の好みは「平凡だ」と言われようと、みんなから愛されるものを作った表現者へのリスペクトを込めた一種のこだわり。
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保守と革新が混ざり合った立ち位置で揺らぐティーン独特の透明さと危うさを持ったキャラクターが不思議な輝きを放っている。
自分本人というモデルがあったとしても、グレタ・ガーウィグの創造したヒロインの生身の躍動感がこの映画最大の魅力。

ティーンの等身大的なキャラクターのアツ盛ストーリーが、ほぼノンストップのノリで語られ、後半にはキチッと泣きの波も押し寄せる。
一見王道の青春映画ながらも、誰もが共感できる部分が満載。 かつヴィヴィッド。

シアーシャ・ローナン、そしてグレタ・ガーウィグ。 二人のレディ・バードがいよいよ本格的に飛翔したティーンフィルムの傑作。
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「賢人のお言葉」
 
「鳥が飛べるのに私たちが飛べない理由は、鳥たちが完璧な信念を持っているからにすぎない。 つまり信念を持つことが翼を持つことなのである」
 ジェームズ・バリー

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友罪
2018年06月12日

T0022277p.jpg嫌な事件ばっかりだ。
東京目黒で起きた幼児虐待死のニュースを見たばかりの今これを書いているが、ドス黒い気持ちが抑えられない。

テレビに映ってるあの鬼畜の夫婦の顔を見てるだけでメシがまずい。
自然と握り拳に力が入り、「この人でなしどもめ」と声が漏れる。
彼らがこの先、刑務所に入るかどうかは定かでないが、仮にブチ込まれたとして、我が子に満足に食事を与えなかった彼らは、ムショの中で三食を食うのだろう。 我々の税金でだ。

そんなバカなことがあるか。
同じ目に遭わせてやればいいのだ。
おまえらに「ゆるしてください」と言う人権などない。

・・・という、その場の感情をワッと吐き出して、やがて事件を忘れてしまうこちらは所詮部外者だから仕方がないのかもしれないが、誰かが罪を犯したことの因縁で繋がった人たちの、その先のことまで思考は進まない。

例えばこの事件にしても、あの夫婦にも両親などの親族はもちろんいるだろうし、仲のいい友人もいるだろう。
亡くなった子は女の連れ子だが、それとは別に両容疑者の実子である1歳の男の子もいる。
罪の周囲にいる、これらの人々にはもちろん何の罪もない。
何年かして、法律的に罪を償った夫婦にも我々がとやかく言うことは何もないはずだが、世間の感情はそうはいかない。

彼らが手にかけたのは身内だが、よその人様に及んだ犯罪ならば、その傷の輪はさらに広がり、それだけ世間の心は寛容ではなくなる。 それだけ法律が甘いということだろうか。
罪を犯して罰せられるのは犯罪者だけで済まないのが、人間の処罰感情の厄介なところだ。
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江戸川乱歩賞作家である薬丸岳は犯罪被害の遺族や加害者の家族、または少年犯罪などをテーマに、人の罪をあらゆる角度から見つめた小説が多い。

2013年に発表した「友罪」は、主人公が偶然友人になった青年が、かつて世間を震撼させた凄惨な事件の被告である元少年Aであることを知って葛藤する物語である。
事件の真相を追究するのが本題ではない、著者初めてのノン・ミステリという問題作が映画化。 薬丸作品としては初の映画となる。
監督は「64 - ロクヨン -」の瀬々敬久。

もし友人の過去が"その人"だと知ったら。 家族の一人が突然、国中を敵に回す罪人になったら。
人はどこまで心を開き理解し合えるのだろうか。 罪を背負う、罪を償うことの重みにどれだけ向き合えるのだろうか。

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【益田】

益田純一(生田斗真)はジャーナリストの夢破れた男。
人の命よりもカネになる記事が大事だという上司を殴って職を捨てることになった。
部屋を借りる金も使い果たしてネットカフェ暮らしに堕ちた。

とにかく寮のある職場なら何でもいいと、町工場「カワケン製作所」の見習いの仕事を見つけて働き出す。
奇しくも「鈴木」という男も益田と同じ日に働きにやってきたが、自分のことを一切語ろうとしない寡黙な男であった。
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鈴木(瑛太)は多少マイペースだが、工場の経験もあるのか、仕事は真面目にそつなくこなした。
寮に同居する先輩の清水や内海に前職のことを聞かれた益田が元ジャーナリストだったと話した時、いつも周囲に関わらない鈴木はそこだけ微妙な反応を見せた。
「他人を詮索するのに疲れたの?」
奇妙な男だったが、益田はむしろ鈴木にいい印象を持った。

人との交流を拒む鈴木を清水たちは余計に面白がり、鈴木が留守中の頃を見計らって、彼の部屋の物を物色してプライバシーを探ろうとする。
益田も有無を言わさずに誘われて、押し入れの中から一冊のスケッチブックを見つける。
そこには色々な鉛筆画が描かれていたが、最後の方には女性の裸の上半身の画が描かれていた。
清水たちは「変態の証拠見っけ~」と笑っているが、益田は砂を噛むような思いだった。

鈴木のほんの人間的な部分を垣間見ただけで、ジャーナリスト時代の嫌な思いが蘇ってくる。
誰にだって触れられたくない過去はある。 自分にも・・・・・

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益田には中学生時代に自殺した同級生の友人がいた。
あまり人と打ち解けれなかった益田にできたたった一人の友人である桜井学は、周囲から激しいイジメに遭っており間もなく自ら命を絶ってしまう。
以来、益田の家を定期的に訪ねている。

の母・さちこ(坂井真紀)は亡き息子のたった一人の友だちだった益田を歓迎し、思い出話に花を咲かせていたが、そんな彼女も末期の病に冒されて余命幾ばくもなく、自宅療養で静かにその時を迎えるのを待つ身となっている。

「いつまでも強く正しい益田君でいてね」の母は優しく彼に微笑む。
その笑顔と言葉が益田の胸をえぐる。
本当は違うのだ。 自分は強くも正しくもない、卑怯な弱い男だったのだ。
を死に追いやった張本人は・・・
本当のことを伝えなければならない。 いや・・・。息子には素晴らしい友だちがいて良かったと信じたまま死にゆく母親にはとても本当のことを話せない。

自分がにした仕打ち。 彼の母親に嘘をついていること。
益田も人に言えない罪を背負っていた。


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【美代子】

藤沢美代子(夏帆)はコールセンターのオペレーターをいているが、彼女には正直苦手な仕事だった。
時には名指しで恫喝するようなクレームをまくし立てる客もいる。
「あんたの名前覚えたからな」  背筋が凍る。
夜道を一人で歩いている時でも、後ろから人が来ただけですくみ上がってしまう美代子は一人の男の影に怯えていた。

田舎から上京してきた時は、何も大それた夢を持っていた訳ではない。
ただ、何を浮かれていたのか、変な男に引っ掛かったと気づいた時には後の祭りだった。
唐木達也(忍成修吾)という男と付き合い始め、やがて彼にそそのかされてAVに嫌々出演させられた。
別れたつもりでも達也はしつこく美代子を追いまわし、引っ越しても居場所を突き止めては美代子に激しい暴力を振るう。

ある時、追いかけてきた達也から逃げる途中で、一人の男がかばってくれた。
男は達也にただ無防備に殴られ蹴られるままになっていた。
男は「鈴木」と名乗った。
部屋で鈴木の怪我の手当てをした美代子は、それ以来、何度か彼と会うようになった。

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鈴木はほとんど自分のことを語りたがらなかった。
自分に対してというより、世間そのものを遠ざけているようだった。

隠したい過去があるのだろう。 それは自分も同じこと。
だが、鈴木の隠したいこととはなんだろうかと美代子は思う。
彼が美代子の思ってるような優しい男ではないかもしれない裏の顔への危惧が無いわけでもない。

だが、路上に置かれた箱の中に入っていた捨て猫を見つめていた顔や、体を張って自分をかばってくれた鈴木の傷だらけの顔を見ていると、美代子には少なくとも達也のような悪人にはとても思えなかった。

鈴木の勤める会社の人たちの飲み会に同席した際、カラオケで鈴木が無邪気に「ドラゴンボール」の歌を唄うそばで過ごしたほんのひと時は、美代子がこれまで他人と共にしたどんな時間よりも幸せだった。

それに鈴木には「マスダ」という仲のいい友人がいるようだ。 友人か・・・ うらやましい・・・ 自分も鈴木のいい友人になれるだろうかと美代子は唄う彼を見つめる。


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【青柳】

鈴木の顔つきはによく似ていると益田は思っていた。
中学時代に自殺した同級生に似ていると鈴木に言うと、「俺が自殺したら悲しいって思える?」と聞かれた益田は動揺した。
まるでが直接自分に訴えてるかのような錯覚を覚えたのだ。
「悲しいに決まってるだろ」
じゃあ、なぜ? 14年前、なぜ学にあんなことを言ってしまったのだ?

益田は慣れない肉体労働に疲れていて、めまいを起こし、機械で指を切断してしまう事故に見舞われる。
その時、鈴木の冷静で的確な判断により、指はつながった。

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退院祝いで清水たちと共にカラオケパブに行き、楽しそうに歌を唄う鈴木の姿が益田には嬉しかった。
鈴木はどこで知り合ったのか、きれいなカノジョも連れてきていた。
指のことで益田が改めて礼を言うと鈴木「友だちだから」と嬉しそうに言う。
やっと本当の友人になれた気がした。

だが、益田は雑誌記者の元恋人・清美(山本美月)から埼玉で起きた児童殺害事件について意見を求められていた。
17年前の連続児童殺害事件の犯人・青柳健太郎の再犯ではないかと疑っているらしい。
少年院出所後の青柳の足取りが掴めていないらしいが、正直それを調べるのは乗り気ではない。

仕方なくパソコンで検索した益田は、当時14歳だった青柳健太郎の顔写真を発見する。
一瞬、かと思った。 いや、このに似た少年は・・・・
更に検索した益田は医療少年院で青柳を担当していた教官・白石弥生の顔を見て驚く。
鈴木の部屋で見つけたスケッチブックに裸の姿が描かれていたあの女性の顔だった。

カラオケで唄うスマホの動画を見つめる益田
鈴木は「青柳健太郎」なのか・・・?


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【弥生】

白石弥生(富田靖子)は少年院の法務教官兼技官をしている。
彼女は17年前に起きた連続児童殺害事件の犯人・青柳健太郎の担当であった。
だが青柳は少年院を出所した後、連絡が取れなくなっており、先日埼玉で起きた、幼い男の子が殺されていた事件は青柳の再犯ではないかと所内で声が上がっていた。

17年前に青柳の起こした事件は日本中を震撼させた。
2人の子供を残虐な手口で殺して遺体を放置したその犯人が当時中学生だったのもショッキングなことであり、犯人の少年Aについて連日マスコミは彼の過去や人間性について興味本位の報道を垂れ流し続けた。

少年Aこと青柳の医療更生を担当した弥生は、絶対彼を立ち直らせるのだと誓った。
生まれついての怪物などいない。 人を信じて真摯に寄り添えば必ずや人間の心は息を吹き返すのだと弥生は信じて疑わなかった。
来る日も来る日も彼女は青柳に寄り添い、心を砕いた。
そのため、自分の家族のことを全くかえりみることなく、やがて彼女の家族は離散することになった。

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弥生には高校生の娘・(蒔田彩珠)がいる。
ある日、娘の方から連絡があり、久しぶりに会ったものの、娘が突き出したのは「人工妊娠中絶同意書」だった。
しばらく疎遠だった娘の素行うんぬんよりも、たとえ3ヶ月だろうと1ヶ月だろうと命は命。 それを簡単に殺してしまうという考えが弥生には親として残念でならなかった。

彼女は院内で問題を抱えた少年にいつも言う。
「想像して!」 人が死ぬということを。 この世から消えるということを。 もうその人に会えないということを想像して、と弥生は命を奪う罪の苦しみを問いかける。
それに考えが及ばない子に育ってしまったのは、もちろん自分の責任なのだが。
「今さら母親ヅラ?」
戸惑うしかない母親に業を煮やした娘は「もういい」と去っていった。

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青柳弥生にだけは連絡をくれた。
ただ、今どこにいるのかまでは口を開いてくれないが。

仕事もしているらしく、その職場で友人ができたのだと言う。
友人のことを語る嬉しそうな青柳の顔は、17年前に少年院に入所してきた頃の彼の顔とは比較にならないほど、憑き物が取れたかのように穏やかだった。

彼がまた同じようなことをするはずがないと弥生は確信したが、青柳がこれからはしっかりと生きていこうというような意思の強さがあまり感じられなかった。
ただ、何か些細なことがあれば今にも折れそうな危うさと、一つの決意を持っているような気がした。


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【山内】

タクシー運転手の山内修司(佐藤浩市)の息子・正人(石田法嗣)は、3人の子供をいっぺんに死なせてしまう交通事故を起こした。
もうそれから10年になる。
山内は定期的に事故の遺族を訪ねては謝罪し、賠償金の振り込みをずっと続けている。

だが、そういった行為も却って遺族の感情を逆撫でするのか、「もう来ないでくれ」と門前払いを食らうことも多くなった。
幼い子を失った篠塚(光石研)は「あんたのそういうところが独りよがりなのだ」と憤慨する。
「通帳にあんたの名前でお金が振り込まれてるのを見ると、あんたのお金で生かされてるようで悔しいんだよ」
それでも自分にはこうするしか他にやり方が分からない山内「申し訳ありませんでした!」と土下座する。
「あんたはなんにも分かっちゃいないよ!」

確かに毎度毎度決められたルーティーンのように顔を見せて、いつもの決まった言葉を口にして、機械的にヘコヘコ頭を下げて、お金さえキチンと払っていれば、その時だけは自分の気が済んだかのようになっている。
加害者の苦しみを言う訳ではないが、どうしたら許してもらえるのかが分からないという苦悩のどん底から少しでも気が楽になりたいという甘えが潜んでいるのを山内も否定できない。
謝罪という形式の中で「自分を許している」卑怯な男だと山内は自分をさらに責めさいなむのだった。

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息子が事故を起こした時、その罪を償うために、山内は家族を解散した。
人様の家族を壊したのだから、自分たちの家族だって壊してしまえばいいんだと、家族の形を解散して10年になる。

義父の葬式で妻と久々に再会した時、息子の正人が婚約したのだと聞かされて山内は愕然とする。
人の幸せを奪った犯罪者が、遺族の苦しみをよそに自分だけ幸せになるなどと、山内自身のポリシーとしては有り得ないことだった。

さらに婚約者は妊娠していると聞かされて、山内は居てもたってもいられず息子を訪ねる。
「おまえの為に家族を解散したってのに、おまえが家族を作ってどうするんだ」
その時、婚約者の千尋(北浦愛)が「罪を犯した人は幸せになれないんですか」と抗議する。

ああ、そうだよ。 幸せになっちゃあいけない。 一生背負って行かなくちゃいけないんだよ。 そういうことでしか犯した罪は償えないんだ。 だって被害者の身にもなってみろよ。 そんなもん納得する訳ないだろ。 許してもらえるまで謝って謝って謝り続けるのが俺たちの義務なんじゃないのか。・・・・・・そんな思いの中で、罪を犯した息子を愛してくれた女性や、新たに生まれてこようとする命には何の罪もなく、それらの幸せを奪って、日蔭を行く生き方まで押しつけていいものかと山内は葛藤するのだった。


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全編に渡って作品を支配する重苦しさは最後まで軽くなることはない。
犯した罪といかにして向き合うかが、原作とは違う群像劇スタイルで描かれ、これという一区切りをつけぬまま、答えのない問いだけを残して映画は締めくくられる。

それぞれが何らかの業を秘め、それに囚われながら方向の見えぬ生き方を探し続けている。
そこに決して人の過去や罪に寛容ではない俗世の悪意が彼らを揺さぶる。

鈴木と名乗っていたかつての少年A青柳は、益田が撮った動画が元でマスコミに身元がばれ、美代子はAVをばらまかれる。
人の過ちに対して、世間の好奇心というものは実に残酷なリアクションをするものだ。
また、少年院の教官・白石や交通事故加害者の父親・山内などは、命の芽生えということをきっかけにして、それまで身内にまで累を及ぼしてきた己の生き方を見つめ直すことを強いられる。

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益田のすべては中学時代の体験にある。
弱い者いじめを間近に見てきた彼がジャーナリストを目指したのは、すべての社会悪に立ち向かいたかった表れだったのだろうが、現実のジャーナリズムは失敗を犯した者の弱みをネチネチとつつくだけのシロモノだった。
ジャーナリズムとは名ばかりの、ある意味「イジメ」にすぎない便所の落書き稼業など益田が見切りをつけるのも頷ける。

いじめに遭っていた中学の親友だった桜井学益田は保身のために見捨ててしまう。
葬式ごっこに加担し、寄せ書きに「じゃあね」と書いてしまった。
「僕は死んだ方がいいのかな? 益田君はどう思う?」と尋ねてきたの電話に、彼は答えた。
・・・・・「勝手にすれば」

殺したも同然の罪を背負い苦しみ、流れ着いた町工場で、益田は自分と同じく何かを背負っているような「鈴木」と出会う。
何かに苦しんでいるのなら助けてあげようと思ったのだ。 そして益田鈴木は友だちになった。
だが、それも束の間、またしても自分の行為によって益田は友人を失ってしまう。

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幼い子供2人をこれという理由もなく残虐に殺した鈴木こと青柳の罪の呵責など、一番知りたい感情は最後まで語られない。
彼は少年院出所からこれまでのあいだ、被害者の何を思って生きてきたのだろうか。

中学生で事件を起こすまで一人として友人がいなかったのであろうことは想像がつく。
女性教官には恋愛に近いほど心を許し、小さな箱の中で鳴いている子猫に気を留める姿が彼の孤独の深さを物語る。

本名を伏せてまで人生をやり直したい。 いや、本名では生きられない。
自分を隠してまで友情など求めるのは甘い。
だが、彼は益田との出会いで友情の甘美を知った。 美代子との出会いで、人を思いやることの歓びを知った。
しかし過去は彼が未来を見ようとするのを許さない。 もはや呪縛なのだ。

ならば自分で罰するより誰かが罰してくれた方が楽だとばかりに、青柳は清水にあるいは達也に無防備に殴られ続けては「ワハハワハハ」と笑う。 死にたいのだ。 ああこれで死ねると思うと笑いがこみ上げる。
だがこの痛みが同時に彼の心に光を与える。
「それでも・・・生きたいんだよね」

彼は心の中で益田に問う。
「僕はどうすればいいんだろうか?」
益田がブログに綴った、「生きててほしい。友だちだから」というメッセージは果たして彼に届いただろうか。

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「罪を犯した人は幸せになれないんですか」というセリフがあるように、法的に償っても被害者や遺族がいる以上は前を向いて生きていくことはおいそれと叶わない。
いつまでも過去と向き合わねばならないのが罪人の運命である。

だが、息子が犯した罪の謝罪に明け暮れる山内は、もはや謝罪が様式化してしまい、そんな生き方を家族にも押しつける。
自分の気が済むからだ。 遺族の為ではない。 
だが実際にもそうやって生き続けている前科者、あるいはその家族の人はいるのだろう。
死んだ人が戻ってこない以上は、どんな償いも割に合うものはない。

だからといって山内のように自分たちも同じようにしますと、家族を解散したってそれは自己満足に過ぎない。
ではどうすればいいかという答えは永遠に見つからない。

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凶悪な犯罪を犯した者をニュースなどで見ると「こんな奴、死刑にしてしまえ」と自分も含めて多くの人は思う。
誰もが悪を憎み、被害者と悲しみを共有する。
犯罪者の心の方を向くことは最初から拒絶し、人として認めず、命も軽んじる。 それが普通の感情なのだろう。
だが、それも結局は自分にとっての現実ではないからだ。
他人様の話である。

それが自分の家族や友人だったらどうだろうか。
自分の身内から犯罪者が出たら、山内のように家族を解散するだろうか。
友人が前科持ちだと知ったら、過去は過去と割り切って今までと変わらぬ気持ちで友人でいられるだろうか。
おそらく分からないだろう。

連日のようにニュースで、一生かかっても消えないような罪を犯す者たちを私たちは見て知って「罪を償え」と怒る。
だが、私たち自身もこれが正解だという罪の償い方を知らない。

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芸能人の些細な失敗を待ってましたとばかりに袋叩きにすることが面白半分に広まる今の時代。
世の中全体の器が小さくなっている。
責められる者の気持ちなど、自業自得なんだから知ったことかと、「道徳=不寛容」の精神が暴走する。 そんな時代だからこそ、この映画を観て考える価値はある。

死刑反対とは言わない。 むしろ死刑はあっていいし、被害者の痛みをないがしろにしてはいけない。
だが、裁かれる者、その家族や友人の心に少しでも耳目を傾けることも意味はある。
そこに贖罪と赦しの意義を見出すヒントの光が射すのではないか。

子供をなぶり殺した夫婦も、新幹線で凶刃を振り回した若造も、これからは法律以外に世の中によって裁かれる。 そこで彼らがどう世の中と向き合うか。 彼らなりの償いを見届けねばならない。 「勝手にすれば」ではなく。
現実、いずれ彼らは社会に戻ってくる。 その時、彼らは何を語り、どう生きていくだろうか。
その時、私たちの耳目は何を受け止めてどう感じるだろうか。


それにしても、こうやってあれこれ書いていても、思慮浅く人命を奪う者への憎悪はいかんともし難い。
本当に世の中は嫌な事件だらけだ。
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「賢人のお言葉」
 
「人間は自分の現在と未来によってしか、自分の過去を償うことが出来ない」
 ヘンリック・イプセン

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他にもこれ観ました  ~5月編(下)
2018年06月07日

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「ピーター・ラビット」

peter-920x584.png こんちわ!ピーターでーす!
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250.jpg まいど、ベンジャミンでおます
peter-920x584.jpg 僕らの映画、なかなか評判がいいんじゃね?
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s 原作をこよなく愛する人にしたら、これはちょっと・・・という感じかもしれんけどね。
peter-920x584.jpg まったく原作を無視してるわけじゃないが、映画にしたらこうなりましたってこと。 確かにドタバタコメディという大胆なアレンジをどう受け止めるかだろうね。 でも老若男女楽しめるエンタメとして無難な出来だし、目くじら立てるほどじゃねえっしょ。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s 動物と人間があの手この手で対決し合うドタバタは「ひつじのショーン」や「バッグス・バニー」のノリやね。そこに加えて異種同士の相互理解というテーマが孕んでるってのは考えすぎかな?
peter-920x584.jpg おでこコツンで全て解決。 トランプと金正恩もすればいいのにな。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s 想像するとちょっとキショいのぉ。
peter-920x584.jpg キャラクターがとにかく多彩で、それぞれに"持ちギャグ"がある。 その笑いの取り方がシンプルでツボを心得ているよね。 
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s 歌を歌っていると必ず邪魔が入るスズメのカルテット。 朝が来るたびにキレるニワトリや、電気ショックフェチのハリネズミのおばさん。 鹿の「ヘッドラ~イト」もおもろかったなあ。
peter-920x584.jpg コメディもいけるドーナル・グリーソンの意外な一面も収穫だな。 トイレの水はどんなにきれいでも飲めんけどな。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s で、結局、三姉妹の長女は誰やねんな?
peter-920x584.jpg そういえば誰だっけ?
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s なんやかんや言われながらも、この映画続編の製作も決定。 楽しみやね。
peter-920x584.jpg よし、この勢いで今回の「他にもこれ観ました」は僕たちで好き勝手に進めよう。 管理人は屁こいて寝とるし。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s ええんかのぉ。

        

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「GODZILLA 決戦機動増殖都市」

peter-920x584.jpg なんだよ、メカゴジラ出てこねえじゃねえかよ。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s その代わりにメカゴジラのパーツのナノメタルが増殖進化して都市型要塞になってるという斬新な展開になっとったな。
peter-920x584.jpg いや、考え方は面白いけど、そういうのが観たいんじゃないの。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s クリエイターの作りたいものと受け手の観たいものの感覚がズレとるんやな。 これもワシらの映画であーだこーだ言われてるのと一緒。
peter-920x584.jpg でも、怪獣映画は「やっぱコレだよねー」っての観たいじゃん? 双子の姉妹の新種族が出てくるから、モスラまで期待しちゃったしよぉ。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s 主人公もさんざん周りを引っ掻き回しておいて、最後にゃ、そこまでしてゴジラを倒したくないみたいなこと言い出すんやからな。 この主人公、どないやねんって思うなあ。
peter-920x584.jpg まあ、そこが人間のリアルな弱さだね。 ゴジラを倒すには、人ならざるものと化す覚悟がいるんだよ。 最終章の次作はキングギドラ登場かな?
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s でも、ゴジラ強すぎやわ。 ナノメタル漬けにしてもピンピンしとる。
peter-920x584.jpg 大丈夫。 我々ウサギが力を合わせればゴジラなどおそるるに足りず。 実はいい作戦があるんだよね。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s マジで? どんな作戦?
peter-920x584.jpg まずはベンジャミン。 1プレー目で相手のクォーターバックを潰してこい。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s 何言ってんだ、オメエ?
peter-920x584.jpg 逆らったら試合に出させてやらねえぞ。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s だからなんやねん!

        

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「孤狼の血」

peter-920x584.jpg ウサギじゃけぇ、なにをしてもええんじゃ。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s どないした、急に?
peter-920x584.jpg マクレガーのジジイ、タダや済ませへんで。 絶対タマ取っちゃるさけえのぉ
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s マクレガーのジジイは死んだやないけ。 しっかりせんかい、ピーター!
peter-920x584.jpg いやあ、久々に東映の極道映画だよ。 しかもこれ、なかなかの力作。 さすが白川和彌監督、こういうギトギトした人間たちのバイオレンス絵巻はお手の物だね。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s DQN系マル暴刑事が、抗争関係にある二大暴力団と危険な駆け引きに出る物語やけど、最後の最後まで手が込んだ話になっとったのぉ。
peter-920x584.jpg まさに食うか食われるか。 一見、暴力だけがものを言うような世界だが、実はどこに落とし穴があるか分からない狐と狸の化かし合い。 伏線の張り方や、あとで意味をなす人物やアイテムの使い方も巧妙だね。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s 前半は役所広司がキレッキレやが、後半からは松坂桃李の独壇場。 「娼年」もよかったが、彼はいよいよ本物になった。
peter-920x584.jpg なあ、豚のウンコってどんな味なんだろね?
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s しらんがな!

        

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「私はあなたのニグロではない」

Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s 公民権活動家の作家ジェームズ・ボールドウィン(1924~1987)の著作やインタビューなどを基に、豊富な資料映像を駆使して、人種差別の実態を暴いていくドキュメンタリーやね。
peter-920x584.jpg アメリカの大統領が今、ああいう奴なんで、時代が逆行しているかのように白人至上主義がのさばり出してきた。 いや、逆行というより、なんも変わってねえな、あの国は。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s この映画を通して感じるのは、被差別者の痛みというものを外にいる人間がいかに頓着しないかやな。 差別というものは「する側の罪悪感」と「される側の苦しみ」の間に、かなりの隔たりが必然的に生まれるんや。 そこが差別というものの恐ろしさや。 だからいつまでもなくならんし、根が深く残る。
peter-920x584.jpg テレビショーの司会者が、ボールドウィンに向かって「君らはなんでそんなに悲観的になるの? 世の中は変わってきているのにそれでも希望はないの?」とか聞く。 ボールドウィンは「問題をすり替えてる限り、希望なんてありませんよ」とピシャッと答える。 いくらスポーツ界や政界に黒人が進出しても、この国自体は何も変わっていない。 黒人が安心して街を歩ける国じゃないんだ。 
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s と、いうボールドウィンの訴えは50年経っても今の世相にそのまま通じる。 その間に多くの血が流され、差別をオブラートでくるむような欺瞞が横行しては、社会全体が現実に目を背けてきた。 学ぼうとも変わろうともせんかった。
peter-920x584.jpg いろんな昔の映画の映像が出てきて、それらから多くの誤解や無知な層を生み出していったかが理解できる。 
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s 肌の色の違いなんか気にするな、いちいち何でも差別差別とか騒ぐなとか言うのがおるわな。 そこや。 差別を生み出したものがそういうことを言う。 そうやって人の苦しみに気を留めてこなかった、それまでのツケの反動が出て、白人と黒人を別々にしろということを差別主義者が堂々と街角で声を上げる時代になっとる。 "逆公民権運動"や。 どこへ行くんや、この国は。

        

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「レザーフェイス - 悪魔のいけにえ」

peter-920x584.jpg 昨年亡くなったトビー・フーバーの代表作と言えばホラーの金字塔「悪魔のいけにえ」。 それの前日譚というか、いかにしてレザーフェイスが誕生したかを描くシリーズ8作目。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s 「悪魔のいけにえ」の前日譚なら以前、「テキサス・チェーンソー ビギニング」があったけどな。 まあ、ええか。
peter-920x584.jpg 息子の5歳の誕生日にチェーンソーをプレゼントする母親。長男も次男もジジイも揃ってイカれてる最強のサイコファミリーだけでなく、復讐に取りつかれた保安官や、中盤から登場する精神病院の脱走者たちなど、ヤバい奴だらけ。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s やたらに理想に燃える看護士のネーチャンもそうやな。 全編に異常さが漂っててテンションの高い語り口で進行し、観てる側としては脱走メンバーのうちの誰がソーヤー家の三男なのかという推理も楽しめる。
peter-920x584.jpg 僕はてっきりサロペットを履いたデカい奴かと思ったけど。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s グロさは思ったほどではなかったが、先読みをさせない面白さはあったな。
peter-920x584.jpg ヒロインの最後の殺され方といったら、情け無用の瞬殺。 あそこでウダウダ引っ張らないのがレザーフェイスだな。

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「ランペイジ 巨獣大乱闘」

peter-920x584.jpg 素晴らしいっ! 怪獣好きにはたまらん直球スペクタクルだ。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s 突っ込みどころ満載ながらも、突っ込むのはむしろ野暮。 できれば4Dで観るのがオススメかも。
peter-920x584.jpg 遺伝子実験の失敗によって白ゴリラ、狼、ワニが巨大化&凶暴化。 いいないいな、俺たちもでっかくなりたいなあ。 そんでもってマクレガーのジジイをプチュッと踏みつぶしてやるぜ。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s だからジジイは死んだっちゅうねん。 いや、それにしてもかつての東宝の怪獣ものを彷彿とさせてくれるのぉ。 サブタイトルにたがわぬ、「巨大生物」×「建物破壊」のコンビネーションのカタルシスが炸裂しとるで。
peter-920x584.jpg ゴリラのジョージがサイコーだ。 手話であれだけ通じ合えれりゃ言うことなし。 案外しょうもないことをするというか、イチビリなところがあるし、ボケをかぶせたり、ド下ネタをブッ込むというまことに愉快なゴリラだったね。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s そういえば3本のゴジラ映画に出演された星由里子さんが亡くなられました。 御冥福をお祈り申し上げます。

        

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「ラッカは静かに虐殺されている」

peter-920x584.jpg イスラム国って、今はどうなってんのかな?
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s 完全に消えてはおらんやろうけど、だいぶ勢力が弱まったんやないかね。 そらそうと「イスラム国」って呼び方は辞めようやないか。 あやつらは国やない。 ただのイキりたがりのゴロツキ集団や。 この先の表記はISや。
peter-920x584.jpg ISがシリアのラッカを占領し、首都とすることを宣言したのが2014年。 暗殺や公開処刑が日々繰り返される恐怖の街と化した。 これに対して、市民がシリアの現状を世界に伝えようと秘密抵抗組織を結成。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s 「Raqqa is Being Slaughtered Silently(ラッカは静かに虐殺されている)」の頭文字から取られた「RBSS」という名の市民ジャーナリスト集団や。 彼らは、ひどい有り様となっているラッカを撮影してはSNSにアゲて国際社会に訴えとる。
peter-920x584.jpg 「カルテル・ランド」のマシュー・ハイネマン監督が「RBSS」と1年以上も行動を共にしながら、一人のジャーナリストに焦点を当て、一睡もできないような恐怖の中で敢然とテロリストたちに戦いを挑む姿を追った、壮絶なドキュメンタリーだね。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s とりあえずボカシは入っとるけど、死体が転がってる光景など、きっつい映像が出てくる。  「RBSS」の共同創設者であるアジズという青年に密着しながら、このドキュメンタリーが語られていくが、とにかく気が滅入るわ。 
peter-920x584.jpg ISの奴らはどんな小さな意見さえも許さんのだな。 「ほっとけほっとけ、言わせとけ」ってことができないのか、なんでそこまで血眼になって一人のジャーナリストに付きまとうんだろ? おっそろしいな。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s 脅迫されて引っ越ししてもすぐに居場所がばれる。 で、アジズさんはドイツへ逃れるんやが、そこではネオナチが移民排斥を訴えるデモに出くわしたりする。 この排他根性こそ、ISの思想と同じ。 今の世界はどこに行ってもISの思想だけは生き残ってるんや。
peter-920x584.jpg テロとの戦いを名目にアサド政権はシリア市民を殺し、今度は米軍の空爆で関係のないラッカの市民に大勢の犠牲が出てる。 戦いはいつになったら終わるんかね?
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s ISの暗殺の犠牲になった同胞を思いながら、「なぜ自分じゃなくて彼らが・・・」と嘆くアジズが、タバコを加えながらガタガタと震えだすシーンは衝撃や。

        

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「のみとり侍」

Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s 猫の蚤ぃ~、取りまっしょぉ~い。
peter-920x584.jpg お願いします。もう痒くて痒くて。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s 自分でやれ。 おまえはいつから猫になったんじゃ。
peter-920x584.jpg この映画に出てくる、女性に愛を奉仕する裏家業「猫の蚤とり」って本当にあったのかな?
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s 曲亭馬琴の書物に三行程度そんな記述があるそうや。 まあ、男同士のお店の陰間茶屋があったぐらいやし、いくら男社会の時代でも女性相手の男娼があってもおかしくないわな。
peter-920x584.jpg よし、俺らもやるか。 うさぎの蚤ぃ~、取りまっしょぉ~い。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s 我々の交尾は10秒程度で終わるからな。 やり方によっちゃあ相当ボロい商売になるで。 それより映画やけどな。
peter-920x584.jpg 人情喜劇ってところだけど、なんかフワフワしてた。 もっと笑いに走ってもよかったんじゃないかな? 「テルマエ・ロマエ」的なカルチャーギャップの可笑しみを期待しちゃってたんだよね。 阿部寛のキャスティングがこれではもったいないよ。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s 斎藤工演じる寺子屋の先生のエピソードは必要だったか? もっと濡れ場を!

        
               
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「モリのいる場所」

peter-920x584.jpg 明治・大正・昭和をまたにかけて多くの作品を残し、「画壇の仙人」と呼ばれた画家・熊谷守一。 この人、変わった人だね。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s 30年間まったく家の外に出んかったんだとよ。 鬼級の引きこもりやの。
peter-920x584.jpg 創作してない時は庭にいる鳥や虫や草木をずーっと見て過ごしてたらしく、生き物が凄く好きだったたんだね。 マクレガーとは大違い。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s 熊谷守一のエピソードを基に、熊谷ことモリ(山崎努)と妻・秀子(樹木希林)とその周りに集まってくる人々を描いた物語や。 いや、これは予想外の傑作やったな。
peter-920x584.jpg これといった事件が起きる訳じゃないんだけど、本当に色んな人が入れ替わり立ち替わり登場しては、ジンワリと染みるような挿話が積み重ねられてるね。
Tumblr_ozu365Hd9o1tr6wqbo4_250 s そこや。 モリが庭で様々な生き物を見るように、我々もこの映画の中で、人の営みの尊さを見せられるんやな。 色んな生命が息づく世界の素晴らしさ。 そこで生きていることの幸福感。 それだけで、あとは何も要らん。 妙な感動に包まれる独特のムードを持った快作や。


1044730-peterrabbit-2.jpg 
おーい、管理人。 オメエの代わりに感想ブログ書いておいてやったぞ~

いつまで寝てんだ、こいつ?

見ろ。 こいつ寝グソ漏らしとるぞ。 きったないやっちゃのぉ。

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フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法
2018年06月03日

T0022838p.jpgアメリカはフロリダにあるウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート。
その近くを通っているアーロー・ブロンソン・メモリアル・ハイウェイ(国道192号線)。
この国道沿いにカラフルなモーテルが建ち並んでいる。

リゾート開発に併せ、観光客を当て込んで建てられた安モーテルだが、今やすっかり寂れてしまい、普通のアパートの家賃さえ払えない生活困窮者たちの避難場所となっている。

きらびやかな夢の楽園は目と鼻の先にある。
同じ「街」なのに、夢よりも今日明日の生活費に血まなこになる人たちがその日の暮らしをしているという、冗談のような経済格差がフロリダに存在する。

現実とファンタジーが背中合わせになった、彩り豊かな“もうひとつの夢の園”を舞台に、一人の少女と母親のかけがえのない日常を描いた美しくも切ない物語。
低予算の小粒な作品ながら、世界中の映画賞を席巻した感動作が日本に降臨。

貧しくとも明るく楽しく・・・。
やがて訪れる夢の終わり。 
それでもなお信じたい。 夢見る力が廃れぬ魔法があることを。 


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ライラックに塗装された壁が一際目立つモーテル
これが「マジックキャッスル・イン&スイーツ」。
一泊40~50ドル。

朝食も駐車場もWi-Fiも無料。
なんたってディズニー・リゾートまで歩いて10分というのがいい。
さぞかし、観光客で大賑わいと言いたいところだが、泊まりがけでディズニーに来る客は寝泊まりするためのお金もケチらない。
一拍や二泊ぐらいなら何百ドルかかったって、やっぱり直営のホテルで過ごすのだろう。

このモーテルだって観光客が泊まりには来るのだろうが、実際のところは貧困者層の臨時住居みたいになっている。
ホームレスとはまた違うのであるが、例えば普段から蓄えが無く、突然失職して住んでる所の家賃も払えない状態になることもあるし、働き出してもスズメの涙しか稼げぬ仕事に就けなかったら、不意のホームレスになる。
ここにはそういう人たちが集まっている。

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ムーニーちゃん(ブルックリン・キンバリー・プリンス)。 オムツのような名前の少女は今6歳。
おませでイタズラが大好きだ。

タトゥーがバリバリ入ったヴィジュアル系のママの名はヘイリー(ブリア・ヴィネイト)。パパはいないようだ。
ママは失業したばかり。 そんな訳でこのモーテルに暮らしている。

ムーニーにはもちろん貧乏などはピンとこない。
広い道路の向こうには夢と魔法の国がある。
だから周りは絵本から飛び出したようなお店や明るい色の建物が一杯。
道の向こう側に行かずとも、ムーニーにとってはここが夢と魔法のワンダーランド。
近所のスクーティディッキーとツルみながら、イタズラと冒険の毎日。

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“ちびっこギャング”3人組は、今日はどんな悪さ、いやどんな遊びをするのか。
ツアーのヘリコプターが上空を飛ぶ。
「中指をくらえ!」
やめなさい。 そんな下品なこと、どこで覚えたんだ?

向いのモーテル「フューチャーランド」に新しい人が引っ越してきたらしい。
駐車場にその人の車が停まっている
さっそく"ちびっこギャング"出動。 2階の外廊下にスタンバイ。
下の車めがけてツバ吐き開始!
ペーッ!ペッ!ペッ!
やめなさいっつうの。

当然怒られる。 結局みんなで車の拭き掃除をさせられた。 なんのこっちゃ。
車の持ち主の御婦人の孫娘、ジャンシーと仲良くなったものの、ディッキーはお父さんにガチで怒られて、ムーニーたちとはもう一緒に遊べなくなった。

無題 ppp 
スクーティムーニージャンシー
メンバーチェンジした新生ちびっこギャング始動。
彼らの次なるイタズラは?

ムーニーの住んでるマジックキャッスルを探索。
『入室禁止』の部屋発見。 上等だ!
ムーニー隊長、ブレーカーを発見いたしました。
ブレーカーは落とすためにあるものよ、ムフフのフ。
モーテル一斉停電。 ワーハッハッハ! ちびっこギャングの力を思い知ったか!

当然怒られる。
マジックキャッスルの管理人、ボビーさんは(ウィレム・デフォー)は怖いぞ。
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どう見ても軽く2~3人殺してる顔だ。
怒られるのはママだけれど。
「今度やったら出て行ってもらうぞ!」

ボビーはいつもムーニーたちのイタズラに手を焼かされている。 他住人の苦情も絶えない。
だが、本気で彼女たちを追い出そうとは思っていない。
ここに住み着かざるをえない事情を抱えた人たちのことや、どこでも遊びたがる子供たちがケガでもしないようにと気を病んでいる。
“こう見えて”いい人なのだ。

管理人さんがいい人だからって宿泊費はタダではない。
毎日その日のお金を工面しないとワヤなことになる。

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次の仕事がなかなか決まらないヘイリー
愚痴ってばかりはいられない。 こうなりゃ、なんだってやらなきゃ。

リゾートホテルの玄関口でスタンバイし、通りかかった宿泊客たちに香水の路上販売。
「ブランドものよ。 お店で買うより安いわよ」
ブランドものどころか、真っ赤なパチモンである。
そばでムーニー「アタシも使ってるのよ~ん」 したたかでござるのぉ。
2~3本売れりゃなんとかなるわけなのだが。

食べるものは、ダイナーで働いているスクーティのママ、アシュリーからワッフルのおこぼれをもらい、教会のフードドライブのお世話になることも。
ヘイリーにしてみれば時には惨めな思いもする。 ボビーとの口論もしょっちゅうだ。
それでも、この母親はまるで明るさを失わない。
今日は今日。 明日は明日なのだ。
幼い娘を不安にさせないようにしているのか。

だからムーニーには切羽詰まってる感覚は薄い。
路上の香水売りも、食べ物のおこぼれをあずかる毎日も、楽しいひと時なのである。

362655_002.jpg 
ある日、ムーニースクーティジャンシーのちびっこギャングたちは空き家だらけのエリアを探索した。
カラフルな建物ばかりだが、そのほとんどが廃屋である。

その中の一軒に入ってみた彼らは、暖炉を発見する。
おおっ!すげえ! サンタが入って来るやつだよね、これって。

スクーティが確かライターを持ってることを知っていたムーニーは暖炉に火をつけてと頼む。
・・・・・・・・・・
3人は別れて帰宅した。

florida-project-2017-burning-building-review-brooklynn-prince.jpg
モーテルに帰ると、ちょっとした騒ぎになっていた。
近所の家が火事らしい。 消防車がワンサとやってきた、その非日常にヘイリーのテンションが上がっている。
火事とケンカは江戸の華。 火事とアリゲーターはフロリダの華。
ねえねえムーニー、めっちゃ燃えてるよ。 こんなの滅多に見れないから見物に行こうよ。
でも、誰も住んでないのになんで火が出たんだろうね? まっ、どうでもいいか。

おおっ! インスタ映えするじゃんよ。
はい、ムーニー、笑って。 どうした?怖い顔して。 


一方、スクーティの普通じゃない様子に母親のアシュリーは悪い想像を膨らませていた。
残念ながらこの想像が当たってるらしいと確信したアシュリーは、スクーティムーニーと遊ぶのを禁じ、ヘイリーがワッフルをもらいに来ても素気無く追い返す。

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アシュリーの態度が突然硬化した、その理由がヘイリーには分からない。
まさか、ムーニーがそれに関わっていることなど知る由もない。

香水売りの仕事もホテルの警備員に咎められて、いよいよ生活はピンチになった。
背に腹は代えられねえってか。 "体を売る"という意味なら同じことだっしょ。 やっちゃるしかねえか・・・。

以前の仕事はストリッパーだったヘイリーにとって、最後の手段に出る決意をするのはさほど難しくない選択だった。
何よりも愛するムーニーとの暮らしは絶対に手放したくない。

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ムーニーは、暮らしに微妙な変化が起きていることをなんとなく感じる。
いつもではないが、時々ママが急にせわしなくなるのだ。
しばらくしたら一人でバスルームに入らされる。
それもラジオを持ち込んで音楽を大きめの音量で掛けながら、ママから声がかかるまで一人風呂。
ママは何をしているのだろう? こんな時間が最近多いけど。

自分があの家を燃やしちゃったからだろうか。
スクーティとも遊べなくなったのも、そのことだろうかとムーニーの心にとげが刺さる。
毎日イタズラばっかりして楽しかった。 人が困ったりする姿がなんであんなに面白かったのだろう。
やっぱり悪いことをすると、いいことなんかない。


ある時、いつものようにバスルームにいたら、突然知らないオジサンが入ってきてビックリ。
「あれ? ガキがいるじゃん」 後ろの方で「だからそっち行ったらダメだって!」とママが怒鳴っている。
誰だったのだろう、あのオジサン。 なんか、嫌なものを見てしまったような気分・・・

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ボピーは、ヘイリーたちが住んでる部屋のドアをどんどん叩き続ける男に出くわした。

また、なんかやらかしたのか、あの女・・・。
はいはい、ここの管理人ですけど、そんなに乱暴にドアを叩かれると困るんですがねえ。
え? マジックバンドを盗まれた? ディズニーワールドでチケット代わりになる、あの腕輪のこと?
ここの女が盗んだの? う~ん・・・・その女の住んでる部屋まで知ってるってのはどうゆうこと?
その理由をあんたの奥さんや子供さんに知られてもかまわないのかな? だよね? 納得できないだろうけど、ここは大人しく帰った方がいいんじゃない?

・・・やれやれ。 やっぱりそうか。
おい、ヘイリー。 見ず知らずの人間を部屋に引っ張り込むようなことをするんだったらよそでやれ。 まったくよぉ。


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基本、モーテルにはひと月以上を経過しての居住は違法になる。
毎月一回だけは他の場所に滞在しないといけないのだ。

近所のモーテル「アラビアンナイト」に行くと、10ドル値上がりしていてモメる。
ボビーが間に入って話をつけてくれるも、ヘイリーの態度が気に入らないマネージャーから滞在そのものを断られた。

行き場のないこの母娘を受け入れてくれたのはジャンシーのおばあちゃんだった。
車をツバでベットベトにされたことなど、それはそれ。 困った時はお互い様。
むしろ、ムーニーは友だちの部屋で寝泊まりできてテンションも上がる。

一泊しのいだ後、ヘイリーアシュリーの部屋に行った。
謝罪と共に家賃の無心をするが、売春をしていることをなじられたヘイリーはカッとなって激しい暴行を振った。 スクーティの見てる前で。
やってしまったことを悔やんでもあとの祭り。

後日、児童福祉局がヘイリームーニーの元にやってきた。
真夏の昼下がり、ムーニーの夢の魔法の世界が終わりを告げようとしていた・・・・
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全編、iPhoneだけで撮影された「タンジェリン」で世界を驚かせた監督ショーン・ベイカー。
その前作では二人のトランスジェンダーの娼婦とバイセクシャルのタクシードライバーの物語を描いていたが、今作でも社会の片隅に目を向け、サブプライム層の人々の風景を深い視点で描いている。

貧困はケースによっては自己責任だとか言われる部分も少なくないが、ショーン・ベイカーは無慈悲に切って捨てず、本人や社会の在り方などの是非そのものは置いといて、なるべくフラットに日常を切り取り、きらびやかな背景から貧困の現実を浮き彫りにして見せている。

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おとぎの国の延長線上にあるパステルカラーの一帯は、その外見とは裏腹に、明日を夢見ることもままならず今日を生きることで精一杯のマイノリティがひしめいている。
過酷な現実の日々を、少女の目線で故意にフィルターに掛けながら、さりげなく陰と陽を仄めかす切り口が面白い。

キシミーの街の開発当初の展望はこんなはずではなかったはずだ。
だが、思ったほど観光客は流れてこず、むしろ臭いものにフタのような欺瞞に満ち溢れた胡散臭さが前面に出たイビツな街となってしまった。

この映画でも描かれてるように、ゲストハウスやモーテルは次々と閉められ、一部はゴーストタウンのようになっているという「ディズニー・バブル」の当て外れや、隠れホームレスの吹き溜まりとなっている宿泊施設の現状など、夢の国のそばの「夢の終わりの国」の皮肉なギャップが様々なことを考えさせられる。

ちょっとしたボタンの掛け違いなのであろう。
わずかな軋みから人生が大きく逸脱していった落伍者のレクイエムがケバケバしい風景をバックに描かれる、れっきとした社会派のドラマである。

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全編に渡り、愛くるしい表情が絶えないムーニーを演じたブルックリン・キンバリー・プリンスは奇跡的ともいえる掘り出し物。
2歳で女優でデビューした才能豊かな彼女は演技経験はさほど多くないのだが、この輝きというか、あまりにリアルなパフォーマンスは驚嘆に値する。
最初からずーっと無邪気に明るい表情だったムーニーが最後に泣く。 その顔が忘れられない。

「タンジェリン」でも演技経験のない人をキャスティングしていたが、ムーニーの母ヘイリー役のブリア・ヴィネイトは監督がインスタグラムから見つけてスカウトした人。 もちろん演技経験なし。
どうなっているのか? 監督がそのポテンシャルを見抜いてさらに引き出すのか? どうしたら、そんな離れ業ができるのだろう。

ムーニーの親友ジャンシー役のヴァレリア・コットも、大型スーパー「ターゲット」に母親と一緒に来ていたところを、監督が見かけてスカウトしたのだそうだ。

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本作でモーテルの管理人ボビー役を好演し、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされたウィレム・デフォー。
奇しくもムーニージャンシースクーティには父親がいないので、あたかも子供たちの父親代わりのような存在となって、時に厳しく時に優しく見守る、映画の中の唯一のモラルとしてストーリーをけん引して行く。

ボビーが、モーテル前の公園をうろついている挙動不審な老人を詰問するシーンは、物語の背景であるフロリダの問題点を抜け目なく提示している。
フロリダ、特にディズニー・ワールド界隈は小児性愛犯罪が多いという。
これもひとつの恐ろしいギャップである。

子供たちの安全を気にかけているボビーのアンテナに引っ掛かった怪しい老人。 問い詰めると喉が渇いたので自販機を探していると言う。
おおそうか、じゃあ俺が案内してやろうと、遠慮する老人を無理やり引っ張っていったボビーはこの後ブチ切れる。

本筋とはなんら関係が無いシークエンスだが、ボビーと老人が対峙する一連のくだりはじっくりと時間が割かれていて、夢の国の裏側を垣間見せている。

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この先はラストシーンについて。

ヘイリーが売春をしていることが発覚し、福祉局に目をつけられ、やがて母と娘は否応なく引き裂かれる運命が訪れる。
ムーニーを母親から引き離して里親の元へとやるのが良しと判断した役人たちがシビアにそれを執行しようとする。

ファンタジーの時間は過ぎ去った。 母や友人との楽しかった、かけがえのない日々が過去となり、もう二度と戻れないかもしれない。
こうなることは幼い胸の中で薄々感じていたのだろうか。
不安で不安でたまらなくなり、その現実を受け止めれないムーニーは大人たちのスキをついて逃げ出す。
このシーンの時は、彼女が事故に遭わないかとヒヤヒヤしたが。

そしてムーニーが辿りついたのは、ジャンシーの住むモーテル。
「あなたは親友よ。 でももう会えないかもしれない・・・」
痛々しいほどに顔を歪ませて泣くムーニー
そんなムーニーをじっと見ていたジャンシーがこの後、突然意外な行動に出る。

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ジャンシーはとっさにムーニーの手を取って一緒に駆け出す。
一体どこへ?と思いきや、二人の少女が走って走って足を踏み入れていく夢と魔法の国。

二人が駆け出した瞬間からエンドロールの暗転まではiPhoneで撮影されている。 「タンジェリン」で見せたショーン・ベイカー必殺のシュートテク。
しかもディズニーには許可を取っていないガチのゲリラ撮影。

夢はいつか覚める。
信じていた魔法もその手の中にはないことも知る。
夢を持てと言う大人が、誰よりも夢を持たず、子供から夢を取り上げる。
世界はきれいなことばかりじゃない。 でも・・・汚いことばかりじゃないよ。

キャッスルからキングダムへ。
見てごらん、ムーニー。 夢と魔法の国はすぐそこに。
あきらめてはいけない。 捨て去ってはいけない。 人生のミラクルはいつだってそばにあるよ。
信じてきたものを大切にして、強くなっていこう。
つらいこと、悲しいことを乗り越える魔法が君にも必ずある。


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この唐突な行動をiPhoneのカメラがずっとその背中だけを追い続けて、突然映画は終わる。
一瞬「え?そこで終わり?」みたいなブツ切れだが、あとでジワジワと込み上げてくる感動は、ハッピーエンドを超越した「マジカルエンド」と評されたのも頷ける。

かつてない試練が迫るムーニーに、今一度、ファンタジーの空間へとジャンシーが引っ張って行く。
まだ夢は終わってはいない。 夢を信じていいのだという希望をiPhoneの映像というリアルな画が訴える。
現実的にムーニーヘイリーは離れ離れになってしまうし、それを思えばなんとも切ないのだが、マジックキングダムが視界に入った瞬間にスカッと映画が終わるこのミラクルなラストは、今まで味わったことのない感慨をもたらしてくれる。


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「賢人のお言葉」
 
「あなたは深いところで、とてもよく知っています。 たった一つの魔法、たった一つの力、たった一つの救いがあることを。 それは「愛すること」だということを」 
 ヘルマン・ヘッセ

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ボストン ストロング ~ダメな僕だから英雄になれた~
2018年05月29日

T0022914p.jpg先日、ボストンマラソンで川内優輝選手が日本人では31年ぶりの優勝を成し遂げた。

スタートから大逃げを敢行し、10キロ地点で追いつかれてトップ集団から離されたが、後半に再び盛り返して圧勝するという、えげつないレースぶりで世界の度肝を抜いた。
だがこれも彼の作戦だった。

雨は降るわ、風は吹くわ、クソ寒いわというコンディション。
だがこれぞアフリカ勢の選手が最も嫌がる悪条件であることを彼は逆に味方に付けた。

アフリカ勢の選手が後半に足を残しておこうとするのをそうはさせじと、自らレースを作りにいったのだ。 とは言え、よほど自分の走りに自信と確信がなければこんな芸当はできない。

これからはプロになる同選手。
期待は大きいがこの人、東京オリンピックに出る気は今のところないらしい。


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さてボストンマラソンと言えば、忘れてならないのが2013年に起きた爆弾テロである。
14時45分頃、ゴール付近の沿道二ヶ所に仕掛けられた爆弾が立て続けに爆発。
死者3人、負傷者282人を出す大惨事となり、その地獄絵図の映像は世界中を震撼させた。
後日、チェチェン人の犯人2人組は、一人が警察との銃撃戦で死亡し、もう一人の男も逮捕されて事件は解決したのだった。

昨年公開された映画「パトリオット・デイ」はボストンマラソン・テロ事件を題材に、捜査関係者、テロリスト、犠牲者、その他の一般市民など複数の視点で、この事件の発生から終息までを描き、テロに屈しない人間の心の強さを讃えた秀作だった。
だが、この映画の中では言及されていなかった重要な真実がある。

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当日、爆発地点に居合わせたために、両足を失う悲劇に見舞われた27歳の青年、ジェフ・ボーマン
病院のベッドで意識を取り戻した彼は、爆発直前に現場にバックパックを置いていった男のことを記憶しており、FBIにその犯人像の詳細を語って情報を提供した。
この証言が防犯カメラの映像から容疑者を絞り込めるのに大いに役立ち、事件の早期解決に繋がったのだった。

その後もジェフ・ボーマンは、テロの傷から立ち直ろうとするボストン市民が掲げたスローガン『ボストン ストロング』のシンボルとして人々から「英雄」と讃えられた。
だが、両足も未来の希望も失い、一人では生きていくことのできない身となった自分が英雄だなどと持ち上げられる、この境遇を彼はどう感じていたのだろうか。

この映画は、ジェイク・ギレンホール演じるジェフ・ボーマンという男の知られざる葛藤に迫りながら、人間のストロング・スピリットを温かく見つめた、一人の平凡な男の勇気の物語である。

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倉庫型スーパー「コストコ」の従業員であるジェフ・ボーマン(ジェイク・ギレンホール)。
ローストチキンを焼く仕事を担当しているが、今日の彼は朝からそれどころではなかった。

ボストン・レッドソックスが2連敗中なのだ。
ジェフにとっては財布を落とすよりも一大事である。
早く帰ってスポーツバーのテレビでレッドソックスを応援したいのに、ここに来てローストチキンを焦がしてしまう大失態。
上司はもちろんオカンムリ。

しかし、このまま後片づけなどのトラブル処理をやってたら、確実に野球中継には間に合わない。
ジェフは子猫のような瞳で、年に何回もしている"一生のお願い攻撃"で「帰らせてちょうだい」と訴える。
こんな場合、「おまえ、仕事とレッドソックス、どっちが大事なんじゃい」と上司にキレられるのが普通だが、この仏様のような上司のケヴィンさん(ダニー・マッカーシー)は「しょうがないな・・・。 今回だけだぞ」
ええっ!?  ボストンの人はレッドソックスのことになると分別がつかなくなるのだろうか? 微笑ましいが太っ腹にもほどがある。

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レッドソックスファンが集ういつものバーに向かったジェフは、元カノのエリン(タチアナ・マスラニー)とバッタリ。
彼女とは一度別れて、再びヨリを戻したが、また別れたのだ。

この男、とにかく「約束を守る」ということが大の苦手なのだ。
待ち合わせの時間に遅刻するなど日常チャメシゴト。
「たかが遅刻」だと、レディの気持ちを思いやらなければ、同じ女に二度もフラれることになる。
仕事にもカノジョにもいいかげんなダメ男なのだった。

いまだに未練たらたらなジェフは、明日ボストンマラソンでチャリティランナーとして走る予定のエリンのために寄付金集めに協力する。
そして翌日には必ず応援に行くからと約束するのだった。

ジェフは熱く語っているが、エリンは話半分で聞き流す。
今までどれだけ約束を破られてきたか。
来るにしたって、またどうせ遅刻するのだろうと彼女は何も期待していなかった。

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ダメ男は、こういう時に限って律儀なのである。
時間にはギリギリだったものの、紙に書いた手製の横断幕を手に、フィニッシュ地点でジェフエリンのゴールを待っていた。

その時、人ごみの中をかき分けながら無造作に歩いていく男がいた。
その男とぶつかってムッとなったジェフは男と一瞬目が合ったが、そんなことよりも間もなくやってくるであろうエリンのことで頭が一杯だった。

彼女を見つけることができたら、なんて声をかけてあげようか。
また付き合ってくれなんて言ったら引かれるだろうなあ。
彼女と出会ったボストン。 彼女が住んでるボストン。
レッドソックスと、マラソンと・・・ ボストンは最高だ・・・

時刻は午後3時まであと十数分。
その瞬間、ジェフはこれまで聞いたことのない大きな音を聞き、これまで味わったことのない衝撃を体に感じていた・・・・
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エリンはフィニッシュする地点までもうすぐの所まで来ていた。
ジェフは応援に来ると言っていたが、彼のことだ、どうせまた遅刻しているのだろうと思っていた。

そして。 凄まじい衝撃音が体に伝わり、爆炎がハッキリと見えた。
瞬間、何が起きたのか、頭が回転しなかったが、エリンはとてつもない不安に襲われた。
彼は来ていないはず。 ああいう人だから。 絶対とは言えないけれど。
でも、この胸騒ぎは何なのか? 彼は来ていたのか?
大勢の人が苦しんで叫んでいる、あの場所に、もしかしたら・・・
 
いつも約束なんて守らないのに、まさか・・・
そんな心配がどうか杞憂に終わってほしい。 電話をかけたら「ああ、ゴメン、寝坊しちゃったよ」と言ってほしい。

やがてエリンの悪い予感は的中し、しばらくは大きな罪悪感が彼女の心にのしかかるのだった。


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生きてるのか・・・
ああ、そうだった。 すごい爆発だったなあ。
あの時、意識はあったんだ。
自分の足がとんでもないことになってたな。
すっげー痛かったけど、この足、治るのかなあ、ダメかなあ、それよりもこのまま死ぬかもな、と思ってたんだっけ。
誰かが必死に僕のことを助けようとしていたけど、僕は「落ち着け。 他の誰かを助けろ」ってなことを何度も繰り返し言ってたはずだ。
足はどうなったんだろ? 体を起こせないから分からないけど、足の指を動かしてる感覚がないので多分ダメなんだろ。

それよりもエリンは無事だったのだろうか? エリンの顔が見たい。
目を覚まして最初に見る顔が・・・ おまえかよ。
僕が目覚めたのに気づいた友人のサリーは「おまえの両足は無くなった」と言った。
そうか、やっぱりな。 ってか、随分ハッキリと言ってくれるじゃないか。 そこがサリーらしいや。

色々言いたい事や聞きたいことがあるのに、「エイリアン」のフェイスハガーみたいなヤツが口を塞いでて、うっとおしいことこの上ない。
しょうがない。 紙とペンで筆談だ。
「フォレスト・ガンプ」のダン中尉みたいでカッコいいだろ? ウケた。良かった。
でも、やっぱりショックだな。

一体何が起こったのか? テロか?
だとすると、僕は重要な人物を見ていたことになる。 まちがいない。 あの男が道に置いていったバックパックが爆弾だったんだ。
そのことを伝えるとサリーは驚いていた。 まもなくしてFBIという人たちが来た。 おお、映画みたいだ。


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両親、親戚が病院に押し寄せ、僕よりもパニくっていた。
僕の両足がなくなったことに父も母もかなりうろたえていたらしい。
命が助かったんだからと、父(クランシー・ブラウン)は自分自身に言い聞かせながらも怒り続けていた。

会社のケヴィンさんが病院を訪れた。
父は食ってかかった。 「働けなくなった息子にクビを言い渡しに来たのか!」
そんなこと言うなって。
でもケヴィンさんは言った。 「彼をクビにはしません」 そりゃあないよ、ケヴィンさん、僕みたいなダメ社員なんか。
会社で入っていた保険の手続きでサインをもらいに来たんだと。
父が失礼なこと言ってごめんね。

二人組の犯人のうちの一人が死亡したらしい。
家族は狂喜乱舞した。
「二人目もブッ殺せ!」
物騒だな。 アメリカ人のそういうとこが嫌われるんだぜ。 


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心配かけたね。 君が無事でよかったよ。
君がもう少し早くゴール付近まで来ていたら、君まで巻き添えになっていた。
それを考えたらゾッとする。 本当によかったよ。

「いつも遅刻するのに・・・。 私のせいだわ。 本当にごめんなさい」
君のせいじゃない。 そんなこと言っちゃいけない。
うちの母になにか言われたかい? そんなのは気にするな。

遅刻せずに君との約束を守れた僕ってやっぱりいい奴だろ?
あんな目に遭ったのに、こうしてまた君の顔を見れる人生が続く。 それで十分さ。

弾力包帯を取り外す時はキツかった。
お医者さんも「これが一番つらい」と言ってたが、これはマジ。
だけど、君がそばにいてくれたから耐えられたよ。
でも、この無くなった足を見ると、この先の人生に、痛みよりも苦しいものが待っているかもしれない。
そう思うと・・・


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6週間後に僕は退院した。
見送ってくれる人や病院の外にいた多くの人たちが僕に拍手を送る。
まるで世界が変わっていた。 どうして僕なんかが。

母(ミランダ・リチャードソン)が嬉しそうにインタビューに答える。
「息子はヒーローよ」
僕が? ただ、足を吹き飛ばされただけだよ。 何かを成し遂げたわけじゃない。

車に乗り込むだけでこんな重労働とは・・・
できるだけ早く帰りたい気分だ。
歩道橋の上で横断幕まで広げて声援を送っている人たちがいる。
『BOSTON STRONG  BAUMAN STRONG !』 うまいな。
でも、僕は別に強い人間じゃないよ。


無題 
確かに、犯人を追い詰めることに役立った証言をしたかもしれないけど、別にたまたま見て覚えていたことを喋っていただけだ。
でもみんなは僕を英雄だなどと持てはやす。
「がんばったね」、「私たちの誇りだ」、「すごいなー」、「写真いいですかあ?」
僕は黙って、少し口角を上げてサムアップするしかない。

僕は彼らに何をしたのだろうか? 
足が無くなった人間は、ハリウッドスター並みに凄いのだろうか?
ちょっとずつ心がささくれだって来ているのが、自分でも分かる。
そうなのだ。 うっとおしいのだ。

レッドソックスに熱を上げるあまりに、仕事はいつもいいかげんで、約束も守れずにカノジョに2回もフラれた男が、こんな一瞬で神様・大明神様を拝むように讃えられる。 異常だとしか思えない。
そういう人たちが悪いわけじゃないんだけど、僕にはもう終わったことだ。 これからの自分の人生には何の関係もない。

あの爆発を生き延びたから、テロに屈しなかった象徴のように奉りたいのだろうか?
僕の言葉が、悪人に天罰を与えるきっかけになったのが、誇り高き行動なのか?
病院を退院して以来、“なぜ?”が止まらない。


無題 v 
家族も親戚も妙に浮かれている。
家族の中に“有名人”ができたのだ。 そりゃ嬉しかろうよ。
複雑だ。 こんなバカ騒ぎは辞めてくれとハッキリと言いたいが、今まで心配してくれて、ずっと病院に詰めて僕の回復を祈ってくれた親族には言えない。

足を吹き飛ばされて英雄? じゃあ誰か代わってくれよ。 両足のない人生の肩代わりを誰か頼むよ。
ションベンも一人でできないんだぜ。
こんな屈辱があってたまるか。
勝者はあのテロリストの方だ。 僕はなんにも勝っちゃあいない。 僕は敗者なんだ。


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エリンは自分を責めていた。
僕が応援に行ったせいで事件に巻き込まれたのだと。
母も、息子を2度もフッた女を良くは思っていない。
何の義理もないのに、あんたのマラソンを観に行って息子はあんな目に遭ったんだと思っている。

君は何も悪くない。
僕のことで君が苦しむのは本意じゃない。
よかったら越してくるかい?
母も君のことを知れば分かってくれるさ。
3人で暮らそう。


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相変わらず僕の元にはマスコミの取材やイベント出演などの依頼が来る。
母はそれをすべて引き受ける。 「あなたががんばってる姿がどれだけ人の励みになるか」
がんばってるというより、がんばるしかないんだ。 こんな体なんだから、毎日がつらい。
それに、元よりダメ人間な僕が、優れた人徳者のように持ち上げられて、人目にさらされる。 これも想像以上にきつかった。
僕には逃げ場がなかった。

アイスホッケーに興味がないなんてことはないけど・・・
ボストン・ブルーインズの試合のオープニングセレモニーに呼ばれたが、正直ギリギリまで帰りたい気分だった。
「音痴なのに国家を歌わされるような気分だよ」

エリンが付いていてくれなきゃ、どうなっていただろうか。
ただ旗を振るだけだ。 適当にやってサッサと引っ込めばいいのだが。
でも、そのわずかな時間が相当に長かった。
照明を落としているせいで観客の顔は全く見えない。
車椅子の男が旗を振ってるだけで、唸るような歓声が僕を包む。
息苦しい。 もうこんなことは御免だ。


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やっと義足をつけるまでになったけど、リハビリ自体は順調というほどではなかった。
メディアに出たりとかで忙しいからだ。
恥ずかしい話だよ。

リハビリの約束の時間に遅刻するなんてしょっちゅうだ。
インストラクターの人も怒ってた。
足が無くなっても、僕は遅刻人間のまま変わらない。

母はリハビリ中の僕を撮ってはSNSにあげる。
なんだかそれが生きがいのように、“英雄を育てた母親”を楽しんでいる。

ある時、エリンと母が衝突した。
オプラ・ウィンフリーと対談する話が決まったと喜ぶ母に、エリンは「NO」の声を上げた。

「リハビリを最優先して」
「息子の素晴らしさを人に教えたいだけよ、それがいけないこと?」

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サリーたちと酒場に行くと、一人の男がカラんできた。
「あの爆弾テロは政府の陰謀なんだろ? あれは演出であって、おまえはギャラをもらったんだろ?」
ああ、その通りだよとでも答えてやりたい気持だった。
もう、どうでもいいが、なんでみんなそんなに僕のことばかり見ていろいろと言いたがるんだ。

エリンが妊娠した。
彼女と一緒に暮らし始めて間もなかった頃、僕は足の無い体では初めてのセックスをしたのだった。
その時の子なのだろう。 僕は動揺した。

「こんな体で育てられるわけがないだろう!」
「育てられないのは足を失ったからじゃなくて、自分がまだ子供だからよ」

言い出した僕がバカなのだが、車の中での口論は止まらなかった。
なぜ僕に執着する。 ただのカスなのに。
怒ったエリンは車に僕を一人残して去っていった。
僕を一人にするな・・・・・

もう何がなんだか自分でも分からない。


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あの事件の時、僕を救い出してくれたカウボーイハットの人物はニュースの映像でも流れていた。
その人物、カルロス(カルロス・サンズ)という人も僕ほどではないけど、時の人になっていて、メディアは彼と僕を御対面させたかったが僕はずっと断っていた。

なぜ会ってみる気になったのだろうか?
彼も人から注目されて、わずらわしい思いをしてるのではないだろうか?
一人にしてほしいという気持ちと、一人にしないでくれという気持ちが葛藤している、そんな気持ちを共有したかったのかもしれない。

最初は少しぎこちなかったが、カルロスはポツリと語りはじめた。君に感謝していると。
彼には二人の息子さんがいた。 “いた”のだ。
二人とも、もうこの世にいない。
兄はイラクで戦死した。 その苦しみに耐えかねてカルロスは自ら命を絶とうとも考えたが死にきれなかった。
だが葬儀を終えたあと、兄を失った痛みと父親が苦しむ姿に今度は弟の心が折れてしまったのだ。

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二人の息子を失う悲劇に見舞われた彼は何を支えに生きてきたのだろうか?
つらい道のりを歯を食い縛って走る、名もなき人たちの強い姿を見て己を奮い立たせようと、あの日のボストンマラソンに来ていたのだろうか?

爆発が起きて、辺りがひどい惨状になっているのを目の当たりにしたカルロスは思ったのだそうだ。

「あの日はゴール付近にいてね。 息子のことを思いながら国旗を配っていたんだ。 体は逃げ出したかった。 でも、今こそ生き方を変えようと思ったんだ。 君を救うことで息子を救っている気持ちになれた。 深く感謝している。 君も私を救ってくれたんだ」

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人々が僕の姿から何を感じ、何を求めているのかが分かった気がする。
自分の愛国心を振り替える人や、我が身に置き換えて、もしもの時の知恵を得た人もいるだろう。
たが、テロに直面した人だけでなく、世界中には人生の大きな痛みに苦しむ人がいる。
生きている限り誰にでも起こり得る挫折や絶望を乗り越えるとき、人の心の力は自力だけではままならない。

人は学びながら人生を歩み行く。
悲しいかな世界は様々な苦しみに満ちていて、その分、苦しみを乗り越える生き方の手本もその数だけある。
勇気は巡る。 挫折した人は、挫折を乗り越えた人の姿を勇気に変えて生きていく。
その姿を見て、また世界のどこかで挫折した人が勇気を与えられる。
勇気が輪となって世界は築かれていく。
その輪のひとつになるのが、僕が足を失った意味かもしれない。


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昔のメディアは、こういった体の一部を失った人たちをあえて伏せてきたところがある。
一般大衆が"色んな意味で"気分を害するであろうことに妙な配慮をし、"弱者"を人目にさらすことをなんとなく敬遠していたのだ。

放送や出版物にも全くなかったわけではないが、ハンデを克服する姿を人に観てもらうことが、障害者に対する社会的意識を高め、同じハンデや悩みを持った人たちの励ましになるという道徳的な志向はあっても、いざ大っぴらに取り上げるのははばかられ、障害者は否応なく日蔭の存在となっていった。

しかし近年は医療技術の向上により、身体障害者の社会復帰も格段に増え、それらをメディアが取り上げる機会は多くなった。
パラリンピックの認知度も上がり、車椅子競技やブラインドスポーツなど、障害者のスポーツもテレビなどでよく目に触れるし、街にはバリアフリー設備も増えた。
身体的ハンデを持った人たちが積極的に外に出れる社会として、人も街も意識は確実に上がっている。
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そんな時代だからこそ、障害者をメディアが取り上げるのも今さら感があって、「24時間テレビ」のように「感動の押し売りだ」などという批判も上がったりして、逆にまた扱い方が難しくなっている。
他意はなくとも「偽善」だの、「感動ポルノ」だのと炎上する世の中なのだ。

そうだろうか。 一部そういうシロモノはあるかもしれないが、すべてのコンテンツがそうではなかろう。
それだけ障害者が身近な社会になった証左なのだろうが、それでもこういう人たちの頑張る姿を伝えることは今でも意義はあると思う。

この映画を観ていると、ハンデを背負う人生を余儀なくされた人の葛藤にもリアルな描写がなされていることも評価できるが、やはり困難を乗り越える姿、その並大抵ではない闘いのプロセスを伝えることが、知る機会の少ない私たちを学ばせ、勇気を必要とする人々のバイタリティとなるのだという救いへと着地するところが感動する。

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事件や事故に巻き込まれて、人生が大きく激変する人たちがいる。
身体的な傷や、心の傷の痛みに打ちひしがれても、時は進む限り、人生も前へと進まねばならない。

ジェフ・ボーマンは足を失った現実を受け入れ、その人生を歩むことを世に知らしめてこそ多くの人の心を救うのだと悟り、ダメ男から英雄へと昇華していく。
絶望から一転、世界に影響を与えるほどの、自身の人生の意味を見出せたのは、ある意味うらやましくもある、貴重なひとつの到達点である。

もちろん彼だけが苦しんでいた訳ではない。
母も恋人も苦しんでいたのは当然だ。

  一見、俗っぽく描かれるジェフの母パティ
我が子の両足が無くなったことを最初に医師から聞かされた時の絶望感は想像を絶する。
不憫な息子のこれからの人生を彼女なりに肯定し受け入れて、いかに息子を支えようかと心を痛めた末の決意を示したのが、息子が決して人生の敗残者でないことを世に見せることだったのではないか。

傍から見れば、やり方は決して褒められるものではないが、考えれば息子をタダでさらし物にする親はいない。
彼女なりに息子に「強くあれ」と願った結果が、あのやり方だったのではないだろうか。
そして一日一日、社会復帰への道を刻んでいく息子を見ることが彼女の唯一の支えだったのだ。
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演じるミランダ・リチャードソンの巧いことといったら!


恋人のエリンは、ジェフの災難を自分のせいにして悩み苦しむ。
では、どうすれば良かったのかという正解も分からなという彼女の宙ぶらりんの状態も他人には計り知れぬ逆境であろう。

エリンに罪はないし、別れた男に何も義理立てする必要はないが、彼女を一途に想った故の男の運命に素知らぬふりをすることなどもちろんできない。
運命とは時に残酷の度を超える。

パティからもやんわり拒絶されても、彼女はジェフの人生に寄り添うことを決意する。
妊娠が判明した時も、迷いはあったがもうすでに決めていたのであろう。 ジェフはうろたえてしまったが。
彼女もまた自分の人生の激変を受け入れる。 この覚悟が凄い。
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母のパティも、恋人のエリンも。 女性はストロングだなあ。


監督はデヴィッド・ゴードン・グリーンという人で、まだ40代の人だが割と作品数は多い。
にも関わらず、日本未公開作の多さは尋常ではない。
かろうじてテアトルシネマの企画『未体験ゾーンの映画たち』でニコラス・ケイジ主演の「グランド・ジョー」が陽の目を見たぐらいである。
カンヌで銀熊賞ももらったことがある人だし、フィルモグラフィーをチェックしてると、割と面白そうな内容の映画があるのにね。

ジェイク・ギレンホールはどんな役であろうと、彼に任せておけば安心みたいな適応力が存分に出ている。
だいたいがダメ男の役は得意の範疇とはいえ、この役だって容易ではない。
特殊効果を施してあるからこそ、下半身が不自由な演技は難しいし、より繊細な感情の表現が要求される。

またひとつ、ギレンホールの「さすが」を見せつけられる作品が加わった。
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「賢人のお言葉」
 
「苦しみを甘んじて受け、耐え忍んで強くなってきた人間こそ、この世でいちばん強い人間なのだ」
 ホール・ケイン 
(「永遠の都」)

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他にもこれ観ました  ~5月編(上)
2018年05月23日

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「レディ・プレイヤー1」

スティーヴン・スピルバーグはどんなペースで仕事をしてるのか。
こないだ「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」を観たばかりじゃあ~りませんか。
実際、スピルバーグ作品の常連の作曲家ジョン・ウィリアムズは「両方ともムリ!」と本作の音楽をアラン・シルヴェストリに譲ったというほど、キッチキチのスケジュールだったそうで。
そんな“おいそが氏”にも関わらず、スピルバーグが撮った最新作はヴァーチャルリアリティを題材にした冒険ファンタジーであります。
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今から27年後という、そんなに遠くない未来。
2045年のオハイオ州コロンバス。 荒廃した夢も希望もない街で暮らす人々の唯一の娯楽はバーチャルリアリティを体験できる「オアシス」。
子供から大人までゴーグルを着用して観るVR世界では、誰もがなりたいアバターになれるのだ。
ある日、数年前に亡くなったオアシスの開発者の一人ジェームズ・ハリデーからの遺言が全世界に配信される。
「オアシスに隠された3つの謎を解いた者に全財産56兆円を与えて、オアシスの後継者とする」と。
街で叔母と暮らす17歳のウェイド(タイ・シェリダン)をはじめ、世界中のプレイヤーがオアシスに集結し、激しいお宝の争奪戦が展開されるが、そこには世界を支配する陰謀を企てる組織の存在もあった。
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う~ん・・・・・ 歳とったのかなあ・・・。
面白いっちゃあ、面白いんだけど、ある意味、心に刺さらないね。 もっとお気楽に観た方が良かったかね?
VRの中のシーンでは「権利とか大丈夫なのか?」と思うほどに、色んなキャラクターが登場。
ほんのチラッとしか映らないのもいるので、それらをできるだけ確認してやろうと目ん玉をおっぴろげて観てたら、肝心の「陰謀に立ち向かえ!」みたいなストーリーは正直どうでもよろしくなる。
これは4Dで鑑賞した方が絶対に面白いね。
個人的には「シャイニング」のホテルがまるまる出てきたのがツボ。
ガンダム対メカゴジラもなんか笑いそうになったが、森崎ウィンの「俺はガンダムで行く!」のセリフにはひとこと言いたい。
君、そこは「いきまぁーす!」と言わなきゃな。
        

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「君の名前で僕を呼んで」

17歳の少年と24歳の大学院生とのひと夏の忘れられぬ恋・・・・
エジプトの作家、アンドレ・アシマンの同名小説を御歳89歳の巨匠ジェームズ・アイヴォリーが脚色し、「ミラノ、愛に生きる」のルカ・グァダニーノが監督を務めたボーイズ・ラブ・ムービー。
アカデミー賞4部門にノミネートされ、アイヴォリーは脚色賞を受賞。
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1983年の北イタリアのどこか。
17歳のエリオ(ティモシー・シャラメ)は夏になると両親と訪れるヴィラに今年もやってきた。
父パールマン(マイケル・スタールバーグ)は大学教授で美術史を研究しており、母のアネラ(アミラ・カサール)は翻訳家だ。
自然に囲まれ、音楽を聴き、楽器を奏で、読書をし、近所の友人ともふざけ合ったり。 それがエリオの夏の過ごし方だ。
毎年、父の仕事を手伝うインターンを迎える一家だが、今年やってきたのは博士課程に在学中の24歳の大学院生オリヴァー(アーミー・ハマー)だった。
エリオの部屋を使うことになったオリヴァーに家の中を案内したエリオは、知的で自信にあふれているオリヴァーに惹かれるものを感じる。
なぜか二人はお互いを意識し合い、磁石のように惹きつけたり、時に反発したりする。
やがて、自転車で二人で遠出した時、エリオはオリヴァーへの秘めていた思いを告白する。 オリヴァーもまた同じ思いをエリオに抱いていた。

まばゆい夏の光の中で激しく恋に落ちる二人。
しかし、夏の終わりと共にオリヴァーが去る日が近づいてくる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
同性愛云々ではなく、誰の胸にもある恋の痛みを想起させ、慈しみあふれる語りで傷を包み込んでくれる傑作です。
オリバーのさりげないボディタッチやエリオのすねた態度など、ささやかな感情のディテールを積み重ねながら、やがて二人の想いが結び付いていく過程はみずみずしいの一語に尽きる描写です。

文学的タッチの映像美、スフィアン・スティーブンスの透明感しみる音楽・・・・
はやらず、また鈍重にならず、淡々とした語りの中に濃密な感情の行き交いが伝わりつつ、あまりに繊細で、キラキラした時間が流れていきます。 本当に美しい映画です。

クライマックス、父がエリオに語りかけるシーンがウルウルきますね。
「おまえたちが得た経験を、昔の私は自分で抑えて逃してしまった。 おまえの人生はおまえのものだ。 心と体は一つしかない。 早く立ち直ろうと心を削ってはいけない。 痛みを葬るな」
息子を見ていた父親のこと、そしてオリヴァーがエリオの肩をもむシーンなど「そうだったのか」という感慨と共にもう一度見返したくなりますね。

ラストというか、エンドクレジットはエリオの表情のアップでみっちり3分間。
暖炉の火を見つめるエリオのまなざしはオリヴァーを呼び続ける。 エリオの名前で。
        


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「ザ・スクエア 思いやりの聖域」

カンヌ国際映画祭で是枝裕和監督の「万引き家族」がパルムドールを受賞しましたが、めでたいというよりビックリですね。
そして昨年、カンヌのパルムドールを制したのが、リューベン・オストルンド監督のこちらの作品。
前作の「フレンチアルプスで起きたこと」も面白かったですが、この監督さんの作風がなんとなく分かってきました。

主人公は現代美術館の学芸員をしているバツイチの男クリスティアン(クレス・バング)。
今回彼が企画した展覧会は「ザ・スクエア」という地面に書いた正方形の作品。
「その正方形のエリアの中では、すべての人が平等の権利を持ち、そこにいる人が困っていたら誰であろうと手助けしなくてはならない」という参加型アート。 それが「思いやりの聖域」。
それは常日頃から現代社会の貧富の格差を感じていたクリスティアンの、社会に問題提起をしてやろうじゃねえかという狙いでもありました。
そんなある日、彼はスマホと財布をスラれてしまうという災難に遭いますが、GPS機能を使って犯人が住むらしきマンションを特定。
全部の部屋に脅迫めいたビラを配り、その甲斐あってかスマホと財布は無事に返ってきます。
ところが、これがよもやの波紋を巻き起こし、さらには展覧会の宣伝手法をめぐって、クリスティアンは予期せぬ窮地に立たされることになるのです。

この映画は、劇中で起きる出来事を観ている観客をもさりげなく挑発しています。
"人のことを信頼しましょう。広い心を持って、困っている人を助けてあげたり、平等に扱いましょう"・・・・それはいい考えですね、人間はそうあるべきですよね、などと思うのでしたら、どうぞ、その正方形のエリアの中にあなたのスマホと財布を置いたままにして、展覧会を見学しに行ってください・・・・・それが「思いやりの聖域」のコンセプト。
おそらく実際に自分のスマホと財布を捨て置いたままにできる人は皆無でしょう。 ほおら御覧なさい、人を信頼するなんて無理でしょう?というのがこの映画に散りばめられた毒。

劇中、どうにも居心地の悪くなるシチュエーションがあちこちにあるのがこの監督の人の悪いところ。
ほとんどのシーンでなんらかの”雑音“や”闖入者“を紛れ込ませてあるところも明らかに意図的。

□ 会社の会議の席に赤ちゃん同伴の人がいる。 赤ちゃんがピーピーうるさいのだが、会議は粛々と進む。
□ トークショーの客席に卑猥なヤジを飛ばす客がいて、その男性は神経症を患っている、いわば"そういう人"であって、どんなにトークショーの空気が悪くなろうとも誰もなす術はない。
□ パーティーの企画で登場した猿男。 どうぞノーリアクションでいて下さいとアナウンスされると、その猿男がどんなに傍若無人に振る舞おうとも、女性が暴行されようとも、周囲の人はギリギリまで傍観している。

炎上狙いの宣伝・・・ 脅迫のビラを撒いたことで親から濡れ衣を着せられた少年・・・ コトが済んだあとの中身入りコンドームを渡す渡さないでもめる男女・・・
言うだけなら簡単、でも実際は、言うこととやってることが釣り合わない、というか、おいそれと人を信頼なんてできないのが世の中ってもんです。

これでもかと人の神経をツネってくる、いい意味でへとへとになる映画ですが、やっぱこの内容で150分は長いよね。
        


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「サバービコン 仮面を被った街」

ジョージ・クルーニー監督、コーエン兄弟の共同脚本で描くシニカルなクライム・サスペンス。
理想のニュータウンに隠された恐るべき闇とは・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1950年代。 カラフルな家が立ち並ぶ郊外の住宅地サバービコン。
住人たちはみな幸福そうで、アメリカの理想のファミリーを絵に描いたよう。
サラリーマンの父ガードナー(マット・デイモン)、母ローズ(ジュリアン・ムーア)、幼い息子のニッキー(ノア・ジュープ)、ローズの双子の妹マーガレット(ジュリアン・ムーア二役)のロッジ家もそんな家族のひとつ。
しかし、一家の平和な日々は隣りに黒人のマイヤーズ家が引っ越してきたことで激変する。
彼らの受け入れを巡って自治体は紛糾。 反対派の住民は自宅とマイヤーズ家を隔てる高い塀を築きはじめる。
そんな中、ロッジ家に二人組の強盗が押し入り、ローズが殺されてしまう。
ところが捜査はなかなか進まず、一方で住民たちのマイヤーズ家に対する嫌がらせはエスカレートしていく。
やがてふとしたことから、ニッキーは犯人が捕まらない理由に気づいてしまう。
そしてロッジ家に保険調査員のクーパー(オスカー・アイザック)が訪れたことで事態は恐るべき方向へと転がり出していく・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ペパーミントカラーの外壁以外はどれも似通った様式の家が整列する画一的な無個性の街。 カリフォルニアのフラートンという所に50年代に建てられた実際の住宅街でロケが行われてまして、いかにもこの時代のアメリカ式アットホームを象徴したかのような街並みです。
理想の暮らしがここにあると言わんばかりに、いつもニコニコしている住民の皆さんはいい人たちばかりなんでしょうね・・・という外面とは裏腹に、黒人の一家が越してきただけで住民は怒りだし、暴動にまで発展。
また、ある一軒の家では保険金殺人が企てられており、平和なはずの街がとんでもないカタストロフィに見舞われるという話。

世の中すべて、見かけなんてものはアテにならないという社会風刺のドラマなんですが、1957年にペンシルベニアのレヴィットタウンで実際に起きた人種差別騒動の顛末と、ヒッチコック風のクライム・スリラーが並行して描かれる形になっています。 
しかし、この構成は残念ながらうまく機能していないと言わざるを得ないですね。 別々の話がきれいに融合しておらず、結局テーマそのものが霞んでしまっています。
人種差別問題か、犯罪ドラマか、どちらかに絞ればよかったのでは?
        


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「ホース・ソルジャー」

ニューヨークのグラウンド・ゼロの跡地に騎馬兵士の銅像が建てられているというのは、この映画で初めて知りました。
この像は一体、誰を讃えてのものかといいますと、同時多発テロの直後、アフガニスタンのタリバンの拠点制圧に向かったアメリカ特殊部隊なのだそうです。
敵勢5万人に対してたった12人、それも馬に乗って戦いを挑んだ米軍兵士。
ジェリー・ブラッカイマー製作、"9.11直後の最初の戦い"の知られざる真実の物語。

正確に言えば12人ではありません。 要するに彼ら特殊部隊に課せられたのは、反タリバンの北部同盟の支援。
現地で彼らと合流して、空爆作戦も兼ねながら、北部同盟をサポートするというもの。
しかし、11月になると雪で道が閉鎖されるために3週間のリミットしかありません。
目的地は険しい山道ゆえに馬に乗っていくしかないという状況下。
タリバンと戦っている北部同盟にも異なる3つの軍閥があり、こちらも互いにいがみ合って協力し合わないという、ややこしい事情も。
彼らにも、心底アメリカ人を信用していない部分があるので、ドラマには事欠きません。

戦争をアクション娯楽に落とし込んではおらず、特殊部隊のリーダー、ネルソン大尉(クリス・ヘムズワース)と北部同盟のドスタム将軍(ナヴィド・ネガーバン)との友情の物語に寄せてあります。
この将軍さんが、融通が効かないところもありながら、なかなか"オトコマエ"なところがありまして、いちいちカッコイイセリフを吐いたりするし、最後には「いいとこあるじゃん」みたいなことをするのですよ。

もちろんアクション映画と割り切って観ても迫力十分の内容。
BM-21グラッドロケットがビュンビュン飛ぶその下を、兵士ではなく戦士となった男たちが馬で颯爽と駆け行くシーンがヤバい。
        


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「モリーズ・ゲーム」

ハリウッドスターや一流スポーツ選手、ミュージシャンなどが顧客リストに名を連ねる秘密のポーカールームが実在したそうで、掛け金の最低額は1万ドル。
どんなにキャッシュを積んでもオーナーからの招待がなければ覗くことも許されないというサロン。
そこが違法賭博として摘発された際に、レオナルド・ディカプリオやベン・アフレック、トビー・マグワイアなどが常連客だったとメディアが報じております。
その伝説的ポーカーサロンのオーナーだったのが、当時26歳のモリー・ブルームという女性。

元々スキーのモーグルの選手でしたが大怪我をして選手生命を断たれ、ハリウッドのクラブでウェイトレスをしていた時にポーカーゲームを主催するディーン・キースという男にアシスタントとしてスカウトされます。
モリーはポーカーを通じてたくさんのハイクラスの人々と交流する毎日に生きがいを感じていましたが突然解雇。
すぐさま彼女はプレイヤーたちにメール。 今夜から場所が変更になった旨を伝えて、モリーは自らポーカーゲームの主催者となるのです。
瞬く間に年間数百万ドルを稼ぐまでになったモリーでしたが、違法賭博の容疑でFBIに逮捕されて全財産を没収されてしまいます。

この映画はモリー・ブルームの自伝を元に、「ソーシャル・ネットワーク」、「スティーブ・ジョブズ」の脚本家アーロン・ソーキンが初監督を務めて描く、「女の勝負人生繁盛記」。

モリーを演じるのは「女神の見えざる手」のジェシカ・チャスティン。 孤高の闘いを強いられる女性を演じればこの人は鉄板ですね。
厳しい父親(ケビン・コスナー)への反発から始まって、一瞬にして大金が動くスリリングな世界でのし上がっていくモリーのまさに賭博のような人生は波瀾万丈で、色んな人物が彼女と関わります。
それらのメンツを眺めてるだけでも面白い。
ポーカーがメッチャ下手くそで負け続けるのに飄々とゲームを続けるブラッドという男。 そのブラッドに負けてカッとなって借金を膨れ上がらせてしまうハーランというタマゴ頭のおじさん。 
男気プンプンの弁護士(イドリス・エルバ)と、その娘さん(中学生?)。
守銭奴になると男が下がったプレイヤーX(マイケル・セラ)。

ストーリーはまあ、そんなもんですかねという感じですが、モリーと弁護士の凄まじい早口のディスカッションはなかなかの見せ場。

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